本記事はGoogle Workspace Updatesブログ( https://workspace.googleblog.com/ )の情報を基に、2025年9月18日に作成されました。
Google Workspaceを管理されている皆様、こんにちは。
私たちの日常業務は、今や、Webブラウザ「Google Chrome」を中心に回っていると言っても過言ではありません。
Gmailでのメールチェック、カレンダーでの予定確認、そして、様々なクラウドサービスや社内システムへのアクセス。Chromeは、単なるWebサイト閲覧ツールから、私たちの仕事そのものを実行するための、中心的な「ワークスペース」へと進化を遂げました。
しかし、その一方で、私たちの目の前には、常に、複数のブラウザタブが、まるで情報の洪水のように、溢れかえっています。
「今、開いているこの5つのタブの内容を、横断的に比較しながら、レポートの要約を作りたい…」
「この製品の比較サイトを見ながら、自社の製品ページと見比べて、強みと弱みを分析したい…」
「競合他社のニュースリリースをいくつか読みながら、次のマーケティング戦略について、AIと壁打ちしたい…」
これまで、こうした「複数のタブを横断した、高度な情報処理」は、私たちの脳と、地道なコピー&ペースト作業に、完全に依存していました。
この、ブラウザ利用における、根本的な課題を解決するため、Googleはこの度、Chromeブラウザそのものを、インテリジェントな「AIブラウジングアシスタント」へと進化させる、革命的な新機能「Gemini in Chrome」を、近日中に一般公開することを発表しました。
そして、その正式リリースに先立ち、管理者の皆様が、この強力な新機能を、組織のポリシーに合わせて、事前にコントロールするための設定が、管理コンソールに先行して導入されました。今回は、来たるべき「ブラウジングの未来」に備えるため、すべての管理者が「今」知っておくべき、この重要な新機能と、その管理方法について、詳しく解説していきます。
新機能の核心:あなたの「ブラウジングの文脈」を、AIが理解する
今回発表された「Gemini in Chrome」の核心は、「あなたが今、Chromeで開いている、最大10個のブラウザタブの内容を、AI『Gemini』が、その文脈として、丸ごと理解し、それを基に、あなたと高度な対話ができるようになる」という点にあります。
これにより、あなたは、Chromeブラウザの横で、Geminiを呼び出し、以下のような、これまで不可能だった、魔法のような情報処理を、実現することができます。
複数の情報源からの、瞬時の要約と比較分析:
「今、開いている、この3つの市場調査レポートのタブを基に、来期の市場トレンドの要点をまとめて」文脈に基づいた、深い対話と思考のパートナー:
「この製品ページのタブと、競合製品のタブの内容を比較して、我々の製品が勝っている点を、3つ教えて」音声による、ハンズフリーな情報探索:
Gemini Liveと組み合わせることで、「今開いているタブの内容について、声で質問する」といった、ハンズフリーなブラウジング体験も可能になります。
Gemini in Chromeは、あなたが今、何に興味を持ち、何をしようとしているのか、その「文脈」を理解した上で、あなたをサポートする、真の「AIブラウジングアシスタント」なのです。
【最重要】管理者必見!リリース前に、必ず設定を確認すべき2つのポイント
この非常に強力な新機能は、近日中に、Geminiアプリへのアクセス権を持つ、すべてのGoogle Workspaceユーザーに対して、ロールアウトが開始される予定です(現時点では米国、英語のみから)。
そして、そのデフォルト設定は、「オン」です。
つまり、管理者の皆様が、今、何もしなければ、ある日突然、あなたの組織のユーザーが、この新機能を利用し始める、ということになります。
そこでGoogleは、管理者の皆様が、組織のセキュリティポリシーや、コンプライアンス要件に合わせて、この機能を事前にコントロールできるよう、2つの管理設定を用意しました。
設定1:大元を管理する「Geminiアプリサービス設定」
場所: 管理コンソール内
役割: Geminiアプリ(Web版、モバイル版、そして今回のChrome版)へのアクセスを、一元的に管理する、大元のスイッチです。
デフォルト: オン
アクション: もし、あなたの組織で、いかなる形であれ、Geminiアプリの利用を許可しない方針であれば、この設定をオフにすることで、Gemini in Chromeを含む、すべてのGeminiアプリへのアクセスを、完全にブロックできます。
設定2:Chrome版だけを制御する「Chrome Gemini設定」
場所: 管理コンソール内
役割: Gemini in Chrome機能「だけ」を、個別にオン/オフするための、専用のスイッチです。
デフォルト: 「0 – Gemini統合を許可」
アクション: 例えば、「Web版やモバイル版のGeminiアプリは、業務で利用を許可したい。しかし、ブラウザの閲覧履歴という、より広範な情報を扱う、Gemini in Chromeの利用は、現時点では、まだ許可したくない」といった、きめ細かなポリシーを運用したい場合に、この設定を変更します。この設定をオフにしても、Web版やモバイル版のGeminiアプリの利用には、何の影響もありません。
一般公開が始まるのは、早くとも2025年10月2日からと予告されています。ぜひ、それまでの間に、あなたの組織のポリシーと照らし合わせて、これら2つの設定が、意図した通りの状態になっているかを、必ずご確認ください。
【要注意】コンプライアンスに関する重要な免責事項
Gemini in Chromeは、非常に新しいテクノロジーであるため、リリース当初は、既存のGoogle Workspaceが取得している、一部のコンプライアンス認証の対象外となります。これは、特に、厳格な規制下にある業界の管理者にとって、極めて重要な情報です。
リリース当初、Gemini in Chromeには適用されない、主要なコンプライアンス認証:
HIPAA(米国の医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律):
HIPAAのBAA(事業提携者契約)をGoogleと締結しているお客様に対しては、Gemini in Chromeは、自動的にブロックされます。SOC 1, SOC 2, SOC 3
ISO/IEC 27001, 27017, 27018, 27701 など
FedRAMP High(米連邦政府のセキュリティ基準)
これらのコンプライアンス認証が必須となる業務で、Google Workspaceを利用している場合は、上記の「Chrome Gemini設定」をオフにし、Gemini in Chromeの利用を、組織的に制限することを、強く推奨します。
データ保護と利用規約について
もちろん、Gemini in Chromeは、Geminiアプリの機能の一部として、Google Workspaceのコアサービスに位置づけられます。
そのため、ビジネスおよび教育機関のお客様の利用には、Google Workspaceの利用規約が適用され、エンタープライズグレードのデータ保護が提供されます。
入力されたコンテンツが、許可なく、人間によってレビューされたり、ドメイン外で、生成AIモデルの改善に使用されたりすることはありませんので、ご安心ください。
まとめ
近日中に一般公開が予定されている「Gemini in Chrome」。
これは、私たちが、日々、最も多くの時間を過ごす場所である「Webブラウザ」そのものを、AIの力で、より賢く、より生産的なパートナーへと、進化させる、大きな一歩です。
そして、その大きな変化の波に、組織として、安全に、そして計画的に、乗りこなしていくために。
管理者の皆様は、ぜひ、正式リリースが始まる前の、この準備期間中に、管理コンソールに新しく追加された設定項目を確認し、あなたの組織にとって、最適なアクセス制御ポリシーを、検討・設定してください。
未来のブラウジング体験は、もう、すぐそこまで来ています。