本記事はGoogle Workspace Updatesブログ( https://workspaceupdates.googleblog.com/ )の情報を基に、2025年9月16日に作成されました。
Google Workspaceをお使いの皆さん、こんにちは。
日々の業務で、Googleカレンダーの「イベントのコピー」や「複製」機能は、もはや手放せない便利な機能の一つですね。
毎週行われる定例会議、毎月開催される部署の全体会、あるいは、似たような形式の打ち合わせを複数設定する際など、この機能を活用することで、私たちは多くの時間と手間を節約してきました。
しかし、その手軽で便利な操作の裏側に、実は、多くの人が気づいていない、重大な「セキュリティ上の落とし穴」が潜んでいたことを、ご存知でしょうか。
例えば、こんなヒヤッとするような経験、あるいは、想像をしたことはありませんか。
「先週行った『A社との機密性の高い打ち合わせ』の予定をコピーして、今週の『B社との定例会』の予定を作成した。当日、B社との会議を始めると、なぜか、全く関係のないA社の担当者が、会議室に入ってきてしまった…!」
「毎週のチーム定例会を複製して、あるメンバーとの1対1の面談の予定を作った。面談後、その録画や議事録が、なぜかチーム全員に共有されてしまった…」
これらは、決して架空の話ではありません。これまでのGoogleカレンダーの仕様では、イベントをコピーすると、そこに紐づけられたGoogle Meetの会議リンクも、そのまま複製されてしまっていたため、こうした「意図しない参加」や「情報の誤配」といった、深刻なインシデントが発生するリスクが、常に存在していたのです。
この度、その長年の課題を根本から解決し、私たちのオンライン会議を、より安全で、安心なものへと進化させる、すべてのアカウントに影響のある、極めて重要な仕様変更が発表されました。今回は、あなたの会議のプライバシーを守るための、この大きな変更点について、詳しく解説していきます。
何が変わるのか?:「イベントをコピー」しても、Meetリンクはコピーされない
今回の仕様変更の核心は、非常にシンプルでありながら、その影響は絶大です。
それは、「Googleカレンダーで既存のイベントを『コピー』または『複製』しても、そこに設定されていたGoogle Meetの会議リンクは、新しいイベントには、自動的に引き継がれなくなる」という点です。
あなたのカレンダー操作は、こう変わる
これまでの挙動 (Before):
イベントをコピーすると、タイトル、時間、説明、そしてGoogle Meetの会議リンクまで、すべてが完全に複製された、新しいイベントが作成されていました。新しい挙動 (After):
イベントをコピーすると、タイトルや時間、説明などはこれまで通り複製されますが、「Google Meetのビデオ会議」の欄は、空の状態になります。新しいイベントには、新しいMeet会議が、自動的には設定されません。
これにより、ユーザーは、新しいイベントを作成した後、必要に応じて、「Google Meetのビデオ会議を追加」ボタンをクリックして、そのイベント専用の、全く新しい、ユニークな会議リンクを生成することになります。
なぜこの変更が重要なのか?:あなたの会議を守る、3つの絶大なセキュリティメリット
一見すると、「一手間増えて、少し不便になった」と感じる方もいるかもしれません。しかし、この変更の裏には、私たちのコラボレーションの安全性を、根本から向上させる、3つの極めて重要な目的があります。
メリット1:会議の「独立性」と「機密性」を確保し、”うっかりミス”による不正参加を撲滅
これが、今回の変更における、最大のメリットです。
会議のリンクが、イベントごとにユニーク(固有)になることで、それぞれの会議は、完全に独立した、鍵のかかった「部屋」になります。これにより、冒頭で紹介したような、「B社の会議に、A社の人が入れてしまう」といった、最も恐ろしく、そして最も起こりがちだった「うっかりミス」による情報漏洩インシデントを、原理的に、そして完全に防ぐことができます。
招待された、そのイベントの参加者だけが、その会議室の「鍵」を持つ。この当たり前で、しかし最も重要なセキュリティの原則が、今回の変更によって、確実に担保されるのです。
メリット2:会議の「成果物(録画や議事録など)」を、安全に共有
Google Meetの便利な機能の一つに、会議の録画や、Meet内で利用したJamboard、あるいはAIが生成した議事録といった「成果物(artifacts)」が、そのカレンダーイベントの参加者に、自動で共有される、というものがあります。
これまでの仕様では、複数の異なる会議で、同じMeetリンクを使い回してしまうと、この成果物の共有範囲が、意図せず拡大してしまう、という深刻なリスクがありました。例えば、「1対1の面談」の録画が、「チーム定例会」の参加者全員に見えてしまう、といった事態です。
今回の変更により、各会議が完全に独立するため、録画や議事録といった機密情報を含む成果物は、その会議に紐づく「正しい参加者」にのみ、限定して、安全に共有されるようになります。
メリット3:「情報の誤配」を防ぎ、ユーザーの混乱を解消
「カレンダー上のイベント名は違うのに、クリックしてみたら、全部同じMeet会議室につながってしまう」という状況は、ユーザーにとって、大きな混乱の元でした。
今回の変更は、こうしたシステムの「曖昧さ」を解消します。ユーザーは、「このカレンダーイベントは、このMeet会議」と、1対1の関係で、迷うことなく、そして安心して、会議に参加できるようになります。これにより、日々の業務における、無用なストレスや確認作業が減少します。
私たちの働き方はどう変わる?:ユーザーが意識すべきこと
この仕様変更は、管理者やユーザーによる設定は不要で、すべてのGoogleアカウントに、自動的に適用されます。そのため、私たちは、新しい挙動に、意識的に慣れていく必要があります。
これまでの習慣を見直す:
これまで、「過去のイベントをコピーして、新しい打ち合わせを設定する」という方法を多用していた方は、特に注意が必要です。今後は、イベントをコピーした後、必ず「Google Meetのビデオ会議を追加」ボタンを押して、新しい会議リンクを発行する、という一手間を、忘れないようにしましょう。【応用編】意図的に、同じMeetリンクを使いたい場合は?
もちろん、複数回にわたるセミナーや、継続的な面接、あるいはプロジェクトの専用バーチャル会議室など、意図的に「同じMeetリンク」を、複数の異なるカレンダーイベントで使い回したい、という正当なニーズも存在します。
その場合は、以下の「手動」での操作を行うことで、これまでと同じ運用が可能です。まず、ベースとなる元のカレンダーイベントを開き、Google Meetの会議コード(またはURL)をコピーします。
次に、新しく作成(またはコピー)したイベントの編集画面を開きます。
「Google Meetのビデオ会議を追加」ボタンを押すのではなく、説明欄などに、先ほどコピーした会議コード(またはURL)を、直接貼り付けます。
この手順を踏むことで、あなたは、そのリスクを理解した上で、意図的に、会議リンクを再利用することができます。
まとめ
今回ご紹介した、Googleカレンダーの「イベントのコピー」機能における、重要な仕様変更。
それは、私たちのオンライン会議における、「プライバシー」「セキュリティ」「信頼性」という、最も基本的な土台を、より強固なものへと作り変えるための、非常に大きな一歩です。
最初は、一手間増えることに、少しだけ戸惑うかもしれません。しかし、その一手間が、あなたの、そしてあなたの組織の、最も重要な情報を、深刻なリスクから守ってくれるのです。
Google Workspaceが、単なる利便性の追求だけでなく、私たちが安心してコラボレーションできる、「安全な場」を提供することに、強くコミットしていることの、何よりの証と言えるでしょう。ぜひ、今日から、この新しい、より安全なカレンダーの作法に慣れ親しんでいきましょう。