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建設業向け|マネーフォワードクラウド会計での工事進行基準・工事完成基準の仕訳方法

建設業を営む企業にとって、工事の収益をいつ計上するかは経営に直結する重要な問題です。

「工事進行基準と工事完成基準、どちらを選ぶべきか分からない」

「マネーフォワードクラウド会計でどう仕訳すればいいのか」

このような悩みを抱えている建設業の経営者や経理担当者の方は多いのではないでしょうか。

本記事では、工事進行基準と工事完成基準の基本的な考え方から、マネーフォワードクラウド会計を使った具体的な仕訳方法まで、実例を交えながら詳しく解説します。

記事を読み終える頃には、自社に適した収益認識基準を選択し、正確な会計処理ができるようになっているはずです。

建設業における収益認識の重要性と現状の課題

建設業界では、工事期間が数ヶ月から数年にわたることが珍しくありません。そのため、いつ売上を計上するかによって、期間損益が大きく変動してしまいます。

収益認識基準の選択が経営に与える影響

例えば、1億円の工事を2年間で完成させる場合を考えてみましょう。工事完成基準を採用すれば、2年目にまとめて1億円の売上が計上されます。一方、工事進行基準なら、進捗に応じて1年目に5,000万円、2年目に5,000万円というように分割して計上することになります。

この違いは、決算書の見え方だけでなく、法人税の納付時期や銀行融資の審査にも大きく影響します。特に中小建設業者にとっては、資金繰りに直結する重要な選択となるのです。

建設業特有の会計処理の複雑さ

建設業の会計処理を複雑にしている要因として、以下のような点が挙げられます:

  • 工事ごとに原価を個別に管理する必要がある
  • 材料費、労務費、外注費など、原価の構成要素が多岐にわたる
  • 工事の進捗率を正確に把握することが難しい
  • 追加工事や設計変更が頻繁に発生する

私自身、建設業のクライアントから「毎月の原価計算に時間がかかりすぎる」「進捗率の算出方法が分からない」といった相談を数多く受けてきました。これらの課題を解決するためには、適切な会計システムの活用が不可欠です。

法令改正による影響

2021年4月以降に開始する事業年度から、収益認識に関する会計基準が強制適用されています。これにより、年間売上高が10億円以上の建設業者は、原則として工事進行基準を適用することが求められるようになりました。

中小建設業者についても、今後は工事進行基準への移行を検討する必要があります。そのため、両方の基準について理解を深め、自社の状況に応じて適切に選択・運用できる体制を整えることが重要となっています。

マネーフォワードクラウド会計での具体的な仕訳方法

それでは、マネーフォワードクラウド会計を使った具体的な仕訳方法を、工事完成基準と工事進行基準それぞれについて詳しく見ていきましょう。

工事完成基準での仕訳処理

工事完成基準は、工事が完成し引き渡しが完了した時点で収益を一括計上する方法です。シンプルで分かりやすいため、小規模な工事や短期間で完了する工事に適しています。

【例】3,000万円の店舗改装工事(工期:3ヶ月)

1. 工事開始時(材料仕入)

借方:未成工事支出金 500万円 / 貸方:買掛金 500万円

2. 工事中(外注費支払)

借方:未成工事支出金 1,000万円 / 貸方:外注費 1,000万円

3. 工事完成・引渡時

借方:売掛金 3,000万円 / 貸方:完成工事高 3,000万円

借方:完成工事原価 1,500万円 / 貸方:未成工事支出金 1,500万円

マネーフォワードクラウド会計では、「仕訳帳入力」機能を使って上記の仕訳を入力します。特に便利なのは、よく使う仕訳パターンを「仕訳辞書」に登録できる点です。工事の規模や内容に応じたテンプレートを作成しておけば、入力作業を大幅に効率化できます。

工事進行基準での仕訳処理

工事進行基準は、工事の進捗に応じて収益を計上する方法です。期間損益を適正に把握できるため、大規模工事や長期工事に適しています。

【例】1億円のビル建設工事(工期:2年、決算期は3月)

進捗率の計算方法:原価比例法(発生原価÷見積総原価)

1年目の処理(進捗率40%、発生原価3,200万円)

借方:売掛金 4,000万円 / 貸方:完成工事高 4,000万円

借方:完成工事原価 3,200万円 / 貸方:未成工事支出金 3,200万円

2年目の処理(工事完成、追加原価4,800万円)

借方:売掛金 6,000万円 / 貸方:完成工事高 6,000万円

借方:完成工事原価 4,800万円 / 貸方:未成工事支出金 4,800万円

マネーフォワードクラウド会計での効率的な管理方法

マネーフォワードクラウド会計には、建設業特有の管理を効率化する機能が豊富に用意されています:

  • 部門管理機能:工事ごとに部門を設定し、個別原価を正確に把握
  • タグ機能:材料費、労務費、外注費などを細かく分類
  • 月次推移表:工事の進捗状況を視覚的に確認
  • 予実管理:見積原価と実際原価の差異を随時チェック

私が特におすすめしたいのは、「自動仕訳ルール」の活用です。例えば、特定の取引先からの請求書は自動的に該当する工事の未成工事支出金に計上されるよう設定できます。これにより、月次の経理作業時間を約30%削減できた事例もあります。

進捗管理のポイント

工事進行基準を適用する上で最も重要なのは、正確な進捗率の把握です。マネーフォワードクラウド会計では、以下の手順で管理することをおすすめします:

1. 工事開始時に「予定原価管理表」を作成し、システムに登録

2. 毎月の原価発生額を部門別に集計

3. 予定原価との比較により進捗率を算出

4. 必要に応じて予定原価を見直し、進捗率を再計算

このような体系的な管理により、税務調査でも問題のない適正な会計処理が可能となります。

工事完成基準と工事進行基準の比較検証

両基準のメリット・デメリットを整理し、どのような企業にどちらが適しているかを検証してみましょう。

工事完成基準のメリット・デメリット

メリット:

  • 処理が簡単で、経理の専門知識が少なくても対応可能
  • 工事が完成するまで利益が確定しないため、保守的な会計処理
  • 進捗率の計算が不要で、恣意性が入る余地が少ない

デメリット:

  • 期間損益が大きく変動し、経営実態を反映しにくい
  • 長期工事の場合、資金繰りに影響が出やすい
  • 売上高10億円以上の企業では原則適用不可

工事進行基準のメリット・デメリット

メリット:

  • 期間損益を適正に把握でき、経営判断に役立つ
  • 銀行融資の際に、安定した業績をアピールできる
  • 大型工事でも、進捗に応じて資金回収が可能

デメリット:

  • 進捗率の算定に手間がかかり、専門知識が必要
  • 見積りの精度が低いと、後で大幅な修正が必要になる
  • 原価管理システムの整備にコストがかかる

選択の指針

実務経験から、以下のような企業には工事完成基準が適しています:

  • 年間売上高が5億円未満の小規模建設業者
  • 工期が3ヶ月以内の短期工事が中心の企業
  • リフォーム工事など、小規模案件を多数手がける企業

一方、工事進行基準を採用すべき企業:

  • 年間売上高が10億円以上の企業(法的要件)
  • 1件あたり1億円以上の大型工事を手がける企業
  • 工期が1年以上の長期工事が多い企業
  • 上場を目指している、または金融機関との関係を重視する企業

まとめ:適切な収益認識で健全な経営を実現

建設業における収益認識基準の選択は、単なる会計処理の問題ではありません。企業の資金繰り、税務、金融機関との関係など、経営全般に大きな影響を与える重要な意思決定です。

本記事で解説した内容を踏まえ、まず以下のステップで進めることをおすすめします:

  • 自社の工事規模、工期、売上高を分析し、適切な基準を選択
  • マネーフォワードクラウド会計の無料トライアルを活用し、実際の操作感を確認
  • 必要に応じて、部門管理やタグ機能を設定し、工事別原価管理体制を構築
  • 月次での進捗管理ルーチンを確立し、PDCAサイクルを回す

適切な会計システムと収益認識基準の組み合わせにより、建設業の経理業務は大幅に効率化できます。マネーフォワードクラウド会計の導入ガイドも併せて参考にしながら、自社に最適な会計処理体制を構築してください。正確な会計処理は、健全な経営の第一歩となるはずです。