「売上が順調に伸びてきたし、そろそろ法人化を考えようかな…」
「でも、個人事業主から法人になったら会計処理はどう変わるんだろう?」
「法人成りのタイミングって、いつがベストなの?」
こんな悩みを抱えていませんか?
個人事業主として事業が軌道に乗ってくると、法人化を検討する時期がやってきます。
しかし、会計処理の変更や手続きの複雑さに不安を感じて、なかなか一歩を踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、個人事業主から法人成りする際の会計処理の変化を詳しく解説し、最適なタイミングの見極め方や具体的な手続きの流れをお伝えします。
読み終わる頃には、法人成りへの不安が解消され、自信を持って次のステップに進めるようになっているはずです。
個人事業主と法人の会計処理、何が違うの?
まず知っておきたいのは、個人事業主と法人では会計処理の考え方が根本的に異なるということです。
事業と個人の区別が明確に
個人事業主の場合、事業で得た利益は全て事業主個人のものです。生活費を事業用口座から引き出しても、それは「事業主貸」として処理するだけで、特に問題はありません。
一方、法人になると事業と個人は完全に別人格として扱われます。社長であっても、会社のお金を勝手に使うことはできません。役員報酬として決められた金額を受け取り、それ以外の会社のお金には手を付けてはいけないのです。
決算期の違い
個人事業主の会計期間は1月1日から12月31日と決まっていますが、法人は自由に決算期を設定できます。例えば、繁忙期を避けて決算期を設定することで、決算作業の負担を軽減できるのです。
税金の種類と計算方法
個人事業主は所得税(累進課税)を納めますが、法人は法人税(原則一定税率)を納めます。所得が増えるほど、法人の方が税負担が軽くなる可能性があります。
実際のところ、年間の所得が800万円を超えてくると、法人化による節税効果が大きくなってきます。これは、個人事業主の所得税率が所得900万円超で33%になるのに対し、法人税率は23.2%(中小法人の場合、所得800万円超の部分)で済むためです。
社会保険の加入義務
個人事業主は従業員が5人未満なら社会保険の加入義務がありませんが、法人は社長一人でも社会保険への加入が必須です。保険料の負担は増えますが、将来受け取る年金額も増えるというメリットがあります。
法人成りのベストタイミングと具体的な手続き
では、いつ法人成りすべきなのか、そして具体的にどんな手続きが必要なのか見ていきましょう。
法人成りを検討すべき5つのタイミング
1. 年間所得が800万円を超えたとき
先ほども触れましたが、所得が800万円を超えると法人税率の方が有利になってきます。ただし、社会保険料の負担も考慮する必要があるので、税理士に相談してシミュレーションしてもらうことをおすすめします。
2. 売上が1,000万円を超えたとき
売上が1,000万円を超えると、2年後から消費税の納税義務が発生します。法人成りすることで、最大2年間消費税の納税を免除される可能性があります(資本金1,000万円未満の場合)。
3. 従業員を雇用するとき
優秀な人材を確保するためには、法人の方が信用力があります。また、社会保険完備の環境を整えることで、より良い人材が集まりやすくなります。
4. 事業拡大や融資を検討するとき
金融機関からの融資を受ける際、法人の方が有利です。決算書の信頼性が高く、事業の継続性も評価されやすいためです。
5. 事業承継を考えるとき
将来的に事業を子供や従業員に引き継ぐ予定がある場合、法人の方がスムーズに承継できます。
法人成りの具体的な手続きステップ
ステップ1:法人の基本事項を決める(1週間程度)
- 会社名(商号)の決定
- 本店所在地の決定
- 事業目的の決定
- 資本金の額の決定
- 役員構成の決定
- 決算期の決定
ステップ2:定款の作成と認証(1週間程度)
定款は会社の基本ルールを定めた書類です。公証役場で認証を受ける必要があり、費用は5万円程度かかります。
ステップ3:資本金の払込み(1日)
発起人の個人口座に資本金を振り込み、通帳のコピーを取ります。
ステップ4:法人設立登記(1-2週間)
法務局に登記申請を行います。登録免許税として、株式会社なら15万円、合同会社なら6万円が必要です。
ステップ5:税務署等への届出(1か月以内)
- 法人設立届出書
- 青色申告の承認申請書
- 給与支払事務所等の開設届出書
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
ステップ6:個人事業の廃業手続き(1か月以内)
個人事業の廃業届を税務署に提出します。
会計処理の移行で注意すべきポイント
法人成りに伴い、会計処理も大きく変わります。特に注意すべき点を確認しましょう。
1. 資産・負債の引き継ぎ
個人事業で使用していた資産(車両、備品など)や負債(借入金など)を法人に引き継ぐ場合は、適正な時価で譲渡する必要があります。
2. 売掛金・買掛金の処理
個人事業時代の売掛金・買掛金は、原則として個人で回収・支払いを行います。法人に引き継ぐ場合は、債権譲渡の手続きが必要です。
3. 在庫の引き継ぎ
在庫も時価で法人に譲渡します。消費税の課税事業者の場合は、譲渡時に消費税が発生することに注意が必要です。
4. 会計ソフトの移行
個人事業主向けの会計ソフトから法人向けの会計ソフトへの移行が必要です。この際、過去のデータをどう扱うかも検討しましょう。
会計処理の複雑さに不安を感じる方も多いと思います。そんな時は、クラウド会計ソフトの活用がおすすめです。「マネーフォワード クラウド会計」徹底ガイドでは、法人・個人事業主向けのクラウド会計ソフトの選び方や活用方法を詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
個人事業主と法人、どちらが自分に合っている?
法人成りにはメリットもデメリットもあります。自分の状況に合わせて判断することが大切です。
法人成りのメリット
- 節税効果:所得が高くなるほど有利
- 信用力の向上:取引先や金融機関からの信頼が高まる
- 経費の範囲が広がる:役員報酬、退職金、生命保険料など
- 決算期を自由に設定:繁忙期を避けられる
- 相続対策:株式として財産を分割しやすい
法人成りのデメリット
- 設立費用:最低でも20万円程度必要
- ランニングコスト:税理士報酬、社会保険料など
- 事務負担の増加:決算書類、議事録の作成など
- 赤字でも税金:法人住民税の均等割(年7万円程度)
- お金の自由度が下がる:役員報酬以外は自由に使えない
こんな人は法人成りがおすすめ
- 年間所得が800万円を超えている
- 今後も事業の成長が見込める
- 従業員を雇用する予定がある
- 取引先から法人化を求められている
- 将来的な事業承継を考えている
こんな人は個人事業主のままがおすすめ
- 年間所得が500万円以下
- 自由な働き方を重視したい
- 事務作業を最小限にしたい
- 副業として事業を行っている
- 将来的に事業をやめる可能性がある
まとめ:法人成りは計画的に進めよう
個人事業主から法人成りする際は、会計処理の変更だけでなく、税務、社会保険、法務など様々な面で大きな変化があります。
重要なのは、自分の事業の状況と将来の展望を踏まえて、適切なタイミングで法人成りを行うことです。焦って法人化しても、かえって負担が増えてしまうこともあります。
まずは現在の所得や売上を確認し、税理士に相談してシミュレーションを行うことから始めましょう。そして、法人成りを決断したら、計画的に準備を進めていくことが大切です。
会計処理については、クラウド会計ソフトを活用することで、個人事業主から法人への移行もスムーズに行えます。例えば、マネーフォワード クラウド会計なら、個人事業主向けプランから法人向けプランへの移行もスムーズで、会計処理の不安を解消しながら法人成りを進められます。
法人成りは事業の大きな転換点です。この記事を参考に、自信を持って次のステージへ進んでください。