本記事はGoogle Workspace Updatesブログ( https://workspaceupdates.googleblog.com/ )の情報を基に、2025年8月18日に作成されました。
Googleスプレッドシートで、顧客リストやイベントの参加者名簿、問い合わせ管理表などを扱っている皆さん、こんにちは。
日々の業務で、膨大な量のデータを扱う中で、こんな風に思ったことはありませんか。
「このリストにあるメールアドレス、本当に有効な形式なのかな?」
「入力されたウェブサイトのURL、ちゃんと”http://”から始まっているか、一括でチェックしたい…」
こうした、データの「正しさ」や「きれいさ」を維持する作業は、データクレンジングとも呼ばれ、正確な業務遂行の基盤となる、非常に重要なプロセスです。
Googleスプレッドシートには、こうしたデータチェックを助けてくれる便利な関数として、「=ISEMAIL()」と「=ISURL()」が用意されています。しかし、インターネットの世界は日々進化しており、これまでの判定ロジックでは、少し古くなってしまっていた部分があったのも事実です。
この度、その「縁の下の力持ち」とも言える2つの関数の判定精度が、現代のインターネット環境に合わせて大幅に向上するという、地味でありながら極めて重要なアップデートが発表されました。今回は、あなたのデータ管理の質を一段階引き上げる、この改善について詳しく解説していきます。
そもそも「=ISEMAIL()」と「=ISURL()」関数とは?
この関数をまだ使ったことがない、という方のために、まずはその基本的な機能からおさらいしましょう。これらは、特定のセルに入力された文字列が、「メールアドレス」または「URL」として正しい「形式」であるかどうかを判定してくれる、非常にシンプルな関数です。
=ISEMAIL(セル番地)
指定したセルに入力されている文字列が、「username@example.com」のような、メールアドレスとして一般的に正しい形式であるかをチェックします。形式が正しければ「TRUE(真)」を、間違っていれば「FALSE(偽)」を返します。=ISURL(セル番地)
指定したセルに入力されている文字列が、「http://www.google.com」のような、URLとして有効な形式であるかをチェックします。こちらも同様に、形式が正しければ「TRUE」、間違っていれば「FALSE」を返します。
どんな場面で役立つのか?
これらの関数は、IF関数や条件付き書式、フィルタ機能などと組み合わせることで、その真価を発揮します。
活用例1:無効なメールアドレスの洗い出し
顧客リストのメールアドレスが入力された列の隣に、=ISEMAIL(A2) という数式を入力してオートフィルします。すると、形式が正しくないアドレスの行にだけ「FALSE」が表示されます。この「FALSE」をフィルタで抽出すれば、修正が必要なデータだけを簡単に見つけ出すことができます。活用例2:入力ミスを視覚的に警告
問い合わせフォームの回答が記録されるシートで、メールアドレス入力欄に条件付き書式を設定。「数式が =ISEMAIL(A2)=FALSE」の場合にセルの色を赤くする、というルールを適用すれば、形式が間違っているアドレスが入力された瞬間に、視覚的に警告することができます。
これまでの課題:なぜ改善が必要だったのか?
これらの関数は非常に便利でしたが、インターネットの進化に伴い、いくつかの課題を抱えていました。
インターネットの住所とも言える「ドメイン」の世界は、近年大きく変化しています。これまでの「.com」や「.co.jp」といったお馴染みのものだけでなく、「.tech」「.shop」「.ai」といった、新しいトップレベルドメイン(gTLD)が、何百種類も登場しています。
これまでの ISEMAIL や ISURL 関数の判定ロジックでは、こうした新しいドメインの一部を、有効な形式として正しく認識できないケースがありました。その結果、本当は使えるはずのメールアドレスやURLなのに、「FALSE(無効な形式)」と誤判定されてしまうことがあったのです。
この誤判定は、データクレンジングの際に、有効なデータを誤って「修正対象」としてしまい、ビジネス機会の損失につながるリスクをはらんでいました。
今回のアップデートの核心:「判定ロジック」の進化
今回のアップデートは、これらの関数がURLやメールアドレスの形式が正しいかどうかを判断するための、内部的なルール(評価方法)を、より賢く、より現代の基準に合わせて改善するというものです。
これにより、これまで「FALSE」と誤判定されていた可能性のある、新しいトップレベルドメインを含むメールアドレスやURLなどが、より正確に「TRUE」と判定されるようになります。
つまり、関数の「信頼性」が大幅に向上するのです。この精度の向上は、スプレッドシートでデータを扱うすべてのユーザーにとって、大きなメリットをもたらします。
【重要】既存のシートにも影響!知っておくべきこと
今回のアップデートで、管理者が最も注意すべき点が一つあります。
この変更は、これから新しく使う関数だけでなく、「すでにあなたのスプレッドシートに埋め込まれている、既存の=ISEMAIL()や=ISURL()関数の計算結果にも、自動的に適用される」という点です。
ロールアウトが完了すると、これまで「FALSE」と表示されていたセルが、ある日突然「TRUE」に変わる、という現象が起こる可能性があります。
ほとんどの場合、これは「これまで間違っていた判定が、正しくなった」というポジティブな変化です。しかし、もしあなたが、これらの関数が「FALSE」を返すことを前提とした、複雑な数式やGoogle Apps Script(GAS)を組んでいる場合は、注意が必要です。
例えば、「無効アドレスの件数 = COUNTIF(B:B, FALSE)」といった計算式を使っている場合、これまでカウントされていたアドレスが有効(TRUE)と判定されるようになるため、計算結果の数値が変わる可能性があります。
この関数を利用して重要なレポートを作成したり、自動化処理を行ったりしている場合は、この変更が自社のシートにどのような影響を与えるか、一度確認しておくことをお勧めします。
ロールアウトと対象ユーザーについて
管理者・ユーザー向けの情報:
この機能の有効化にあたり、管理者やエンドユーザーが行うべき設定は一切ありません。Google側で自動的にアップデートが適用されます。ロールアウト(展開ペース):
2025年8月25日から、「拡張ロールアウト」として順次展開が開始されます。すべてのユーザーの環境に反映されるまでには、15日以上かかる可能性があります。利用可能なユーザー:
この改善は、一部のユーザー限定ではありません。すべてのGoogle Workspaceプランの顧客
Google Workspace Individual契約者
個人のGoogleアカウントを持つユーザー
上記のすべてのユーザーが、この恩恵を受けることができます。
まとめ
今回のGoogleスプレッドシートの ISEMAIL および ISURL 関数のアップデートは、見た目に変化がなく、派手さはありません。しかし、それは、私たちが日々扱う「データ」の信頼性という、業務の根幹を支える、非常に重要な改善です。
メールマーケティングのリスト精度を上げる、顧客データの品質を高める、入力ミスを未然に防ぐ。こうした日々の地道な作業の質が、今回のアップデートによって、確実に向上します。
Google Workspaceが、こうした細やかで本質的な改善を続けてくれることは、ユーザーとして非常に心強いことですね。ぜひ、あなたのデータ管理業務に、このより賢くなった関数たちを、改めて活用してみてはいかがでしょうか。