出典: Google Workspace Updates Blog
元記事の投稿日: 2025年6月30日
人事システムやMicrosoft Entra ID(旧Azure AD)とGoogleグループを連携させている管理者の方。
連携元のシステムが「正」のはずなのに、Google側で誰かがメンバーを追加・削除してしまい、データに不整合が生じてしまった。
あるいは、全社通知用の重要なメーリングリストのメンバーを、グループのオーナーがうっかり変更してしまい、インシデントになりかけた。
そんな「意図しない変更」による混乱やセキュリティリスクを防ぐための、強力な新機能が正式にリリースされました。
何が変わった?「このグループは変更禁止!」Googleグループのロック機能とは?
今回のアップデートで一般提供が開始されたのは、Googleグループに**「ロック済み(Locked)」**というラベルを付け、グループの設定やメンバーシップに対する変更を厳しく制限する機能です。
これは、グループにデジタルな「南京錠」をかけるようなもの。一度ロックされると、たとえそのグループのオーナーやマネージャーであっても、メンバーの追加・削除やグループ名の変更といった重要な操作ができなくなります。
管理コンソール上では、ロックされたグループにはっきりと「ロック済み」というラベルが表示され、「このグループは更新できません – 外部のIDシステムによって管理されている可能性があります。」というメッセージで、その状態が誰の目にも明らかになります。
なぜ重要?日本の管理者にとっての具体的なメリット
この「ロック機能」は、特に組織のガバナンスやシステムの整合性を重視する日本の管理者にとって、非常に大きな価値を持ちます。
1. 外部システムとの完璧な同期を実現
多くの企業では、人事システムやEntra ID、OktaといったID管理(IdP)サービスを「マスターデータ(正)」として、Googleグループのメンバーを管理しています。しかし、これまではGoogle側で手動変更ができてしまうため、同期エラーやデータの不整合が発生する原因となっていました。
ロック機能を使えば、Googleグループを外部システムの「忠実な写し」として維持できます。Google側での意図しない変更を完全にブロックすることで、データの整合性を保ち、安定したシステム連携を実現します。
2. 全社メーリングリストなど重要グループの保護
all-employees@company.jp や executives@company.jp といった、全社的に極めて重要なグループ。これらのメンバーシップが誤って変更されると、情報伝達の混乱や情報漏洩に繋がりかねません。
これらのグループを「ロック」しておくことで、たとえグループの管理を任されている現場のオーナーであっても、メンバーを勝手に変更できなくなります。これにより、ヒューマンエラーによる重大なインシデントを未然に防ぎ、管理者も安心して運用を任せられます。
3. 明確なガバナンスと職務分掌の徹底
「このグループのメンバー管理は、人事部のマスターデータにのみ従う」といった、組織のルールをシステム的に強制できます。誰がグループ構造を変更できるのかという権限がより明確になり、IT統制の強化に直結します。
「ロック」で制限されること・されないこと
ロック機能は強力ですが、グループのすべての機能が停止するわけではありません。何ができて、何ができなくなるのかを正確に理解することが重要です。
【制限される主な操作】
メンバーの追加、削除、招待
メンバーの役割(オーナー、マネージャー)の変更
グループの名前、説明、メールアドレス、エイリアスの変更
グループの削除
【影響を受けない主な操作】
投稿権限の設定(誰がメールを投稿できるか)
メンバー一覧の公開設定
メンバーへの連絡権限
既存の有効期限設定によるメンバーシップの自動削除
つまり、グループの「構造」は固く守られますが、メーリングリストとしての「コミュニケーション機能」はこれまで通り利用できる、ということです。
管理者向け:導入と運用のポイント
対象プラン:
Google Workspace Enterprise Standard / Plus、Enterprise Essentials Plus、Education Standard / Plus、およびCloud Identity Premiumの各プランで利用可能です。誰がロックできる?
特権管理者、グループ管理者、または「ロック済みラベルの管理」権限を持つカスタムロールを持つ管理者が、グループのロック/ロック解除を行えます。ロックされたグループを編集できるのは誰?
デフォルトでは、特権管理者とグループ管理者のみが、ロックされたグループのメンバーシップなどを変更できます。
さらに細かく制御したい場合は、「条件付き」の管理者ロールを割り当てることで、「Aさんはロックされていないグループだけ編集できる」といった柔軟な権限設定も可能です。
まとめ
Googleグループの「ロック機能」は、外部システムとの連携を安定させ、重要グループを意図しない変更から守るための、管理者にとって待望の機能です。
これまで同期の不整合やヒューマンエラーに悩まされてきた管理者の皆様は、この機能を活用することで、より安全で信頼性の高いグループ管理を実現できます。ぜひ、自社の最も重要なグループから「ロック」の適用を検討してみてはいかがでしょうか。