本記事はGoogle Workspace Updatesブログ( https://workspace.googleblog.com/ )の情報を基に、2025年9月24日に日に作成されました。
Google Workspaceのセキュリティを日々管理されている、すべての管理者の皆様、こんにちは。
あなたの組織では、毎日、何千、何万という「アクティビティ(活動)」が、クラウド上で発生しています。
誰かが、新しいファイルを作成し、別の誰かが、それを社外と共有する。あるユーザーは、新しいアプリをインストールし、またあるユーザーは、不審なログインを試みる。
この、膨大な活動の奔流の中から、組織にとって、本当に重要で、注意を払うべき「イベント」を、いかにして見つけ出し、監視するか。これは、現代のセキュリティ管理における、最も根源的で、そして最も困難な課題の一つです。
この課題に応えるため、Google Workspaceの管理コンソールには、これまで、「レポートルール」と「アクティビティルール」という、2つの、似ているようで、少し役割の違う、ルール作成機能が存在していました。
しかし、その2つの機能の存在が、かえって、「どちらを、どんな時に使えばいいのか、分かりにくい」「設定が分散していて、管理が煩雑だ」といった、管理者自身の混乱を招いていた、という側面も、否定できませんでした。
この度、その長年の「分かりにくさ」を解消し、管理者の皆様のセキュリティ監視体験を、よりシンプルで、より直感的で、そして、より強力なものへと進化させる、重要な機能統合が発表されました。
今回は、これからのGoogle Workspaceにおける、セキュリティルールの新しいスタンダードとなる、「レポートルール」から「アクティビティルール」への統合について、あなたの組織のライセンスエディションごとに、どのような変化とメリットがあるのかを、詳しく解説していきます。
これまでの2つのルール:その違いと課題
今回の統合の重要性を理解するために、まずは、これまでの2つのルールが、どのようなものであったかを、おさらいしましょう。
レポートルール:
役割: 主に、「何が起こったか」を、管理者に「知らせる」ためのルールでした。例えば、「誰かが、特定のキーワードを含むファイルを社外共有したら、メールで通知する」といった、事後の「報告」が、その主な目的でした。
アクティビティルール:
役割: 主に、Enterpriseプランなどで利用できる、より高度な機能で、「何が起こるか」を、管理者が「制御する」ためのルールでした。例えば、「一人のユーザーが、1時間以内に100個以上のファイルをダウンロードしたら、そのアカウントを自動で一時停止する」といった、プロアクティブな「アクション」を実行することが、その主な目的でした。
この2つのルールの存在は、管理者に、ある種の「認知的な負担」を強いていました。「このイベントを監視したいんだけど、これは、レポートルールで作るべきか、それともアクティビティルールなのか?」という、迷いです。
何が変わるのか?:2つの川が、一つの大河になる
今回のアップデートは、この2つの異なるルール作成のワークフローを、「アクティビティルール」という、一つの、より強力な機能へと、完全に統合・簡素化するものです。
これにより、管理者は、もはや、どちらのルールを使うべきか、迷う必要はなくなります。セキュリティに関する、あらゆるルールの作成と管理は、これからは、すべて、この新しい「アクティビティルール」の画面から、一元的に行うことになります。
管理コンソール内の、「レポートルール」という名称は、様々な場所で「アクティビティルール」へと、置き換えられます。
【Enterpriseプラン向け】あなたの「アクティビティルール」は、さらに強力になる
まず、Google WorkspaceのEnterprise Plusや、Education Plusといった、上位エディションをご利用の管理者にとって、この統合は、既存のアクティビティルールの機能を、さらに拡張し、強化するものです。
新しい能力:「しきい値なし」ルールの作成
これまでのアクティビティルールは、基本的に、「〇回以上のアクションがあったら」という、「しきい値(threshold)」を設定することが、前提となっていました。
今回の統合により、この前提が取り払われ、「しきい値なし」、すなわち、「そのイベントが、たった1回でも発生したら、即座にトリガーされる」という、新しいモードのルールが、作成できるようになります。
なぜ、これが重要なのか?
これは、実質的に、従来の「レポートルール」が持っていた、「発生の都度、通知する」という能力を、アクティビティルールの枠組みの中で、完全に実現できるようになったことを意味します。
活用例:最重要機密ファイルへのアクセス監視
「『次期経営計画』という名前のファイルに、誰かがアクセスした、その瞬間に、セキュリティチームのChatスペースに、リアルタイムで通知を送る」といった、極めて機密性の高いイベントに対する、即時性の高い監視が、可能になります。
これまでレポートルールとアクティビティルールに分散していた機能が、すべて、この一つの強力なルールエンジンの中で、実現できるようになったのです。
【Businessプラン / Education Fundamentals向け】あなたの「レポートルール」が、アップグレードされる
次に、Google WorkspaceのBusiness Standardや、Education Fundamentalsといった、これまで「レポートルール」のみを利用可能だったエディションをご利用の管理者にとって、今回の変更は、実質的な「無料アップグレード」を意味します。
何が起こるのか?
あなたの組織で、これまで作成してきた、すべての「レポートルール」は、システムによって、自動的に、新しい「アクティビティルール」へと、変換・移行されます。
どんなメリットがあるのか?
この移行により、あなたは、これまで利用できなかった、2つの、非常に便利な新機能を、手に入れることができます。
通知頻度の、きめ細かな制御:
これまでは、ルールに合致するイベントが発生するたびに、通知が送られてきていました。活発な組織では、これが「アラート疲れ」の原因となることもありました。
新しいアクティビティルールでは、「通知の頻度」を、柔軟に設定できます。「1時間に1回」「1日に1回」といった形で、通知をまとめることで、アラートの洪水に埋もれることなく、重要な情報だけを、効率的に受け取ることができるようになります。より詳細で、分かりやすいアラート:
新しいアクティビティルールから送られてくるアラートは、これまでよりも、内容が詳細で、何が起こったのかを、より分かりやすく説明してくれるようになります。
ただし、上位エディションで利用可能な、「しきい値の設定」や、「アカウントの停止」といった、プロアクティブな「アクション」の実行は、これらのエディションでは、引き続き利用できません。あくまで、「通知」機能が、より高度化される、とお考えください。
【全管理者向け】権限に関する重要な自動変更
この機能統合に伴い、管理者の「権限」に関しても、重要な変更が、自動的に行われます。
変更内容:
これまで、「レポート」の閲覧権限を持っていたカスタム管理者ロールに対して、システムは、自動的に、「アクティビティルールの表示」権限と、「アクティビティルールの管理」権限を、割り当てます。影響:
これにより、レポートを閲覧できた管理者は、シームレスに、新しいアクティビティルールの画面にも、アクセスできるようになります。特権管理者は、デフォルトで、これらの権限を持っています。
まとめ
今回ご紹介した、「レポートルール」から「アクティビティルール」への、機能統合。
これは、Google Workspaceのセキュリティ管理における、「複雑さ」という、最大の敵を取り除くための、非常に重要な一歩です。
管理者にとって、よりシンプルで、より直感的で、そして、より一貫性のある、ルール作成体験を提供する。
そして、その統合されたプラットフォームの上で、すべてのエディションの管理者に対して、それぞれのニーズに合った、より強力な監視能力を提供する。
この思慮深い改善は、日々のセキュリティ運用に追われる、すべての管理者の皆様の、業務負荷を軽減し、よりプロアクティブなセキュリティ体制の構築を、力強く後押ししてくれることでしょう。
ぜひ、新しくなった「アクティビティルール」の画面を開き、そのシンプルさと、パワフルさを、あなたの目で、確かめてみてください。