クラウド請求書管理サービス「Misoca」は、手軽に請求書や見積書を作成できて非常に便利ですよね。
しかし、多くの企業やチームで利用する中で、「請求書を発行する前の社内承認をどうするか」という課題に直面している方も多いのではないでしょうか。
担当者が作成した請求書を、上長や経理担当がチェックする。
この当たり前の業務フローが、紙や口頭での確認に頼っていると、承認漏れやミスの原因になったり、担当者不在時に業務が滞ってしまったりと、意外なほど非効率です。
この記事では、そんなお悩みを解決するために、Misocaをカスタマイズして社内の稟議や承認フローを組み込む具体的な方法を、簡単なものから本格的なものまでステップバイステップで解説します。
この記事を読めば、あなたの会社の状況に合わせた最適な承認フローを構築し、請求書業務の正確性とスピードを格段に向上させることができます。
なぜMisoca利用時に承認フローの構築が重要なのか?
Misocaは直感的な操作で誰でも簡単に請求書を作成できる優れたツールですが、その手軽さゆえに、複数人で利用する際には「誰が、いつ、どの請求書を承認したのか」という管理が曖昧になりがちです。なぜ、しっかりとした承認フローを構築することが重要なのでしょうか。その理由は大きく3つあります。
請求書発行におけるヒューマンエラーのリスクをなくすため
請求書業務にミスはつきものです。請求金額の間違い、取引先名の誤記、振込先の記載漏れ、請求内容の齟齬など、考えられるヒューマンエラーは多岐にわたります。これらのミスは、単純な手戻りだけでなく、取引先からの信用を失う大きな原因になりかねません。特に、金額のミスは会社の収益に直接影響します。ダブルチェック、トリプルチェックの体制を仕組みとして導入することで、こうした人的ミスを未然に防ぎ、請求書業務の正確性を担保することができます。承認フローは、そのための最も効果的な仕組みなのです。
業務の属人化を防ぎ、組織としての対応力を高めるため
「この請求書のことは、〇〇さんしか分からない」という状況は、組織にとって大きなリスクです。特定の担当者のみが請求内容の正当性を判断できる状態、つまり業務の属人化は、その担当者が不在の際に業務が完全にストップしてしまう事態を招きます。また、急な退職や異動の際の引き継ぎも困難になります。承認フローを整備し、「誰が作成し、誰が承認するのか」というルールとプロセスを明確にすることで、業務の標準化が進みます。これにより、担当者個人のスキルや経験に依存しない、組織としての安定した業務遂行が可能になるのです。
内部統制とコンプライアンスを強化するため
企業活動において、取引の正当性や透明性を証明することは非常に重要です。特に、組織が大きくなるにつれて、内部統制の強化は避けて通れない課題となります。請求書の発行プロセスに正式な承認フローを組み込むことは、「すべての取引が、然るべき人物によって承認された上で実行されている」という証跡を残すことにつながります。これは、税務調査や会計監査の際に非常に重要な資料となるだけでなく、企業のコンプライアンス意識の高さを内外に示すことにもなり、結果として企業の信頼性向上に貢献します。2025年11月時点のMisocaの標準機能だけでは完璧な証跡管理は難しいかもしれませんが、工夫次第でその基盤を築くことは可能です。
Misocaの標準機能で実現する簡易的な承認フロー
本格的なツールを導入する前に、まずはMisocaに搭載されている標準機能を使って、コストをかけずに実現できる簡易的な承認フローから試してみましょう。この方法は、特に少人数のチームや、厳密な統制よりも手軽さを重視したい場合に有効です。
「下書き」状態の活用と担当者ごとの役割分担
最もシンプルで今日から始められるのが、請求書の「下書き」状態を活用する方法です。
- ステップ1:作成担当者
請求書の作成担当者は、内容を入力した後、「発行」せずに「下書きとして保存」します。 - ステップ2:承認者
承認者は、Misocaにログインし、下書き状態の請求書一覧から該当のものを探し、内容をチェックします。 - ステップ3:発行
内容に問題がなければ、承認者が責任を持って「発行」ボタンを押します。もし修正が必要な場合は、コメント機能や別のコミュニケーションツールで作成担当者にフィードバックします。
このルールのメリットは、追加のコストが一切かからず、特別な設定も不要な点です。しかし、デメリットとして、承認依頼の通知が自動で飛ばないため、承認者が能動的に確認しに行く必要があります。また、「誰が承認したか」という明確なログがシステム上に残らないため、証跡としての力は弱いと言えるでしょう。
独自の視点:メモ機能や備考欄の活用術
上記の「下書き」フローのデメリットを少しでも補うための、私独自の工夫をご紹介します。それは、Misocaの請求書に用意されている「メモ」や「備考」欄を承認ログとして活用する方法です。
例えば、下書き請求書を確認した承認者が、請求書の「メモ」欄(この欄は相手には印刷されません)に、以下のように追記するルールを設けます。
「(承認者名)確認済み 2025/11/15」
こうすることで、いつ、誰がその請求書の内容を確認したのかという最低限の証跡を残すことができます。発行前にこのメモ欄を確認することを必須とすれば、承認漏れも防ぎやすくなります。非常にアナログな方法ですが、システム上のログが残らない点を補う有効な手段です。チームの人数が少ないうちは、このような手軽なハックでも十分に機能します。
外部ツール連携で本格的な稟議・承認フローを構築する方法
Misocaの標準機能だけでは物足りない、もっと確実で自動化された承認フローを構築したい、という場合には、外部ツールとの連携が非常に効果的です。ここでは、多くの企業で導入されているツールを使った具体的な連携方法を解説します。
チャットツール(Slack, Microsoft Teams)との連携
普段から使っているビジネスチャットツールと組み合わせることで、承認プロセスをスムーズに進めることができます。
- 請求書作成担当者は、Misocaで請求書を下書き保存し、そのPDFをダウンロードします。
- SlackやTeamsに設けた「請求書承認依頼」などの専用チャンネルに、ダウンロードしたPDFを添付し、承認者(例:
@経理部長)にメンションを付けて投稿します。 - 依頼を受けた承認者は、PDFの内容を確認し、問題がなければ特定の絵文字(例:✅)でリアクションするか、スレッドで「承認します」と返信します。
- 承認の確認が取れたら、作成担当者がMisocaで正式に請求書を発行します。
この方法のメリットは、チャットツール上に依頼と承認の履歴が時系列で残ることです。コミュニケーションも迅速に行えるため、確認作業がスムーズに進みます。一方で、MisocaからPDFをダウンロードし、チャットにアップロードするという手動作業が発生する点がデメリットです。
ワークフローシステム(Zapier, Make)との連携による自動化
手動作業を極力なくし、本格的な稟議・承認フローを構築したいなら、ZapierやMake (旧Integromat) といったiPaaS(Integration Platform as a Service)ツールの活用がおすすめです。これにより、異なるサービス間を連携させ、一連の作業を自動化できます。
【Zapierを使った自動承認フローの構築例】
- トリガー:Googleフォームでの申請
まず、「請求書発行申請フォーム」をGoogleフォームで作成します。項目には「取引先名」「請求内容」「金額」「備考」などを用意します。 - アクション1:Slackへの承認依頼通知
フォームが送信されると、Zapierがそれを検知し、Slackの承認用チャンネルに「新しい請求書の承認依頼が届きました」という通知を自動投稿します。通知には、フォームに入力された内容と、「承認」「差し戻し」といったボタンを含めることも可能です。 - アクション2:承認後のMisoca下書き作成
承認者がSlackの「承認」ボタンを押すと、Zapierが次のアクションを実行します。MisocaのAPIを利用して、フォームの内容に基づいた請求書を自動で「下書き」として作成します。(※API利用にはプログラミング知識が若干必要になる場合があります) - 最終確認と発行
担当者は、Misocaに自動作成された下書き請求書の内容を最終確認し、問題がなければ発行します。
この方法を導入すれば、申請から承認、請求書作成までの一連の流れが半自動化され、ヒューマンエラーの削減と業務効率の大幅な向上が期待できます。
独自の視点:Googleスプレッドシートを簡易データベースとして活用
Zapierや本格的なワークフローシステムの導入は、コストや設定のハードルが高いと感じるかもしれません。そこでおすすめしたいのが、Googleスプレッドシートを承認管理台帳として活用する方法です。これは、チャットツールとワークフローシステムの中間的な位置づけで、低コストながら高い一覧性を実現できます。
具体的なフローは以下の通りです。
- 請求書発行の依頼内容を管理するためのGoogleスプレッドシートを作成します。「申請日」「担当者」「取引先」「金額」「ステータス(未申請/申請中/承認済/発行済/差戻し)」「備考」「Misoca請求書URL」といった列を用意します。
- 作成担当者は、まずこのスプレッドシートに情報を入力し、ステータスを「申請中」にして、チャットツールなどで承認者に確認を依頼します。
- 承認者はスプレッドシートで依頼内容を確認し、問題がなければステータスを「承認済」に変更します。
- 作成担当者は、「承認済」になった行の情報を基にMisocaで請求書を作成・発行し、発行した請求書のURLをスプレッドシートの「Misoca請求書URL」列に貼り付け、ステータスを「発行済」に変更します。
この方法なら、今月発行すべき請求書や、承認待ちの請求書が一目瞭然となり、管理が非常に楽になります。フィルタ機能を使えば、特定のステータスのものだけを抽出することも簡単です。多くのツールを導入することなく、請求業務の全体像を可視化できる、非常に実用的な手法です。
まとめ:自社に合った承認フローで請求業務を効率化しよう
今回は、Misocaを使いながら社内の稟議や承認フローを構築するための具体的な方法を解説しました。
- Misocaの標準機能(下書き、メモ)を使った簡易的なフロー
- チャットツールを活用した、履歴が残るフロー
- ワークフローシステムやスプレッドシートを組み合わせた、本格的で一覧性の高いフロー
重要なのは、自社の規模、チームの人数、そしてどこまで厳密な管理を求めるかに応じて、最適な方法を選択することです。まずは一番簡単な「下書き」フローから試してみて、もし課題が残るようであれば、外部ツールとの連携を検討していくのが良いでしょう。
適切な承認フローを導入することは、単にミスを防ぐだけでなく、業務の属人化を解消し、組織全体の生産性を向上させるための重要な一歩です。Misocaの基本的な使い方から、さらに踏み込んだ活用法まで網羅的に知りたい方は、ぜひ「【Misoca(ミソカ)完全ガイド】請求書・見積書・納品書作成の悩みを解決し、業務効率を劇的にアップする方法」も合わせてご覧ください。あなたの請求業務がさらに効率的になるヒントが見つかるはずです。
まだMisocaを試したことがない、あるいは請求業務の効率化に本格的に取り組みたいと考えている方は、この機会にぜひ導入を検討してみてはいかがでしょうか。無料から始められ、請求業務にかかる時間を大幅に削減できます。
