本記事はGoogle Workspace Updatesブログ( https://workspaceupdates.googleblog.com/ )の情報を基に、2025年9月3日に作成されました。
Google Workspaceをお使いの皆さん、こんにちは。
あなたのGoogle Driveには、これまでに作成した、数多くのGoogleスライドのプレゼンテーション資料が、眠ってはいませんか。
新製品の企画書、四半期ごとの業績報告、新入社員向けの研修マニュアル、そして顧客への提案資料。
これらのスライドは、あなたの知識、アイデア、そして情熱が凝縮された、非常に価値のある知的資産です。しかし、その多くは、一度プレゼンテーションで使われた後、アーカイブされ、二度と日の目を見ることなく、静かに眠りについているのではないでしょうか。
もし、あなたが作り上げた、その珠玉のスライド資料を、AIが、まるでテレビの情報番組のように、ナレーションやBGM、そして効果的な演出を加えた、魅力的な「ビデオコンテンツ」へと、自動で生まれ変わらせてくれるとしたら。
あなたの知的資産は、どれほど多くの新しい価値を生み出すでしょうか。
この度、そんな夢のような未来を実現する、まさに「神連携」と呼ぶにふさわしい、画期的な新機能が、GoogleのAI動画作成ツール「Google Vids」に搭載されました。今回は、あなたのプレゼンテーション資料を、再利用可能なビデオコンテンツへと昇華させる、この驚くべきアップデートについて詳しく解説していきます。
前提知識:「Google Vids」と、その魔法の呪文「Help me create」
今回のアップデートの凄さを理解するために、まずは、主役である「Google Vids」の基本機能をおさらいしましょう。
Google Vidsは、専門的なスキルがなくても、誰もが簡単にプロ品質のビデオを作成できる、AIを活用した動画作成ツールです。その中核をなすのが、「Help me create(作成を手伝って)」という、AIへの指示機能です。
ユーザーが、作りたいビデオの概要を簡単な言葉(プロンプト)で指示するだけで、AI「Gemini」が、その内容に合ったストーリーボード(構成案)、台本、ストック映像、BGM、そしてAIナレーションなどを組み合わせ、ビデオの下書きを自動で生成してくれます。
これまでの課題:AIの「知識源」の限界
これまでも、「Help me create」は非常に強力でした。しかし、そのAIがビデオを生成するための「知識源」は、主に、あなたがプロンプトで与えるテキスト情報や、Googleが保有する一般的なストック素材に限られていました。
あなたが時間をかけて作り上げた、独自の図解や、こだわりのグラフ、そして製品のスクリーンショットが詰まった、あのGoogleスライドの内容を、AIは直接参照することができなかったのです。
今回のアップデートの核心:スライドが、AIの「最高の教科書」になる
今回のアップデートは、この長年の壁を、完全に取り払います。
「Help me create」機能が、あなたのGoogle Driveに保存されている「Googleスライドのプレゼンテーション」を、直接参照できるようになったのです。
これにより、AIは、あなたがプロンプトで指定したスライドの中身を、隅々まで深く分析。そこに書かれているテキスト、挿入されている画像、図形、グラフといった、すべての視覚的要素を、ビデオ生成のための「最高の教科書」として活用します。
具体的に、何が起こるのか?
AIが、あなたのスライドを「読む」そして「見る」:
AIは、スライド内のテキストを読み解き、全体の論理構成や、各スライドで伝えたいメッセージの要点を把握します。同時に、挿入されている画像やグラフが、どのような意味を持つのかを、視覚的に理解します。AIが、スライドの要素を「ビデオの部品」として再構成:
AIは、スライドから抽出したテキストや画像を、ビデオのシーンを構成するための、最適な「部品」として再利用します。スライド内の重要なテキストは、ビデオの台本(スクリプト)や、画面に表示されるテロップの元ネタになります。
スライド内の象徴的な画像やグラフは、ビデオの最も効果的なタイミングで、インサート映像として挿入されます。
そして、これらの要素を基に、AIナレーションやBGMを加え、一つのまとまりのあるビデオドラフト(下書き)を、自動で生成してくれるのです。
驚くほど簡単!スライドをビデオに変える魔法の呪文
この強力な機能を使いこなすのに、難しい操作は一切不要です。
vids.new を開きます。
[Plan your video story(ビデオストーリーを計画する)] を選択します。
そして、プロンプト入力欄に、魔法の呪文「@」を入力します。
すると、あなたのGoogle Drive内のファイルリストが表示されるので、ビデオの元ネタにしたいGoogleスライドのプレゼンテーションを選択します。
最後に、「このスライドを基に、新製品の特長を解説する、3分間の紹介ビデオを作成して」といったように、作りたいビデオの概要を付け加えるだけです。
たったこれだけで、AIはあなたのプレゼンテーションを、新しい命が吹き込まれた、ダイナミックなビデオコンテンツへと、生まれ変わらせてくれるのです。
なぜこれが重要なのか?組織の知的資産を最大化する3つのメリット
この「スライドからビデオへ」の連携は、私たちのコンテンツ制作のあり方を、根本から変革する力を持っています。
メリット1:コンテンツの「寿命」を延ばし、価値を再生産する
一度きりのプレゼンテーションで使われただけで、眠ってしまっていたスライド資料。それらが、ビデオという、より多くの人が、より手軽に視聴できるフォーマットに生まれ変わることで、その「寿命」は劇的に延びます。
活用例:研修コンテンツのオンデマンド化
講師がライブで行った研修のスライドを、後からVidsでビデオ化。AIナレーションを付ければ、いつでもどこでも視聴可能な、高品質なeラーニング教材が、ほぼコストゼロで完成します。活用例:営業資料の多角展開
顧客への提案で使ったスライドを、製品の特長をまとめた短い紹介ビデオに変換し、ウェブサイトやSNSで公開。一度作った資料を、マーケティングコンテンツとして、効果的に再利用できます。
メリット2:ビデオ制作の「時間」と「手間」を極限まで削減
ゼロからビデオを作る場合、構成を考え、素材を探し、台本を書く、というプロセスには、多くの時間がかかります。
この機能を使えば、すでに構成も素材もテキストも、すべてが揃っている「完成されたスライド」が出発点となるため、ビデオ制作にかかる時間と手間を、極限まで削減できます。まさに、思考のスピードで、アイデアをビデオという形にすることができるのです。
メリット3:「非デザイナー」でも、視覚的に魅力的なビデオが作れる
「スライドは作れるけど、動画編集は苦手…」という、多くのビジネスパーソンにとって、この機能はまさに救世主です。
あなたが、ロジカルに情報を整理して作り上げたスライドさえあれば、あとはAIが、それを視覚的に、そして聴覚的に、魅力的なビデオへと昇華させてくれます。これにより、組織内の誰もが、質の高いビデオコンテンツの作り手となり、組織全体のコミュニケーションの質が向上します。
利用する上で知っておきたい、現在の制約事項
言語は現在英語のみ:
Vidsの「Help me create」を含むAI機能は、現時点では英語でのみ利用可能です。プロンプトの入力も英語で行う必要があります。今後の日本語への正式対応が、強く期待されます。
まとめ
今回ご紹介した、Google VidsとGoogleスライドの神連携。これは、組織内に眠る、膨大な「知的資産」を、AIの力で掘り起こし、新しい価値を与える、まさに現代の「錬金術」です。
あなたのGoogle Driveは、もはや単なるファイルの保管庫ではありません。それは、過去に作られたすべてのプレゼンテーションが、未来の新しいコンテンツへと生まれ変わる可能性を秘めた、「創造性の鉱山」なのです。
ぜひ、この新しい魔法の杖を手に入れて、あなたの眠っているスライドに、再び命を吹き込んでみてはいかがでしょうか。