プロジェクトを成功に導くために欠かせないWBS(Work Breakdown Structure)。
でも、いざ作ろうとすると「どこから手をつければいいか分からない」と悩んでいませんか?
実は、WBSの作成には明確な手順があり、それを知るだけで誰でも効果的なWBSを作ることができます。
本記事では、WBSの作り方を3つのステップに分けて解説し、すぐに使えるテンプレートもご紹介します。
WBSとは?なぜプロジェクト管理に必要なのか
WBS(Work Breakdown Structure:作業分解構成図)は、プロジェクトの成果物やタスクを階層的に分解して整理する手法です。
大きなプロジェクトを小さな作業単位に分解することで、以下のようなメリットが得られます:
- プロジェクトの全体像が把握しやすくなる
- 作業の抜け漏れを防げる
- スケジュール作成が容易になる
- 責任範囲が明確になる
- 進捗管理がしやすくなる
特に、複数人でプロジェクトを進める場合、WBSがあることで「誰が」「いつまでに」「何をするか」が明確になり、スムーズな進行が可能になります。
WBSの作り方3ステップ
それでは、実際にWBSを作成する手順を見ていきましょう。以下の3つのステップで、効果的なWBSを作ることができます。
ステップ1:プロジェクトの最終成果物を定義する
まず最初に、プロジェクトで達成したいゴール(最終成果物)を明確にします。
例えば、「新商品のWebサイト制作」がプロジェクトの場合、最終成果物は「公開可能な状態のWebサイト」となります。
ポイントは、できるだけ具体的に定義することです。「Webサイト」だけでなく、「商品紹介、購入機能、会員登録機能を持つレスポンシブ対応のWebサイト」のように、必要な機能や要件も含めて定義しましょう。
ステップ2:大きな要素に分解する(第1レベル)
次に、最終成果物を実現するために必要な大きな要素に分解します。これが第1レベルの分解です。
Webサイト制作の例では、以下のように分解できます:
- 企画・要件定義
- デザイン制作
- システム開発
- コンテンツ制作
- テスト・公開作業
この段階では、プロジェクトの主要なフェーズや成果物のカテゴリーで分けることがコツです。
ステップ3:さらに細かい作業に分解する(第2レベル以降)
第1レベルの各要素を、さらに具体的な作業レベルまで分解していきます。
例えば、「デザイン制作」を分解すると:
- デザインコンセプト策定
- 競合サイト調査
- ターゲットユーザー分析
- コンセプト案作成
- ワイヤーフレーム作成
- サイトマップ作成
- 各ページレイアウト設計
- 画面遷移図作成
- デザインカンプ制作
- トップページデザイン
- 下層ページデザイン
- スマートフォン版デザイン
分解の目安は「1人が数日で完了できる作業単位」です。あまり細かく分解しすぎると管理が煩雑になるので注意しましょう。
すぐに使える!WBSテンプレート
以下は、様々なプロジェクトで活用できる汎用的なWBSテンプレートです:
レベル1 | レベル2 | レベル3 | 担当者 | 期限 |
---|---|---|---|---|
1. プロジェクト準備 | 1.1 要件定義 | 1.1.1 ヒアリング実施 | ||
1.1.2 要件整理 | ||||
1.2 計画策定 | 1.2.1 スケジュール作成 | |||
1.2.2 予算計画 | ||||
2. 実行フェーズ | 2.1 [作業カテゴリー] | 2.1.1 [具体的作業] | ||
3. 完了・引き渡し | 3.1 最終確認 | 3.1.1 品質チェック | ||
3.2 納品 | 3.2.1 成果物引き渡し |
このテンプレートをベースに、自分のプロジェクトに合わせてカスタマイズして使用してください。
WBS作成のコツと注意点
効果的なWBSを作成するために、以下のポイントを押さえておきましょう:
100%ルールを守る
WBSに含まれる作業を全て足し合わせると、プロジェクト全体の100%になるようにします。作業の抜け漏れがないか、重複がないかを確認しましょう。
動詞ではなく名詞で表現する
WBSの各要素は「〜を作成する」という動詞形ではなく、「〜の作成」という名詞形で表現します。これにより、成果物に焦点を当てた構造になります。
適切な粒度で分解する
細かすぎても粗すぎても管理が困難になります。一般的には、以下の基準で分解するのがおすすめです:
- 作業期間:2〜10日程度で完了できる単位
- 工数:8〜80時間程度の作業量
- 管理可能性:進捗を把握しやすい単位
チームで作成する
WBSは、プロジェクトマネージャーが一人で作るのではなく、チームメンバーと一緒に作成することが重要です。実際に作業を行う人の意見を取り入れることで、より現実的で抜け漏れのないWBSになります。
WBS作成を効率化するツールの活用
WBSの作成と管理を効率化するには、専用のツールを活用するのがおすすめです。特に、プロジェクト管理機能と連携できるツールを使えば、WBSから直接タスク管理やスケジュール管理につなげることができます。
表計算ソフトの限界
多くの方がExcelなどの表計算ソフトでWBSを作成していますが、以下のような課題があります:
- 更新のたびに手作業で修正が必要
- 複数人での同時編集が困難
- 進捗管理との連携が取れない
- 変更履歴の管理が煩雑
プロジェクト管理ツールでWBSを活用
こうした課題を解決するのが、プロジェクト管理ツールの活用です。例えば、Backlog完全ガイド記事で詳しく紹介されているBacklogのようなツールを使えば、WBSの作成から実際のタスク管理まで一貫して行えます。
プロジェクト管理ツールを使うメリット:
- WBSの階層構造をそのままタスクとして登録できる
- 担当者の割り当てや期限設定が簡単
- 進捗状況がリアルタイムで確認できる
- チーム全員で最新情報を共有できる
- ガントチャートで視覚的に管理できる
特にBacklogは、親子課題機能を使ってWBSの階層構造をそのまま表現できるため、WBSベースのプロジェクト管理に最適です。
WBS作成の実践例:イベント企画プロジェクト
実際のプロジェクトを例に、WBSの作成過程を見てみましょう。ここでは「社内向け技術カンファレンスの開催」を例に説明します。
最終成果物の定義
「100名規模の社内技術カンファレンスを成功裏に開催し、参加者満足度80%以上を達成する」
第1レベルの分解
- 企画・準備フェーズ
- 告知・集客フェーズ
- 当日運営フェーズ
- 事後フォローフェーズ
第2レベル以降の分解(一部抜粋)
1. 企画・準備フェーズ
- 1.1 企画立案
- 1.1.1 開催目的の明確化
- 1.1.2 ターゲット層の設定
- 1.1.3 開催概要の決定
- 1.2 会場手配
- 1.2.1 会場候補のリストアップ
- 1.2.2 会場視察
- 1.2.3 会場予約・契約
- 1.3 登壇者調整
- 1.3.1 登壇者候補の選定
- 1.3.2 登壇依頼・交渉
- 1.3.3 発表内容の調整
このように、実際のプロジェクトに当てはめてWBSを作成することで、必要な作業が明確になり、計画的にプロジェクトを進めることができます。
WBS作成後の活用方法
WBSを作成したら、それを実際のプロジェクト管理に活用していきましょう。
スケジュールの作成
WBSの各作業に対して、以下を設定します:
- 作業の前後関係(依存関係)
- 所要時間の見積もり
- 開始日と終了日
これにより、プロジェクト全体のスケジュールが作成できます。
リソースの割り当て
各作業に対して、担当者やリソースを割り当てます。この際、リソースの負荷が偏らないよう調整することが重要です。
進捗管理
WBSの各作業の進捗を定期的に確認し、プロジェクト全体の進捗を把握します。遅れが発生した場合は、早期に対策を検討できます。
変更管理
プロジェクト中に変更が発生した場合、WBSを更新して影響範囲を明確にします。これにより、変更による影響を最小限に抑えることができます。
よくある失敗と対策
WBS作成でよくある失敗パターンと、その対策を紹介します。
失敗1:作業の粒度がバラバラ
対策:チーム内で粒度の基準を決めて統一する。目安として「1人が1週間程度で完了できる作業」という基準を設けると良いでしょう。
失敗2:成果物ではなくプロセスで分解している
対策:「設計する」「開発する」といった動作ではなく、「設計書」「プログラム」といった成果物ベースで分解する。
失敗3:更新されずに形骸化する
対策:定期的な見直しのタイミングを決めて、WBSを生きたドキュメントとして管理する。プロジェクト管理ツールを使えば、自動的に最新状態が維持されます。
まとめ:WBSでプロジェクトを成功に導こう
WBSの作成は、プロジェクトを成功に導くための第一歩です。本記事で紹介した3つのステップに従えば、誰でも効果的なWBSを作成できます。
重要なポイントをおさらいすると:
- 最終成果物を明確に定義する
- 大きな要素から順に分解していく
- 適切な粒度(1週間程度の作業単位)で止める
- チーム全員で作成・共有する
- 定期的に更新・メンテナンスする
また、WBSの作成と管理を効率化するために、プロジェクト管理ツールの活用も検討してみてください。Backlog完全ガイド記事では、WBS管理に適したツールの選び方や活用方法について詳しく解説しています。
WBSをマスターして、プロジェクトの成功率を大幅に向上させましょう。まずは小さなプロジェクトから始めて、徐々に大規模なプロジェクトへと適用範囲を広げていくことをおすすめします。
プロジェクト管理に不安を感じている方は、Backlogの無料プランを試してみるのも良いでしょう。WBSの作成から実際のタスク管理まで、一連の流れを体験できます。