本記事はGoogle Workspace Updatesブログ( https://workspace.googleblog.com/ )の情報を基に、2025年9月22日に作成されました。
Google Workspaceをお使いの皆さん、こんにちは。
日々のコラボレーションの中心である、Google Drive。
その中でも、「共有フォルダ」は、プロジェクトチームや部署全体で、ファイルを一元的に管理し、共同作業を行うための、極めて重要な機能です。
しかし、その便利な共有フォルダの運用において、長年、多くのユーザーを悩ませ、そして、意図しない情報漏洩のリスクを生み出していた、一つの「複雑なルール」が存在したことを、ご存知でしょうか。
それは、「共有フォルダの中にある、特定のファイルやサブフォルダだけ、アクセス権を、フォルダ本体よりも、厳しく制限できる」という、一見すると便利そうな、しかし実は非常に分かりにくい、特殊な権限設定です。
この「例外的な権限設定」が、これまで、どれほどの混乱と、セキュリティ上の懸念を生み出してきたか。
この度、Googleは、その長年の課題を根本から解決し、Google Driveの共有体験を、よりシンプルで、より安全で、そして、誰にとっても予測可能なものへと、進化させる、極めて重要な仕様変更を発表しました。
今回は、2025年9月22日から、すべてのGoogleアカウントに適用される、このDriveの共有権限に関する、大きなルールの変更について、すべてのユーザーが「必ず」知っておくべき内容と、その背景にある思想を、詳しく解説していきます。
これまでの課題:「例外」がもたらす、混乱とセキュリティリスク
今回の仕様変更の核心を理解するために、まずは、これまでの共有フォルダが抱えていた、根本的な課題について、振り返ってみましょう。
状況設定:
あるプロジェクトチームが、「プロジェクトA」という共有フォルダを使って、作業をしているとします。このフォルダには、チームメンバー全員が、「編集者」としてアクセスできます。
このフォルダの中に、「超機密_予算案.xlsx」という、特に重要なファイルが存在するとします。
これまでの挙動(Before):
プロジェクトリーダーは、この「超機密_予算案.xlsx」ファイルだけ、チームメンバー全員に見られないように、一部の経営層メンバーだけに、アクセス権を「制限」することができました。
一見すると、これは、きめ細かなアクセス制御ができて、便利に見えます。しかし、この「例外」は、深刻な問題を引き起こしていました。
ユーザーの混乱:
チームメンバーは、「プロジェクトA」フォルダにはアクセスできるのに、その中にあるはずの「超機密_予算案.xlsx」ファイルが、なぜか見えない、あるいは開けない、という不可解な状況に陥ります。「権限がないのか、ファイルが移動されたのか、それともシステムのエラーなのか?」原因が分からず、無用な混乱と、確認作業が発生していました。管理の複雑化と、セキュリティリスク:
管理者の視点から見ると、事態はさらに深刻です。フォルダ全体の権限を見ても、その中に、どのような「例外」が、いくつ隠されているのか、一目で把握することは、非常に困難でした。この複雑さが、権限管理のミスを誘発し、「本来、制限すべきだったファイルが、実は誰でも見られる状態になっていた」といった、意図しない情報漏洩の温床となっていたのです。
何が変わるのか?:「フォルダのルールは、絶対」という、シンプルな世界の到来
今回の仕様変更は、この、混乱の元凶であった「例外」を、完全に廃止するものです。
2025年9月22日以降、以下の通り、仕様が変更されます。
新しいルール:
共有フォルダの中にある、ファイルやサブフォルダのアクセス権は、常に、その親である「共有フォルダ」の権限設定を、継承します。
共有フォルダの中にある、特定のファイルだけを、フォルダ本体よりも厳しく「制限」することは、できなくなります。
つまり、「フォルダに入っているものは、フォルダと同じルールに従う」。
この、誰にとっても、直感的で、分かりやすい、シンプルな原則が、Google Driveの共有における、絶対的なルールとなるのです。
【重要】UIの変更点
この仕様変更に伴い、共有設定のダイアログボックスも、以下のように変わります。
共有フォルダ内のファイルの共有設定画面で、これまで表示されていた、「アイテムのみを更新」といった、例外を作成するためのオプションは、表示されなくなります。
もし、あなたが、親フォルダの権限を変更する権限を持っていない場合、共有設定のオプションの一部が、グレーアウトして、選択できなくなります。
なぜこの変更が重要なのか?:「予測可能性」が、セキュリティの鍵
この変更は、Google Driveのセキュリティと、ユーザビリティを、根本から向上させる、極めて重要な一歩です。
セキュリティの向上:
権限のルールがシンプルになることで、「隠れた例外」がなくなり、管理者は、フォルダ単位で、アクセス権を、自信を持って、一貫性のある形で、管理できるようになります。これにより、設定ミスによる、意図しない情報漏洩のリスクが、大幅に低減します。ユーザー体験の向上:
「このフォルダが見えるなら、中身も全部見えるはず」という、ユーザーの自然な期待と、システムの実際の挙動が、完全に一致します。これにより、権限に関する混乱や、無用な問い合わせが、劇的に減少します。
「それでも、ファイル単位で、アクセスを制限したい場合は?」
もちろん、特定のファイルだけを、限られたメンバーと共有したい、という正当なニーズは、存在します。Googleは、そのための代替案として、以下の、より安全で、分かりやすい方法を推奨しています。
代替案:
そのファイルを、現在の共有フォルダから、一旦、マイドライブなどの、より制限された場所に「移動」させます。そして、その移動先で、必要なメンバーだけに、改めて共有設定を行う。
この手順を踏むことで、「どこに、どのような権限で、ファイルが存在しているか」が、常に明確な状態を、維持することができます。
もう一つの重要な変更:「編集者による権限変更と共有」設定の挙動
今回のアップデートでは、もう一つ、関連する、重要な仕様変更が含まれています。
ファイルのオーナーが設定できる、「編集者は権限を変更して共有できます」というチェックボックス。この設定の挙動も、より一貫性のあるものへと、変更されます。
これまでの挙動:
このチェックを「オフ」にすると、編集者は、そのファイルを、直接、他の人に再共有することはできませんでした。しかし、そのファイルのオーナーが、そのファイルを、より広い範囲に共有されているフォルダに移動させた場合に限り、フォルダの権限が、ファイルに適用されていました。新しい挙動(9月22日以降):
このチェックを「オフ」にした場合でも、そのファイルが、より広い権限を持つ共有フォルダに置かれた場合、オーナー以外の誰がフォルダの権限を変更したとしても、そのフォルダのアクセス権が、ファイルに適用されるようになります。
これは、前述の「フォルダのルールは、絶対」という、新しい大原則に、すべての挙動を統一するための、論理的な変更です。
【重要】既存ファイルへの、限定的なアクセス権の自動適用(10月8日以降)
さらに、この変更に伴う、経過措置として、以下の重要なアクションが、Googleによって自動的に行われます。
2025年10月8日の時点で、「編集者は権限を変更して共有できます」の設定が「オフ」になっている、既存のすべてのアイテムに対して、Googleは、自動的に「限定的なアクセス」という、特別な状態を適用します。
この措置により、これらの既存のアイテムに関しては、オーナーだけが、引き続き、直接共有を行える、という、これまでの挙動に近い状態が、維持されます。
ただし、10月8日以降に、この設定がオフにされた、新しいアイテムには、この措置は適用されません。
まとめと、あなたがすべきこと
今回ご紹介した、Google Driveの共有権限に関する、2つの重要な仕様変更。
これは、Google Driveという、私たちのコラボレーションの基盤を、よりシンプルで、より安全で、そして、誰にとっても、より「分かりやすい」場所にするための、大きな進化です。
あなたが、今すぐ、何かをする必要はありません。
これらの変更は、システム全体のロジックの変更であり、すべてのファイルとフォルダに、自動的に適用されます。
しかし、私たちは、この新しい「ルール」を、正しく理解し、これからのファイル共有のあり方を、この新しい原則に合わせて、見直していく必要があります。
「フォルダのルールは、絶対」。
このシンプルな言葉を、これからの、あなたのGoogle Drive活用の、新しい合言葉にしてください。そうすれば、あなたのチームのコラボレーションは、これまで以上に、安全で、そしてストレスのないものへと、変わっていくはずです。