オンラインのプライバシー保護やセキュリティ強化に、VPNは今や欠かせないツールとなりました。
中でもNordVPNは、その高い安全性と豊富な機能で絶大な人気を誇っています。
しかし、いざ導入してみると「なんだかインターネットが遅くなった…」と感じる方も少なくないのではないでしょうか。
実はその速度低下、VPNの「プロトコル」設定を見直すだけで、劇的に改善できるかもしれません。
この記事では、NordVPNの速度低下を最小限に抑え、快適なインターネット環境を取り戻すためのプロトコル設定術を、初心者の方にも分かりやすく徹底解説します。
難しい専門知識は不要です。
簡単な設定変更で、セキュリティと速度を両立させる方法を身につけましょう。
なぜVPNを使うとインターネット速度が低下するのか?
NordVPNに限らず、一般的にVPNサービスを利用すると、インターネット速度にある程度の影響が出ます。これはVPNが持つ「通信を暗号化し、安全なサーバーを経由してインターネットに接続する」という仕組みそのものに起因します。速度低下の主な原因を理解することで、どの設定が効果的かが見えてきます。
1. 暗号化処理によるオーバーヘッド
VPNの最も重要な機能は、あなたのインターネット通信を強力な暗号で保護することです。この暗号化・復号(元に戻すこと)の処理は、お使いのデバイス(PCやスマートフォン)とVPNサーバーの両方で行われます。この処理にはCPUパワーが必要となり、わずかながら時間を要します。これが「オーバーヘッド」となり、通信速度に影響を与える第一の要因です。使用するプロトコルによって暗号化の方式が異なり、処理の重さも変わってくるため、プロトコルの選択が速度に直結するのです。
2. VPNサーバーとの物理的な距離
VPNを利用すると、あなたのデータは一度VPNサーバーを経由してから目的のウェブサイトに到達します。つまり、データが移動する物理的な距離が長くなるのです。例えば、日本からアメリカのウェブサイトにアクセスする場合、通常はデータが直接アメリカへ向かいます。しかし、日本のVPNサーバーを経由すると「自宅 → 日本のVPNサーバー → アメリカのウェブサイト」というルートになります。もしブラジルのVPNサーバーを選んだなら、「自宅 → ブラジルのVPNサーバー → アメリカのウェブサイト」となり、データが地球を半周以上するような長旅になることも。この距離が長ければ長いほど、通信の遅延(レイテンシ)は大きくなります。
3. サーバーの混雑度
あなたが接続しているVPNサーバーは、他の多くのユーザーと共有しています。一台のサーバーに同時に接続するユーザーが多ければ多いほど、サーバーの処理能力や回線帯域は分散され、一人当たりの速度は低下します。特に、無料で利用できるVPNサービスではこの傾向が顕著です。NordVPNのような有料サービスでは、世界中に多数の高性能サーバーを配置することで混雑を緩和していますが、それでも時間帯やサーバーの場所によっては混雑が発生し、速度に影響を与えることがあります。
これらの要因が複合的に絡み合い、VPN利用時の速度低下につながります。しかし、幸いなことにNordVPNでは、これらの影響を最小限に抑えるための選択肢がユーザーに与えられています。その最も効果的な手段が、次にご紹介する「プロトコル」の選択なのです。
NordVPNの主要プロトコル徹底比較:速度とセキュリティのバランス
NordVPNアプリの設定画面を開くと、「VPNプロトコル」という項目があります。ここで選択できるいくつかのオプションこそが、速度とセキュリティの鍵を握る心臓部です。2025年11月時点で、NordVPNが主に提供しているプロトコルは「NordLynx」「OpenVPN」「IKEv2/IPsec」の3種類。それぞれの特徴を理解し、自分の使い方に合ったものを選びましょう。
NordLynx (WireGuardベース) – 速度最優先の次世代プロトコル
特徴: NordLynxは、比較的新しいVPNプロトコル「WireGuard」をベースに、NordVPNがプライバシー保護機能を強化した独自のプロトコルです。WireGuard自体が、従来のプロトコルに比べて圧倒的に軽量で高速な通信を実現することを目指して開発されました。コード行数が非常に少なく、監査が容易でセキュリティ上の欠陥が見つかりにくいというメリットもあります。
どんな人におすすめ?: とにかく速度を重視したい全ての人におすすめです。特に、高画質な動画ストリーミング(Netflix、YouTubeなど)、オンラインゲーム、大容量ファイルのダウンロードといった、速度が快適さを大きく左右する用途に最適です。多くの場合、NordLynxに設定するだけで、VPNを使っていない時とほとんど変わらない速度を体験できるでしょう。
独自の視点: NordVPNの「自動選択」は優秀ですが、私の環境では手動でNordLynxに固定した方が、常に安定して高いパフォーマンスを発揮してくれます。迷ったらまずNordLynxを試す、というのが鉄則と言えるでしょう。
OpenVPN (TCP/UDP) – 信頼性とカスタマイズ性の王道
特徴: OpenVPNは、長年にわたりVPN業界の標準とされてきた、非常に信頼性の高いオープンソースのプロトコルです。大きな特徴は「TCP」と「UDP」という2つの通信方式を選択できる点にあります。
- UDP (User Datagram Protocol): データを高速に送信することに特化しています。多少のデータ欠損は許容するため、ストリーミングやオンラインゲームなど速度が重要な場面で有利です。通常はこちらが推奨されます。
- TCP (Transmission Control Protocol): 送信したデータが相手に確実に届いたかを確認しながら通信します。信頼性は高いですが、その確認作業のために速度はUDPに劣ります。接続が不安定なネットワークや、セキュリティが非常に厳しい環境で効果を発揮することがあります。
どんな人におすすめ?: 最高のセキュリティと信頼性を求める人、または特定のネットワーク環境(公共Wi-Fi、企業のファイアウォール下など)で接続がうまくいかない場合に試す価値があります。NordLynxで接続できないサイトがある場合、OpenVPN (UDP)やOpenVPN (TCP)に切り替えると解決することがあります。
IKEv2/IPsec – モバイルデバイスに最適な安定性
特徴: IKEv2/IPsecは、特に接続の安定性と速度のバランスに優れたプロトコルです。最大の強みは、Wi-Fiとモバイルデータ通信(4G/5G)の間を切り替える際など、ネットワークが頻繁に変わる状況でもVPN接続を維持し続ける能力です。再接続が非常に高速なため、移動中にスマートフォンやタブレットを使うユーザーにとって心強い味方となります。
どんな人におすすめ?: 通勤・通学中や外出先で、スマートフォンやノートPCからVPNを頻繁に利用するモバイルユーザーに最適です。接続の安定性を重視するなら、非常に優れた選択肢となります。ただし、一般的に最高速度ではNordLynxに一歩譲ります。
実践!速度を最大化するNordVPNプロトコル設定ガイド
各プロトコルの特徴を理解したところで、いよいよ実践です。ここでは、実際にNordVPNアプリでプロトコルを変更する手順と、さらなる速度改善のためのテクニックをご紹介します。
ステップバイステップ:プロトコル変更手順
プロトコルの変更は、どのデバイスでも驚くほど簡単です。基本的な流れは共通しています。
Windows/Macの場合:
- NordVPNアプリを起動し、ログインします。
- 画面左側にある歯車アイコン(設定)をクリックします。
- 「接続」タブを選択します。
- 「VPNプロトコル」という項目があるので、ドロップダウンメニューから希望のプロトコル(例: NordLynx)を選択します。
iOS/Androidの場合:
- NordVPNアプリを起動し、ログインします。
- 画面右下の人型アイコン(プロフィール)をタップします。
- 画面右上にある歯車アイコン(設定)をタップします。
- 「プロトコル」または「VPN接続」といった項目をタップします。
- 希望のプロトコル(例: NordLynx)を選択します。
これだけで設定は完了です。一度VPNを切断し、再接続すれば新しいプロトコルが適用されます。まずは最も高速なNordLynxに設定し、速度測定サイトなどで効果を体感してみてください。
「自動選択」は本当に最適か?
NordVPNのデフォルト設定は「自動選択」になっています。これは、アプリがあなたのネットワーク環境を判断し、最適と思われるプロトコルを自動で選んでくれる便利な機能です。多くの場合、この機能はうまく働き、NordLynxかIKEv2/IPsecを適切に選択してくれます。しかし、私の経験上、この「自動」判断が常に最速の結果をもたらすとは限りません。特に、速度を最優先したいのであれば、人任せ(アプリ任せ)にせず、手動でNordLynxに固定することをおすすめします。これにより、接続のたびにプロトコルが変動することがなくなり、常に最高のパフォーマンスを期待できます。もしNordLynxで接続に問題が生じた場合にのみ、他のプロトコルを試すというアプローチが最も効率的です。
プロトコル以外の速度改善テクニック
プロトコルの最適化は最も効果的な手段ですが、他にも速度を改善できるポイントがいくつかあります。
- 最適なサーバーを選ぶ: NordVPNは世界中に6,000台以上のサーバーを設置しています。基本的には、現在地から物理的に最も近い国・都市のサーバーを選ぶと、通信の遅延が少なくなり速度が向上します。「最速のサーバー」機能を使うのも良いですが、マップから手動で近隣のサーバーを選択してみるのも有効です。
- サーバーの負荷率を確認する: サーバーリストを見ると、各サーバーの現在の負荷(混雑度)がパーセンテージで表示されます。この数値が低いサーバーほど空いているため、高速な通信が期待できます。
- 特殊サーバーを使い分ける: NordVPNには「P2P」「Double VPN」「Onion Over VPN」といった特殊サーバーがあります。これらは特定の目的のために最適化されていますが、その分速度が低下することがあります。通常のブラウジングやストリーミングが目的であれば、これらの特殊サーバーではなく、標準のサーバーを利用しましょう。
これらのテクニックをプロトコル設定と組み合わせることで、NordVPNのポテンシャルを最大限に引き出すことができるはずです。
まとめ:簡単な設定でNordVPNを最速に
今回は、NordVPN利用時のインターネット速度低下を最小限に抑えるための「プロトコル設定術」について解説しました。
重要なポイントをまとめます。
- VPNによる速度低下は、暗号化処理やサーバーとの物理的な距離が主な原因。
- NordVPNでは、プロトコルを変更することで速度を劇的に改善できる。
- 速度を最優先するなら「NordLynx」が圧倒的におすすめ。
- 接続の安定性を重視するなら「OpenVPN」や「IKEv2/IPsec」も有効な選択肢。
- プロトコル設定は、アプリの設定画面から数タップで簡単に変更可能。
VPNはセキュリティを高めるためのものですが、そのために日常の快適さが損なわれては意味がありません。NordVPNが提供する優れた機能を最大限に活用し、安全かつ高速なインターネット環境を手に入れましょう。
まずはこの記事を参考に、あなたのNordVPNアプリの設定を「NordLynx」に変更してみてください。きっとその違いに驚くはずです。
これからNordVPNの利用を始めたい方や、料金プラン、基本的な使い方についてより詳しく知りたい方は、NordVPNの全てを網羅した「【2025年最新版】NordVPN完全ガイド:始め方から料金、メリット・デメリットまで徹底解説!」もぜひご覧ください。
安全で快適なデジタルライフを送るための第一歩として、今すぐNordVPNを導入し、その性能を体験してみてはいかがでしょうか。
