本記事はGoogle Workspace updatesブログ( https://workspace.googleblog.com/ )の情報を基に、2025年9月30日に作成されました。
Google Workspaceを大規模に運用されている、企業のIT管理者、特に、ネットワークインフラを担当されている皆様、こんにちは。
全社会議や、大規模なオンラインセミナー。
数百、数千の従業員が、一斉に、高画質なライブストリームを視聴する際、あなたの会社のネットワーク帯域に、どれほどの負荷がかかっているか、想像したことはありますか。
この、爆発的なトラフィックの集中は、社内ネットワーク全体のパフォーマンスを低下させ、最悪の場合、業務に支障をきたす、深刻なリスクとなり得ます。
この課題を解決するため、Google Meetには、「eCDN(Enterprise Content Delivery Network)」という、非常に強力な機能が用意されています。eCDNを有効にすると、視聴者同士が、ピアツーピア(P2P)で、映像データを、バケツリレーのように共有し合うことで、インターネットへのトラフィックを、劇的に削減することができます。
そして、このeCDNの動作を、組織の複雑なネットワーク構成に合わせて、きめ細かく制御するための鍵となるのが、「カスタムルール」です。
しかし、その「カスタムルール」の、これまでの動作には、一部、直感的でない、分かりにくい部分があり、管理者の皆様を、悩ませていました。
この度、その長年の「分かりにくさ」を解消し、管理者の皆様のeCDN運用体験を、よりシンプルで、より予測可能なものへと進化させる、重要な改善が、いくつか発表されました。
今回は、あなたの組織の、ネットワーク帯域制御を、新たなレベルへと引き上げる、Meet eCDNの、カスタムルールの改善点について、詳しく解説していきます。
変更点1:IP範囲の重複ルールが、”上から順”の、シンプルな評価に
まず、最も重要な変更点です。これは、カスタムルールで、「IPアドレスの範囲が、重複するルール」を設定している場合にのみ、影響があります。
これまでの課題:分かりにくかった、「ブロック」の、絶対的な優先順位
eCDNのカスタムルールでは、「このIPアドレスの範囲は、ピアリングを許可する(allowed)」「この範囲は、ブロックする(blocked)」といった、ルールを、リスト形式で設定します。
これまでの評価ロジックには、一つ、特殊な大原則がありました。それは、「もし、あるIPアドレスが、『許可』と『ブロック』の両方のルールに、同時に合致した場合、常に、『ブロック』が、優先される」というものです。
この「ブロック優先」の原則は、リストの上から何番目に、許可ルールがあろうとも、それを覆してしまうため、ルールの結果が、非常に予測しにくい、という問題がありました。
新しい挙動:シンプルで、予測可能な、「最初に見つかったルールが、勝ち」
今回のアップデートで、この、分かりにくかった「ブロック優先」の原則が、撤廃されます。
そして、新しい評価ロジックは、極めて、シンプルになります。
「ルールリストを、上から下に、順番にチェックしていき、最初に見つかった、合致するルール(それが許可であろうと、ブロックであろうと)を、適用する」
この、「上から順」という、誰にとっても、直感的で、分かりやすいロジックに変更されることで、管理者は、ルールの結果を、自信を持って、予測することができるようになります。
具体的なシナリオで、変化を見てみましょう
ある視聴者のIPアドレスが、「10.0.0.30」だったとします。
ルールリスト:
10.0.0.0 – 10.0.0.255: 許可
10.0.0.0 – 15.0.0.0: ブロック
これまでの結果 (Before):
視聴者は、「ブロック」されていました。なぜなら、「許可」と「ブロック」の両方に合致し、「ブロック」が優先されるからです。新しい結果 (After):
視聴者は、「許可」されます。なぜなら、リストを上からチェックしていき、最初に見つかったルールが、「許可」だからです。
【管理者必見!】ルールの順序が、これまで以上に、重要になります
この変更に伴い、管理者が、必ず、意識すべき、新しいベストプラクティスが生まれます。
それは、「より小さい(具体的な)IPアドレスの範囲を、それを含む、より大きい(包括的な)範囲よりも、リストの『上』に、記述する」ということです。
上記の例で言えば、より具体的な「10.0.0.0 – 10.0.0.255」のルールを、より包括的な「10.0.0.0 – 15.0.0.0」のルールよりも、上に置くことが、意図した通りの制御を行うための、鍵となります。
変更点2:複数のプライベートIPアドレスに、完全対応
次に、最近のネットワーク環境の変化に対応するための、重要な改善です。これは、従業員のデバイスが、複数のプライベートIPアドレス(通常は、IPv4とIPv6の両方)を持っている場合にのみ、影響があります。
これまでの課題
これまでのeCDNクライアントは、デバイスに複数のIPアドレスが設定されていても、常にIPv4を優先し、一つのIPアドレスしか、カスタムルールの評価に、使用していませんでした。これにより、IPv6で定義されたルールが、意図通りに適用されない、という問題がありました。
新しい挙動:すべてのIPアドレスを、評価対象に
今回のアップデートで、この挙動が変更され、デバイスが持つ、すべてのプライベートIPアドレス(IPv4とIPv6の両方)が、カスタムルールの評価に、使用されるようになります。
そして、いずれかのIPアドレスが、ルールリストに合致した、その最初のルールが、適用されます。
これにより、IPv4とIPv6が混在する、複雑な現代のネットワーク環境でも、より正確で、網羅的な、帯域制御が、可能になります。
その他の改善点
1. 「ランダムピアリングポリシー」の名称変更
これまで「ランダムピアリングポリシー」と呼ばれていたポリシーが、より、その実態に即した、「テストピアリングポリシー(Testing peering policy)」へと、名称が変更されます。このポリシーは、その名の通り、主に、テスト目的での利用を意図しており、本番環境での、完全なパフォーマンスを、保証するものではありません。
2. Meet品質ツールの改善
Meetのネットワーク品質を、詳細に分析できる「Meet品質ツール」のeCDNネットワークテーブルに、これまで表示されていなかった、「テストピアリングポリシー」が適用された視聴者も、表示されるようになります。これにより、テスト段階での、パフォーマンス分析が、より容易になります。
まとめ
今回ご紹介した、Google Meet eCDNの、カスタムルールに関する、一連の改善。
ルール評価ロジックの、シンプル化
複数IPアドレスへの、完全対応
これらは、日々のネットワーク管理に、頭を悩ませる、IT管理者の皆様にとって、まさに「かゆいところに手が届く」、非常に価値のある、アップデートです。
ルールの挙動が、より直感的で、予測可能になることで、設定ミスが減り、管理者の運用負荷が、大幅に軽減されます。
そして、複雑化する、現代のネットワーク環境にも、より正確に対応できるようになることで、eCDNという、強力な武器の、真の価値を、最大限に、引き出すことができるようになります。
ぜひ、この進化したeCDNのカスタムルールを活用して、あなたの組織の、大規模ライブストリーミングを、より安定で、より効率的なものへと、アップグレードしてください。