海外のクライアントからの報酬や、国外のプラットフォームからの収益など、グローバルに活躍する個人事業主が増えています。
しかし、その一方で「国外源泉所得の確定申告って、どうすればいいの?」という悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。
特に、便利な会計ソフト「マネーフォワード クラウド確定申告」を使いこなせている方でも、国外所得の扱いは少し特殊で戸惑うかもしれません。
この記事では、国外源泉所得がある個人事業主の方に向けて、マネーフォワード クラウド確定申告を使った具体的な申告手順と、二重課税を防ぐ「外国税額控除」の適用方法、そして見落としがちな注意点まで、分かりやすく解説します。
この記事を読めば、複雑に思える国外源泉所得の確定申告を、自信を持ってスムーズに進められるようになります。
そもそも国外源泉所得とは?基本を理解しよう
確定申告の手順に入る前に、まずは「国外源泉所得」がどのようなものかを正確に理解しておくことが重要です。日本の所得税法では、居住者は国内で得た所得(国内源泉所得)だけでなく、国外で得た所得(国外源泉所得)も合算して申告する「全世界所得課税」が原則となっています。ここでは、その基本と重要性について見ていきましょう。
国外源泉所得に該当する主な収入例
具体的にどのような収入が国外源泉所得と見なされるのでしょうか。個人事業主の場合、以下のようなケースが考えられます。
- 海外企業からの業務委託報酬: 海外のクライアントから直接受け取るデザイン料、コンサルティング料、ライティング料など。
- 海外プラットフォーム経由の収益: YouTubeの広告収益、海外向けアプリストアの売上、海外ストックフォトサイトの報酬など。
- 国外にある不動産の賃貸収入: 海外に所有する物件からの家賃収入。
- 国外の資産運用による所得: 外国株式の配当金や譲渡益など。
ポイントは、「所得の源泉がどこにあるか」です。たとえ日本国内の銀行口座で受け取ったとしても、その支払元が海外であれば国外源泉所得に該当する可能性が高いと覚えておきましょう。
なぜ国外源泉所得の申告が重要なのか?
国外源泉所得の申告が重要な理由は、主に2つあります。1つは、先述の通り日本の税法が全世界所得課税を原則としているため、申告は法律上の義務であることです。申告漏れが発覚した場合、本来納めるべき税金に加えて、延滞税や過少申告加算税といったペナルティが課される可能性があります。
もう1つの重要な理由は、「外国税額控除」という制度の存在です。国外で得た所得に対して、その国で既に税金が源泉徴収されている場合があります。そのままだと日本と海外で二重に課税されてしまうため、外国で支払った税額を日本の所得税額から控除できるのが外国税額控除です。この制度を正しく利用するためにも、国外源泉所得を正確に申告することが不可欠なのです。
マネーフォワード クラウド確定申告での入力手順【2025年11月時点】
それでは、実際にマネーフォワード クラウド確定申告を使って国外源泉所得を入力する手順を解説します。基本的な流れさえ掴めば、操作自体は難しくありません。ここでは、海外クライアントからの業務委託報酬を例に進めていきます。
「そもそもマネーフォワード クラウド確定申告の使い方がよくわからない…」という方は、まず「【完全ガイド】マネーフォワード クラウド確定申告とは?使い方・評判・料金まで個人事業主向けに徹底解説」の記事で基本をマスターすることをおすすめします。全体の流れを理解することで、今回の作業もスムーズに進められます。
ステップ1:事前準備(必要書類と情報の整理)
入力作業を始める前に、以下の情報を手元に準備しておくとスムーズです。
- 支払調書や明細書: 報酬額や、海外で源泉徴収された税額が記載されている書類。
- 送金記録: 銀行の取引明細など、実際に入金された日付と金額がわかるもの。
- 為替レートの情報: 報酬額を日本円に換算するためのレート。原則として、収入を得た日(役務提供が完了した日など)のTTM(対顧客電信売買相場仲値)を使用します。
ステップ2:収入の入力
マネーフォワード クラウド確定申告にログインし、通常の事業収入と同様に取引を登録します。勘定科目は「売上高」で問題ありません。
重要なのは、外貨で得た報酬を日本円に換算して入力することです。例えば、1,000ドルの報酬を受け取り、その日のTTMが1ドル150円だった場合、「150,000円」として入力します。摘要欄に「海外クライアントA社 報酬 1,000USD」のように、元々の通貨と金額をメモしておくと後で見返したときに分かりやすいでしょう。
ステップ3:海外で源泉徴収された税額の入力
もし海外で税金が源泉徴収されている場合、その金額は経費として計上します。勘定科目は「租税公課」を使い、これも同様に日本円に換算して入力します。この「租税公課」として計上した金額が、後述する「外国税額控除」の計算の基礎となります。
この時点では、まだ二重課税の状態ですが、次のステップで控除の手続きを行うことで解消されますのでご安心ください。
二重課税を回避!「外国税額控除」の適用方法
国外源泉所得の申告で最も重要なポイントが、この「外国税額控除」です。これを適用しないと、同じ所得に対して日本と海外の両方で税金を支払うことになり、大きな損失につながります。マネーフォワード クラウド確定申告を使えば、この手続きも比較的簡単に行えます。
外国税額控除の仕組みとは?
外国税額控除は、外国で支払った所得税額(またはそれに相当する税金)を、日本の所得税額から直接差し引くことができる制度です。ただし、控除できる金額には上限があります。その上限額は、以下の計算式で算出されます。
控除限度額 = その年分の所得税額 × (その年分の国外源泉所得金額 ÷ その年分の所得総額)
つまり、日本での全所得のうち国外所得が占める割合に応じて、控除できる上限が決まる仕組みです。マネーフォワード クラウド確定申告では、必要な情報を入力すればこの計算を自動で行ってくれます。
マネーフォワード クラウドでの設定手順
- 決算・申告メニューへ: まず、左側のメニューから「決算・申告」→「確定申告書」を選択します。
- 「税金の計算」セクションへ: 申告書作成画面の上部にあるタブから「税金の計算」に進みます。
- 外国税額控除の入力: 画面をスクロールしていくと「外国税額控除」という項目があります。ここの「入力する」ボタンをクリックします。
- 詳細情報の入力: 専用の入力画面が開きます。ここで、外国で所得が生じた国名、所得の種類、所得金額、そして支払った外国所得税額(「租税公課」として計上した金額)などを入力していきます。支払調書などの書類を見ながら正確に入力しましょう。
すべての情報を入力して保存すれば、控除額が自動で計算され、確定申告書に反映されます。この手続きを忘れると控除が受けられないため、必ず確認するようにしてください。
個人事業主が見落としがちな注意点と対策
最後に、国外源泉所得の申告において、多くの個人事業主が陥りがちなミスや注意点をいくつか紹介します。少しの注意で防げるものばかりですので、ぜひ参考にしてください。
注意点1:為替レートの適用タイミング
最も間違いやすいのが、日本円への換算に使う為替レートです。原則は「収入を計上すべき日」のレート(TTM)を使う必要があります。これは、実際に入金された日(着金日)とは異なる場合が多いので注意が必要です。例えば、月末締めで業務が完了した場合、その月末日のレートで売上を計上し、実際に入金された日のレートではない、という点です。継続的な取引の場合は、月ごとや四半期ごとなど、合理的な期間で平均レートを用いて計算することも認められています。
注意点2:経費の計上漏れ
海外との取引では、国内取引にはない特有の経費が発生します。例えば、海外送金手数料や、決済プラットフォームの手数料などです。これらも立派な経費ですので、漏れなく計上しましょう。外貨で支払った経費も、収入と同様に発生日の為替レートで円換算して計上します。
注意点3:消費税の扱い
国外の事業者に対するサービスの提供は、原則として消費税の「輸出免税」の対象となり、消費税は課税されません。しかし、課税事業者の方は、輸出免税の適用を受けるためには、契約書や請求書など、その取引が輸出取引であることを証明する書類を保存しておく必要があります。非課税ではなく「免税売上」として処理する点も覚えておきましょう。
まとめ
今回は、国外源泉所得がある個人事業主の方向けに、マネーフォワード クラウド確定申告を利用した確定申告の手順と注意点を解説しました。最後に、重要なポイントを振り返っておきましょう。
- 国外源泉所得も、国内所得と合算して申告する義務がある。
- 外貨での収入・経費は、発生日の為替レートで円換算して記帳する。
- 海外で納税した分は「外国税額控除」を適用し、二重課税を防ぐ。
- 送金手数料などの経費や、消費税の扱いも見落とさないように注意する。
一見複雑に思える国外源泉所得の申告も、手順を一つひとつ確認しながら進めれば、決して難しいものではありません。特に、マネーフォワード クラウド確定申告のようなツールを使えば、計算の大部分を自動化でき、ミスを減らすことができます。
これから確定申告の準備を始める方、そしてより効率的な方法を探している方は、この機会に「マネーフォワード クラウド確定申告」を試してみてはいかがでしょうか。最初の1ヶ月は無料で利用できるので、ご自身のビジネスに合うかどうかをじっくり確かめることができます。面倒な確定申告をスマートに乗り切りましょう。
