出張シェフのビジネスモデルに未来はあるのか?

こんにちは、小松由和(@komaty)です。

 

一週間ほど前にニュースアプリNewsPicksで出張シェフについての記事が取り上げられていました。

記事はこちら。「出張シェフ」が人気=自宅でゆったりプロの味

 

出張シェフ、出張料理人、などとほぼ同じ業態であるケータリング事業をやっている身としては出張シェフのサービスが世の中に広まるのは非常に嬉しいこと。しかし、得てしてニュースは文字数に限りがあるせいか、一面的な紹介にとどまってしまい、読む人に誤解を与えることも少なくありません。今回の記事も「おいおい、そういうわけでもないんだぞ。」と突っ込みたい部分があったので、ずらっと話してみたいと思います。

 

まず、記事の引用から。

自宅にプロの料理人を招いて、調理、配膳、後片付けなどを任せる「出張シェフサービス」が人気を呼んでいる。子どもが小さく外食に出掛けづらい子育て世代や、自宅で女子会を開く人たちなどの利用が増えている。

「レンタル・シェフ」の名称でサービス展開するイグジラレート・インターナショナル(東京)はフレンチや和食などの料理人約100人と契約。食事代を含め1人1万円程度のコースが人気を集める。能登哲社長は「共働き家庭の増加で、家事代行サービスの利用が増えている」とみる。

マイシェフ(同)は、一般家庭の利用を促そうと料金を1人3000~5000円に設定。体験イベントに参加した30代の主婦は、「自分では作れない料理を外食と変わらない値段で食べられるのは魅力的」と話す。

引用)http://www.jiji.com/jc/article?k=2017020400463&g=eco

 

小さい子供を連れて外食に行きづらい子育て世代などに出張シェフのニーズがあるのはわかる。自宅やマンションのパーティールームなどで出張シェフを呼んでのパーティーであれば、子供がうるさくしてもお店や周りのお客さんに気を遣ったりということがなくなる。準備も片付けもしてくれて美味しい料理が食べれれば、たまにのストレス解消としては申し分ないかもしれない。

 

私が突っ込みたくなった部分は、ここ。

マイシェフ(同)は、一般家庭の利用を促そうと料金を1人3000~5000円に設定。体験イベントに参加した30代の主婦は、「自分では作れない料理を外食と変わらない値段で食べられるのは魅力的」と話す。

 

この「外食と変わらない値段で(出張料理が)食べれる」表現、売り出し方、出張シェフやケータリングではよくあるし、利用者からすると魅力的ではあると思うんだけど、実際サービス提供者からすると違和感たっぷり。

この違和感について、ケータリング事業をしている身としてちょっと考えてみたいと思います。

そもそも、出張シェフのメリット/デメリットってなに?

違和感の根源は出張シェフのビジネスモデルと利用者の認識ズレにあります。

要は、出張シェフの良いところしか見えていない!

 

まずは出張シェフのメリット/デメリットを整理してみます。

基本的には、利用者側は実店舗のレストランなど飲食店に行くのか、出張シェフに来てもらうのかの比較。サービス提供者側は、実店舗でお客さんを待つのか、出張シェフのように出張するのかの比較。

利用者側、サービス提供者側、順番に説明していきます。

 

<出張シェフのメリット(利用者)>

・出張にきてくれる(自宅、会社、レンタルスペース、イベント会場、など)
飲食店まで行く必要がない。この点が出張シェフやケータリングの最大のメリット。近くに飲食店がない、小さい子供がいて行きづらい、体が不自由で外出が大変、などのニーズに応えることが可能。

・準備、片付けをしてくれる
自宅やオフィスで10名程度のパーティーをしようとした場合、料理飲み物の準備や手配が大変です。もちろん料理好きで楽しんでできる人がいればよいですが、そうではない人にとっては大変な作業でしかありません。それらを代行してくれるのは楽チン。

・美味しい料理が食べれる
お店によりますが。笑 まあ大抵の場合は、一般人がつくる家庭料理よりも美味しい料理を出張シェフがつくってくれます。高い金額を出せば、有名シェフに来てもらうことももちろん可能。富裕層なんかは、自分が飲食店に行くのではなく、シェフを自宅に招いて美味しい料理を堪能するケースも多いかと思います。

 

<出張シェフのデメリット(利用者)>

金額、お金の話は一旦置いておきます。後ほど触れるので。

・事前のやりとりが大変
ケースバイケースですが、飲食店に行って食事をすることに比べると、事前に出張シェフとの確認、連絡のやりとりが発生します。住所やキッチン設備、テーブルサイズ、等々、出張シェフが当日スムーズに料理を提供するのに必要な情報を伝えたりしなければいけません。

・会場の雰囲気や内装に影響されてしまう
この視点が利用者には抜けがちです。たしかに美味しい料理はどこでも提供は可能かもしれませんが、どんなに美味しい料理も例えば殺風景な会社の会議室で食べると、レストランで食べるのとは全然違う体験となってしまいます。

 

次にサービス提供側のメリットとデメリットを整理。

<出張シェフのメリット(サービス提供者)>

・店舗家賃など固定費を抑えやすい
出張シェフの最大のメリット。お客様の元に出張するので、客席のある店舗を構える必要がありません。自分の厨房さえ必要ないシェフであれば、無店舗でも成立します。実際は下ごしらえなどできる厨房を持っていないと色々キツいと思いますが。固定費を抑えれる分、料理やサービスにこだわることができます。

・材料費、人件費のロス、無駄が少ない
事前に予約人数が明確にわかるケースが多いので、材料費、人件費などの無駄が少なく準備可能です。通常の飲食店だと完全予約制でない限り、正確に来店客数を読むことは不可能に近いので少なからず、材料や人件費のロスが発生してしまいます。

 

<出張シェフのデメリット(サービス提供者)>

・出張の手間
用意する範囲、内容によりますが、大人数の料理や飲み物を運搬するのは簡単ではありません。食器も持って行くとなったらさらに大変。

・不慣れなキッチンでの調理
出張シェフの場合は、会場のキッチンを使って調理することになると思いますが、初めて行く会場がほとんどだと思うので、不慣れなキッチンでの調理は思った以上に大変。

・お客さんとのメニューやキッチン設備の確認などやり取りの手間
利用者側のデメリットと同じ。飲食店であれば、メニューを選んでもらえば席に座ってもらって、あらかじめ決めておいたサービスや料理をたくさんのお客さんに提供して効率がいいですが、出張シェフの場合は、お客さんにあわせて都度確認しなければいけないので非常に効率が悪いです。

・広告宣伝料金が実店舗よりも多く必要
料理人からすると契約してる仕事受注サイト(今回の記事だとレンタルシェフとか)に払う手数料とか。自らのwebサイトや口コミ紹介などだけで仕事が来ない場合は、広告宣伝費が必要になります。店舗型の飲食店のように通りすがりで来店、といったことがありえないので、通常の飲食店よりも集客は考えないと難しい面があります。

 

出張シェフを今までみんなやらなかったのにはちゃんと理由があります。

メリット以上のデメリットがあるから。メリットの方が大きかったら「出張シェフは店舗家賃を抑えれる?最高じゃん!おれもレストランやめて出張シェフになろう!」て世の中のシェフはみんな思うはずですよね。そうなってないのもデメリットが大きいから。実店舗のレストランでお客さんを待った方が効率よく儲けられると考える人が多いということです。

逆に、出張シェフのデメリットをうまくカバーできる発想やスキルがあれば、ライバルが少ない環境ですので、実店舗のレストランをやるよりも、理想に近づけるケースもあります。

 

外食と同じ価格で同じ料理が自宅で食べれるのか?

次にこの疑問に回答。

 

出張シェフは、

・店舗家賃など固定費を抑えれる

・材料費、人件費のロス、無駄が少ない

といった、実店舗にはないメリットの反面、

・出張の手間

・不慣れなキッチンでの調理

・お客さんとのメニューやキッチン設備の確認などやり取りの手間

・料理人からすると契約してる仕事受注サイトに払う手数料

といった、実店舗にはないデメリットがあります。

食材仕入れ、メニュー考案、など他の仕事は、出張シェフでも実店舗の飲食店でも変わらず必要です。

 

それらを前提に、最初の違和感「外食と同じ価格で同じ料理が自宅で食べれるのか?」を読み解くと、超ざっくり、出張シェフのメリットとデメリットが相殺されるとして、

じゃあ残るものは何か?それは料理だけ。

 

「外食と同じ価格で同じ料理が自宅で食べれる。」

そこは間違ってない。

 

けど、外食ってほとんどの場合、お店の内装、食器、雰囲気、非日常感、なども加味して料金を支払っているはず。当然お店側も内装や食器も重要な要素だからこだわっています。

自宅でお店と同じような食器やインテリアを出張で持ち込むことも不可能ではありませんが、用意するコストが増えて、到底外食と同じ価格で出張シェフがサービスを提供することは厳しい。

はたまた、プロの料理人が作ってくれた美味しい料理を、生活感丸出しの一般家庭のダイニングで一般家庭の食器に盛り付けて、いつもと変わらない部屋で、外食と同じ金額を払う。

子供連れて外食に行けないから喜んで利用したい層もいるとは思うけど、費用対効果があるかといったら一回利用したら微妙かも…と思う人も多いはず。

外食と変わらない値段で、自宅でプロの料理が食べれることは間違ってないけど、同じ価値=体験があるわけではないです。

子供連れて外食に行けない人、外出が困難で外食に行けない人、など、自宅に来てもらって料理を作ってもらうことに対して相応のメリットが享受できる層でないと、一般家庭向けの低価格の出張シェフはなかなか成り立たないと思います。

逆に富裕層向けの高価格の出張シェフも簡単ではないかと。裕福な家庭の人の方が食への目利きは優れていることが多いから、出張シェフが費用対効果が良いか悪いかの判断はよりシビアになるので、サービス提供者としては結構大変。

 

出張シェフをちょっと利用してみたいと思った人へ

間違っても、外食に行くのが面倒だし、外食と同じ値段で出張シェフが自宅に来てくれて同じ体験ができるなら便利じゃん、とかの理由で出張シェフとか利用しちゃダメです。

デリバリーも配送料が上乗せされていますが、出張シェフやケータリングはデリバリーと同じ配送料+現場でのサービス料金(スタッフ人件費)も上乗せされるので、その上乗せ分を払っても出張シェフを呼びたい理由がないと、費用対効果に満足できなくて1回利用して微妙・・となりがちだから気をつけましょう。

 

結論、出張シェフのビジネスモデルに未来はあるのか?

サービス提供者視点だと、一般家庭向けの出張シェフは、単価低め、人数も少なめで、かなり非効率。記事の例で出てきた1人3000~5000円の単価で一般家庭のお宅だとスペース的に10名だと多い方。5000円×10名=5万円。デリバリーなら料理お届けして終了だから、1日に複数の場所へ料理を提供可能です。例えば、個人飲食店がデリバリーやったとしても3000円×5名分×10箇所=15万円とかは効率よく対応可能。でも、出張シェフは1件あたりの拘束時間が長いから、1日の多くても2件が限度かと。そうなると、5000円×10名×2箇所=10万円。出張シェフの稼働率を上げるにはシェフを増やさないといけないけど、デリバリーなら厨房は1箇所のままで配送アルバイトを増やせば厨房の製造能力限界までいける。

それらを考慮すると、出張シェフはある程度のスキルも要求されるし、効率は非常に悪いビジネスモデルです。仮にデリバリーの大手チェーン店のように大量生産で効率良く料理提供できるようになったとしても、そんな料理をわざわざ出張シェフとしてシェフを招いて食べたいのか?という問題にぶちあたる。それならデリバリーでいいし、結局飲食店に出向いた方がよほど費用対効果の高い体験ができてしまう。

出張シェフの単価を上げる可能性もないこともないけど、利用したい層(できる層)が限定されてしまうし、30人とか50人とか大人数の一般家庭パーティーは絶対数が少ない。単価低めで消費者の利用しやすさを維持しつつ、効率あげて収益性を高くしていこうとすると、大量生産なり提供する料理にオリジナリティがなくなったり、サービス均一化など、消費者の満足度に影響が出やすい。課題多すぎ。

 

だから出張シェフをやりたいと思う料理人は、法人向け、富裕層向けの出張シェフの方が、単価高くて食材にもこだわれて美味しい料理を追求しやすいし、法人向けなら大人数のパーティーも一般家庭よりは断然多いから売上面でも効率がよいのでおすすめです。

一般家庭向けの出張シェフは、プロの料理人が活躍する場よりも、料理が超うまい一般人が副業として稼ぐ場みたいな方が、サービス提供者と消費者、双方にメリットありそうな気がします。

 

結果として、

「一般家庭向けの出張シェフ」は、一般人の料理上手い人の市場、マッチングサービスならよいのではないかと。

プロは法人向け、富裕層向けがおすすめ。

 

おわりに

いかがでしたでしょうか。

 

ざっとじゃ書ききれない要因もあるし、課題をうまくクリアする方法を実践している人もいるので、出張シェフ全部にあてはまるわけではないけど、傾向としては出張シェフはビジネスモデルとしては難しい分野かと思います。難しいからこそ今まで流行ってないし普及もしてないし参入したくなる魅力がないから競争も起こらず市場が大きくならない。

 

でも、今後の創意工夫や技術革新によっては可能性がないこともないので、タクシーアプリのUberがレストランのデリバリー「UberEATS」をスタートするくらいだから、今後どうなるかはわかりません。むしろ、デリバリー、出張シェフ、ケータリングなどの分野は、今まで市場が小さかった分、効率化できる余地、改善できる余地がたくさん残っているのかもしれません。

 

今後もケータリングや出張シェフ関連のニュースは逐次拾っていきたいと思います。

今回みたいにニュースアプリで情報が配信されたりして、出張シェフの認知度が上がって、料理人やレストランで働く人の選択肢が増えるといいですね。

 

以上、「出張シェフのビジネスモデルに未来はあるのか?」でした!

それではまた!

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