本記事はGoogle Workspace Updatesブログ( https://workspaceupdates.googleblog.com/ )の情報を基に、2025年7月31日に作成されました。
日々の業務で、Gmailのサイドバーに表示されるToDoリストや顧客管理ツールを使った経験はありませんか。
あるいは、Googleカレンダーと連携して、面倒な日程調整を自動化してくれるアドオンに助けられたことはないでしょうか。
これらの便利な機能が、もし、チームのコミュニケーションの中心である「Google Chat」の中でも、全く同じように、そしてシームレスに連携して動くとしたら、あなたの働き方はどう変わるでしょうか。
今回ご紹介するのは、まさにそんな未来を実現する、Google Workspaceのエコシステム全体を大きく進化させる画期的なアップデートです。
開発者にとっては開発効率を、管理者にとっては管理コストを、そしてすべてのユーザーにとっては業務効率を劇的に向上させる可能性を秘めた、「Workspaceアドオンフレームワーク」のGoogle Chatへの正式対応について、その全貌を詳しく解説します。
何が変わったのか?「一度作れば、どこでも動く」時代の到来
今回のアップデートの核心は、これまで開発者向けプレビュープログラムで提供されていた「Google ChatアプリをWorkspaceアドオンフレームワークで構築する機能」が、ついに一般公開されたという点です。
「Workspaceアドオンフレームワーク」と聞いても、ピンとこない方もいるかもしれません。これは、一言で言えば、「一度アプリを作れば、Gmail、カレンダー、ドライブ、そして今回加わったChatといった、複数のGoogle Workspaceアプリケーションで共通して動作させることができる、統一されたアプリ開発基盤」のことです。
従来、開発者はGmail用、カレンダー用、Chat用と、それぞれのアプリに対応した個別のアプリを開発・維持する必要がありました。しかし、このフレームワークの登場により、その手間とコストが大幅に削減されます。まさに「一石四鳥」とも言えるこの仕組みは、開発者、管理者、そしてエンドユーザーの三者すべてに大きなメリットをもたらします。
開発者にとってのメリット:
単一のコードベースで複数のアプリに対応できるため、開発の複雑さが軽減され、メンテナンスコストも大幅に削減できます。Google Workspaceという巨大なプラットフォーム上で、より多くのユーザーにリーチするアプリを効率的に提供できるようになります。管理者にとってのメリット:
導入するアプリの管理がシンプルになります。これまでのようにアプリごとに互換性を心配する必要がなくなり、単一のアドオンを導入すれば、複数のWorkspaceアプリでその機能が有効になるため、展開やセキュリティ管理が容易になります。エンドユーザーにとってのメリット:
Gmailで使っていた便利な機能が、Chatやカレンダーでも同じ見た目、同じ操作感で利用できるようになります。アプリごとに使い方を覚える必要がなく、学習コストが低減。日々の業務フローが分断されることなく、よりスムーズで一貫性のある体験を得られます。
Google Chatが「業務ハブ」に進化する!具体的な活用シーン
このフレームワークがGoogle Chatに導入されることで、Chatは単なるコミュニケーションツールから、あらゆる業務が集約・実行される「統合ワークスペースのフロントエンド」へと進化します。具体的にどのようなことが可能になるのでしょうか。
1. 会話を止めずに、情報をプレビュー・即時アクション
チームのChatで共有されたプロジェクト管理ツールやデザインツールのリンク。これまでは、その都度新しいタブで開いて内容を確認する必要がありました。
これからは、Chatに投稿されたリンクがリッチなカード形式でプレビュー表示され、わざわざChatを離れることなく、内容の確認、コメントの追加、ステータスの更新といったアクションがその場で完結します。
2. Workspaceアプリ間のタスクをChatから自動化
「来週の定例会議を設定しなきゃ」「休暇中の自動応答メールを設定し忘れた」。こんな日常的なタスクも、Chatから直接実行できるようになります。
例えば、Chatボットに「来週火曜の15時に〇〇さんと定例会議を設定して」と話しかけるだけで、自動でGoogleカレンダーに予定が登録されたり、Gmailの不在設定を有効にしたりすることが可能になります。
3. 外部サービスとのシームレスな統合
普段使っている顧客管理(CRM)やプロジェクト管理、ITサービス管理(ITSM)といった外部のサードパーティ製アプリケーションの操作も、Chat内で完結します。
例えば、顧客からの問い合わせについてChatで議論した後、その場でServiceNowのチケットを発行したり、Asanaのタスクを作成したりできるようになります。アプリケーション間の面倒な切り替え作業がなくなり、業務の流れが格段にスムーズになります。
すでに始まっている未来:主要パートナーの対応事例
この話は、遠い未来の構想ではありません。すでに多くのパートナー企業が、この新しいフレームワークに対応したアプリをリリース、または準備しています。
先陣を切ったのは、オンライン作図ツールの「Lucid」です。同社のLucidchartやLucidsparkのリンクをChatに貼ると、図やボードのプレビューが表示され、Chat内から直接ドキュメントを検索したり、アクセス権を管理したりできます。
さらに、今後以下のような、皆さんが日頃から利用しているであろう多くの主要なツールが、Workspaceアドオンフレームワーク上で構築されたChatアプリをリリース予定です。
Asana, Trello (プロジェクト管理)
Confluence (情報共有)
Figma, Miro (デザイン、ホワイトボード)
HubSpot (CRM)
ServiceNow (ITSM)
Polly (投票・アンケート)
1Password (パスワード管理)
例えば、Figmaのリンクを貼ればデザインのプレビューが、Miroのリンクを貼ればボードのプレビューがChat内に表示され、チームのコラボレーションはより一層加速するでしょう。
どうやって始める?(開発者・管理者・ユーザー向けガイド)
このパワフルな機能を活用するための第一歩を、それぞれの立場からご紹介します。
開発者の皆様へ
Googleは、開発者がすぐにでもChat対応アドオンの開発を始められるよう、豊富なリソースを用意しています。
Google Apps Script: サーバーレスで手軽に開発を始めたい方向けに、クイックスタートガイドやChatアプリ用のテンプレートが提供されています。
HTTPサービス: 独自のインフラや言語で開発したい方向けのクイックスタートガイドも用意されています。
YouTubeチュートリアル: Googleの専門家が、Apps Scriptを使ってChatアプリを構築し、他のWorkspaceアプリに拡張していくプロセスを動画で詳しく解説しています。
これらのリソースを活用すれば、あなたのアイデアをすぐに形にすることができます。
管理者の皆様へ
組織でこれらの便利なアプリを展開する方法は2つあります。
管理者による一括インストール: 組織全体、または特定の部署のユーザーに対して、管理者が指定したアプリを自動的にインストールさせることができます。これにより、全社で利用を推奨するツールをスムーズに展開できます。
ユーザーによるインストール許可: 管理者が許可すれば、ユーザーは各自でGoogle Workspace Marketplaceにアクセスし、自分に必要なアプリを探してインストールできます。
組織のポリシーに合わせて、最適な展開方法を選択してください。
エンドユーザーの皆様へ
あなたの業務を効率化してくれる便利なChatアプリは、Google Workspace Marketplaceで見つけることができます。Marketplaceをブラウズし、あなたの仕事に役立ちそうなアプリを探してインストールしてみましょう。
まとめ
今回のGoogle Chatへの「Workspaceアドオンフレームワーク」の一般公開は、Google Workspace全体の統合とエコシステムの発展における、非常に重要なマイルストーンです。
「一度作れば、どこでも動く」という強力なコンセプトは、開発者には新たな価値創造の機会を、そして管理者とユーザーには、これまでにないレベルの業務効率とシームレスな体験を提供します。
Google Chatは、もはや単なるメッセージをやり取りする場所ではありません。それは、あらゆる情報、タスク、そしてアプリケーションが集約される、あなたの仕事の中心地「統合ワークスペース」へと進化を遂げようとしています。この新しい可能性を、ぜひあなたの組織でもご活用ください。