個人事業主やフリーランサーとして活動していると、「どの事業が一番儲かっているんだろう？」と疑問に思ったことはありませんか。
複数のクライアントからの案件を抱えていたり、異なるサービスを展開していたりすると、全体の売上は分かっても、それぞれの事業単体での収益性が見えにくくなりがちです。
実は、多くの方が利用している「マネーフォワード クラウド確定申告」には、この悩みを解決する強力な機能が隠されています。
それが「タグ」機能です。
この機能を活用することで、どんぶり勘定から脱却し、データに基づいた的確な経営判断が可能になります。
この記事では、マネーフォワード クラウド確定申告の「タグ」機能に焦点を当て、部門別・プロジェクト別に経費を詳細に分析し、事業の収益性を可視化するための具体的な方法を、実践的な例を交えながら徹底解説します。
この記事を読み終える頃には、あなたも「タグ」マスターとして、ご自身の事業をより深く理解し、次の成長戦略を描けるようになっているはずです。
マネーフォワードの「タグ」機能とは？基本から理解する
まずは、「タグ」機能がどのようなもので、なぜ個人事業主にとって重要なのか、基本的な部分から押さえていきましょう。この機能を理解することが、詳細な経費分析への第一歩となります。
そもそも「タグ」機能って何？勘定科目との違い
マネーフォワード クラウド確定申告における「タグ」とは、取引（仕訳）に対して自由に設定できる目印やラベルのようなものです。多くの人が入力している「勘定科目」と混同されがちですが、その役割は明確に異なります。
- 勘定科目: 取引の「性質」を示すもの。「何に使ったか」を表します。（例: 旅費交通費, 通信費, 消耗品費）
- タグ: 取引の「目的」や「帰属」を示すもの。「何のために使ったか」を補足します。（例: Aプロジェクト, B事業, 東京支店）
例えば、クライアントA社との打ち合わせでカフェを利用した場合、仕訳は以下のようになります。
- 勘定科目: 会議費
- 金額: 1,500円
これだけだと、単に会議費が1,500円かかったという事実しか分かりません。しかし、ここに「タグ」を追加するとどうでしょうか。
- 勘定科目: 会議費
- 金額: 1,500円
- タグ: A社案件
このようにタグ付けすることで、この1,500円が「A社案件」のために使われた経費であることが一目瞭然になります。この小さな積み重ねが、後々の詳細な分析に繋がるのです。
なぜ「タグ」機能が個人事業主にとって重要なのか
個人事業主、特に複数の収入源を持つフリーランサーにとって、「タグ」機能は単なる便利な機能ではなく、事業の健全性を測るための経営ツールとなり得ます。その重要性は、主に以下の2点に集約されます。
- 事業ごとの収益性の可視化: 例えば、「Web制作事業」と「コンサルティング事業」の2つを展開している場合、それぞれの事業にタグを付けておくことで、事業ごとの売上と経費を正確に把握できます。これにより、「実はWeb制作事業は利益率が高いが、コンサルティング事業は思ったより経費がかさんでいる」といった具体的な状況が数字で分かり、リソースの再配分や価格設定の見直しなど、的確な経営判断を下すための根拠となります。
- プロジェクト単位での損益管理: 期間の長い大規模なプロジェクトを受注した場合、そのプロジェクト専用のタグを作成することで、プロジェクト期間中の収入と支出をリアルタイムで追跡できます。「この案件、最終的に黒字になるのか？」という不安を抱えながら進めるのではなく、データに基づいて進捗を管理し、必要であれば途中でクライアントに追加費用の交渉をするといったアクションも可能になります。
どんぶり勘定では見えてこない事業の実態を明らかにし、感覚ではなく事実に基づいて事業を成長させるために、「タグ」機能は不可欠な存在と言えるでしょう。
簡単！タグの作成と設定方法（2025年11月時点）
タグの作成は非常に簡単です。以下のステップで設定できます。
- マネーフォワード クラウド確定申告にログインし、左メニューの「各種設定」＞「勘定科目」をクリックします。
- 画面上部にある「タグ」タブを選択します。
- 「タグを追加」ボタンを押し、分かりやすい名前（例: Web制作事業, Aクライアント）を入力して登録します。
これだけでタグの準備は完了です。あとは、日々の仕訳入力の際に、該当するタグを選択するだけ。自動連携で取り込まれた明細に対しても、後から編集してタグを付けることができます。まずはご自身の事業内容に合わせて、いくつかタグを作成してみましょう。
実践！「タグ」を活用した部門別経費分析の具体的なステップ
タグの基本を理解したところで、次はいよいよ実践編です。ここでは、具体的な職種を例に挙げ、どのようにタグを設定し、分析に繋げていくのかをステップバイステップで解説します。ご自身の状況に近いケースを参考に、ぜひ取り入れてみてください。
ケーススタディ1：Webライター兼ブログ運営者の場合
Webライターとしてクライアントワークをこなしつつ、自身のブログでも収益を上げているAさんを例に考えてみましょう。Aさんは、どの活動がどれくらいの利益を生んでいるのかを明確にしたいと考えています。
Step 1: タグの設計
まず、事業の柱に合わせて以下のようなタグを作成します。
- クライアントワーク
- ブログ運営
さらに詳細に分析したい場合は、クライアントごとにタグを作成するのも有効です。
- A社案件
- B社案件
- ブログ運営
Step 2: 日々の仕訳でタグ付け
次に、発生した経費にこれらのタグを紐づけていきます。
- 取材のための交通費: 勘定科目は「旅費交通費」。A社案件のための取材なら、タグは「A社案件」。
- WordPressテーマの購入費: 勘定科目は「消耗品費」または「通信費」。ブログ用のテーマなら、タグは「ブログ運営」。
- 資料として購入した書籍代: 勘定科目は「新聞図書費」。B社案件の執筆に必要なら、タグは「B社案件」。もし複数の案件やブログにも関連する内容なら、タグを複数選択することも可能です。
- サーバー・ドメイン代: 勘定科目は「通信費」。ブログ運営のための費用なので、タグは「ブログ運営」。
Step 3: レポート機能で分析
データが蓄積されたら、レポート機能を使って分析します。左メニューの「レポート・帳簿」＞「集計」＞「推移」を開きます。画面上部の集計対象で「費用」を選択し、「タグ」のプルダウンメニューから分析したいタグ（例: ブログ運営）を選びます。すると、ブログ運営にかかった経費の内訳がグラフと表で表示されます。同様に売上もタグで絞り込むことで、事業ごとの収益を正確に比較検討できるようになります。
ケーススタディ2：複数のオンライン講座を運営する事業者の場合
次に、ビジネススキル講座とデザイン講座の2つのオンライン講座を運営しているBさんの例です。どちらの講座がより収益性が高いのかを把握したいと考えています。
Step 1: タグの設計
講座ごとにタグを作成します。
- ビジネススキル講座
- デザイン講座
Step 2: 日々の仕訳でタグ付け
講座運営にかかる費用を、タグを使って仕分けします。
- 広告宣伝費: ビジネススキル講座の集客のために出稿したWeb広告費なら、タグは「ビジネススキル講座」。
- 外注費: デザイン講座の教材動画の編集を外部に依頼した場合、タグは「デザイン講座」。
- プラットフォーム手数料: 各講座の売上があった際に発生する手数料を、それぞれのタグに紐づけます。
Step 3: 分析と改善
レポート機能で各講座の収益性を比較します。もし「ビジネススキル講座」の方が利益率が高いと分かれば、広告予算をそちらに集中させる、といった戦略的な判断ができます。逆に、「デザイン講座」の利益率が低い原因が外注費にあると特定できれば、内製化を検討したり、別の外注先を探したりといった具体的な改善アクションに繋げられます。
「タグ」分析から見えてくる！次の経営アクションに繋げる方法
「タグ」を使って経費を分析する最終目的は、現状を把握し、より良い未来のための経営判断を下すことです。分析して終わりではなく、その結果をどのように次のアクションに繋げていくかが重要になります。ここでは、分析結果を活かすための具体的な考え方を紹介します。
収益性の低い事業の見直し
タグ分析によって、残念ながら赤字、あるいは利益率が著しく低い事業が明らかになることがあります。しかし、これは悲観すべきことではなく、むしろ事業を改善する絶好の機会です。データという客観的な事実に基づいて、以下の点を見直してみましょう。
- 価格設定は適正か？: 提供している価値に対して、価格が低すぎないか検討します。競合の価格や、その事業に投入している時間的コストを再評価し、必要であれば値上げを検討します。
- コスト構造に無駄はないか？: レポートで経費の内訳を確認し、削減できるコストがないか探します。例えば、特定の外注費が利益を圧迫しているなら、よりコストパフォーマンスの高い代替手段を検討します。
- 撤退も選択肢の一つ: 様々な改善策を講じても収益性の向上が見込めない場合、その事業から撤退するという判断も重要です。情熱だけで事業を続けるのではなく、限られたリソースをより収益性の高い事業に集中させることで、全体の成長を加速させることができます。
マネーフォワード クラウド確定申告は、単なる申告ソフトではなく、こうしたシビアな経営判断をサポートしてくれる強力なパートナーなのです。
利益率の高い事業へのリソース集中
分析の結果、非常に好調で利益率の高い「金のなる木」となっている事業が見つかることもあります。この場合、その事業の成長をさらに加速させるためのアクションを考えます。
- 積極的な投資: 広告宣伝費を追加投入して新規顧客の獲得を強化したり、業務効率化のためのツールを導入したりと、利益の一部を再投資することで、さらなる成長のサイクルを生み出します。
- 横展開の検討: なぜその事業が成功しているのか、要因を分析します。その成功モデルを、他の事業や新しいサービスに応用できないか検討することで、事業全体の底上げを図ることができます。
データに基づいて強みを特定し、そこにリソースを集中投下する。これは、個人事業主が持続的に成長していくための王道戦略と言えるでしょう。
確定申告が楽になるだけじゃない！未来の事業計画への活用
タグ付けされた正確なデータは、確定申告の作業を効率化するだけでなく、未来の事業計画を立てる上での貴重な羅針盤となります。前年度の各事業の収益性が分かっていれば、次年度の売上目標や予算を、より現実的かつ具体的に設定することができます。
さらに、これは独自の視点ですが、金融機関から融資を受ける際にも、タグで整理されたデータは非常に強力な武器になります。事業ごとの詳細な収益データを示すことで、事業の将来性や返済能力を客観的に証明でき、審査担当者に対して説得力のある説明が可能になります。単に「事業全体でこれだけ儲かっています」と説明するよりも、「このA事業は利益率30%で成長しており、ここに投資することでさらなる拡大が見込めます」と具体的な数字で語れる方が、圧倒的に信頼性が高まるのです。
まとめ：タグ機能を使いこなし、戦略的な事業運営を
今回は、マネーフォワード クラウド確定申告の「タグ」機能を使った詳細な経費分析術について解説しました。
この記事の要点をまとめます。
- 「タグ」は勘定科目を補完し、「何のために」使った費用かを記録する機能
- タグを使うことで、事業別・プロジェクト別の正確な収益性を可視化できる
- 分析結果は、価格設定の見直しやリソース配分など、具体的な経営判断に繋がる
- 蓄積されたデータは、未来の事業計画や資金調達にも活用できる
日々の仕訳入力の際に一手間加えるだけで、確定申告ソフトが強力な経営分析ツールへと進化します。
もし、あなたがまだマネーフォワード クラウド確定申告の基本的な使い方に不安があるなら、まずは「【完全ガイド】マネーフォワード クラウド確定申告とは？使い方・評判・料金まで個人事業主向けに徹底解説」の記事で全体像を掴むことをお勧めします。
その上で、ぜひ「タグ」機能の活用に挑戦してみてください。
まだマネーフォワード クラウド確定申告を試したことがない方は、この機会にぜひ無料プランから始めて、その便利さとパワフルな分析機能を実感してみてはいかがでしょうか。
データに基づいた戦略的な意思決定で、あなたの事業を次のステージへと引き上げていきましょう。