リモートワークが当たり前になった今、多くの企業でVPN(Virtual Private Network)が利用されています。
しかし、アクセスの集中による速度低下や、複雑な運用管理、そしてセキュリティ上の懸念を感じている方も多いのではないでしょうか。
「そろそろVPN頼りの働き方から卒業したい」。
そうお考えなら、その答えは「Google Workspace」にあるかもしれません。
この記事では、従来のVPNが抱える課題を整理し、次世代のセキュリティモデルである「ゼロトラスト」を、Google Workspaceを活用してどのように実現するのか、具体的なステップを交えて分かりやすく解説します。
この記事を読み終える頃には、より安全で快適なリモートアクセス環境を構築するための、明確な道筋が見えているはずです。
なぜ今、「脱VPN」と「ゼロトラスト」が求められるのか?
長年、リモートアクセスの標準とされてきたVPNですが、働き方の多様化やサイバー攻撃の高度化に伴い、その限界が指摘されるようになりました。ここでは、VPNが抱える課題と、それに代わる新しいセキュリティの考え方「ゼロトラスト」について解説します。
従来型VPNが抱える3つの限界
VPNは、社内ネットワークという「城」の外から安全にアクセスするための「トンネル」として機能してきました。しかし、この「城と堀」に例えられる境界型防御モデルには、現代のビジネス環境において3つの大きな限界があります。
- パフォーマンスのボトルネック: 全社員がリモートワークに移行し、ビデオ会議や大容量ファイルのやり取りが増えると、VPNゲートウェイにトラフィックが集中します。これにより、通信速度が大幅に低下し、業務効率の悪化を招くケースが少なくありません。
- 運用管理の複雑化: 従業員の増減に伴うアカウント管理、VPN機器のメンテナンスやアップデート、トラブルシューティングなど、情報システム部門の運用負荷は増大する一方です。特に、複数の拠点を持つ企業では、管理がさらに煩雑になります。
- 境界型防御の脆弱性: VPNの最大のリスクは、一度認証を突破されると、攻撃者が社内ネットワークに広範囲にアクセスできてしまう点にあります。マルウェアに感染したPCがVPNに接続してしまうと、それを踏み台にして内部のサーバーへ侵入し、ランサムウェアなどの深刻な被害を引き起こす可能性があります。
つまり、VPNは「一度中に入ってしまえば、ある程度自由に行動できる」という性善説に基づいた側面があり、これが現代の脅威に対して脆弱となっているのです。
「ゼロトラスト」という新しいセキュリティの考え方
こうしたVPNの課題を根本から解決するのが、「ゼロトラスト」というセキュリティモデルです。その名の通り、「何も信頼せず、すべてのアクセスを検証する」という原則に基づいています。
VPNが「城の門で一度だけ身分証を確認する」仕組みだとすれば、ゼロトラストは「建物内のすべての部屋に入るたびに、毎回身分証と入室許可証の提示を求める」ようなものです。具体的には、以下の要素をアクセスのたびに検証し、信頼性を確認します。
- 誰が (ユーザー認証): 正しいIDとパスワードか、多要素認証はクリアしているか。
- どのデバイスで (デバイス認証): 会社が許可したデバイスか、セキュリティ対策は万全か。
- どこから (場所): 不審な国や地域からのアクセスではないか。
- 何に (アプリケーション): そのユーザーがアクセスを許可された情報やアプリか。
このアプローチにより、たとえID情報が漏洩しても、不正なデバイスや場所からのアクセスを防ぐことができます。ゼロトラストは、従業員がどこにいても、社内にいる時と同じレベルのセキュリティを確保し、柔軟で安全な働き方を実現するための、現代に必須の考え方と言えるでしょう。
Google Workspaceがゼロトラスト実現の鍵となる理由
「ゼロトラストが重要なのは分かったけれど、導入は大変そう…」と感じるかもしれません。しかし、もし貴社がGoogle Workspaceを導入している、あるいは導入を検討しているのであれば、ゼロトラスト実現への道はすでに開かれています。Google Workspaceは単なるオフィスツール群ではなく、ゼロトラストセキュリティを実現するための強力なプラットフォームなのです。
標準機能で実現する基本的なゼロトラスト
実は、Google Workspaceは特別なプランでなくても、その標準機能だけでゼロトラストの基本的な要素をカバーしています。これらは、今すぐにでも実践できるセキュリティ強化策です。
- 強力なID管理と多要素認証 (MFA): すべてのアクセスの起点となるのがGoogleアカウントによるID管理です。これに、スマートフォンへの通知やセキュリティキーを使った多要素認証を組み合わせることで、「誰が」アクセスしているのかを厳格に検証できます。
- 基本的なデバイス管理: Businessプラン以上では、管理者が従業員のスマートフォンやPCに対して、パスワードの強制や画面ロックなどの基本的なセキュリティポリシーを適用できます。これにより、会社が管理する「安全なデバイス」からのアクセスを徹底させることが可能です。
- データ保護と共有設定: Googleドライブ上のファイルやフォルダに対して、誰が閲覧・編集できるのかを細かく制御できます。また、Enterpriseプランで利用可能な「データ損失防止(DLP)」機能を使えば、機密情報が不正に外部へ共有されるのを自動的に防ぐことも可能です。
BeyondCorp Enterpriseで実現する高度なゼロトラスト
さらに高度なゼロトラスト環境を構築するために、Googleは「BeyondCorp Enterprise」というソリューションを提供しています。これは、Googleが自社のセキュリティを守るために長年運用してきた「BeyondCorp」というモデルを製品化したもので、Google Workspaceと深く連携します。
- コンテキストアウェアアクセス: BeyondCorpの中核をなすのが、この「状況を認識するアクセス制御」です。ユーザー、デバイス、場所、時間といった様々な情報(コンテキスト)をリアルタイムで評価し、「役員が、会社の資産として登録されたPCを使い、日本国内からアクセスしている場合にのみ、機密情報が保管された共有ドライブへのアクセスを許可する」といった、極めて動的で柔軟なアクセスポリシーを定義できます。
- Identity-Aware Proxy (IAP): これまでVPN経由でしかアクセスできなかった社内のWebシステム(勤怠管理や経費精算など)を、VPNなしで安全に公開できる機能です。ユーザーがシステムにアクセスしようとすると、IAPがGoogleアカウントでの認証を要求し、許可されたユーザーだけを安全にシステムへ接続させます。これにより、レガシーなシステムにもゼロトラストの考え方を適用し、利便性とセキュリティを両立できます。
このように、Google Workspaceをプラットフォームとして活用することで、基本的な設定から高度な制御まで、企業の成長段階やセキュリティ要件に合わせてゼロトラストを段階的に導入していくことが可能なのです。
実践!Google Workspaceでセキュアなリモートアクセス環境を構築する3ステップ
ここからは、実際にGoogle Workspaceを使ってゼロトラストに基づいたリモートアクセス環境を構築するための、具体的な3つのステップを紹介します。まずはスモールスタートで、自社の状況に合わせて試していくことをお勧めします。
ステップ1: Google Workspaceの基本的なセキュリティ設定を強化する
最初のステップは、すべての土台となるIDとデバイスの管理を徹底することです。これはGoogle Workspaceの管理コンソールから設定できます。
- 全ユーザーに多要素認証 (MFA) を必須にする: 最も重要かつ効果的な設定です。管理コンソールから、すべてのユーザーに対して2段階認証プロセスを強制適用しましょう。パスワード漏洩による不正アクセスのリスクを劇的に低減できます。
- セキュリティキーの活用を推奨する: スマートフォンの認証アプリよりもさらに安全なのが、Titanセキュリティキーのような物理的なキーです。フィッシング詐欺にも耐性があり、最高レベルのセキュリティを確保できます。特に管理者や役員など、高い権限を持つユーザーには利用を義務付けるのが理想です。
- デバイスポリシーを適用する: 従業員が使用するスマートフォンやPCに対して、最低限のセキュリティポリシーを設定します。例えば、「画面ロックのパスワードを必須にする」「一定期間操作がない場合に自動でロックする」「紛失時にリモートでデータを消去できるようにする(ワイプ)」といった設定は、基本的なデバイス管理機能で実現できます。
ステップ2: コンテキストアウェアアクセスで動的な制御を導入する
次に、BeyondCorp Enterpriseの機能であるコンテキストアウェアアクセスを使い、よりきめ細やかなアクセス制御を設定します。これにより、「いつ、誰が、どこから、どのデバイスで」といった状況に応じて、アクセスできる範囲を動的に変更します。
設定例: 「会社の管理下にあるデバイスで、かつ日本国内からのアクセスのみ、特定のGoogleドライブフォルダへのアクセスを許可する」
- アクセスレベルの作成: まず、管理コンソールで「デバイスが会社の管理下にある」「IPアドレスが日本国内である」という2つの条件を組み合わせた「アクセスレベル」を定義します。
- アプリへの適用: 次に、作成したアクセスレベルをGoogleドライブに適用し、特定の組織部門(例: 経理部)やグループを指定します。
これだけで、経理部のメンバーが海外出張中に個人のPCから経費関連のフォルダにアクセスしようとしても、自動的にブロックされるようになります。このように、リスクの高いアクセスを未然に防ぐルールを柔軟に作成できるのが大きな強みです。
ステップ3: IAPで社内WebシステムをVPNから解放する
最後のステップは、VPN接続の最大の理由となっていることが多い、社内Webアプリケーションの解放です。Identity-Aware Proxy (IAP) を使えば、VPNクライアントソフトをインストールすることなく、ブラウザだけで安全にアクセスできるようになります。
仕組みのイメージ:
- ユーザーが社内システムのURLにアクセスします。
- IAPが通信を一度受け止め、ユーザーにGoogleアカウントでのログインを要求します。
- ログイン情報と、設定されたアクセスポリシー(例: 特定のグループに所属しているか)を検証します。
- 検証をクリアしたユーザーの通信だけを、暗号化して安全に社内システムへ転送します。
この仕組みにより、認証されていないトラフィックは社内ネットワークに一切到達しません。ユーザーは普段使っているWebサービスと同じ感覚で社内システムを利用でき、管理者はすべてのアクセスログをクラウド上で一元的に監査できるようになるなど、双方に大きなメリットがあります。
まとめ:脱VPNは、未来への賢い投資
本記事では、従来のVPNが抱える課題から、ゼロトラストという新しいセキュリティの考え方、そしてGoogle Workspaceを活用した具体的な実現方法までを解説しました。
ポイントをまとめると以下の通りです。
- VPNの「境界型防御」は、現代の働き方やサイバー攻撃に対して限界を迎えている。
- 「ゼロトラスト」は、すべてのアクセスを検証することで、場所を問わない安全な業務環境を実現する。
- Google Workspaceは、標準機能とBeyondCorp Enterpriseを組み合わせることで、段階的かつ強力なゼロトラストプラットフォームとなる。
脱VPNとゼロトラストへの移行は、単なるセキュリティ強化に留まりません。それは、VPNの運用コストやライセンス費用を削減し、従業員の生産性を向上させ、あらゆる場所から安心して働ける環境を整備する、未来への賢い投資です。
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