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開業届を出したら源泉徴収義務が発生する?個人事業主が知っておくべき「税金の預かり方」

開業届を提出し、いよいよ個人事業主としての第一歩を踏み出したあなた。

希望に満ち溢れる一方で、「税金」に関する漠然とした不安を感じていませんか。

特に、事業が軌道に乗り、誰かに仕事を依頼したり、スタッフを雇ったりすることを考え始めると、「源泉徴収」という言葉が気になり始めるかもしれません。

「自分も源泉徴収をしなくてはいけないの?」

「どんな場合に必要で、具体的にどうすればいいの?」

そんな疑問や不安を抱えている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、個人事業主が知っておくべき源泉徴収の基本から、具体的な手続き、注意点までを分かりやすく解説します。

この記事を読めば、あなたが源泉徴収義務者になるケースや、その際の正しい「税金の預かり方」が明確になり、税務に関する不安を解消して、自信を持って事業活動に専念できるようになるはずです。

そもそも源泉徴収とは?個人事業主に関係あるの?

「源泉徴収」という言葉はよく耳にしますが、その仕組みを正確に理解している方は意外と少ないかもしれません。まずは、源泉徴収制度の基本と、どのような個人事業主に関係してくるのかを正しく理解しましょう。

源泉徴収制度の基本

源泉徴収制度とは、給与や報酬などを支払う側(事業者)が、支払う金額からあらかじめ所得税などを天引きし、受け取る本人に代わって国に納税する仕組みのことです。会社員時代に、給与から所得税が天引きされていた経験を思い出していただくと分かりやすいでしょう。あれがまさに源泉徴収です。

この制度があることで、納税者一人ひとりが確定申告をする手間を省くと同時に、国としては安定的かつ効率的に税金を徴収できるというメリットがあります。支払いを行う事業者が「税金を預かって代わりに納める」役割を担っているのです。

「開業届=源泉徴収義務者」ではない

ここで多くの個人事業主が抱きがちな誤解があります。それは、「開業届を提出したから、自分も源泉徴収をしなくてはならない」という思い込みです。

結論から言うと、開業届を提出したからといって、すべての個人事業主がすぐに源泉徴収義務者になるわけではありません。源泉徴収の義務は、特定の支払いが発生したときに初めて生じます。一人で事業を行っており、誰にも給与や特定の報酬を支払っていない期間は、源泉徴収について考える必要はないのです。

源泉徴収義務が発生する2つの主要ケース

では、個人事業主が源泉徴収義務者となるのは、具体的にどのようなケースなのでしょうか。大きく分けて以下の2つのパターンが挙げられます。

  1. 従業員を雇用し、給与を支払う場合
    パートやアルバイトを含め、従業員を雇い、給与を支払うようになると、その支払者は「給与所得の源泉徴収義務者」となります。毎月の給与や賞与から所得税を計算して天引きし、国に納付する義務が生じます。
  2. 特定の業務を外部の「個人」に依頼し、報酬を支払う場合
    デザイナーにロゴ作成を依頼したり、ライターに記事執筆を依頼したりと、外部のフリーランス(個人)に特定の業務を発注し、その対価として報酬を支払う場合も源泉徴収が必要です。ただし、すべての報酬が対象ではなく、所得税法で定められた範囲の報酬に限られます。また、重要なポイントとして、支払い相手が「法人」の場合は、源泉徴収の必要はありません。あくまで相手が「個人」である場合に対象となる点を覚えておきましょう。

まずはご自身の事業において、これらの支払いが発生する可能性があるかどうかを確認することが、源泉徴収を理解する第一歩となります。

【ケース別】源泉徴収が必要になる報酬と計算方法

源泉徴収の義務が発生するケースが分かったところで、次に気になるのは「どんな報酬が対象で、いくら預かればいいのか」という点でしょう。ここでは、従業員への給与と、外注先への報酬に分けて、対象となる支払いと具体的な計算方法を解説します。(2025年11月時点の情報)

ケース1:従業員を雇う場合(給与・賞与)

従業員に支払う給与や賞与は、源泉徴収の対象です。徴収する税額は、国税庁が毎年発行する「給与所得の源泉徴収税額表」に基づいて決定します。

税額を調べるには、以下の情報が必要です。

  • その月の社会保険料等控除後の給与等の金額
  • 扶養親族等の数

従業員から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出してもらっているかどうかで、適用される税額表の欄(甲欄または乙欄)が変わります。基本的には、主たる給与の支払先である自社に提出してもらえば「甲欄」を、提出がない場合や他の会社を主たる勤務先としている従業員の場合は「乙欄」を使用します。乙欄の方が税額は高くなる傾向にあります。

ケース2:外注する場合(個人の専門家への報酬)

個人事業主にとって、より身近で判断に迷いやすいのがこちらのケースです。外部の個人へ支払う報酬のうち、源泉徴収が必要なものは所得税法で限定的に定められています。代表的なものは以下の通りです。

  • 原稿料、脚本料、デザイン料、講演料
  • 弁護士、公認会計士、税理士など、特定の資格を持つ人へ支払う報酬
  • プロスポーツ選手、モデル、外交員などに支払う報酬
  • 芸能、映画、演劇などへの出演報酬

例えば、Webサイトの記事作成をライター(個人)に依頼した場合の「原稿料」や、事業用のパンフレット作成をデザイナー(個人)に依頼した場合の「デザイン料」は、源泉徴収の対象となります。

源泉徴収税額の具体的な計算例

報酬・料金に対する源泉徴収税額の計算方法は、原則として支払金額によって異なります。ここでは復興特別所得税を含んだ税率(10.21%または20.42%)で計算します。

原則的な計算方法:

  • 支払金額が100万円以下の場合:支払金額 × 10.21%
  • 支払金額が100万円を超える場合:(支払金額 – 100万円) × 20.42% + 102,100円

【計算例1】フリーランスのライターに15万円の原稿料を支払う場合

支払金額が100万円以下のため、計算式は「支払金額 × 10.21%」です。
源泉徴収税額:150,000円 × 10.21% = 15,315円
この場合、あなたは15,315円を預かり、差額の134,685円をライターに支払います。そして、預かった15,315円を国に納付します。

【計算例2】税理士(個人事務所)に120万円の顧問料を支払う場合

支払金額が100万円を超えるため、計算式は「(支払金額 – 100万円) × 20.42% + 102,100円」です。
源泉徴収税額:(1,200,000円 – 100万円) × 20.42% + 102,100円 = 40,840円 + 102,100円 = 142,940円
この場合、あなたは142,940円を預かり、差額の1,057,060円を税理士に支払います。そして、預かった142,940円を国に納付します。

このように、支払う報酬の種類と金額に応じて、正しく税額を計算することが重要です。

源泉徴収の手続きと納付の流れ

源泉徴収税額を正しく計算できたら、次はそれを国に納付する手続きが必要です。期限内に忘れずに手続きを完了させるための、一連の流れを把握しておきましょう。

納税はいつまでに?納付の期限

源泉徴収した所得税および復興特別所得税は、原則として、給与や報酬を支払った月の翌月10日までに国に納めなければなりません。例えば、11月25日に支払った報酬から源泉徴収した税金は、12月10日が納付期限となります。この期限を過ぎると、延滞税などのペナルティが課される可能性があるため注意が必要です。

【納期の特例】
ただし、給与を支払う従業員が常時10人未満の源泉徴収義務者には、手続きの負担を軽減するための特例制度が用意されています。「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を税務署に提出し承認を受けることで、納付を年2回にまとめることができます。

  • 1月〜6月分 → 7月10日までに納付
  • 7月〜12月分 → 翌年1月20日までに納付

毎月の手続きが負担に感じる個人事業主の方は、この特例の活用を検討すると良いでしょう。

納付書の入手方法と書き方

税金を納める際には、「所得税徴収高計算書(納付書)」という専用の用紙が必要です。この納付書は、所轄の税務署で入手できます。一度納付すると、次回以降は税務署から郵送されてくることが一般的です。

納付書には、支払年月日、人員(支払った人数)、支給額、税額などを記入します。給与と税理士報酬など、区分の異なる支払いを同時に納付する場合は、それぞれの欄に正しく金額を記入する必要があるため、記載方法を事前に確認しておきましょう。

納付方法

納付書を使って税金を納める方法は、主に以下の3つです。

  1. 金融機関または税務署の窓口:納付書を持参し、現金で納付する最も一般的な方法です。
  2. e-Tax(電子納税):事前にe-Taxの利用開始手続きを行っていれば、インターネットバンキングなどを利用して電子的に納付が可能です。
  3. クレジットカード納付:専用のWebサイトを通じて、クレジットカードでの納付も可能です(別途決済手数料がかかります)。

ご自身の都合の良い方法を選べますが、期限間際になって慌てないよう、早めに準備を進めることが大切です。

忘れてはいけない「支払調書」

源泉徴収を行った場合、年末調整の対象とならない報酬については、1年間の支払金額と源泉徴収税額を記載した「支払調書」を作成する義務があります。正式には「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」といいます。

この支払調書は、原則として翌年1月31日までに税務署へ提出するとともに、支払い相手にも交付するのが一般的です。(税務署への提出は、年間の支払金額が一定額を超える場合などの要件があります)支払いを受けた側は、この支払調書をもとに確定申告を行うため、非常に重要な書類となります。これらの手続きを漏れなく行うためにも、日々の取引記録を正確に管理しておくことが不可欠です。

まとめ:正しい知識で、源泉徴収の不安を解消しよう

今回は、個人事業主と源泉徴収の関係について詳しく解説しました。最後に、重要なポイントを振り返りましょう。

  • 開業届を出しても、すぐに源泉徴収義務者になるわけではない。
  • 義務が発生するのは主に「従業員を雇う場合」と「特定の業務を個人に外注する場合」。
  • 対象となる報酬と税率を正しく理解し、正確に税額を計算することが重要。
  • 徴収した税金は、原則として支払った月の翌月10日までに納付する必要がある。

源泉徴収のような税務手続きは、複雑に感じるかもしれませんが、一つひとつのルールを理解すれば決して難しいものではありません。しかし、こうした手続きの全体像を把握するには、開業準備の段階から知識を整理しておくことが大切です。

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