海外に住みながら、日本のクライアントと仕事をする機会が増えていませんか。
グローバル化が進む現代では、そのような働き方も珍しくありません。
しかし、日本で事業を始めるにあたり、「開業届」の提出でつまずく方が多くいらっしゃいます。
「海外在住でも提出は必要なの?」「どこに提出すればいいの?」といった疑問は尽きません。
この記事では、海外在住者が日本で個人事業主として開業届を提出する際の具体的な注意点や手続きの流れを、2025年11月時点の情報に基づき、分かりやすく解説します。
海外在住者の開業届|基本となる「居住者」と「非居住者」の定義
まず最初に理解すべきなのは、所得税法における「居住者」と「非居住者」の違いです。この区分によって、納税の義務や範囲が大きく変わるため、ご自身がどちらに該当するかを正しく把握することが不可欠です。
あなたはどちら?居住者と非居住者の判定基準
日本の所得税法では、国内に「住所」を持つか、または現在まで引き続いて1年以上「居所」を持つ個人を「居住者」と定義しています。それ以外の方が「非居住者」となります。
- 住所:生活の本拠地。客観的な事実(滞在日数、職業、家族の居住地など)に基づいて判断されます。
- 居所:生活の本拠ではないものの、ある程度の期間継続して居住する場所。
海外に長期間住んでいる方は、一般的に「非居住者」に該当するケースが多いでしょう。ただし、海外転勤などで1年未満の予定の場合は「居住者」と見なされることもあります。ご自身の状況を客観的に判断することが重要です。
非居住者でも開業届は必要?
結論から言うと、非居住者であっても日本国内で事業を行い、「国内源泉所得」が生じる場合には、開業届の提出を検討すべきです。国内源泉所得とは、例えば以下のような所得を指します。
- 日本国内で行う事業から生じる所得
- 日本国内にある資産の運用や譲渡による所得
- 日本国内の不動産の貸付けによる所得
海外在住フリーランスが日本のクライアントから業務委託で報酬を得る場合、その所得が国内源泉所得に該当する可能性があります。この場合、日本で確定申告を行う必要があり、その前提として開業届を提出しておくことで、青色申告の承認申請など、税制上のメリットを享受できる準備が整います。
納税地はどこになる?海外在住者のための納税地の決め方
開業届を提出する上で、海外在住者が最も悩むのが「納税地」をどこにするかという問題です。納税地は、確定申告書などを提出する税務署を管轄する場所であり、非常に重要です。選択肢は主に3つあります。
1. 日本国内の最後の住所地
海外へ転出する前に住んでいた最後の住所地を納税地とする方法です。出国後もその住所地に家族が住んでいる場合などに選択しやすいでしょう。ただし、郵便物の受け取りなどに不便がないか、事前に確認が必要です。
2. 親族などの住所地(納税管理人を選任)
海外在住者にとって最も現実的で一般的なのが、日本国内に住む親族や信頼できる知人に「納税管理人」を依頼し、その方の住所地を納税地とする方法です。納税管理人とは、本人に代わって確定申告書の提出や税務署からの書類の受け取り、税金の納付などを行う代理人です。納税管理人を選任する場合は、開業届とあわせて「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出する必要があります。これにより、税務関連の連絡がスムーズになり、手続きの遅延や漏れを防ぐことができます。
3. 日本国内の事業所の所在地
もし日本国内に事業の拠点となる事務所や店舗などを持っている場合は、その所在地を納税地とすることができます。物理的なオフィスがない場合でも、バーチャルオフィスなどを契約して事業所として登録することも選択肢の一つですが、契約内容が税法上の要件を満たすか確認が必要です。
独自の視点として、納税管理人は単なる郵便物の受け取り役ではありません。税務署からの重要な通知を見逃さないためにも、信頼でき、かつ責任を持って対応してくれる方を選ぶことが極めて重要です。事前に役割をしっかり説明し、了承を得ておきましょう。
海外からの開業届提出|具体的な手順と必要書類
納税地が決まったら、いよいよ開業届の作成と提出です。海外から手続きを進める際の具体的なステップを見ていきましょう。
ステップ1:必要書類の準備
主に以下の書類が必要になります。
- 個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)
- 所得税・消費税の納税管理人の届出書(納税管理人を選任する場合)
- 所得税の青色申告承認申請書(青色申告を希望する場合)
- 本人確認書類の写し(マイナンバーカード、または通知カード+運転免許証など)
各種様式は国税庁のウェブサイトからダウンロードできますが、項目の記入方法が分かりにくいことも少なくありません。特に海外からの提出では、住所の書き方などで迷うことが多いでしょう。このプロセスを大幅に簡略化できるのが、「マネーフォワード クラウド開業届」のようなサービスです。【開業準備ガイド】個人事業主になるには?無料の「マネーフォワード クラウド開業届」で書類作成から提出まで完全サポート!の記事で、具体的な使い方を画面キャプチャ付きで解説していますので、ぜひ参考にしてください。
ステップ2:開業届の記入
開業届には、納税地、氏名、マイナンバー、職業、屋号などを記入します。海外在住者の場合、「住所地」の欄には現地の住所を記入し、「納税地」の欄に指定した日本の住所(納税管理人の住所など)を記入するのが一般的です。電話番号も、連絡が取れる日本の番号(納税管理人の番号など)を記載しておくとスムーズです。
ステップ3:税務署への提出
提出方法は、納税地の税務署へ持参するか、郵送します。海外在住の場合は郵送が基本となります。国際郵便で直接税務署に送ることも可能ですが、書類の不備があった際に対応が難しくなるため、納税管理人に書類一式を送り、代理で提出してもらうのが最も確実で安心な方法です。提出時には、控え用の開業届と返信用封筒も同封してもらい、受付印が押された控えを保管してもらうようお願いしましょう。この控えは、事業用の銀行口座開設などで必要になる重要な書類です。
まとめ:海外からでも計画的に開業準備を進めよう
海外在住者が日本で個人事業主として開業届を提出するには、居住者の定義を理解し、適切な納税地と信頼できる納税管理人を定めることが成功の鍵です。
手続き自体は複雑に感じるかもしれませんが、一つ一つのステップを確実に踏めば、海外からでもスムーズに事業を開始できます。
まずは、開業の第一歩となる書類準備を効率的に進めましょう。「マネーフォワード クラウド開業届」は、ガイドに従って入力するだけで、必要な書類一式を無料で作成できる非常に便利なサービスです。以下のリンクから登録し、スムーズな開業準備をスタートさせてください。
>>無料でマネーフォワード クラウド開業届を使ってみる
