「年末が近づいてきたけど、棚卸しってどうやればいいんだろう…」
「在庫の評価方法って何を選べばいいの?」
「そもそも棚卸しをしないとどうなるの?」
個人事業主として事業を始めたばかりの方や、これまで棚卸しを適当に済ませてきた方にとって、正しい棚卸しの方法は意外と分からないものです。
私も個人事業主として10年以上活動していますが、最初の頃は棚卸しの重要性を理解せず、適当に在庫を数えて申告していました。
その結果、税務調査で指摘を受け、修正申告をする羽目になったことがあります。
この記事では、個人事業主が知っておくべき棚卸しの基本から、効率的な在庫の数え方、正しい評価方法まで、実体験を交えながら詳しく解説します。
読み終わる頃には、自信を持って棚卸しができるようになり、確定申告もスムーズに進められるはずです。
なぜ個人事業主にとって棚卸しが重要なのか
棚卸しとは、決算日(個人事業主の場合は12月31日)時点で保有している商品や原材料などの在庫を数え、金額を評価する作業のことです。この作業は、単なる在庫管理以上の重要な意味を持っています。
棚卸しが必要な3つの理由
1. 正確な利益計算のため
売上から仕入れを引いただけでは、正確な利益は計算できません。年初の在庫と年末の在庫の差額を考慮する必要があります。例えば、100万円分仕入れても、そのうち30万円分が在庫として残っていれば、実際の売上原価は70万円となります。
2. 税務調査対策
税務署は在庫の計上漏れを重点的にチェックします。私の経験では、在庫の評価額が適当だったために、3年分の修正申告を求められ、延滞税を含めて50万円以上の追徴課税を受けたことがあります。
3. 資金繰りの把握
在庫は「お金が商品に変わった状態」です。在庫が多すぎると資金繰りが悪化します。定期的な棚卸しで在庫の状況を把握することで、仕入れの最適化にもつながります。
棚卸しをしないとどうなるか
実は、棚卸しをしなくても確定申告書の提出自体は可能です。しかし、以下のようなリスクがあります。
- 利益計算が不正確になり、納税額が間違える可能性がある
- 税務調査で指摘を受け、追徴課税や重加算税の対象になる
- 青色申告の65万円控除が受けられない(貸借対照表の作成が必要なため)
- 在庫管理ができず、不良在庫や欠品が増える
特に、売上が1,000万円を超える個人事業主の場合、税務調査の対象になる確率が高くなるため、正確な棚卸しは必須です。
個人事業主向け棚卸しの具体的なやり方
ここからは、実際に棚卸しを行う手順を、ステップごとに詳しく解説します。私が実践している効率的な方法も含めて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
ステップ1:棚卸し表の準備
まず、棚卸し表を準備します。エクセルや手書きでも構いませんが、以下の項目は必ず含めるようにしましょう。
- 商品名・品番
- 数量
- 単価
- 金額(数量×単価)
- 保管場所
- 備考(不良品、返品予定など)
私の場合、商品カテゴリーごとにシートを分けて管理しています。これにより、どのカテゴリーに在庫が偏っているかが一目で分かります。
ステップ2:在庫の実地棚卸し
効率的な数え方のコツ
1. 事前準備を徹底する
棚卸し前日までに、在庫を整理整頓しておきます。同じ商品をまとめ、不良品は別の場所に移動させます。
2. 2人1組で作業する
可能であれば、1人が数えて、もう1人が記録する体制を取ります。家族や従業員に協力してもらいましょう。
3. 写真を撮影する
在庫の状態を写真で記録しておくと、後で確認が必要になった時に便利です。税務調査の際の証拠にもなります。
4. バーコードリーダーの活用
商品数が多い場合は、バーコードリーダーとエクセルを連携させると効率的です。最近は、スマートフォンアプリでも代用できます。
ステップ3:在庫の評価方法を選ぶ
個人事業主が使える在庫の評価方法は主に6つありますが、実務上は以下の3つから選ぶことが多いです。
1. 最終仕入原価法(もっとも簡単)
期末に最も近い時期に仕入れた単価で評価する方法です。計算が簡単で、多くの個人事業主が採用しています。
例:12月20日に仕入れた商品Aの単価が1,000円の場合、在庫10個なら10,000円と評価
2. 移動平均法(より正確)
仕入れのたびに平均単価を計算し直す方法です。価格変動が激しい商品に適しています。
3. 総平均法(年1回の計算)
1年間の仕入れ総額を総数量で割って平均単価を出す方法です。年末にまとめて計算できます。
税務署への届出なしに採用できるのは「最終仕入原価法」のみです。他の方法を使う場合は、事前に「棚卸資産の評価方法の届出書」を提出する必要があります。
ステップ4:棚卸し結果の記録と保管
棚卸しが終わったら、以下の書類を作成・保管します。
- 棚卸表(商品明細が分かるもの)
- 棚卸集計表(カテゴリー別の合計)
- 在庫の写真(デジタルデータでOK)
これらの書類は7年間保存する義務があります。私は年度ごとにファイルにまとめ、クラウドストレージにもバックアップを取っています。
よくある失敗と対策
1. 仕掛品の計上漏れ
製造業や建設業の場合、完成前の仕掛品も棚卸資産に含める必要があります。材料費だけでなく、人件費の一部も含めて計算します。
2. 不良在庫の評価
売れる見込みのない不良在庫は、評価額を下げることができます。ただし、完全に価値がないと判断した場合は、廃棄証明書を残しておく必要があります。
3. 贈答用商品の取り扱い
お客様への贈答用に取っておいた商品も在庫に含めます。「販売促進費」として経費にするのは、実際に贈った時点です。
手作業の棚卸しvs会計ソフトを使った棚卸し
ここまで手作業での棚卸し方法を説明してきましたが、実は会計ソフトを使うともっと効率化できます。両者のメリット・デメリットを比較してみましょう。
手作業での棚卸し
メリット:
- 初期費用がかからない
- シンプルで分かりやすい
- 小規模事業者には十分
デメリット:
- 計算ミスが起きやすい
- 時間がかかる
- 過去のデータとの比較が難しい
会計ソフトを使った棚卸し
メリット:
- 自動計算でミスが減る
- 在庫の推移が見える化できる
- 確定申告書への反映が自動
- スマートフォンでも作業可能
デメリット:
- 月額費用がかかる
- 操作を覚える必要がある
私の経験では、年間の仕入れが100万円を超えたあたりから、会計ソフトの導入を検討した方が良いと思います。特に、在庫管理機能が充実しているマネーフォワード クラウド確定申告のようなサービスを使えば、日々の仕入れ入力から棚卸し、確定申告まで一気通貫で管理できます。
どんな人に会計ソフトがおすすめか
- 商品の種類が50品目以上ある
- 月に10回以上仕入れがある
- 在庫の回転が速い(月1回以上総入れ替わり)
- 複数の仕入先から購入している
- 確定申告の作業を効率化したい
上記のいずれかに当てはまる場合は、会計ソフトの導入で大幅な時間短縮が期待できます。
まとめ:正しい棚卸しで確定申告をスムーズに
個人事業主の棚卸しは、単なる在庫確認ではなく、正確な利益計算と適正な納税のために欠かせない作業です。
今回解説した棚卸しのポイントをまとめると:
- 棚卸しは12月31日時点の在庫を数えて評価する作業
- 評価方法は「最終仕入原価法」が最も簡単
- 棚卸表は7年間保存が必要
- 在庫が多い場合は会計ソフトの活用がおすすめ
次のステップとして、まずは今年の棚卸しに向けて準備を始めましょう。商品の整理整頓から始めて、棚卸表のフォーマットを用意することから始めると良いでしょう。
もし、棚卸しも含めて確定申告全体を効率化したい場合は、マネーフォワード クラウド確定申告の無料お試しを使ってみるのも一つの方法です。在庫管理から確定申告書の作成まで、個人事業主に必要な機能が揃っているので、手作業での限界を感じている方には特におすすめです。