本記事はGoogle Workspace Updatesブログ( https://workspaceupdates.googleblog.com/ )の記事を元に、日本のGoogle WorkspaceユーザーおよびGoogle Workspaceに興味がある方々に向けて、2025年11月26日に公開された情報を分かりやすく解説したものです。
社内カンファレンスや全社会議、ウェビナーなど、ビジネスシーンにおける「ライブストリーミング」の重要性は日々高まっています。
数千人、数万人が同時視聴するような大規模イベントでは、映像が止まったり、音声が途切れたりすることなく、スムーズに配信できるかが成功の鍵を握ります。
しかし、これまでは「視聴者が快適に見られているか?」を定量的に把握するのは難しく、ネットワークの問題が発生しても原因の特定に時間がかかることがありました。
Google Meetの管理者にとって、朗報です。
Google Meetのライブストリーミング視聴に関する監査ログに、これまで以上に詳細な「品質メトリクス(指標)」が追加されました。
これにより、管理者は視聴者の体感品質をより正確に把握し、ネットワーク設定の最適化やトラブルシューティングを、データに基づいて行えるようになります。
今回は、2025年11月26日に発表されたこのアップデートの詳細と、それが管理者にもたらす具体的なメリットについて解説します。
何が変わったのか? 視聴者体験を可視化する「拡張品質メトリクス」
今回のアップデートの核心は、Google Meetの監査ログ(Audit events)に含まれる情報の「解像度」が上がったことです。
ライブストリーム視聴者に関するログに、視聴品質を示す詳細な指標が新たに追加されました。
具体的には、以下の2つの配信方式それぞれについて、品質データが記録されるようになります。
Googleサーバーからの直接配信
Googleのデータセンターから視聴者のデバイスへ直接映像データが送られる、通常の配信方式です。eCDNを使用したピアアシスト配信(Peer-assisted)
同じ拠点内にいる視聴者同士でデータを共有し合うことで、外部回線への負荷を減らす「エンタープライズCDN(eCDN)」機能を使用している場合の配信方式です。
これまでは見えにくかった、それぞれの配信経路におけるパケットロス率やバッファリング時間、ビットレートの推移などがログとして残るため、視聴者が「高画質でスムーズに見ているのか」、それとも「読み込み中で待たされているのか」を客観的な数値で判断できるようになります。
管理者にとってのメリット:トラブルの芽を摘み、ネットワークを最適化
この詳細なメトリクスを活用することで、管理者は以下のようなアクションが可能になります。
視聴品質の現状把握
「先日の全社会議、映像がカクカクしていたという声があったけど本当か?」といった曖昧なフィードバックに対し、ログデータを分析して「特定の拠点の視聴者のみ、バッファリングが頻発していた」といった事実確認が可能になります。ネットワーク設定のチューニング
収集したデータを分析することで、ネットワーク帯域の不足や、プロキシサーバーの設定ミスなど、品質低下のボトルネックを特定できます。
例えば、eCDNの効果が出ているか(ピアリング率が高いか)を確認し、設定を調整することで、社内ネットワークへの負荷を軽減しつつ、より高品質な配信環境を構築できます。プロアクティブな改善
トラブルが起きてから対応するだけでなく、日常的なイベントのログを分析することで、将来の大規模イベントに向けたネットワーク増強計画などを、データに基づいて立案できます。
利用方法と対象エディション
利用方法:
管理者は、「Admin SDK」を通じてこれらの監査イベントにアクセスできます。
プログラミングやスクリプトを用いてAPI経由でログを取得し、分析ツール(BigQueryやサードパーティ製ツールなど)に流し込んで可視化するのが一般的な活用法になるでしょう。
展開スケジュール:
本機能はすでに利用可能です(Available now)。
対象エディション:
監査イベント自体は、すべてのGoogle Workspace顧客のライブストリーム視聴者について記録されます。
ただし、ライブストリームを「主催(ホスト)」できるのは、以下の対象ライセンスを持つユーザーに限られます。
Enterprise Standard / Plus
Enterprise Essentials Plus
Education Plus
Teaching and Learning Upgrade(教育機関向けアドオン)
まとめ:データドリブンな配信環境構築へ
「なんとなく繋がっている」から、「高品質で安定して繋がっている」へ。
今回のアップデートは、Google Meetのライブストリーミングを、企業インフラとしてより信頼性の高いものにするための重要なステップです。
ネットワーク管理者の皆様は、ぜひAdmin SDKを活用して新しいメトリクスを確認し、次回のライブイベントに向けたネットワークの最適化に役立ててください。
視聴者一人ひとりの画面の向こう側にある「体験」を、データを通じて支えることができるようになります。
