本記事はGoogle Workspace Updatesブログ( https://workspaceupdates.googleblog.com/ )の情報を基に、2025年8月21日に作成されました。
Google Workspaceを使いこなす先進的な企業の多くで、もう一つの重要なプラットフォームが活躍しています。
それは、ITサービス管理(ITSM)や人事、顧客管理など、社内のあらゆるワークフローを統合・自動化する「ServiceNow」です。
PCの不調を報告したり、ソフトウェアの利用申請をしたり、経費の精算をしたり。私たちの日常業務は、このServiceNow上で動いていると言っても過言ではありません。
しかし、その一方で、こんな「ちょっとした壁」を感じたことはありませんか。
「PCの調子が悪くてヘルプデスクに聞きたいけど、わざわざServiceNowのポータルサイトを開くのが少し面倒。普段使っているGoogle Chatから、気軽に質問できたらいいのに…」
「ServiceNowに蓄積されたインシデント管理のデータを分析したいけど、毎回CSVファイルをダウンロードして、それをGoogleスプレッドシートにアップロードし直すのが手間だ…」
このように、日々のコミュニケーションの中心である「Google Workspace」と、業務プロセスの中心である「ServiceNow」。この2つの強力なプラットフォームが、これまで別々の世界に存在していたことで、私たちの業務フローには、見えない断絶と非効率が生まれていました。
この度、その長年の「壁」を取り壊し、両者をシームレスに連携させる、待望の公式インテグレーション(統合)が発表されました。今回は、あなたの働き方を根底から変える、ServiceNowとGoogle Chat・Googleスプレッドシートの連携について、その全貌を詳しく解説していきます。
連携1:Google Chatが「ServiceNowの賢い窓口」になる
まずご紹介するのは、Google ChatとServiceNowの連携です。これにより、あなたは、日頃から使い慣れたGoogle Chatの画面を一切離れることなく、ServiceNowの様々な機能を利用できるようになります。
何が可能になるのか?
この連携の主役は、ServiceNowが誇るAI搭載のチャットボット「Virtual Agent」です。この賢いVirtual Agentが、Google Chatの中に常駐してくれるようになります。
具体的な活用シーン
ITヘルプデスクへの問い合わせが、チャットで完結:
「プリンターの接続がうまくいかない」「新しいモニターを申請したい」といったIT関連の困り事を、Google ChatでVirtual Agentに話しかけるだけ。Virtual Agentは、あなたの言葉を自然言語で理解し、関連するナレッジベースの記事を提示したり、必要な申請フォームへのリンクを案内したりして、自己解決を促します。
もし、Virtual Agentだけでは解決できない複雑な問題であっても、心配は不要です。そのままチャット上で、人間のサポート担当者へと、スムーズに引き継いでくれます。もう、問い合わせのために別のツールを開く必要はありません。人事・総務関連の申請や質問も、チャットから:
「有給休暇の残日数を知りたい」「出張の経費精算はどうすればいい?」といった、人事や総務に関する定型的な質問にも、Virtual Agentが24時間365日、即座に回答してくれます。
この連携は、社員にとっては「問い合わせのハードルを下げる」という大きなメリットがあります。そして、管理者にとっては、定型的な問い合わせ対応をAIに任せることで、「ヘルプデスク担当者の業務負荷を大幅に削減する」という、計り知れない価値をもたらすのです。
連携2:ServiceNowのデータが、ワンクリックでGoogleスプレッドシートへ
次にご紹介するのは、ServiceNowとGoogleスプレッドシートの連携です。これは、ServiceNowに蓄積された膨大なデータを、分析・活用したいと考えているすべての人にとって、まさに「ゲームチェンジャー」となり得る機能です。
何が可能になるのか?
これまで、ServiceNowのデータをスプレッドシートで分析するには、「ServiceNowでデータをエクスポート(CSVなどでダウンロード)→ PCに保存 → Googleスプレッドシートを開く → ファイルをインポート(アップロード)」という、面倒で時間のかかる手作業が必要でした。
今回の連携により、このプロセスが劇的に変わります。ServiceNowのプラットフォーム上で、データリストのメニューから「Googleスプレッドシートへエクスポート」を選択するだけ。ワンクリックで、ServiceNow上のデータが、あなたのGoogleドライブ内に、新しいスプレッドシートとして直接作成されるのです。
この連携がもたらす絶大なメリット
データ分析のリードタイムを劇的に短縮:
手作業によるファイルのダウンロード・アップロードが不要になることで、データ分析に取り掛かるまでの時間が大幅に短縮されます。これにより、データに基づいた意思決定のスピードが向上します。常に最新のデータで分析可能に:
手作業でのデータ移行は、データの鮮度が落ちる原因にもなります。この連携を使えば、必要な時にいつでも、ServiceNowから最新のデータを直接取得できます。Googleスプレッドシートの強力な機能をフル活用:
エクスポートされたデータに対して、ピボットテーブルを使った集計、グラフ機能による可視化、Looker Studioと連携したインタラクティブなダッシュボードの作成など、Googleスプレッドシートが持つパワフルなデータ管理・分析機能を、余すところなく活用できます。
例えば、「先月発生したITインシデントの種類別件数をグラフ化する」「部署ごとの問い合わせ対応時間の平均を算出する」といった、高度な分析が、誰でも簡単に行えるようになります。
利用開始にあたって(管理者・ユーザー向け情報)
この強力な連携機能を活用するためには、管理者による事前の設定が必要です。
管理者向けの設定手順
Google Chat連携:
まず、ServiceNowの管理者アカウントで、「ServiceNow Store」から「Conversational Integration with Google Chat」アプリをインストールする必要があります。
この連携を利用するには、ServiceNowのバージョンが「Yokohama patch 6」以降である必要がありますので、自社の環境をご確認ください。
Googleスプレッドシート連携:
ServiceNowとGoogle API間の安全な通信を確立するため、ServiceNowの管理者が、OAuth認証の設定を行う必要があります。
これには、Google Cloud Platform側でのAPI設定と、ServiceNow側での接続情報・認証情報エイリアスの設定が含まれます。詳細な手順は、ServiceNowの公式ドキュメントをご参照ください。
エンドユーザー向けの利用方法
Google Chat連携:
管理者が設定を完了すれば、ユーザーは新しいチャットを開始する際に、宛先として自社のServiceNowアプリを選択するだけで、Virtual Agentとの対話を開始できます。Googleスプレッドシート連携:
ServiceNowのプラットフォーム上で、任意のデータリストを表示し、列メニューから「エクスポート > Googleスプレッドシート」を選択します。初回利用時のみ、Googleアカウントへのアクセスを許可するための認証が必要になります。
まとめ
今回発表された、ServiceNowとGoogle Chat・Googleスプレッドシートの公式連携は、多くの企業が抱える「システムの分断」という課題を解決し、業務プロセスを飛躍的に効率化させる、非常に強力なソリューションです。
Google Chat連携は、問い合わせや申請といった日常業務を、普段のコミュニケーションの流れの中に自然に溶け込ませる。
Googleスプレッドシート連携は、基幹システムに眠る貴重なデータを、誰もが使い慣れた分析ツールへと解放する。
この連携は、社員一人ひとりの生産性を向上させるだけでなく、組織全体のデータ活用文化を醸成し、DXをさらに加速させるための、重要な一歩となるでしょう。
ServiceNowとGoogle Workspaceの両方を活用している企業の管理者の皆様は、ぜひこの公式インテグレーションの導入を検討してみてはいかがでしょうか。