本記事はGoogle Workspace Updatesブログ( https://workspaceupdates.googleblog.com/ )の記事を元に、日本のGoogle WorkspaceユーザーおよびGoogle Workspaceに興味がある方々に向けて、2025年11月11日に公開された情報を分かりやすく解説したものです。
「社内の情報共有基盤を、Google Workspaceに統一したい」。
そう考えたとき、多くの管理者の頭を悩ませるのが、既存のクラウドストレージからの「データ移行」という大きな壁ではないでしょうか。
特に、Dropboxなどの他社サービスに長年蓄積された大量のファイルやフォルダ、そして複雑に設定されたアクセス権限。
これらを手作業で一つ一つ移行するのは、膨大な時間がかかるだけでなく、設定ミスによる情報漏洩のリスクや、データ欠損の危険性も伴います。
この、Google Workspaceへの移行における最大のボトルネックを解消する、待望の公式ツールが登場しました。
本日より、Google Workspaceの管理コンソールに、DropboxからGoogle Driveへファイルとフォルダを移行するための新しい「データ移行サービス」が、オープンベータ版として追加されます。
これは単なるファイルコピー機能ではありません。
組織の重要な情報資産である「アクセス権限」も含めて、安全かつ効率的に移行するための、強力なソリューションです。
今回は、この新機能がどのように移行プロセスを変革するのか、その詳細とメリットを詳しく解説していきます。
何が変わるのか?新機能「データ移行サービス」の概要
今回発表された新機能は、Google Workspaceの管理者が、管理コンソールから直接、組織のDropbox BusinessアカウントからGoogle Drive(マイドライブまたは共有ドライブ)へデータを移行できる公式ツールです。
これまで、こうした大規模な移行には、サードパーティ製の専門ツールを利用したり、手作業で地道にデータを移したりといった方法しかありませんでした。しかし、これからはGoogleが提供する信頼性の高い公式ツールを使って、数ステップの簡単な操作で移行プロセスを開始できるようになります。
このツールの最大の特長は、ファイルやフォルダそのものだけでなく、それらに付随する「共有設定」や「アクセス権限」も一緒にコピーできる点です。これにより、移行後もユーザーはこれまでと同じように必要なファイルにアクセスでき、管理者が一件一件権限を再設定する悪夢のような作業から解放されます。
ここがすごい!データ移行サービス(Dropbox→Drive)の5つの主な特徴
この新しいデータ移行サービスは、管理者の負担を軽減し、安全でスムーズな移行を実現するための、多くの優れた機能を備えています。
最も画期的なのが、アクセス権限の移行機能です。Dropboxで設定されていたユーザーやグループごとの共有設定を、Google Driveの権限モデルに合わせてインテリジェントに変換し、コピーしてくれます。
これにより、以下のようなメリットが生まれます。
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権限設定ミスの防止: 手作業による再設定で起こりがちな「本来見えてはいけない人にファイルが見えてしまう」「必要な人がアクセスできなくなる」といった重大なミスを防ぎます。
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業務の継続性: 移行が完了した瞬間から、従業員はこれまでと同じ感覚でファイルにアクセスできるため、業務への影響を最小限に抑えられます。
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管理工数の劇的な削減: 何千、何万というファイルに対する権限設定を自動化することで、管理者の移行にかかる工数を大幅に削減します。
このツールは、専門的な知識がなくても直感的に操作できるように設計されています。移行の開始から完了まで、管理コンソール上で数ステップの操作で進めることができます。
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接続: 移行元となるDropbox Businessアカウントに接続します。
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指定: どのユーザーのデータやチームフォルダを、Google Driveのどのユーザーのマイドライブや共有ドライブにコピーするのか、移行元と移行先をマッピングします。
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権限の指定: 移行したいアクセス権限を持つユーザーやグループを指定します。
たったこれだけで、あとはシステムが自動でデータのコピーを開始してくれます。
このツールは、個人利用ではなく、組織全体での移行を想定して作られています。一度の操作で、最大100のDropboxユーザーまたはチームフォルダのデータをまとめて移行対象として設定できます。これにより、部門単位や全社規模での段階的な移行計画も、効率的に実行することが可能です。
「移行はちゃんと進んでいるだろうか」「エラーは起きていないか」大規模なデータ移行中は、こうした不安がつきものです。
このツールには、移行の進捗状況を詳細に把握できる、包括的なレポート機能が備わっています。
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移行が完了したファイル数、スキップされたファイル数などをリアルタイムで確認できます。
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移行レポートをCSVなどの形式でエクスポートし、万が一エラーが発生した場合の原因調査やトラブルシューティングに役立てることができます。
プロセスの透明性が高いため、管理者は安心して移行作業を進めることができます。
一度にすべてのデータを移行するのが難しい場合や、移行期間中もDropboxでの業務が継続される場合でも安心です。このツールには「差分アップデート」機能が搭載されています。
これは、初回の移行が完了した後に、Dropbox側で新しく追加されたファイルや、内容が更新されたファイルだけを検出し、それらだけをGoogle Driveにコピーする機能です。
これにより、最終的なサービス切り替えの直前に差分アップデートを実行するだけで、データの同期を完了させることができ、移行期間中のダウンタイムや業務への影響を最小限に抑えることが可能です。
管理者向け:どうやって始める?
この新機能は、Google Workspace管理者が管理コンソールから利用できます。
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アクセス方法:
Google管理コンソールにログインし、[メニュー] > [データ] > [データのインポートとエクスポート] > [データ移行 (新規)] の順に進むと、新しいソリューションが表示されます。 -
ご注意:
この機能は現在オープンベータ版として提供されています。利用方法の詳細や制限事項については、Google Workspace管理者ヘルプの「Dropbox からファイルを移行する (ベータ版)」を必ずご確認ください。
いつから使える?展開スケジュールと対象プラン
この新機能は、以下のスケジュールで順次展開されています。
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展開スケジュール:
即時リリースおよび計画的リリースドメイン共に、2025年11月10日より段階的に展開されています(機能の表示に最大15日かかる場合があります)。 -
利用可能なプラン:
この機能は、非常に幅広いGoogle Workspaceプランで利用可能です。-
Business Starter, Standard, Plus
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Enterprise Starter, Standard, Plus
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Essentials Starter, Enterprise Essentials, Enterprise Essentials Plus
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Education Fundamentals, Standard, Plus
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Nonprofits
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比較的手頃なBusiness Starterプランから利用できるため、企業の規模を問わず、多くの組織がこのツールの恩恵を受けることができます。
まとめ
Google Workspaceへの移行を検討している企業にとって、今回の「データ移行サービス(Dropbox to Drive)」の登場は、まさに朗報と言えるでしょう。
これまで移行プロジェクトの大きな障壁となっていた、大量のファイルと複雑なアクセス権限の移行という課題を、Google公式の信頼できるツールが解決してくれます。
これにより、企業はより迅速かつ安全に、Google Workspaceが提供するシームレスなコラボレーション環境へと移行することが可能になります。
現在はベータ版としての提供ですが、この機能はGoogle Workspaceエコシステムへの移行を強力に後押しする、Googleの本気度が伺えるアップデートです。移行を計画中の管理者の方は、ぜひこの新しいツールの活用を検討してみてはいかがでしょうか。