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開業届と青色申告承認申請書、あえて提出しない「白色申告」のメリットと選び方

個人事業主としての一歩を踏み出すとき、多くの情報サイトで「まずは開業届と青色申告承認申請書を提出しましょう」と解説されています。

確かに、青色申告の節税効果は非常に魅力的です。

しかし、その手続きの煩雑さや複式簿記というハードルを前に、躊躇してしまう方も少なくないのではないでしょうか。

実は、すべての人が最初から青色申告を目指す必要はありません。

本記事では、2025年11月時点の情報に基づき、あえて「白色申告」を選ぶという選択肢に焦点を当て、そのメリットや具体的な選び方、そして将来的な青色申告への移行プランまでを詳しく解説します。

この記事を読めば、あなたに最適な申告方法が明確になり、余計な不安なく事業のスタートラインに立つことができるはずです。

「開業届は義務?」白色申告の基本とよくある誤解

個人事業主として活動を始める際、多くの人が「開業届」と「青色申告」をセットで考えていますが、その関係性やそれぞれの役割を正しく理解することが、最適な選択への第一歩です。まずは、白色申告の基本と、世間に広まる誤解を解き明かしていきましょう。

開業届の提出義務と「出さない」という選択

所得税法では、事業を開始した日から1ヶ月以内に「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」を税務署に提出することが定められています。これは法律上の義務とされていますが、実は提出しなかった場合の罰則規定は設けられていません。

そのため、「副業を始めたばかりで、まだ収入も不安定だから様子を見たい」という方が、すぐに開業届を提出しないケースも現実には存在します。しかし、開業届を提出しないことには、屋号での銀行口座が開設できない、小規模企業共済に加入できない、融資審査で不利になる可能性がある、といったデメリットも伴います。事業を本格化させる上での社会的信用を得るためには、提出が推奨される、と理解しておくと良いでしょう。

白色申告とは?青色申告との根本的な違い

確定申告の方法には、大きく分けて「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。開業届を提出し、特に「青色申告承認申請書」を提出しなければ、自動的に白色申告者となります。

両者の最も大きな違いは、「帳簿付けのルール」「税制上の優遇措置」です。

  • 白色申告: 簡易的な帳簿(単式簿記)で良く、日々の収支を家計簿のようにつけるだけで申告が可能です。その代わり、税制上の特別なメリットはありません。
  • 青色申告: 正規の簿記原則(原則として複式簿記)に従った詳細な帳簿付けが求められます。その手間と引き換えに、最大65万円の特別控除や赤字の3年間繰越など、大きな節税メリットが受けられます。

簡単に言えば、「シンプルで手間いらずな白色申告」と「複雑だが節税効果の高い青色申告」という関係性です。

「白色申告=損」は本当か?コストパフォーマンスで考える

「青色申告の65万円控除を使わないなんて損だ」という意見は非常に多く聞かれます。しかし、これは本当でしょうか?私は、必ずしもそうとは限らないと考えています。

ここで重要なのは、「時間や労力もコストである」という視点です。複式簿記をゼロから学び、会計ソフトを導入して日々入力する時間。もしあなたがその時間を本業やスキルアップ、あるいは営業活動に使ったとしたら、65万円の控除で得られる節税額以上のリターンを生み出せるかもしれません。時給5,000円のクリエイターが、簿記の勉強と入力作業に年間30時間費やしたとすれば、それは15万円分の機会損失と考えることもできます。節税額だけを見て「損か得か」を判断するのではなく、自身の事業内容や時給価値、そして経理作業への得意・不得意を総合的に判断することが、真に合理的な選択につながるのです。

あえて「白色申告」を選ぶべき3つのケースとそのメリット

青色申告のメリットが強調されがちな中、どのような人が「白色申告」を選ぶべきなのでしょうか。ここでは、具体的な3つのケースを挙げ、白色申告がもたらす戦略的なメリットについて解説します。ご自身の状況と照らし合わせながら、読み進めてみてください。

ケース1:副業やスモールスタートで所得が少ない場合

会社員としての給与所得がありながら副業を始めた方や、事業を開始したばかりでまだ所得(売上から経費を引いた利益)が少ない方は、白色申告が最適な選択肢となる可能性が高いです。

例えば、年間の事業所得が30万円だったとします。この場合、青色申告の最大65万円控除を適用しても、控除額は所得額の30万円が上限となり、節税効果は限定的です。所得税率が10%の方なら、節税額は3万円程度。この金額のために、複式簿記の手間をかけることが果たして見合っているでしょうか。まずは事業を軌道に乗せることに集中し、経理の負担は最小限に抑えるという戦略は、特にスタートアップ期において非常に有効です。所得が少ないうちは、白色申告のシンプルさが大きな武器となります。

ケース2:経理・簿記作業に時間をかけたくない・苦手な場合

デザイナー、ライター、コンサルタントなど、自身の専門スキルで価値を提供するタイプの個人事業主にとって、時間は最も貴重な資源です。簿記の知識が全くなく、数字を扱うことに苦手意識がある方が、無理に青色申告に挑戦すると、多大なストレスと時間を浪費しかねません。

会計ソフトが進化しているとはいえ、複式簿記の基本的な理解は必要ですし、日々の取引を正確に入力していく作業は決して楽ではありません。その時間を、新しいクライアントの獲得や作品のクオリティ向上に充てた方が、事業全体の成長につながることは明らかです。「餅は餅屋」と割り切り、経理はシンプルに済ませ、自分は得意な分野で最大限のパフォーマンスを発揮する。これもまた、優れた経営判断の一つと言えるでしょう。

ケース3:将来的に事業を拡大するか不透明な場合

「この事業がうまくいくか、まだ分からない」「まずは試しにやってみたい」という段階では、将来の不確実性が高い状態です。このような状況で、いきなり青色申告の体制を整えるのは時期尚早かもしれません。

おすすめなのは、「まずは白色申告でスタートし、事業が軌道に乗ったら青色申告へ切り替える」という二段階のプランです。例えば、事業所得が安定して100万円を超えるようになった、あるいは大きな設備投資で赤字を繰り越したいニーズが出てきた、といったタイミングで切り替えを検討するのが現実的です。将来的に青色申告へ切り替える際も、開業手続きの基本は同じです。まずは個人事業主としての一歩を踏み出すための全体像を掴むために、こちらの【開業準備ガイド】も参考にしてみてください。事業の成長フェーズに合わせて申告方法を柔軟に見直すことで、常に最適な状態で事業運営が可能になります。

白色申告の注意点と青色申告へのスムーズな移行プラン

白色申告が有効な選択肢である一方、もちろんデメリットも存在します。ここでは、白色申告を続ける上での注意点を再確認し、将来的に青色申告へスムーズに移行するための具体的なプランニングについて解説します。

白色申告のデメリットを正しく理解する

白色申告を選ぶ前に、以下のデメリットをしっかりと把握しておくことが重要です。

  • 特別控除がない: 青色申告の最大65万円のような、所得から差し引ける特別な控除はありません。これが節税面で最も大きな違いです。
  • 赤字の繰越ができない: 事業が赤字になった場合、その赤字を翌年以降の黒字と相殺することができません(青色申告では3年間繰越可能)。
  • 専従者給与の制限: 家族を従業員として雇った場合、その給与を経費にできる上限額が青色申告よりも低く設定されています(青色申告の「専従者給与」は届出をすれば全額経費にできるが、白色申告の「専従者控除」は上限あり)。
  • 社会的信用の差: 金融機関によっては、融資の審査などで、詳細な帳簿付けを行っている青色申告者の方が有利に評価される場合があります。

これらのデメリットが、ご自身の事業計画において許容できる範囲内かどうかを見極める必要があります。

【チェックリスト】それでも私は白色申告で大丈夫?

ご自身が白色申告向きかどうかを判断するために、以下のチェックリストを活用してみてください。

  • □ 年間の事業所得(売上 – 経費)が50万円未満に収まる見込みだ
  • □ 簿記の知識が全くなく、学習する時間や意欲がない
  • □ 事業の性質上、大きな赤字が出る可能性は低い
  • □ 家族を従業員として雇い、高額な給与を支払う予定はない
  • □ 今すぐ事業用の融資を受ける計画はない

これらの項目に3つ以上当てはまるようであれば、あなたは白色申告からスタートすることに大きなメリットを感じられる可能性が高いでしょう。

白色から青色へ!切り替えのベストタイミングと手続き

事業が成長し、「そろそろ青色申告に切り替えた方が得かもしれない」と感じたら、それが移行のタイミングです。具体的には、所得がコンスタントに100万円を超え、青色申告の節税メリットが経理の手間を上回ると感じた時が一つの目安です。

青色申告に切り替えるためには、原則として、その年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を管轄の税務署に提出する必要があります。例えば、2026年分の確定申告から青色申告を適用したい場合は、2026年3月15日までに申請書を提出します。

青色申告への切り替えを考え始めたら、まずは正確な書類作成が重要です。近年では、質問に答えるだけで必要な書類を自動で作成してくれる便利なクラウドサービスも登場しています。無料から使える「マネーフォワード クラウド開業届」のようなツールを使えば、開業届はもちろん、青色申告承認申請書も簡単かつ正確に作成でき、複雑な手続きのハードルを大きく下げてくれます。

まとめ:あなたに最適なのは白?青?賢い選択で事業を加速させよう

個人事業主の確定申告において、「青色申告が絶対善」という考え方は必ずしも正しくありません。白色申告は「損」なのではなく、事業のステージや個人の状況によっては、時間という最も貴重な資源を本業に集中させるための「賢い選択」となり得ます。

重要なのは、ご自身の事業規模、所得の見込み、そして経理作業にかけられる時間と労力を客観的に評価し、自分にとって最もコストパフォーマンスの高い方法を選ぶことです。

  • 副業やスモールスタートで、まずはシンプルに始めたいなら「白色申告」
  • 事業が軌道に乗り、本格的な節税と事業拡大を目指すなら「青色申告」

これが、最初のステップにおける基本的な考え方です。まずはご自身の状況を整理し、最適な申告方法を選びましょう。もし開業手続きそのものに不安があるなら、【開業準備ガイド】のような専門記事を参考に、全体像を掴んでから一歩を踏み出すのがおすすめです。

そして、どのような選択をするにせよ、手続きを効率化したいなら、「マネーフォワード クラウド開業届」のような便利なツールの活用をぜひ検討してみてください。あなたの事業が、スムーズかつ力強く発進できることを心から応援しています。