本記事はGoogle Workspace Updatesブログ( https://workspaceupdates.googleblog.com/ )の情報を基に、2025年9月17日に作成されました。
教育現場で、AIをどのように活用し、生徒一人ひとりの「主体的な学び」を引き出すか。
これは、現代のすべての教育関係者にとって、最も重要なテーマの一つです。
今年、Googleは、その答えの一つとして、Geminiアプリに、革新的な学習支援ツールを搭載しました。それは、授業で使った資料や、教科書のPDFをアップロードするだけで、AIが、その内容に基づいた「オリジナルクイズ」を、瞬時に自動で生成してくれる、というものです。
しかし、この、生徒の自学自習を強力にサポートするはずの画期的な機能には、これまで、一つの大きな制約がありました。それは、「18歳以上」という年齢制限です。これにより、最もこの機能を必要としていたであろう、多くの中学生や高校生が、その恩恵を受けることができずにいました。
この度、その長年の「壁」がついに取り払われます。教育現場からの強い要望に応え、Geminiアプリの「クイズ自動生成」機能が、18歳未満のユーザーにも、全面的に解放されることが発表されました。
これは、日本の中等教育における、AI活用のあり方を、根底から変える可能性を秘めた、極めて重要なアップデートです。今回は、この変更が、生徒と教員の「学び」と「教え」に、どのような革命をもたらすのか、詳しく解説していきます。
新機能の核心:生徒が、自分だけの「AI家庭教師」を手に入れる
今回のアップデートの核心は、非常にシンプルです。
それは、「18歳未満の生徒たちが、自分自身のGoogleアカウントで、Geminiアプリを使い、あらゆる科目について、自分だけのオリジナルクイズを、自由に、そして安全に、作成できるようになった」という点にあります。
クイズが作れる「Canvas」とは?
このクイズ生成機能は、Geminiアプリ内の「Canvas」という、多機能なワークスペース上で動作します。生徒は、このCanvasを使って、以下のような簡単なステップで、自分だけの問題集を作成できます。
学習素材を用意する:
クイズの元となる、学習素材を用意します。それは、先生が配布した授業のプリント(PDF)、自分で取った講義ノート、あるいは、Google Driveに保存している参考資料など、どんなものでも構いません。Geminiに、素材を「食べさせる」:
用意したファイルを、Geminiアプリにアップロードします。あるいは、もっと手軽に、「神経系の働きについての練習問題を出して」といったように、学びたいテーマを、簡単な言葉(プロンプト)で、AIに伝えるだけでもOKです。AIが、クイズを自動生成:
あなたの指示を受け取ったGeminiは、その内容を深く理解し、重要なポイントや、覚えるべきキーワードなどを基に、多肢選択問題や、短答式の問題などを、瞬時に生成します。自分だけの「実力テスト」に挑戦:
生成されたクイズに、その場で挑戦。自分の理解度を、客観的に、そしてゲーム感覚で、確認することができます。
なぜこれが重要なのか?:「受け身の学習」から「主体的な学習」へ
この機能が、18歳未満の生徒たちに解放されたことは、日本の教育現場に、3つの大きな革命をもたらします。
革命1:学習の「パーソナライズ(個別最適化)」が、生徒の手で実現する
生徒の理解度や、苦手な分野は、一人ひとり、全く異なります。
この機能を使えば、生徒は、画一的な問題集を解くのではなく、「自分が、今、一番理解したいこと」「自分が、一番苦手だと感じている部分」に、完全に焦点を当てた、自分だけの問題集を作成できます。
活用例:
数学の授業で、「二次関数」の単元につまずいてしまったAさん。Aさんは、その単元の教科書のページをスマートフォンで撮影し、Geminiにアップロード。「この内容で、特に応用問題を中心にしたクイズを10問作って」と指示。生成されたクイズに繰り返し挑戦することで、自分のペースで、効果的に苦手分野を克服していきます。
革命2:「アウトプット中心」の、能動的な学習習慣が身につく
ただ教科書を読む、ノートを眺める、といった「インプット」中心の学習は、知識が定着しにくい、という課題がありました。
この機能は、生徒に「クイズを解く」という、「アウトプット」の機会を、無限に提供します。
活用例:
定期試験の1週間前。Bさんは、試験範囲のすべての授業ノートをGeminiに読み込ませ、毎日、異なる切り口でクイズを生成させ、それに挑戦することを日課にします。「思い出す」という行為を繰り返すことで、記憶は強固なものとなり、知識の定着率が飛躍的に向上します。
革命3:教員の役割が、「知識の伝達者」から「学習の促進者」へ
この機能は、教員の働き方にも、大きな変化をもたらします。
これまで、生徒一人ひとりの習熟度に合わせた、小テストや練習問題を作成することは、教員の大きな負担となっていました。
これからは、教員が、質の高い学習素材(プリントや参考資料)を生徒に提供し、「この資料を使って、各自でクイズを作って、自分の理解度を確認してみよう」と促すだけで、AIが生徒一人ひとりのための、個別最適な教材を、自動で生成してくれるようになります。
これにより、教員は、問題作成という定型業務から解放され、生徒の学習の進捗を見守り、個別の相談に乗ったり、より深い問いを投げかけたりする、といった、より本質的で、人間的な指導に、時間を集中させることができるのです。
また、教員自身が、この機能を使って、授業で使う小テストや、復習用のクイズを、瞬時に作成することも可能です。作成したクイズは、クラスの生徒と共有することもできます。
安全性への配慮
18歳未満の生徒が利用するにあたり、安全性は最も重要な要素です。Google Workspace for Educationのアカウントで利用する場合、入力されたデータが、許可なくAIモデルの学習に使われることはないなど、エンタープライズレベルのデータ保護が適用されるため、生徒も教員も、安心してこの機能を利用することができます。
利用開始にあたって(管理者・教員・生徒向け情報)
管理者向けの情報:
この機能の利用にあたり、Canvas機能に対する、個別の管理者コントロールはありません。組織でGeminiアプリの利用が有効になっていれば、生徒もこの機能を利用できるようになります。教員・生徒向けの情報:
Geminiアプリを開き、ファイルをアップロードするか、プロンプトを入力するだけで、すぐにクイズ作りを始めることができます。Google Drive内のファイルを活用するには、Geminiの設定で、Google Workspaceアプリとの連携を有効にする必要があります。対象エディション:
この機能は、無料の「Education Fundamentals」を含む、Google Workspace for Educationのすべてのエディション、および関連するAIアドオンで利用可能です。これにより、予算規模に関わらず、日本の多くの学校で、この先進的な学習ツールを導入できます。
まとめ
今回ご紹介した、Geminiアプリにおける「クイズ自動生成」機能の、18歳未満ユーザーへの解放。
これは、AIが、教育の主役である「生徒」自身の手に渡り、彼らの「学びたい」という知的好奇心を、直接的に、そして最大限に、エンパワーメント(力づけ)する、画期的な一歩です。
学習は、もはや、与えられるものを、ただ受け身でこなす作業ではありません。
自分自身の問いを立て、自分だけの学び方をデザインし、AIという最高のパートナーと共に、主体的に知識を探求していく、創造的な冒険へと、その姿を変えようとしています。
ぜひ、この未来の学習の形を、あなたの学校で、実現してみてはいかがでしょうか。