本記事はGoogle Workspace Updatesブログ( https://workspaceupdates.googleblog.com/ )の情報を基に、2025年9月18日に作成されました。
Google Workspaceをお使いの皆さん、こんにちは。
最先端のAIアシスタント「Gemini」。
その能力を、さらに特定の目的や業務に合わせて、カスタマイズできる画期的な機能が「Gems」です。
「Gems」を使えば、あなたは、Geminiを、特定のトピックに関する「専門家」へと、育て上げることができます。
例えば、自社の製品マニュアルをすべて学習させ、どんな質問にも答えてくれる「製品エキスパートGem」。
あるいは、業界の最新動向レポートを読み込ませ、常に的確な市場分析を提供してくれる「マーケティングアナリストGem」。
さらには、会社の厳格なブランドガイドラインを叩き込み、常に一貫したトーン&マナーで、SNS投稿の文案を作成してくれる「ブランド広報担当Gem」。
このように、Gemsは、AIを、汎用的なアシスタントから、あなたの業務に特化した、強力な「専門ツール」へと進化させます。
しかし、その一方で、大きな課題がありました。
あなたが、多くの時間と工夫を凝らして育て上げた、その優秀な「専門家AI」は、これまで、あなた一人だけのものでした。チームの他のメンバーは、その恩恵を受けることができず、またゼロから、同じような専門家を、自分自身で育て直さなければならなかったのです。
この「ナレッジのサイロ化」は、組織全体のAI活用を妨げる、根本的な障壁でした。
この度、その壁を完全に取り払い、組織のAI活用を、個人の「点」から、チームの「面」へと、飛躍的に拡大させる、待望の新機能が発表されました。今回は、あなたの育てた専門家AIを、チームの共有資産へと変える、「Gemsの共有」機能について、管理者向けの制御機能と合わせて、詳しく解説していきます。
新機能の核心:Google Driveと同じ感覚で、”AI”を共有する
今回のアップデートの核心は、非常にシンプルでありながら、そのインパクトは計り知れません。
それは、「ユーザーが、自分で作成し、カスタマイズした『Gem』を、組織内の他のユーザー、あるいは組織外のユーザーとも、共有できるようになった」という点にあります。
そして、最も注目すべきは、この共有機能が、私たちが日頃から慣れ親しんでいる、「Google Drive」と、全く同じ技術基盤と、インターフェースで、実現されていることです。
つまり、あなたがGoogleドキュメントやスプレッドシートを共有するのと、全く同じ、あの見慣れた「共有」ボタンとダイアログボックスを使って、あなたが育てた「専門家AI」そのものを、ファイルのように、手軽に、そして安全に、共有できるのです。
共有された相手は、そのGemを閲覧したり、実際に使ってみたり、あるいは、それを基に自分だけのコピーを作成して、さらにカスタマイズを加えたりすることが可能です。
なぜこれが重要なのか?組織のDXを加速させる3つの革命
この「Gemsの共有」は、単なる便利機能の追加ではありません。組織のAI活用、そしてナレッジマネジメントのあり方を、根底から変革する、3つの大きな革命をもたらします。
革命1:AI活用の「車輪の再発明」をなくし、組織全体の生産性を底上げする
これが、最も直接的で、強力なメリットです。
これまでの課題:
マーケティング部のAさんが、効果的なプロンプトを試行錯誤し、素晴らしい「広告コピーライターGem」を育て上げました。しかし、隣の席のBさんは、その存在を知らず、またゼロから、同じようなプロンプトの試行錯誤を繰り返していました。これは、組織全体で見れば、大きな「無駄」です。Gems共有で解決:
Aさんは、完成した「広告コピーライターGem」を、マーケティング部全員に共有します。Bさんや他のメンバーは、Aさんが築き上げた知見(最適化されたプロンプトや、学習させた資料)を、即座に活用し、初日から、質の高い成果物を生み出すことができます。
このように、個人の中に閉じていた「匠の技(プロンプトエンジニアリングのノウハウ)」が、共有可能な「組織の資産」へと変わることで、「車輪の再発明」という無駄な労力がなくなり、組織全体の生産性が、飛躍的に向上します。
革命2:部門特化型の「専門家AI」を、組織的に開発・展開できる
Gemsの共有は、トップダウンでの、戦略的なAI活用も可能にします。
活用例:法務部門
法務部のリーダーが、最新の契約書テンプレートや、法規制に関する資料を学習させた、「契約書レビュー支援Gem」を作成し、法務部のメンバー全員に共有。チーム全体のレビュー品質の標準化と、効率化を、同時に実現します。活用例:人事部門
人事部が、会社の就業規則や、福利厚生に関する規定をすべて学習させた、「人事FAQボットGem」を作成し、全社員に公開。社員は、いつでもAIに質問でき、人事担当者は、定型的な問い合わせ対応から解放されます。
革命3:イノベーションを促進し、AI活用文化を醸成する
共有されたGemは、他のメンバーにとって、新たなインスピレーションの源となります。
活用例:
営業部のCさんが、技術部門から共有された「製品技術仕様Gem」を見て、「これに、うちの部の顧客の成功事例を組み合わせれば、もっと強力な『提案書作成支援Gem』が作れるかもしれない」とひらめく。
このように、優れたGemが共有され、それを基に、さらに新しいGemが生まれる、という、イノベーションの連鎖が、組織内に生まれます。これは、AIを「ただ使う」だけでなく、「賢く使いこなす」文化を、組織全体に根付かせるための、強力な触媒となるでしょう。
管理者必見!Drive連携による、強力で、使い慣れた管理機能
「便利そうだけど、社員が勝手に、会社の機密情報を学習させたGemを、社外の人間に共有してしまったら、どうするんだ!」
セキュリティを管理する立場の方は、当然、そう心配になるはずです。
ご安心ください。今回のアップデートで、最もエレガントな点。それは、Gemsの共有設定が、あなたの組織で、すでに運用されている、「Google Driveの共有設定」に、完全に準拠していることです。
管理者は、すでに持っているコントロールを、そのまま適用できる
ドメイン外への共有制限:
あなたの組織のDriveの共有設定が、「組織外への共有を禁止」に設定されていれば、Gemsも、自動的に、組織外へ共有することはできなくなります。OUやグループ単位での制御:
管理コンソールには、Gemsの共有機能そのものを、ドメイン全体、あるいは組織部門(OU)やグループ単位で、オン/オフできる、新しい専用の設定項目も用意されています。
これにより、管理者は、新しい管理画面を一から学習する必要なく、これまで培ってきた、Driveのセキュリティ管理のノウハウを、そのままGemsの管理にも適用できるのです。
利用する上で知っておきたい、共有の条件
共有可能なGemの条件:
Gemsの共有ボタンが有効になるのは、そのGemの「カスタムナレッジ」として、あなたのデバイスからアップロードされたファイル、または、Google Driveから追加されたファイルのみが、含まれている場合です。
コードフォルダや、メールといった、他の種類の情報源が追加されている場合、そのGemは共有できなくなり、共有ボタンはグレーアウトします。
まとめ
今回ご紹介した、Geminiアプリの「Gems共有」機能。
これは、AI活用を、個人の「職人技」から、組織の「科学」へと、進化させる、極めて重要なアップデートです。
あなたが育てた、優秀なAIという「知恵」を、ファイルのように、手軽に、そして安全に、チームで共有する。
この新しいコラボレーションの形が、あなたの組織のナレッジマネジメントと、生産性を、新たな次元へと引き上げます。
ぜひ、この未来のナレッジ共有の形を、あなたのチームで、実現してみてください。