いよいよ開業届を提出し、個人事業主としての一歩を踏み出す。
希望に満ちたスタートを切る一方で、「会社を辞めた後の健康保険や年金って、どうなるんだろう?」という不安を感じていませんか。
もしかして、開業届を税務署に出せば、役所の手続きも自動的にやってくれるのでは…?と淡い期待を抱いている方もいるかもしれません。
結論からお伝えすると、開業届を提出しただけでは、健康保険や年金の手続きは自動的に切り替わりません。
自分で行動しなければ、最悪の場合「無保険・無年金」状態になってしまうリスクもあるのです。
この記事では、会社員から個人事業主になる方が必ず通る道である、健康保険と年金の手続きについて、いつ・どこで・何をすれば良いのかを徹底的に解説します。
この記事を読めば、手続きの全体像と適切なタイミングが分かり、安心して事業の準備に集中できるようになります。
(この記事は2025年11月時点の情報に基づいています。)
開業届だけでは不十分!健康保険・年金が自動で切り替わらない理由
会社員時代は、給与から天引きされるだけで、社会保険の手続きを意識することは少なかったかもしれません。しかし、独立するとすべて自分で行う必要があります。まずは、なぜ開業届の提出だけでは手続きが完了しないのか、その根本的な理由と放置するリスクについて理解しましょう。
なぜ自動で切り替わらない?「税金」と「社会保険」は管轄が違う
最大の理由は、手続きの管轄がそれぞれ異なるからです。
- 開業届:事業を開始したことを「税務署」に申告するための書類です。これは所得税や消費税といった「税金」に関する手続きです。
- 健康保険・年金:これらは「社会保険」に分類され、お住まいの「市区町村役場」や「年金事務所」が管轄しています。
つまり、税務署に開業届を提出しても、その情報が自動的に市区町村役場や年金事務所に連携されることはないのです。会社員時代は、会社(事業主)が私たちの代わりに、給与計算から社会保険料の納付、各種手続きまで一括して行ってくれていました。しかし、個人事業主は「自分自身が事業主」となるため、これらの手続きをすべて自分の責任で行う必要があるのです。
放置は危険!「無保険」「年金未納」がもたらす深刻なリスク
「手続きが面倒だから、後でやろう…」と先延ばしにすると、深刻な事態を招く可能性があります。
健康保険の未加入リスク:
国民健康保険に未加入の「無保険」状態になると、その間に病気やケガをしても、医療費は全額自己負担となります。風邪で数千円の診察が数万円に、盲腸のような急な手術では数十万円以上の高額な費用がかかることも。事業のスタートアップ期にこのような想定外の出費は大きな打撃となります。
年金の未納リスク:
国民年金への切り替えを怠り「未納」期間が発生すると、将来受け取れる老齢基礎年金の金額が減額されてしまいます。それだけではありません。万が一、病気やケガで障害が残った場合に受け取れる「障害基礎年金」や、自身が死亡した際に遺族が受け取れる「遺族基礎年金」が、未納期間が原因で受給できなくなる可能性もあるのです。これは、自分だけでなく家族の生活をも脅かすリスクと言えるでしょう。
【健康保険編】国民健康保険への切り替え手続き完全ガイド
それでは、具体的に健康保険の切り替え手続きについて見ていきましょう。会社を退職した後に加入する公的な医療保険は、主に「国民健康保険に加入する」か「会社の健康保険を任意継続する」かの2択です。ここでは、多くの方が選択する国民健康保険への切り替えを中心に、任意継続との比較も交えて解説します。
手続きの期限は「退職日の翌日から14日以内」!
国民健康保険への切り替え手続きは、会社の健康保険の資格を喪失した日(通常は退職日の翌日)から14日以内に行う必要があります。これは法律で定められた期限であり、必ず守るようにしましょう。
手続きが遅れてしまった場合でも加入はできますが、以下のようなデメリットが生じます。
- 保険料の遡及払い:保険料は、資格を喪失した月まで遡って一括で請求されます。
- 医療費の一時的な全額自己負担:手続きが完了するまでの間に病院にかかった場合、一旦医療費を全額自己負担で支払い、後日申請して7割分の還付を受けるという手間が発生します。
余計な手間や出費を避けるためにも、退職後は速やかに手続きを行いましょう。
手続きの場所と必要書類リスト
手続きは、お住まいの市区町村役場の「国民健康保険担当窓口」で行います。手続きに必要な主な書類は以下の通りです。自治体によって異なる場合があるため、事前にホームページなどで確認しておくとスムーズです。
- 健康保険資格喪失証明書:退職した会社から発行してもらいます。これがなければ手続きができないため、退職前に必ず会社の人事・総務担当者に発行を依頼しておきましょう。
- 本人確認書類:マイナンバーカード、運転免許証、パスポートなど。
- マイナンバーが確認できるもの:マイナンバーカード、通知カードなど。
- 印鑑(認印で可)
選択肢は一つじゃない!「任意継続」という方法も
退職後、すぐに国民健康保険に切り替えるのではなく、会社員時代の健康保険を最長2年間継続できる「任意継続」という制度もあります。
【任意継続のメリット】
扶養家族が多い場合、国民健康保険よりも保険料が安くなる可能性があります。国民健康保険は世帯の人数や所得に応じて保険料が決まりますが、任意継続は被保険者本人のみの保険料で、これまで通り扶養家族も保険の対象となります。
【任意継続のデメリット】
・保険料は会社との折半ではなくなるため、全額自己負担となり、在職中の約2倍の金額になります。
・原則として、2年間は途中でやめることができません。(※ただし、国民健康保険の保険料を納付した場合など、脱退が認められるケースもあります)
どちらがお得になるかは、あなたの所得の見込みや家族構成によって異なります。退職前に、会社の担当者に来年度の任意継続の保険料を確認し、お住まいの市区町村役場で国民健康保険料の概算額を試算してもらい、比較検討することをおすすめします。
【年金編】厚生年金から国民年金への種別変更手続き
健康保険とセットで忘れてはならないのが、年金の手続きです。会社員が加入する「厚生年金(第2号被保険者)」から、個人事業主などが加入する「国民年金(第1号被保険者)」への種別変更手続きが必要になります。
こちらも期限は「14日以内」!手続きの基本
年金の手続きも、健康保険と同様に退職日の翌日から14日以内に行う必要があります。手続きの場所も、多くの場合、市区町村役場の「国民年金担当窓口」で、健康保険の手続きと同時に行うことができます。
この手続きを忘れると、年金の「未納期間」が発生してしまいます。前述の通り、将来の受給額に直接影響するだけでなく、万が一の際の保障も受けられなくなるため、必ず手続きを行いましょう。
手続きに必要な書類リスト
年金の切り替え手続きに必要な主な書類は以下の通りです。こちらも事前に自治体の情報を確認しておくと万全です。
- 年金手帳または基礎年金番号通知書
- 退職日が確認できる書類:離職票、健康保険資格喪失証明書など
- 本人確認書類:マイナンバーカード、運転免許証など
- 印鑑(認印で可)
基礎年金番号がわからなくても、マイナンバーカードがあれば手続き可能な場合が多いです。もし年金手帳を紛失してしまった場合でも、焦らずに窓口で相談してみましょう。
保険料の支払いが困難な場合は「免除・猶予制度」を活用
開業当初は収入が不安定で、毎月約17,000円(2025年度の参考額)の国民年金保険料の支払いが厳しいと感じることもあるかもしれません。そんな時は、未納のまま放置せず、「保険料免除・納付猶予制度」を申請しましょう。
所得が一定基準以下の場合などに申請が承認されると、その期間の保険料の全額または一部が免除されたり、納付が猶予されたりします。免除・猶予が承認された期間は、保険料を納付したものとして扱われるため、万が一の際の障害基礎年金や遺族基礎年金の受給資格を確保できます。また、10年以内であれば後から追納することも可能で、追納すれば将来の老齢基礎年金の受給額を満額に近づけることができます。支払いが難しいと感じたら、正直に役所の窓口で相談することが重要です。
面倒な開業準備はツールで効率化!スマートなスタートを切ろう
ここまで健康保険と年金の手続きについて解説してきましたが、「やることが多くて大変だ…」と感じたのではないでしょうか。実際、開業時にはこれらの社会保険手続きだけでなく、税務署への「開業届」や「青色申告承認申請書」など、さまざまな書類を準備・提出する必要があります。
無料で使える「マネーフォワード クラウド開業届」が便利な理由
何から手をつけていいか分からない、書類の書き方が分からない、という方におすすめなのが、無料で使える「マネーフォワード クラウド開業届」です。
このサービスを使えば、いくつかの簡単な質問に答えていくだけで、開業に必要な以下の書類が自動で作成されます。
- 開業届
- 青色申告承認申請書
- (必要な場合)インボイス制度の登録申請書
- (必要な場合)給与支払事務所等の開設届出書
書類の作成だけでなく、提出先の税務署や提出方法まで丁寧に案内してくれるため、迷うことがありません。何より、これらの機能がすべて無料で利用できるのが最大の魅力です。
このような面倒な書類作成作業をツールに任せることで、あなたは本来時間をかけるべき事業計画の策定や、この記事で解説した健康保険・年金の手続きに集中することができます。まずは無料で試してみて、その便利さを実感してみてください。
開業準備の全体像を掴むために
「マネーフォワード クラウド開業届」は書類作成を劇的に効率化してくれますが、開業準備はそれだけではありません。事業計画の立て方、資金調達、オフィスの準備など、やるべきことは多岐にわたります。
個人事業主としてスムーズなスタートを切るために、開業準備の全体像を網羅的に把握しておくことが成功の鍵です。より詳しいステップや必要な知識については、以下のガイド記事で詳しく解説しています。手続きのチェックリストとしても活用できるので、ぜひ参考にしてください。
【開業準備ガイド】個人事業主になるには?無料の「マネーフォワード クラウド開業届」で書類作成から提出まで完全サポート!
まとめ:手続きは漏れなく、準備は賢く
今回は、開業届を提出した後の健康保険と年金の手続きについて解説しました。最後に、重要なポイントを振り返りましょう。
- 開業届を提出しても、健康保険・年金の手続きは自動で切り替わらない。
- 健康保険・年金ともに、退職日の翌日から14日以内に市区町村役場で手続きが必要。
- 健康保険は、国民健康保険への切り替えだけでなく「任意継続」という選択肢も検討する価値あり。
- 開業時の煩雑な書類作成は、「マネーフォワード クラウド開業届」のような無料ツールを活用して効率化するのが賢い選択。
会社員から個人事業主への移行期は、期待と同時に不安も大きいものです。しかし、やるべきことを一つひとつ着実にこなしていけば、何も怖いことはありません。面倒な手続きは便利なツールに任せ、あなたは事業の成功に集中できる環境を整えましょう。
