NordVPNは非常に優れたVPNサービスで、その公式アプリは直感的で誰でも簡単に利用できます。
しかし、特定のデバイスや環境では、この公式アプリが利用できない場合があります。
「LinuxでNordVPNを使いたい」「家のルーターにVPNを設定して、ネットワーク全体を保護したい」そう考えたことはありませんか。
そんな時に活躍するのが、OpenVPN設定ファイルです。
この記事では、NordVPNの強力なセキュリティとプライバシー機能を、公式アプリが対応していない環境でも最大限に活用する方法を、初心者の方にも分かりやすく解説します。
手順通りに進めれば、あなたもOpenVPNを使いこなし、より自由で安全なインターネット環境を構築できるようになります。
なぜNordVPNでOpenVPN設定ファイルを使うのか?公式アプリとの違い
多くのユーザーにとって、NordVPNの公式アプリは最も手軽で最適な選択肢です。しかし、特定の状況下ではOpenVPN設定ファイルを利用することで、公式アプリの限界を超えた柔軟性と対応力を手に入れることができます。ここでは、その具体的な理由とメリットを掘り下げていきましょう。
公式アプリの利便性と限界
NordVPNの公式アプリは、Windows、macOS、Android、iOSといった主要なプラットフォーム向けに提供されており、非常に洗練されたユーザーインターフェースが特徴です。数回クリックまたはタップするだけで、世界中のサーバーに簡単に接続できます。また、「Quick Connect」機能を使えば、その時点で最もパフォーマンスの良いサーバーに自動で接続してくれるため、VPNに関する専門知識がなくても安心して利用できます。
しかし、その手軽さの一方で、いくつかの限界も存在します。最大の課題は、アプリが提供されていないOSやデバイスでは利用できない点です。例えば、特定のLinuxディストリビューションや、VPNクライアント機能を持つ高性能なルーター、NAS(Network Attached Storage)、Raspberry Piのようなシングルボードコンピュータなどでは、公式アプリを直接インストールすることはできません。これらのデバイスでVPN接続を実現したい場合、手動での設定が必要不可欠となります。
OpenVPNを利用する3つの大きなメリット
OpenVPN設定ファイルを利用することで、公式アプリの限界を克服し、以下のような大きなメリットを享受できます。
1. 対応デバイスの大幅な拡大
最大のメリットは、何と言っても対応デバイスの広さです。OpenVPNはオープンソースのプロトコルであり、非常に多くのデバイスやプラットフォームでサポートされています。前述のルーターやNASはもちろん、スマートテレビやゲーム機など、直接VPNアプリをインストールできないデバイスでも、OpenVPN対応ルーターを経由させることでVPNの恩恵を受けられます。自宅のWi-Fiに接続するだけで、家族全員のデバイスが自動的にVPNで保護される環境を構築できるのは、非常に大きな魅力です。
2. 高度なカスタマイズ性とコントロール
技術的な知識を持つユーザーにとって、OpenVPNは設定の自由度が高いという利点があります。例えば、接続に使用するポートを特定の番号に変更したり、暗号化の強度を細かく調整したりすることが可能です。また、複数のサーバー設定ファイル(.ovpnファイル)をクライアントにインポートしておき、用途に応じて瞬時に接続先を切り替えるといった、より高度な運用も実現できます。これは、特定の国のサーバーに常時接続したい場合や、P2P接続用とストリーミング用にサーバーを使い分けたい場合に非常に便利です。
3. オープンソースであることの信頼性
OpenVPNは、そのソースコードが一般に公開されているオープンソースソフトウェアです。これは、世界中のセキュリティ専門家によって常にコードが精査され、脆弱性がないかチェックされていることを意味します。特定の企業によって管理されるプロプライエタリなソフトウェアとは異なり、透明性が高く、セキュリティ面での信頼性が非常に高いと言えます。プライバシーを最重要視するユーザーにとって、この透明性は大きな安心材料となるでしょう。
このように、OpenVPN設定ファイルを利用することは、単に「アプリが使えないから」という消極的な理由だけでなく、「VPNをより深く、広く活用したい」という積極的なニーズに応えるための強力な手段なのです。
NordVPNからOpenVPN設定ファイルをダウンロードする具体的な手順
OpenVPNを利用するための第一歩は、NordVPN公式サイトから専用の設定ファイル(.ovpnファイル)をダウンロードすることです。このファイルには、どのサーバーに、どのプロトコルで接続するかといった情報がすべて含まれています。ここでは、2025年11月時点の情報を基に、その手順を詳しく解説します。
ステップ1: NordVPNアカウントにログイン
まず、お使いのウェブブラウザでNordVPNの公式サイトにアクセスし、自身のアカウントにログインします。ダッシュボード画面が表示されたら、手動設定の準備は完了です。
もし、まだNordVPNのアカウントをお持ちでない場合は、まず契約から始める必要があります。どのプランを選べば良いか分からない方や、サービス全体の詳細を知りたい方は、NordVPNの全てを網羅した「【2025年最新版】NordVPN完全ガイド:始め方から料金、メリット・デメリットまで徹底解説!」を参考にしてみてください。あなたに最適なプラン選びの助けになるはずです。
ステップ2: サーバー設定ファイルのダウンロード
NordVPNは、ユーザーが簡単に最適なサーバーを見つけられるよう、便利なツールを提供しています。
- NordVPNの公式サイトにある「サーバー推奨ツール」にアクセスします。
- 接続したい国を選択します。例えば、「日本」や「アメリカ」などです。
- VPNプロトコルとして「OpenVPN UDP」または「OpenVPN TCP」を選択します。
- OpenVPN UDP: 通信速度が速く、ストリーミングやオンラインゲームに適しています。通常はこちらを選択するのがおすすめです。
- OpenVPN TCP: データの到達を確実に保証するため、信頼性が高いプロトコルです。接続が不安定なネットワーク環境や、確実性が求められる通信で有効です。
- 「高度なオプションを表示」をクリックすると、特定のサーバーを選択したり、「Obfuscated(難読化)」サーバーを選択したりすることも可能です。難読化サーバーは、VPNの使用が制限されている国やネットワークで特に有効です。
- 設定が決まったら、「設定ファイルをダウンロード」ボタンをクリックします。すると、選択した国のサーバー設定ファイル(例: `jp1234.nordvpn.com.udp.ovpn`)がダウンロードされます。
この.ovpnファイルは単なるテキストファイルなので、メモ帳などで開いて中身を確認することもできます。`remote`で始まる行が接続先サーバーのアドレス、`proto`で始まる行がプロトコル(udpまたはtcp)を示しているのが分かります。
ステップ3: サービス認証情報を確認する
OpenVPNクライアントで接続する際には、NordVPNのログインパスワードとは別の認証情報が必要になります。これは「サービス認証情報(Service Credentials)」と呼ばれ、手動設定専用のものです。
- NordVPNのダッシュボードに戻り、左側のメニューから「NordVPN」を選択します。
- 「手動設定」のセクションを見つけ、「セットアップ」ボタンをクリックします。
- 認証プロバイダーの欄にあなたのメールアドレスが表示され、その下にある「認証コードを送信」ボタンを押します。
- 登録したメールアドレスに届いた認証コードを入力すると、サービス認証情報(ユーザー名とパスワード)が表示されます。
このユーザー名とパスワードは非常に重要です。OpenVPNクライアントで接続する際に必ず必要になるので、安全な場所にコピーして保管しておきましょう。これで、外部クライアントでNordVPNを利用するためのすべての準備が整いました。
主要なOpenVPNクライアントでの設定方法
設定ファイルと認証情報を手に入れたら、次はいよいよ外部のOpenVPNクライアントに設定していきます。ここでは、代表的なプラットフォームであるWindows、macOS、そしてLinux(Ubuntu)での設定方法を解説します。基本的な流れはどのクライアントでも同じで、「設定ファイルをインポートし、認証情報を入力する」というものです。
Windows/macOSでの設定 (OpenVPN GUI / Tunnelblick)
WindowsとmacOSには、それぞれ定番のOpenVPNクライアントが存在します。
Windowsの場合: OpenVPN GUI
- OpenVPN公式サイトから「OpenVPN GUI」をダウンロードし、インストールします。
- インストールが完了したら、タスクトレイ(画面右下のアイコンが並んでいる場所)にあるOpenVPN GUIのアイコンを右クリックし、「ファイルをインポート」を選択します。
- 先ほどダウンロードしたNordVPNの.ovpn設定ファイルを選択します。
- インポートが成功すると、再度アイコンを右クリックした際に、インポートした設定の接続メニューが表示されます。それをクリックして「接続」を選択します。
- ユーザー名とパスワードの入力を求められるので、先ほど確認したNordVPNのサービス認証情報を入力します。
- 接続が成功すると、アイコンが緑色に変わります。
macOSの場合: Tunnelblick
- Tunnelblick公式サイトから無料のクライアントソフトウェアをダウンロードし、インストールします。
- インストール後、ダウンロードした.ovpn設定ファイルをダブルクリックするか、メニューバーのTunnelblickアイコンにドラッグ&ドロップします。
- 設定をインストールするか尋ねられるので、許可します。
- メニューバーのTunnelblickアイコンをクリックし、インポートした設定名を選択して「接続」をクリックします。
- 同様に、NordVPNのサービス認証情報の入力を求められるので、ユーザー名とパスワードを入力します。
- 接続が完了すると、ステータスが「接続済み」に変わります。
Linux (Ubuntu) での設定 (NetworkManager)
多くのLinuxディストリビューションでは、標準のネットワーク管理ツール(NetworkManager)にOpenVPN機能を追加することで、GUIから簡単に設定できます。ここではUbuntuを例に説明します。
- まず、必要なパッケージをインストールします。ターミナルを開き、以下のコマンドを実行します。
sudo apt-get update && sudo apt-get install openvpn network-manager-openvpn-gnome - インストール後、画面右上のネットワークアイコンをクリックし、「設定」→「ネットワーク」を開きます。
- VPNセクションの「+」ボタンをクリックし、「ファイルからインポート」を選択します。
- ダウンロードした.ovpn設定ファイルを選びます。
- VPN設定画面が開きます。「認証」タブのパスワード欄に、NordVPNのサービス認証情報のパスワードを入力します。ユーザー名は自動で入力されているはずです。
- 右上の「追加」ボタンをクリックして設定を保存します。
- ネットワーク設定画面に戻り、新しく追加されたVPN接続のトグルスイッチをオンにすれば、接続が開始されます。
【応用編】ルーターでの設定
OpenVPNクライアント機能を持つルーター(DD-WRT、OpenWrt、AsusWRT-Merlinなどのカスタムファームウェアを搭載したもの)にNordVPNを設定すると、そのルーターに接続するすべてのデバイス(PC、スマホ、スマートTV、ゲーム機など)がVPNによって保護されるという大きなメリットがあります。デバイスごとにアプリをインストールする必要がなくなるため、非常に効率的です。
設定方法はルーターの機種やファームウェアによって大きく異なりますが、一般的な流れは以下の通りです。
- ルーターの管理画面にログインし、VPNクライアント設定ページを開きます。
- .ovpnファイルをアップロードするか、ファイルの内容をテキストエリアに貼り付けます。
- サービス認証情報のユーザー名とパスワードを入力します。
- 設定を適用し、接続を開始します。
ルーターでの設定は少々複雑な場合があるため、お使いのルーターメーカーのドキュメントや、関連するオンラインコミュニティの情報を参考にしながら進めることをお勧めします。
まとめ:OpenVPNでNordVPNの可能性を最大限に引き出そう
この記事では、NordVPNのOpenVPN設定ファイルを利用して、公式アプリが対応していない様々なデバイスでVPN接続を確立する方法を解説しました。
最初は少し難しく感じるかもしれませんが、手順通りに進めれば、誰でも設定を完了できます。OpenVPNを使いこなすことで、単にIPアドレスを隠すだけでなく、自宅のネットワーク全体を保護したり、特定のOSで開発環境を整えたりと、NordVPNの活用範囲は無限に広がります。
公式アプリの手軽さはもちろん魅力的ですが、もしあなたが「もっと自由に、もっと多くのデバイスでVPNを使いたい」と考えているなら、ぜひこの記事を参考にOpenVPNへの挑戦を始めてみてください。その一歩が、あなたのデジタルライフをより安全で快適なものに変えてくれるはずです。
この記事を読んで、NordVPNの持つ高度な機能性や柔軟性に魅力を感じた方は、ぜひ公式サイトで最新の情報をチェックしてみてください。以下のリンクから詳細を確認し、あなたのニーズに合ったプランを見つけることができます。
