本記事はGoogle Workspace Updatesブログ( https://workspaceupdates.googleblog.com/ )の情報を基に、2025年8月6日に作成されました。
Google Workspaceをお使いの皆さん、日々の業務でGoogleフォームを活用する場面は多いのではないでしょうか。
イベントの参加登録、顧客満足度アンケート、社内での意見調査、研修後の理解度チェックなど、その用途は無限大です。
手軽で便利なGoogleフォームですが、いざ一から作成しようとすると、意外と頭を使う作業であることに気づかされます。
「参加者の満足度を測るために、あとどんな質問を追加すればいいだろう?」
「このアンケートで、本当に聞きたいことを網羅できているだろうか?」
「もっと回答者の本音を引き出せるような、良い質問はないものか…」
このように、フォームの質を上げるために、次にどんな質問を追加すべきか、頭を悩ませた経験は誰にでもあるはずです。
この度、そんなフォーム作成者の「生みの苦しみ」を解消する、画期的なAIアシスタント機能がGoogleフォームに搭載されました。あなたが作成中のフォームの文脈をAIが読み取り、「次に聞くべき質問」を賢く提案してくれる新機能について、詳しくご紹介します。
GoogleフォームにおけるAI活用の進化
今回の新機能を理解するために、GoogleフォームにおけるAI「Gemini」活用のこれまでの歩みを少し振り返ってみましょう。
Googleは最近、フォーム作成を効率化するためのAI機能を立て続けにリリースしてきました。
ゼロからのフォーム自動生成:
「来月の社内バーベキュー大会の参加登録フォームを作って」といった簡単な指示(プロンプト)を与えるだけで、Geminiが必要な質問項目を含んだフォームの草案を瞬時に作成してくれます。回答の自動要約:
フォームで集まった大量の自由記述回答などを、Geminiが分析し、要点や傾向を分かりやすく要約。データ分析の手間を大幅に削減します。
今回の新機能は、この「フォーム作成」のプロセスをさらに一歩進め、フォーム作成の「途中」で、ユーザーの思考をリアルタイムにサポートしてくれるものです。
新機能の核心:「質問を提案(Suggest questions)」機能とは?
今回ご紹介する新機能「質問を提案」は、まさにフォーム作成における「賢い壁打ち相手」です。あなたがフォームにいくつかの質問を入力すると、AIがその文脈を深く理解し、「こんな質問も追加してみてはいかがですか?」と、関連性の高い新たな質問を自動で提案してくれます。
具体的な使い方と動作の流れ
質問を2つ以上作成する:
まずは通常通り、Googleフォームで質問を作成します。この機能が有効になるには、最低でも2つの質問がフォーム内に存在している必要があります。「質問を提案」ボタンが出現:
2つ以上の質問を作成すると、フォーム編集画面の下部に「質問を提案(Suggest questions)」というボタンが魔法のように現れます。ボタンをクリックしてAIに相談:
このボタンをクリックすると、Geminiがバックグラウンドで動き出します。既存の質問内容や選択肢を分析し、文脈に沿った追加の質問を考え始めます。AIからの提案を確認・選択:
数秒後、Geminiが生成した2〜4個の新しい質問がリスト形式で表示されます。提案には、質問文だけでなく、ラジオボタンやチェックボックスの選択肢なども含まれています。ワンクリックでフォームに挿入:
提案された質問の中から、あなたのフォームに加えたいと思うものにチェックを入れ、「挿入」ボタンを押します。すると、選んだ質問が自動的にあなたのフォームに追加されます。
もう、「次はどうしよう…」と画面の前で固まる必要はありません。思考が行き詰まったら、AIに相談する。そんな新しいフォーム作成のスタイルが、この機能によって実現します。
なぜこれが便利なのか?フォーム作成体験を向上させる3つのメリット
この機能は、単なる時間短縮ツールに留まらない、本質的な価値を提供します。
メリット1:アイデアの枯渇を防ぎ、アンケートの質を高める
フォーム作成中に最もつらいのが、アイデアが枯渇し、思考が停止してしまうことです。この機能は、そんな時の頼れるブレインストーミングパートナーになります。
自分では思いつかなかった視点や、聞き漏らしていたかもしれない重要な質問をAIが提示してくれることで、アンケートの網羅性が高まり、より質の高いデータを収集できるようになります。
(活用例)
あなたが「製品Aの満足度アンケート」を作成しているとします。「総合満足度」と「機能Xの使いやすさ」について質問を作成したところで、次に何を聞くべきか悩んでしまいました。そこで「質問を提案」ボタンを押すと、Geminiが次のような提案をしてくれるかもしれません。
「製品Aを、同僚や友人に薦めたいと思いますか?(10段階評価)」
「製品Aの価格について、どのように感じますか?(選択式:高い/妥当/安い)」
「製品サポートを利用した経験はありますか?その際の満足度をお聞かせください。」
このように、顧客満足度を多角的に測るための定番の質問や、関連性の高い質問をAIが補ってくれるのです。
メリット2:プロンプト不要!誰でも使える手軽さ
生成AIの利用には、「的確な指示(プロンプト)を書くスキル」が必要だと思われがちです。しかし、この機能の素晴らしい点は、ユーザーが一切プロンプトを書く必要がないことです。
ただボタンをクリックするだけで、AIが文脈を自動で読み取って提案してくれるため、AIを使い慣れていない人でも、その恩恵を気軽に、そして最大限に受けることができます。
メリット3:入力の手間を省き、作成時間を短縮
提案された質問をワンクリックで挿入できるため、質問文や選択肢を一つひとつタイピングする手間が省けます。これにより、フォーム作成全体の時間を短縮し、より本質的な「問いの内容を考える」作業に集中できるようになります。
利用する上で知っておきたい、現在の制約事項
非常に便利な機能ですが、現時点ではいくつかの制約もあります。利用する前に把握しておきましょう。
複数セクションのフォームには未対応:
現在、この質問提案機能は、セクションで区切られていない、単一ページのシンプルなフォームでのみ動作します。複数のセクションを持つ複雑なフォームでは、期待通りに機能しない場合があります。クイズ形式の設定は手動で:
クイズ形式のフォームでこの機能を使用した場合、質問と選択肢は生成されますが、「正解の選択肢」や「配点」といったクイズ特有の設定は自動では行われません。これらは後から手動で設定する必要があります。言語は現在英語のみ:
これが最も重要な注意点です。現時点では、この「質問を提案」機能は英語でのみ利用可能です。フォーム自体は日本語で作成できますが、AIが提案してくる質問や選択肢は英語になります。今後の日本語への正式対応が待たれるところです。
利用開始にあたって(管理者・ユーザー向け情報)
対象エディション:
この機能は、Geminiアドオンを含む、多くのGoogle Workspaceのビジネスおよびエンタープライズプランで利用可能です。Business Standard, Plus
Enterprise Standard, Plus
Gemini Education / Education Premium アドオン をご利用のお客様など
管理者向けの情報:
ユーザーがこの機能を利用するには、組織のGoogle Workspace設定で「スマート機能とパーソナライズ」が有効になっている必要があります。管理者は、管理コンソールからこの設定を組織単位またはユーザー単位で管理することができます。ユーザー向けの情報:
フォームに2つ以上の質問を追加するだけで、自動的に「質問を提案」ボタンが表示されます。クリックしてAIからの提案を試してみてください。ただし、前述の通り、現在は英語での機能提供となる点にご留意ください。
まとめ
今回ご紹介したGoogleフォームの「質問を提案」機能は、AIが私たちの創造的な作業をどのようにサポートしてくれるかを示す、素晴らしい一例です。
単なる作業の自動化に留まらず、私たちの思考を刺激し、アイデアを拡張してくれる「賢いアシスタント」として、AIはますます身近な存在になりつつあります。
現在は英語のみの提供ですが、この機能が日本語に対応した暁には、日本の多くのビジネスパーソンや教育関係者にとって、フォーム作成がこれまで以上にスピーディーで、質の高いものになることは間違いありません。Googleフォームのさらなる進化に、今後もぜひご期待ください。