いよいよ個人事業主としての一歩を踏み出す決意を固め、開業届を準備しているあなた。
しかし、書類を前にして「あれ、開業届以外に何か添付書類は必要なんだっけ?」と手が止まっていませんか。
「マイナンバーカードは持っていくべき?」、「郵送の場合は何が違うの?」など、細かいけれど重要な疑問が次々と湧いてくるかもしれません。
特に初めての開業準備では、些細なことでも不安に感じてしまうものです。
この記事では、そんなあなたの悩みを解消するため、開業届の提出時に必要なものを徹底的に解説します。
提出方法ごとのチェックリストも用意したので、この記事を読めば、自信を持って税務署へ向かうことができるはずです。
スムーズな開業準備の第一歩を、ここから始めましょう。
そもそも開業届に添付書類は原則不要?基本の提出物を確認しよう
結論から言うと、個人事業の開業届そのものに、法律で定められた必須の添付書類というものは原則としてありません。「え、そうなの?」と意外に思われるかもしれませんが、基本的には「個人事業の開業・廃業等届出書(開業届)」という書類1枚を提出すれば手続きは完了します。
ただし、話はそう単純ではありません。手続きの際には「本人確認」と「マイナンバー(個人番号)の確認」が求められるため、結果的に本人確認書類の提示または写しの添付が必要不可欠となります。これを「添付書類」と捉えるかどうかで混乱が生じやすいのです。ここでは、開業届提出の基本セットを正しく理解しておきましょう。
開業届の提出に必要な「基本セット」
税務署で手続きをする際に、最低限必要となるのは以下の2点です。
- 記入済みの開業届(提出用・控用)
- 本人確認書類
開業届は、税務署の窓口でもらうか、国税庁のホームページからダウンロードできます。提出用と控用の2部を作成し、控用には税務署の受付印(収受印)を押してもらい、大切に保管しましょう。この控用は、屋号で銀行口座を開設したり、融資を申し込んだり、補助金の申請をしたりする際に「事業を営んでいる証明」として必要になる重要な書類です。
そして、もう一つが本人確認書類です。これがないと、せっかく開業届を書いて持参しても受け付けてもらえないため、絶対に忘れてはいけません。
マイナンバー(個人番号)の記載は必須!
2016年以降、税務に関する書類にはマイナンバーの記載が義務付けられています。もちろん開業届も例外ではありません。開業届の様式にも、12桁の個人番号を記入する欄が設けられています。
このマイナンバーが正しく本人のものであることを証明するために、後述する「本人確認書類」が必要になるわけです。マイナンバーの記載を忘れると、書類の不備として再提出を求められる可能性が高いので、必ず記入してから提出しましょう。もし自分のマイナンバーが分からない場合は、住民票の写し(マイナンバー記載あり)を取得して確認するなどの対応が必要です。
なぜ本人確認書類の提示・添付が必要なのか?
「マイナンバーを書くだけでなく、なぜ本人確認まで?」と疑問に思うかもしれません。これは、なりすましなどを防ぎ、行政手続きの正確性と安全性を確保するためです。提出された開業届に記載されたマイナンバーが、本当にその申請者本人のものであるかを確認する「番号確認」と、申請者が実在する本人であることを確認する「身元確認」の2つを行うために、本人確認書類が求められます。
この本人確認の方法が、マイナンバーカードの有無や、提出方法(窓口・郵送・e-Tax)によって少しずつ異なります。次のセクションで、それぞれのケースについて詳しく見ていきましょう。
【ケース別】開業届の提出時に必要な本人確認書類チェックリスト
開業届の提出方法は、主に「税務署の窓口へ持参」「郵送」「e-Tax(電子申告)」の3つです。どの方法を選ぶかによって、必要となる本人確認書類が変わってきます。ご自身の状況に合わせて、事前にしっかりと準備しておきましょう。
ケース1:税務署の窓口で直接提出する場合
最も確実で、その場で不備がないか確認してもらえるのが窓口での提出です。この場合、本人確認書類は「提示」するだけでOKです。
【マイナンバーカードを持っている場合】
持参するのはマイナンバーカード1枚だけで大丈夫です。マイナンバーカードは、1枚で「番号確認」と「身元確認」の両方ができるため、手続きが非常にスムーズです。
- 持参物チェックリスト:
- 記入済みの開業届(提出用・控用)
- マイナンバーカード
- 印鑑(認印でOK。必須ではないが、訂正時にあると便利)
【マイナンバーカードを持っていない場合】
この場合は、「番号確認書類」と「身元確認書類」の2種類を組み合わせて提示する必要があります。
- 番号確認書類の例:
- 通知カード(氏名・住所等が住民票と一致しているもの)
- マイナンバーが記載された住民票の写し
- 身元確認書類の例:
- 運転免許証
- パスポート
- 公的医療保険の被保険者証 など
例えば「通知カード+運転免許証」や「住民票の写し+パスポート」といった組み合わせで持参します。
ケース2:郵送で提出する場合
平日に税務署へ行く時間がない方には郵送が便利です。この場合、本人確認書類は提示できないため、写し(コピー)を台紙に貼り付けて添付する必要があります。
【マイナンバーカードを持っている場合】
マイナンバーカードの表面と裏面の両方をコピーし、添付書類台紙に貼り付けて同封します。
【マイナンバーカードを持っていない場合】
窓口提出時と同様に、「番号確認書類」と「身元確認書類」の2種類の写しが必要です。例えば、「通知カードの写し」と「運転免許証の写し」をセットで添付します。
- 郵送物チェックリスト:
- 記入済みの開業届(提出用・控用)
- 本人確認書類の写しを貼り付けた添付書類台紙
- 切手を貼った返信用封筒(控用を返送してもらうため)
返信用封筒を入れ忘れると、受付印が押された控用が手元に戻ってこないので、絶対に忘れないようにしましょう。
ケース3:e-Taxで電子申告する場合
自宅から24時間いつでも提出できるのがe-Taxの魅力です。マイナンバーカードとICカードリーダーライタ、またはマイナンバーカード読取対応のスマートフォンがあれば利用できます。
e-Taxで提出する場合、マイナンバーカードに格納された電子証明書によって本人確認が完了するため、別途、本人確認書類を提示したり、写しを添付したりする必要はありません。これが電子申告の大きなメリットの一つです。
しかし、e-Taxの利用には事前準備や設定が必要で、初めての方には少しハードルが高いと感じるかもしれません。もっと手軽に、かつ間違いなく書類を作成して提出したい、というニーズも多いのが実情です。
開業届と“一緒に”提出するとお得?青色申告とインボイス登録
開業届を提出するタイミングは、実は節税対策や将来の事業展開を見据えた重要な手続きをまとめて行う絶好のチャンスです。開業届単体だけでなく、以下の書類も一緒に提出することを強くおすすめします。なぜなら、提出期限が定められており、タイミングを逃すと大きな不利益を被る可能性があるからです。
最大65万円の特別控除!「青色申告承認申請書」
個人事業主の確定申告には「白色申告」と「青色申告」の2種類があります。青色申告は、複式簿記での記帳など一定の要件を満たすことで、最大65万円の所得控除をはじめ、赤字を3年間繰り越せる、家族への給与を経費にできるなど、税制上の大きなメリットを受けられる制度です。
この青色申告を行うためには、「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出する必要があります。提出期限は、原則として開業日から2ヶ月以内です。この期限を過ぎてしまうと、その年は白色申告しかできなくなり、大きな節税の機会を逃してしまいます。
そのため、多くの先輩事業主は、忘れないように開業届と同時にこの申請書を提出しています。どうせ税務署に行くなら、一度で済ませてしまうのが最も効率的です。
2025年10月時点:検討必須の「インボイス登録申請書」
2023年10月から始まったインボイス制度(適格請求書等保存方式)。あなたが取引する相手が課税事業者である場合、あなたがインボイス発行事業者でないと、取引先は仕入税額控除を受けられず、結果として取引を見送られてしまう可能性があります。
たとえ開業直後で売上が1,000万円以下(本来なら消費税の納税が免除される免税事業者)であっても、取引先の都合を考えると、開業当初からインボイス発行事業者として登録しておく方がビジネスチャンスを逃さずに済むケースが多いでしょう。
インボイス発行事業者になるためには、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出します。こちらも開業届と同時に提出することが可能です。登録には一定の時間がかかるため、事業開始と同時にインボイスを発行したいのであれば、早めに手続きを済ませておきましょう。
書類作成の複雑さにうんざり?そんな時の解決策
「開業届に加えて、青色申告承認申請書、それにインボイスの登録申請書まで…。書くべき書類が多すぎるし、専門用語ばかりで書き方が分からない!」
ここまで読んで、そんな風に感じてしまった方もいるのではないでしょうか。確かに、これらの書類をすべて手書きで、しかも間違いなく作成するのは骨の折れる作業です。
しかし、ご安心ください。現代では、こうした面倒な書類作成を劇的に楽にしてくれる便利なサービスが存在します。特に、これから開業する方々の間で定番となりつつあるのが、会計ソフト会社などが提供する「開業支援サービス」です。
これらのサービスを使えば、Webサイト上の質問に答えていくだけで、必要な書類が自動で生成されます。詳しくは、当サイトの「【開業準備ガイド】個人事業主になるには?無料の「マネーフォワード クラウド開業届」で書類作成から提出まで完全サポート!」という記事で詳しく解説していますが、手書きの手間や記入ミスへの不安から解放されるだけでなく、提出方法まで丁寧に案内してくれるため、初心者でも迷うことがありません。
まとめ:添付書類の不安を解消し、スマートな開業準備を
今回は、開業届の添付書類について、多くの方が抱える疑問を解消するために詳しく解説しました。最後に、重要なポイントを振り返りましょう。
- 開業届自体に必須の添付書類はないが、本人確認書類の提示・添付は必須。
- マイナンバーカードがあれば、1枚で本人確認が完了しスムーズ。
- ない場合は「番号確認書類」+「身元確認書類」の2点セットが必要。
- 郵送の場合は、本人確認書類の「写し」を添付し、返信用封筒を忘れずに同封する。
- 節税メリットの大きい「青色申告承認申請書」は開業届と同時に提出するのが鉄則。
書類の準備は、開業という大きなイベントのほんの入り口に過ぎません。ここで手間取ってしまい、事業の本質的な準備に時間を割けないのは非常にもったいないことです。
書類準備の不安や手間は、便利なツールを賢く活用することで一気に解消できます。特に「マネーフォワード クラウド開業届」は、この記事で触れた開業届、青色申告承認申請書、さらにはインボイス登録申請書まで、すべてを無料で作成できる優れたサービスです。画面の案内に従うだけで、専門知識がなくても完璧な書類一式が完成します。
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