個人事業主としてビジネスが軌道に乗ってくると、家族に事業を手伝ってもらう場面が増えてきます。
そんなとき、頭を悩ませるのが「家族への給与」の扱いです。
「事業専従者給与」として経費にするべきか、それとも「扶養控除」の対象とするべきか。
この選択一つで、手元に残るお金、つまり納税額が大きく変わってしまう可能性があることをご存知でしょうか。
一見すると複雑に思えるこの問題も、会計ソフトを使えばスムーズに解決できます。
特に、多くの個人事業主に支持されている「マネーフォワード クラウド確定申告」を活用すれば、迷うことなく最適な設定が可能です。
この記事では、2025年11月時点の情報に基づき、「事業専従者給与」と「扶養控除」の根本的な違いから、マネーフォワード クラウド確定申告での具体的な設定方法、そして節税効果を最大化するための注意点まで、分かりやすく徹底的に解説します。
この記事を最後まで読めば、あなたは自身の状況に最も合った方法を自信を持って選択し、確定申告を正しく、そして有利に進めることができるようになるでしょう。
事業専従者給与と扶養控除の基本的な違いとは?
家族へ支払う対価を経費にするか、所得控除を受けるか。この2つの選択肢は、個人事業主の節税戦略において非常に重要です。まずは、それぞれの制度の基本的な仕組みと、どちらを選ぶべきかの判断基準をしっかりと理解しましょう。
事業専従者給与・控除とは?
「事業専従者給与」とは、簡単に言うと「生計を同一にする家族従業員へ支払う給与」のことです。これを経費として計上するためには、いくつかの要件を満たす必要があります。
特に重要なのが、青色申告か白色申告かという点です。
- 青色事業専従者給与(青色申告の場合)
事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出しておくことで、支払った給与の全額を必要経費に算入できます。ただし、そのためには以下の要件を満たす必要があります。- その年の12月31日時点で15歳以上であること。
- その年を通じて6ヶ月を超える期間、その事業に専ら従事していること。
この「専ら従事」というのがポイントで、他に本業があったり、学業が本分であったりする場合は認められません。
- 事業専従者控除(白色申告の場合)
白色申告の場合は、給与を支払ったとしても全額を経費にすることはできず、「事業専従者控除」という形で一定額のみを控除します。控除額は、配偶者であれば86万円、それ以外の親族であれば一人につき50万円が上限となります。
メリットは、特に青色申告の場合、支払った給与額をそのまま経費にできるため、事業所得を大きく圧縮できる点です。一方、デメリットとして、給与を受け取った家族は扶養から外れることになり、給与額によってはその家族自身が所得税や住民税の納税、社会保険料の支払い義務を負うことになります。
扶養控除とは?
「扶養控除」は、納税者に所得税法上の控除対象扶養親族がいる場合に、納税者自身の所得から一定の金額を差し引くことができる制度です。これにより、課税対象となる所得が減り、結果として所得税や住民税が安くなります。
扶養控除の対象となる親族(扶養親族)の主な要件は以下の通りです。
- 配偶者以外の6親等内の血族および3親等内の姻族であること。
- 納税者と生計を同一にしていること。
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること(給与収入のみの場合は103万円以下)。
メリットは、手続きが比較的簡単で、納税者の税負担を直接的に軽減できる点です。デメリットは、あくまで所得控除であり、事業の経費が増えるわけではないという点です。また、扶養親族の年間所得が48万円を超えてしまうと、控除の対象から外れてしまいます。
どちらを選ぶべき?判断のポイント
では、どちらの制度を利用するのが得策なのでしょうか。最も重要な判断基準は「どちらが世帯全体で見たときに納税額が少なくなるか」です。
一概に「こちらが良い」とは言えず、事業の所得額や、家族に支払う給与額によって結論が変わります。例えば、事業所得が非常に大きい場合、扶養控除(一般的に38万円)を受けるよりも、家族に200万円の専従者給与を支払って経費にした方が、所得を大きく圧縮でき、節税効果が高まる可能性があります。
独自の視点として、単純な税額のシミュレーションだけでなく、社会保険への影響も考慮に入れることが極めて重要です。 例えば、専従者給与を支払うことで、これまで扶養に入っていた配偶者が自身で国民健康保険と国民年金に加入する必要が出てくるケースがあります。この場合、年間数十万円の社会保険料負担が新たに発生するため、節税額よりも社会保険料の負担増が上回ってしまう「節税貧乏」に陥る可能性もゼロではありません。短期的な税金だけでなく、長期的なキャッシュフローの変化を総合的に判断する視点が求められます。
マネーフォワード確定申告での具体的な設定手順
理論を理解したところで、次はいよいよ実践です。マネーフォワード クラウド確定申告を使えば、これまで説明してきた複雑な設定も、画面の指示に従うだけで簡単に行うことができます。ここでは、具体的な操作手順をステップバイステップで解説します。
ステップ1: 事前準備 – 事業専従者の情報を登録する
まず、給与を支払う家族の情報をマネーフォワードに登録します。この設定を先に行っておくことで、後の仕訳入力や申告書作成が格段にスムーズになります。
- マネーフォワード クラウド確定申告にログインし、左側のメニューから「決算・申告」>「確定申告書」をクリックします。
- 申告書画面の上部にある「基本情報」タブの中から、「配偶者・親族」を選択します。
- ここで「事業専従者」の欄に、給与を支払う家族の氏名、続柄、生年月日、マイナンバーなどの情報を正確に入力し、保存します。
このとき、「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載した内容と相違がないかを必ず確認してください。情報が異なっていると、税務調査の際に指摘される原因となりかねません。
ステップ2: 事業専従者給与の仕訳入力方法
次に、実際に給与を支払った際の仕訳を入力します。マネーフォワードでは、簿記の知識がなくても簡単に入力できる機能が備わっています。
例えば、毎月25日に妻(専従者)へ現金で20万円の給与を支払った場合の仕訳は以下のようになります。
- 借方科目: 事業専従者給与 / 200,000円
- 貸方科目: 現金 / 200,000円
マネーフォワードの「帳簿入力」>「簡単入力」から入力するのがおすすめです。「支出」タブを選び、①勘定科目に「事業専従者給与」、②金額を入力、③取引日を選択、④摘要(メモ)に「〇月分 専従者給与(〇〇←妻の名前)」などと入力して登録します。これを毎月繰り返すだけです。
もし、給与から所得税を源泉徴収している場合は、「預り金」という勘定科目を使います。例えば、20万円の給与から5,000円を源泉徴収した場合、仕訳は少し複雑になりますが、マネーフォワードの振替伝票入力を使えば問題ありません。
ステップ3: 扶養控除の情報を入力・確認する方法
一方、事業専従者給与ではなく扶養控除を選択する場合は、確定申告書にその情報を正しく反映させる必要があります。
- 「決算・申告」>「確定申告書」メニューを開きます。
- 「収入・所得」や「所得控除」の入力を進めていくと、「配偶者や親族に関する事項」という項目が第二表にあります。
- ここで、扶養する親族の氏名、マイナンバー、続柄、生年月日、その年の合計所得金額などを入力します。
ここで最も重要な注意点は、事業専従者として給与を支払っている家族を、扶養控除の対象として重複して入力しないことです。マネーフォワードでは、ステップ1で事業専従者として登録した親族は、自動的に扶養控除の対象から外れるように制御されていることが多いですが、手動で入力する際は特に注意が必要です。
独自の視点として、年の途中で扶養状況が変わった場合の対応も知っておくと安心です。 例えば、年の途中まで扶養していた子供が就職して扶養から外れた場合でも、その年の12月31日時点の状況で判断します。したがって、その年は扶養控除の対象にはなりません。マネーフォワードでは、年末の最終確認の際に、「配偶者・親族」の情報を最新の状況に更新するだけで、自動的に控除額が再計算されるので非常に便利です。
節税効果を最大化するための注意点と応用テクニック
マネーフォワードでの設定方法をマスターしたら、次はその効果を最大限に引き出すための知識を深めましょう。単に設定するだけでなく、いくつかの重要なポイントを抑えることで、将来的な税務リスクを回避し、より大きな節税メリットを享受できます。
事業専従者給与の「適正額」を意識する
青色事業専従者給与は、支払った分だけ経費にできるからといって、いくらでも設定して良いわけではありません。税務署から「不相当に高額である」と判断された場合、その高額とみなされた部分の金額は経費として認められない(否認される)リスクがあります。
では、「適正額」はどのように判断すればよいのでしょうか。明確な基準はありませんが、一般的に以下の点が考慮されます。
- 業務内容: 専門的なスキルを要する業務か、単純な補助業務か。
- 労働時間: フルタイムで働いているか、パートタイムか。
- 同業・同規模の他社水準: 同じような事業で、同じような仕事をしている赤の他人の従業員の給与はいくらか。
例えば、事務作業や電話応対を1日3時間程度手伝ってもらっているだけなのに、月50万円の給与を支払うのは、社会通念上、適正とは言えないでしょう。事前に提出する「青色事業専従者給与に関する届出書」に記載する給与額も、これらの点を踏まえて現実的な金額を設定することが肝心です。
青色申告への切り替えで節税効果を飛躍させる
ここまで読んでお気づきかもしれませんが、事業専従者の制度を最大限に活用するためには、青色申告であることが絶対的に有利です。白色申告の事業専従者控除には上限(配偶者86万円、その他50万円)がありますが、青色申告であれば、届出の範囲内で適正額であれば上限なく経費にできます。
もしあなたが現在、白色申告を行っているのであれば、この機会に青色申告への切り替えを強く検討することをおすすめします。青色申告には、最大65万円の青色申告特別控除や、赤字を3年間繰り越せる純損失の繰越控除など、他にも多くの税制優遇があります。
「でも、青色申告は手続きが難しそう…」と感じるかもしれません。しかし、マネーフォワード クラウド確定申告のような会計ソフトを使えば、日々の取引を入力するだけで、青色申告に必要な複式簿記の帳簿が自動で作成されます。青色申告のメリットや、マネーフォワードを使った具体的な申請方法について、より深く知りたい方は、「【完全ガイド】マネーフォワード クラウド確定申告とは?使い方・評判・料金まで個人事業主向けに徹底解説」の記事で詳細に解説していますので、ぜひそちらもご覧ください。
社会保険・労働保険への影響も忘れずに
事業専従者給与を支払うことは、税金面だけでなく、社会保険や労働保険の面でも影響を及ぼす可能性があります。特に見落としがちなのが「雇用保険」です。
原則として、同居の親族は雇用保険の被保険者にはなれません。しかし、以下の3つの要件をすべて満たす場合は、例外的に被保険者となることができます。
- 業務を行う上で、事業主の指揮命令に従っていることが明確であること。
- 就業実態が他の従業員と同様であり、賃金もそれに応じて支払われていること。
- 事業主と利益を一つにする地位(取締役など)にないこと。
独自の視点として、家族経営だからこそ、労務管理のルールを明確にしておくことが将来のトラブルを防ぐ鍵となります。たとえ家族であっても、「いつ、どのような仕事に対して、いくら支払うのか」を明確にした簡単な雇用契約書を交わしておくことをお勧めします。これにより、給与の正当性を客観的に示す証拠にもなりますし、万が一の際の労務トラブルを未然に防ぐことにも繋がります。
まとめ:最適な選択で賢く確定申告を乗り切ろう
今回は、個人事業主が直面する「事業専従者給与」と「扶養控除」という2つの重要な選択肢について、その違いからマネーフォワード クラウド確定申告での具体的な設定方法、さらには節税効果を高めるための応用知識まで詳しく解説しました。
要点をまとめると以下の通りです。
- 事業専従者給与は、特に青色申告の場合、家族への給与を全額経費にでき、大きな節税効果が期待できるが、社会保険料の負担増も考慮が必要。
- 扶養控除は、納税者自身の所得から一定額を控除する制度で、手続きは簡単だが、節税効果は限定的。
- どちらが有利かは事業所得や家族の状況によるため、世帯全体でのシミュレーションが不可欠。
- マネーフォワード クラウド確定申告を使えば、これらの複雑な設定や日々の仕訳も、迷うことなく簡単に行える。
確定申告は、年に一度の面倒な義務と捉えられがちですが、正しい知識を持って臨めば、合法的に納税額をコントロールできる絶好の機会でもあります。特に、家族の協力を得て事業を運営している方にとって、今回のテーマは避けては通れない重要なポイントです。
もしあなたが、いまだに手計算やExcelで確定申告の準備をしているのであれば、その時間と労力は非常にもったいないかもしれません。会計ソフトを導入することで、あなたは面倒な経理作業から解放され、ビジネスの成長という最も重要な本業に集中することができます。
まだマネーフォワード クラウド確定申告を使ったことがない方は、この機会にぜひその便利さを体験してみてはいかがでしょうか。1ヶ月間の無料トライアル期間が設けられているため、リスクなく試すことができます。
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この記事が、あなたの賢い確定申告と事業の発展の一助となれば幸いです。
