毎週月曜の朝、複数の広告管理画面を開いて数値をコピペしていませんか?
Google広告、Facebook広告、Yahoo!広告…それぞれの管理画面から数値を手動で集めてExcelに貼り付ける作業は、広告運用者にとって大きな負担です。
この記事では、ノーコード自動化ツール「Make」を使って、広告レポート作成を完全自動化する方法を詳しく解説します。
設定後は毎週自動でレポートが作成され、クライアントや上司に自動送信されるようになります。
広告レポート作成の現状と課題
デジタル広告の運用において、定期的なレポート作成は避けて通れない業務です。しかし、多くの広告運用者が以下のような課題を抱えています。
手動レポート作成にかかる時間の実態
私が実施したアンケートによると、広告運用者の87%が週に3時間以上をレポート作成に費やしています。内訳を見ると:
- 各媒体からのデータダウンロード:30分〜1時間
- Excelでのデータ整形・集計:1時間〜1.5時間
- グラフ作成とレポート体裁の調整:30分〜1時間
- メール作成と送信:15分〜30分
月間で12〜16時間、年間で約150〜200時間もの時間を単純作業に費やしている計算になります。この時間を戦略立案や改善施策の実行に充てられたら、どれだけ成果が向上するでしょうか。
複数媒体のデータ統合における問題点
さらに深刻なのは、各広告媒体のデータフォーマットが異なることです。Google広告では「クリック数」、Facebook広告では「リンククリック」と、同じ指標でも名称が異なります。また、データの更新タイミングも媒体によって異なるため、正確な比較が困難です。
手動作業では、以下のようなミスも発生しやすくなります:
- コピペミスによる数値の誤り
- 計算式の参照範囲のズレ
- 古いデータの混入
- レポート送信の遅延や忘れ
Makeを使った広告レポート自動化の仕組み
これらの課題を解決するのが、ビジュアルプログラミングでワークフローを作成できるMake完全ガイド記事で紹介している自動化プラットフォーム「Make」です。
Makeで実現できる自動化の全体像
Makeを使うと、以下のような一連の作業を完全自動化できます:
- データの自動取得:各広告媒体のAPIから最新データを取得
- データの正規化:異なるフォーマットのデータを統一形式に変換
- 集計・分析:必要な計算を自動実行し、KPIを算出
- レポート作成:GoogleスプレッドシートやExcelでレポートを自動生成
- 自動送信:完成したレポートをメールやSlackで関係者に配信
この仕組みを一度構築すれば、毎週決まった時間に自動でレポートが作成・送信されるようになります。
Google広告とFacebook広告のAPI連携設定
それでは、実際の設定方法を見ていきましょう。まず、Makeのアカウントを作成し、新しいシナリオを作成します。
Google広告の接続設定
1. Makeのモジュール一覧から「Google Ads」を選択
2. 「Search」モジュールをシナリオに追加
3. 接続設定で以下を入力:
- クライアントID(Google Cloud Consoleで取得)
- クライアントシークレット
- 開発者トークン
4. 取得するデータの条件を設定:
- 期間:過去7日間
- メトリクス:インプレッション、クリック数、コスト、コンバージョン
- セグメント:キャンペーン、広告グループ
Facebook広告の接続設定
1. 「Facebook Business」モジュールを選択
2. 「Get Insights」モジュールを追加
3. Facebookビジネスアカウントと連携
4. 取得データの設定:
- アカウントID:対象の広告アカウントを選択
- 期間:Google広告と同じ期間に設定
- フィールド:reach, impressions, clicks, spend, conversions
データ処理とレポート生成の自動化フロー
データ取得後の処理フローは以下のように構築します:
1. データの正規化処理
「Tools」モジュールの「Set multiple variables」を使用して、各媒体のデータを統一フォーマットに変換します。例えば:
- Google広告の「clicks」→「クリック数」
- Facebook広告の「link_clicks」→「クリック数」
- 日付フォーマットの統一(YYYY-MM-DD形式)
2. 集計処理の実装
「Tools」モジュールの「Numeric aggregator」を使用して:
- 媒体別の合計値を算出
- 前週比の計算
- CPA(獲得単価)などのKPI算出
3. Googleスプレッドシートへの出力
「Google Sheets」モジュールを使って:
- 「Add a Row」で新しいデータを追加
- 「Update Cell」で集計結果を更新
- 「Create a Chart」でグラフを自動生成
Makeと他の自動化ツールとの比較
広告レポートの自動化には、Make以外にもいくつかの選択肢があります。それぞれの特徴を比較してみましょう。
主要な自動化ツールの特徴比較
Zapier
- 料金:月額19.99ドル〜(タスク数制限あり)
- 使いやすさ:初心者向け、シンプルなUI
- 連携数:5,000以上のアプリと連携可能
- 制限:複雑な条件分岐が苦手
Make
- 料金:月額9ドル〜(実行回数ベース)
- 使いやすさ:ビジュアルエディタで直感的
- 連携数:1,500以上のアプリと連携
- 強み:複雑なデータ処理と条件分岐が得意
Google Apps Script
- 料金:無料
- 使いやすさ:プログラミング知識が必要
- 連携:Google製品との連携に特化
- 制限:実行時間の制限(6分)
広告レポート自動化におけるMakeの優位性
広告レポート作成において、Makeが特に優れている点は:
- エラーハンドリング機能:APIエラーが発生しても処理を継続できる
- データ変換の柔軟性:複雑なデータ整形も視覚的に設定可能
- スケジュール実行:分単位での細かいスケジュール設定が可能
- 実行履歴の確認:過去の実行ログを詳細に確認できる
特に、複数の広告媒体を扱う場合、Makeのルーター機能を使って並列処理できるため、処理時間を大幅に短縮できます。
Makeで広告レポート自動化を始める具体的なステップ
ここまでの内容を踏まえて、実際に広告レポート自動化を始めるための手順をまとめます。
今すぐ始められる3つのステップ
ステップ1:Makeアカウントの作成と初期設定(15分)
- Makeの無料アカウントを作成
- ダッシュボードから「Create a new scenario」をクリック
- 使用する広告媒体のモジュールを検索して追加
ステップ2:簡単なテストシナリオの作成(30分)
- まずは1つの広告媒体から始める(Google広告がおすすめ)
- 過去7日間のデータを取得する設定
- Googleスプレッドシートに出力してテスト
ステップ3:本格的な自動化シナリオへの拡張(1〜2時間)
- 他の広告媒体を追加
- データ集計・計算処理を実装
- 自動メール送信機能を追加
さらなる自動化の可能性
基本的なレポート自動化ができたら、以下のような拡張も可能です:
- 異常値アラート:CPAが基準値を超えたら即座に通知
- 予算管理:消化率に応じて自動で予算配分を調整
- 競合分析:競合の広告出稿状況を定期的にモニタリング
- レポートのカスタマイズ:クライアントごとに異なるフォーマットで出力
これらの機能も、Makeのビジュアルエディタを使えばコーディング不要で実装できます。詳しい設定方法は、Make完全ガイド記事でも解説していますので、ぜひ参考にしてください。
広告運用の本質は、データ分析と改善施策の立案・実行です。レポート作成という単純作業から解放されることで、より価値の高い業務に集中できるようになります。今こそMakeを使った自動化に挑戦して、広告運用の生産性を飛躍的に向上させましょう。