個人事業主として確定申告をしていると、必ず遭遇するのが「事業主貸」と「事業主借」の仕訳です。
「これって事業主貸?それとも事業主借?」
「マネーフォワード確定申告ではどうやって入力すればいいの?」
このような疑問を抱えている方も多いのではないでしょうか。
私自身、個人事業主として5年間マネーフォワード確定申告を使い続けていますが、最初は事業主貸・事業主借の使い分けに本当に悩みました。
しかし、基本的な考え方を理解し、よくあるパターンを覚えてしまえば、実はそれほど難しくありません。
この記事では、マネーフォワード確定申告での事業主貸・事業主借の具体的な使い方を、実際の仕訳例とともに詳しく解説します。
読み終わる頃には、迷うことなくスムーズに仕訳ができるようになっているはずです。
事業主貸・事業主借とは?個人事業主が知っておくべき基本知識
事業主貸と事業主借は、個人事業主特有の勘定科目です。法人では使用しません。なぜ個人事業主だけがこの勘定科目を使うのか、その理由から理解していきましょう。
個人事業主の会計が複雑になる理由
個人事業主は、事業用のお金と個人用のお金が混在しやすいという特徴があります。例えば、事業用の銀行口座から生活費を引き出したり、個人のクレジットカードで事業用の備品を購入したりすることがあります。
このような「事業と個人の間のお金の動き」を正確に記録するために生まれたのが、事業主貸と事業主借という勘定科目なのです。
事業主貸と事業主借の違い
事業主貸(じぎょうぬしかし)は、事業のお金を個人的な用途に使ったときに使用します。簡単に言えば「事業から個人へお金が流れた」ときの勘定科目です。
- 事業用口座から生活費を引き出した
- 事業用口座から国民健康保険料を支払った
- 事業用口座から住民税を支払った
- 事業用口座から子供の学費を支払った
事業主借(じぎょうぬしかり)は、個人のお金を事業用途に使ったときに使用します。「個人から事業へお金が流れた」ときの勘定科目です。
- 個人の財布から事業用の消耗品を購入した
- 個人のクレジットカードで事業用のソフトウェアを購入した
- 個人の預金から事業用口座へ資金を移動した
- 個人で立て替えた交通費を精算した
なぜ事業主貸・事業主借の理解が重要なのか
私が税理士さんから聞いた話では、確定申告で修正が必要になるケースの約3割が、事業主貸・事業主借の誤った仕訳が原因だそうです。特に以下のような間違いが多いとのことでした。
- 生活費の引き出しを「経費」として処理してしまう
- 個人の支出を事業の経費に混入させてしまう
- 事業主貸・事業主借を使わずに、不適切な勘定科目で処理してしまう
これらの間違いは、最悪の場合、税務調査で指摘を受ける可能性があります。正しい処理を身につけることで、安心して確定申告を行えるようになります。
マネーフォワード確定申告での事業主貸・事業主借の具体的な入力方法
それでは、実際にマネーフォワード確定申告を使って、事業主貸・事業主借をどのように入力するのか、具体例とともに見ていきましょう。
事例1:事業用口座から生活費30万円を引き出した場合
最も頻繁に発生するパターンです。私も毎月、事業用口座から生活費を引き出していますが、以下の手順で処理しています。
マネーフォワード確定申告での入力手順:
- 「取引」→「仕訳帳」を選択
- 「新規登録」をクリック
- 日付:引き出した日を入力
- 借方勘定科目:「事業主貸」を選択
- 借方金額:300,000円を入力
- 貸方勘定科目:「普通預金」を選択(補助科目で該当する口座を選択)
- 貸方金額:300,000円を入力
- 摘要:「生活費」と入力
この仕訳により、事業用口座の残高が30万円減少し、その分が事業主貸として記録されます。
事例2:個人のクレジットカードで事業用パソコン15万円を購入した場合
個人のクレジットカードで事業用の備品を購入することもよくあります。この場合は事業主借を使用します。
マネーフォワード確定申告での入力手順:
- 「取引」→「仕訳帳」を選択
- 「新規登録」をクリック
- 日付:購入日を入力
- 借方勘定科目:「工具器具備品」を選択(10万円以上のパソコンの場合)
- 借方金額:150,000円を入力
- 貸方勘定科目:「事業主借」を選択
- 貸方金額:150,000円を入力
- 摘要:「パソコン購入(個人カード)」と入力
なお、10万円未満の場合は「消耗品費」として一括経費計上できます。
事例3:事業用口座から国民健康保険料を支払った場合
社会保険料は事業の経費にはなりませんが、所得控除の対象となります。事業用口座から支払った場合は、事業主貸で処理します。
マネーフォワード確定申告での入力手順:
- 借方勘定科目:「事業主貸」
- 借方金額:支払った保険料額
- 貸方勘定科目:「普通預金」(該当する口座)
- 貸方金額:支払った保険料額
- 摘要:「国民健康保険料」
重要なポイントは、国民健康保険料や国民年金は「経費」ではなく「所得控除」として処理されるため、経費科目ではなく事業主貸を使用することです。
事例4:自宅兼事務所の家賃を個人口座から支払い、事業分を按分する場合
自宅の一部を事務所として使用している場合、家賃の一部を経費計上できます。例えば、家賃10万円のうち30%を事業用として使用している場合の処理方法です。
マネーフォワード確定申告での入力手順:
- 借方勘定科目:「地代家賃」
- 借方金額:30,000円(10万円×30%)
- 貸方勘定科目:「事業主借」
- 貸方金額:30,000円
- 摘要:「家賃(事業使用分30%)」
マネーフォワード確定申告には家事按分機能があるため、按分比率を設定しておけば自動計算してくれます。
よくある間違いと正しい処理方法
私が過去に間違えた経験や、税理士さんから聞いた「よくある間違い」をまとめました。
間違い1:プライベートの飲食代を接待交際費で処理
- 誤:友人との飲み会代を接待交際費で計上
- 正:事業に関係ない支出は計上しない(または事業主貸で処理)
間違い2:生活費の引き出しを仮払金で処理
- 誤:生活費を「仮払金」として処理
- 正:「事業主貸」で処理
間違い3:個人の買い物と事業の買い物を一緒に精算
- 誤:レシート合計額をそのまま経費計上
- 正:事業分のみを経費計上し、個人分は除外
これらの処理を正確に行うためには、マネーフォワード クラウド確定申告の基本的な使い方をマスターしておくことが重要です。
他の会計ソフトとの比較:マネーフォワード確定申告の優位性
事業主貸・事業主借の処理において、マネーフォワード確定申告には他の会計ソフトにはない優れた機能があります。
自動仕訳ルールの設定が簡単
マネーフォワード確定申告では、よく使う取引パターンを「自動仕訳ルール」として登録できます。例えば、特定の口座から一定額の引き出しがあった場合、自動的に「事業主貸」として処理するルールを設定できます。
私は以下のようなルールを設定しています:
- 毎月25日の30万円の引き出し→「事業主貸(生活費)」
- 「国民健康保険」という文字列を含む支払い→「事業主貸」
- 個人カードからの引き落とし→「事業主借」の候補として表示
スマートフォンアプリでの入力が便利
外出先で個人の財布から事業用の支出をした場合、その場でスマートフォンから入力できます。レシートを撮影すれば自動的に金額や日付を読み取ってくれるため、事業主借の処理も簡単です。
税理士との連携がスムーズ
マネーフォワード確定申告は多くの税理士事務所で採用されているため、顧問税理士がいる場合でもデータ共有がスムーズです。事業主貸・事業主借の処理について相談したい場合も、画面を共有しながら指導を受けられます。
他の会計ソフトとの比較表
主要な会計ソフトの事業主貸・事業主借関連機能を比較してみました(2024年12月時点)。
- マネーフォワード確定申告:自動仕訳ルール◎、スマホ入力◎、料金月額980円〜
- freee会計:自動仕訳ルール○、スマホ入力◎、料金月額1,180円〜
- 弥生会計オンライン:自動仕訳ルール△、スマホ入力○、料金年額26,000円〜
特に自動仕訳ルールの設定のしやすさと、月額料金の安さでマネーフォワード確定申告が優れています。
まとめ:事業主貸・事業主借をマスターして確定申告をスムーズに
事業主貸と事業主借は、個人事業主にとって避けて通れない重要な勘定科目です。基本的な考え方は以下のとおりです。
- 事業主貸:事業→個人へのお金の流れ(生活費、個人的な支払いなど)
- 事業主借:個人→事業へのお金の流れ(個人での立替、個人資金の投入など)
マネーフォワード確定申告を使えば、これらの処理を効率的に行えます。自動仕訳ルールを活用すれば、毎月の定型的な処理はほぼ自動化できるでしょう。
まずは、今回紹介した4つの基本パターンから始めてみてください。慣れてきたら、自分の事業に合わせた仕訳ルールを設定していけば、確定申告の作業時間を大幅に短縮できます。
もしまだマネーフォワード確定申告を使っていない方は、1か月無料で試せるので、実際に触ってみることをおすすめします。事業主貸・事業主借の処理だけでなく、確定申告全体の効率化につながるはずです。