本記事はGoogle Workspace Updatesブログ( https://workspaceupdates.googleblog.com/ )の記事を元に、日本のGoogle WorkspaceユーザーおよびGoogle Workspaceに興味がある方々に向けて、2025年11月4日に公開された情報を分かりやすく解説したものです。
組織のコミュニケーション基盤として、ますます重要度を増しているGoogle Chat。
その手軽さゆえに、社内の情報共有やコラボレーションを加速させる強力なツールです。
しかし、管理者の視点からは「誰でも自由に会話を始められることで、管理が煩雑になったり、意図しない情報共有が起きたりしないか」といった懸念の声も聞かれました。
そんな悩みに応える、待望の管理機能が強化されます。
これまで教育機関向けプランでのみ提供されていた「会話作成の制限機能」が、多くのビジネス向けプランにも展開されることが発表されました。
この機能を使えば、組織のセキュリティポリシーや運用ルールに合わせて、特定のユーザーが新しい会話を作成することを制限できます。
今回は、この新機能がどのようなもので、企業のコミュニケーション管理にどのようなメリットをもたらすのか、設定方法とあわせて詳しく解説していきます。
何が変わるのか?新機能「会話作成の制限」とは
今回新たに追加されるのは、Google Workspaceの管理者が、特定のユーザーに対してGoogle Chatで新しい会話を開始する権限を制御できる機能です。
具体的には、この設定を適用されたユーザーは、以下の操作ができなくなります。
新しい1対1のダイレクトメッセージの開始
新しいグループチャットの作成
新しい「スペース」の作成
既存の会話(グループチャットやスペース)に新しいメンバーを追加すること
一方で、制限が適用されたユーザーでも、コミュニケーションが完全に遮断されるわけではありません。以下の操作は引き続き可能です。
他のユーザーから招待された会話やスペースに参加すること
既にメンバーとして所属している会話やスペースで、メッセージを閲覧・返信すること
つまり、「自発的に新しいコミュニケーションの場を作ることはできないが、招待された場でのコミュニケーションは可能」という状態を作り出せるのです。これにより、組織はコミュニケーションの自由度と統制のバランスを取ることが可能になります。
なぜこの機能が重要?導入メリットと具体的な活用シーン
この「会話作成の制限機能」は、特に多様な従業員が働く組織や、厳格な情報管理が求められる環境で大きなメリットを発揮します。
従業員が誰でも自由にスペースを作成できる環境では、管理者の目が届かない非公式なスペース(いわゆる「野良スペース」)が乱立し、重要な情報が分散したり、誤った相手に情報が共有されたりするリスクがありました。
この機能を使えば、例えばアルバイトや派遣社員、インターンなど、コミュニケーションの範囲を特定の業務に限定したい従業員に対して、会話の作成を制限することができます。これにより、企業の公式なコミュニケーションチャネルを明確にし、内部統制を強化。意図しない情報漏洩のリスクを低減させることができます。
店舗スタッフや工場作業員、配送ドライバーといった現場で働く従業員(Frontline Worker)にとって、チャットツールは本社からの指示や重要なお知らせを受け取るための重要なライフラインです。
彼らにとっては、自ら新しい会話を立ち上げる機会は少なく、むしろ必要な情報を確実に入手できることが重要です。この機能を使えば、彼らを「情報受信者」として位置づけ、会社からの公式アナウンス用スペースには参加してもらいつつ、現場スタッフ間での非公式な会話作成は制限するといった運用が可能になります。これにより、コミュニケーションチャネルをシンプルに保ち、重要な情報がノイズに埋もれるのを防ぎます。
全社アナウンスの統制
全従業員が参加するアナウンス用のスペースを作成し、人事部や総務部など、発信権限を持つ部署のメンバー以外は会話作成を制限する。これにより、公式発表の場としての役割を明確に保つことができます。プロジェクトにおける情報管理
大規模なプロジェクトで、社内外の多くの関係者が参加するスペースを運用する場合。プロジェクトマネージャーや主要メンバーのみが新しい会話(サブタスク用のスペースなど)を作成できるようにし、外部の協力会社や一時的な参加者には、既存の会話への返信のみを許可する。これにより、プロジェクトの情報管理を一元化し、混乱を防ぎます。アルバイト・パートタイマーのコミュニケーション管理
店舗運営において、店長や正社員は自由にスタッフ間の連絡用スペースを作成できる一方、アルバイト・パートタイマーは招待されたスペースでのみ会話を可能にする。これにより、業務に必要な連絡はスムーズに行いつつ、管理外のコミュニケーションを抑制できます。
管理者向け:設定方法のポイント
この機能は、Google Workspace管理者が管理コンソールから設定します。設定のポイントは以下の通りです。
デフォルト設定は「OFF」
この機能は、何もしなければ有効になりません。デフォルトでは、すべてのユーザーが従来通り自由に会話を作成できます。制限をかけたい場合に、管理者が意図的に設定を有効にする必要があります。組織部門(OU)またはグループ単位で適用
設定は、特定の「組織部門(OU)」または「Googleグループ」に所属するユーザーに対して適用します。これにより、全社一律ではなく、「営業部だけ」「アルバイトのグループだけ」といった柔軟なポリシー設定が可能です。
組織構造に合わせた管理を行いたい場合は組織部門を、部門横断的なメンバーに適用したい場合はグループを利用するのが良いでしょう。設定手順の概要
Google管理コンソールにログインします。
[アプリ] > [Google Workspace] > [Google Chat] の順にアクセスします。
左側のパネルから、設定を適用したい組織部門またはグループを選択します。
「会話の作成」といった趣旨の設定項目を見つけ、「ユーザーは会話を作成できる」のチェックを外すことで、機能を有効化します。
エンドユーザー(利用者)への影響
この機能は管理者のみが設定できるため、エンドユーザー側に設定項目はありません。
もし、ある日突然Google Chatで新しい会話やスペースが作成できなくなった場合、それは管理者によってこのポリシーがあなたのアカウントに適用された可能性があります。
その場合でも、前述の通り、他の人から招待された会話に参加してメッセージをやり取りすることは可能です。コミュニケーション手段が完全になくなるわけではないのでご安心ください。不明な点があれば、まずは自社の情報システム部門やGoogle Workspace管理者に確認してみましょう。
いつから利用できる?展開スケジュールと対象プラン
この新機能の展開スケジュールと、利用可能なGoogle Workspaceのプランは以下の通りです。
展開スケジュール
即時リリースおよび計画的リリースドメインの両方で、2025年11月3日より完全展開が開始されています(機能の表示に1〜3日かかる場合があります)。利用可能なプラン
Business Plus
Enterprise Standard, Enterprise Plus
Business Continuity, Continuity Plus
Frontline Plus, Frontline Standard
※Business Starter, Business Standardなどのプランは対象外となりますのでご注意ください。
まとめ
今回発表されたGoogle Chatの「会話作成の制限機能」は、組織のコミュニケーションに「規律」と「安全性」をもたらす重要なアップデートです。
これにより、Google Workspace管理者は、自社のセキュリティポリシーや働き方に合わせて、より緻密なコミュニケーション環境を設計できるようになります。
特に、従業員の役割が多様化し、情報管理の重要性が高まる現代の企業にとって、この機能は非常に価値のある選択肢となるでしょう。
自社のコミュニケーション課題を解決する一つの手段として、この新機能の活用をぜひご検討ください。
