出典: Google Workspace Updates Blog
元記事の投稿日: 2025年6月30日
金融取引の記録、顧客との重要なやり取り。
これらのデータは、一度記録されたら「絶対に書き換え不可能で、消去もできない」形で保存しなければならない。
これは、金融業界に課せられる、最も厳格な規制の一つです。
万が一の不正やトラブルの際に、完全な証跡を保証するための、まさに”鉄壁の守り”が求められます。
これまで、多くの企業がこの厳しい要件を満たすために、専門の高価なシステムを別途導入してきました。
しかし、もし日常的に使っているGoogle Workspaceが、この最高レベルのコンプライアンス要件に標準で対応できるとしたら?
本日ご紹介するのは、その「もしも」を現実にし、Google Workspaceの信頼性を新たな次元へと引き上げる、極めて重要なアップデートです。
何が変わった?FINRAコンプライアンス対応をDriveとCalendarに拡大
まず「FINRAコンプライアンス」とは、米国の金融業界における自主規制機関(FINRA)が定めるルール群のことで、特にSEC(米国証券取引委員会)規則 17a-4に定められるWORM(Write-Once, Read-Many)形式での記録保持が中核をなします。
Google Workspaceは、すでにGmail、Chat、Meetにおいて、このFINRAコンプライアンスに対応していましたが、今回、新たにGoogle DriveとGoogle Calendarがこの厳しい要件に対応しました。これにより、金融機関における主要なコミュニケーションとコラボレーションのデータが、包括的に保護されることになります。
【具体的に何ができる?】DriveとCalendarの新機能
1. Google Drive:「改ざん不可能なデジタル金庫」の構築
これまでドライブ上のファイルは、バージョン管理はできても「書き換え不可能」な状態での保存は困難でした。今回のアップデートにより、データエクスポートツールと、パートナーであるAODocsのソリューションを組み合わせることで、以下のことが可能になります。
FINRA準拠のアーカイブ作成:
ドライブ内のデータを、書き換え・消去が不可能な「FINRA準拠」の形式で、Google Cloud Storage上の“デジタル金庫”にエクスポートし、アーカイブできます。柔軟なデータ選択:
全データを一括でエクスポートするだけでなく、「特定の組織部門(例:トレーディング部門)」や「特定のプロジェクトグループ」、さらには「特定のDriveラベルが付与されたファイルのみ」といった、きめ細かな条件で対象データを絞り込むことができます。
これにより、必要なデータだけを、規制要件に準拠した形で、安全かつ効率的に長期保存することが可能になります。
2. Google Calendar:「すべての予定の変更履歴」を完全記録
金融業界では、インサイダー取引の防止などの観点から、誰がいつ、どのような会議を設定・変更したかという記録も、重要なコミュニケーション履歴と見なされます。
今回のアップデートで、サードパーティのアーカイブ機能を有効化することで、カレンダー上のあらゆる操作が証跡として記録されるようになります。
ジャーナリング機能:
監視対象のユーザーがカレンダー上でイベントを作成・変更・削除すると、その操作内容(誰が、いつ、何を)が詳細なデータとして、指定されたメールアドレス(ジャーナリングアドレス)に自動で送信されます。サードパーティ連携:
このジャーナリングメールを、専門のアーカイブベンダー(Mimecast, Smarshなど)のサービスで受信・保管することで、カレンダー上の操作履歴もまた、改ざん不可能な形で保存・検索・監査できるようになります。
日本の金融機関や規制産業にとっての大きな意味
このアップデートは、米国の規制への対応ですが、グローバルに事業を展開する日本の金融機関や、高度なガバナンスを求める企業にとって、計り知れない価値を持ちます。
グローバルスタンダードへの準拠:
特に米国市場でビジネスを行う金融機関にとって、SEC規則への対応は避けて通れません。Google Workspaceをプラットフォームとして利用しながら、これらのコンプライアンス要件を満たせることは、大きなアドバンテージとなります。最高レベルのガバナンス体制の証明:
FINRA準拠の体制を構築していることは、国内外の監督官庁や取引先、投資家に対して、自社が最高水準のデータ管理体制とコンプライアンス意識を持っていることの強力な証明となります。将来の規制強化への備え:
データ保護の要件は、世界的に年々厳しくなっています。金融業界で求められる最高レベルの要件に対応できるプラットフォームを選択することは、将来的な規制強化へのプロアクティブな備えとも言えます。
【重要】パートナーシップと利用プランについて
このFINRA準拠のソリューションは、Google Workspace単体で完結するものではなく、エコシステムパートナーとの連携が鍵となります。
パートナー連携:
Googleは、AODocs, Mimecast, Smarsh, Global Relayといった、デジタルコミュニケーションのガバナンスとアーカイブ(DCGA)分野をリードするベンダーとのパートナーシップを強化しています。これらのパートナーが提供するソリューションを組み合わせることで、シームレスなコンプライアンス対応が実現します。利用可能なプラン:
この機能は、Google Workspaceの最上位プランであるEnterprise Plusに、さらにAssured ControlsまたはAssured Controls Plusというアドオンを追加した、ごく一部のお客様のみが利用可能です。これは、本機能が最高レベルのセキュリティとコンプライアンスを求める、プロフェッショナル向けのソリューションであることを示しています。
まとめ
Google WorkspaceのFINRAコンプライアンス対応の拡大は、このプラットフォームが単なる便利なクラウドツールではなく、金融業界という最も厳しい規制が課せられる世界の基幹システムとしても通用する、信頼性とセキュリティを備えていることを明確に示しました。
コンプライアンス遵守という「守り」と、生産性向上という「攻め」。この二つを高いレベルで両立させたいと考えるすべての企業にとって、Google Workspaceはこれまで以上に魅力的な選択肢となるでしょう。