毎月の請求書作成、入金確認、経費精算…。
freeeやMFクラウドといった優れた会計ソフトを使っても、なぜかなくならない手作業に悩まされていませんか。
もし、これらの定型業務を「完全に」自動化できるとしたら、あなたのビジネスはどれだけ加速するでしょうか。
この記事では、話題のiPaaSツール「n8n(エヌエイトエヌ)」を活用し、freeeやMFクラウドと連携させることで、これまで人の手に頼らざるを得なかった経理業務の「最後のピース」を埋める方法を、具体的な手順とともに徹底解説します。
手作業によるミスや時間の浪費から解放され、より創造的な仕事に集中するための第一歩を、ここから踏み出しましょう。
なぜ今、経理業務の「完全自動化」が必要なのか?
多くの企業でfreee会計やMFクラウド会計が導入され、経理業務は格段に効率化されました。銀行口座やクレジットカードとの連携による仕訳の自動提案は、もはや当たり前の機能です。しかし、それでもなお、私たちの周りには多くの「手作業」が残存しています。なぜなら、会計ソフトはあくまで「会計処理」を主目的としており、その前後に発生する多様な業務フロー全体をカバーしているわけではないからです。
freee・MFクラウドだけでは不十分な理由
例えば、以下のような業務に心当たりはないでしょうか。
- スプレッドシートで管理している案件リストから、毎月手作業で請求書を作成している。
- 発行した請求書の入金が遅れている取引先に、個別にリマインドメールを送っている。
- 経費精算システムで承認された内容を、会計ソフトに手で転記している。
- 複数のECサイトの売上データを集計し、会計ソフト用のフォーマットに手動で変換している。
これらは、会計ソフトの機能の「隙間」で発生する業務です。一つひとつは小さな作業かもしれませんが、積み重なると膨大な時間と労力を奪い、ヒューマンエラーの温床にもなります。ビジネスが成長するほど、これらの「隙間業務」は比例して増加し、経理担当者や経営者の大きな負担となっていくのです。
経理DXの次なる一手「iPaaS」と「n8n」
この問題を解決する鍵が、iPaaS(Integration Platform as a Service)と呼ばれるサービスです。iPaaSは、様々なクラウドサービスやアプリケーションを連携させる「システムの接着剤」のような役割を果たします。プログラミングの専門知識がなくても、まるでブロックを組み合わせるように、異なるシステム間のデータの流れ(ワークフロー)を自動化できるのが最大の特徴です。
iPaaSの中でも、本記事で特に推奨するのが「n8n」です。ZapierやMakeといった他の有名iPaaSツールと比較して、n8nは以下の点で経理業務の自動化に非常に優れています(2025年11月時点の情報)。
- 高いカスタマイズ性: 複雑な条件分岐やデータ加工の自由度が高く、日本特有の商習慣や企業独自の複雑な経理ルールにも柔軟に対応できます。
- 優れたコストパフォーマンス: 無料で始められるプランがあり、より高度な機能を持つ有料プランも他のツールに比べて安価です。さらに、自社サーバーで運用するセルフホスティングも可能で、大規模な自動化を低コストで実現できます。
- 豊富な連携先: freeeやMFクラウドはもちろん、Google Workspace、Slack、Microsoft 365など、ビジネスで利用されるほとんどのツールと連携が可能です。
つまりn8nは、freeeやMFクラウドだけでは埋めきれなかった業務の隙間を完璧に埋め、経理業務の「完全自動化」を実現するための最も強力な選択肢なのです。
【実践】n8nでfreee/MFクラウドの経理業務を自動化する具体例
それでは、実際にn8nを使ってどのような自動化が実現できるのか、具体的なシナリオを見ていきましょう。ここでは、多くの企業で共通して発生するであろう2つの業務と、一歩進んだ独自の活用例をご紹介します。
自動化シナリオ1:請求書発行から入金確認・消込までを完全自動化
毎月の請求業務は、正確性とスピードが求められる一方で、非常に定型的です。この一連の流れをn8nで自動化してみましょう。
- トリガー: Googleスプレッドシートの「請求管理シート」に新しい行が追加される。
- データ取得: n8nが新しい行のデータ(取引先名、金額、請求日など)を自動で取得します。
- 請求書作成: 取得したデータをもとに、n8nがfreeeまたはMFクラウドのAPIを呼び出し、自動で請求書を作成・発行(メール送信まで)します。
- 社内通知: 請求書が発行されたことを、n8nがSlackの経理チャンネルに「【請求書発行完了】株式会社〇〇様 110,000円」のように通知します。
- 入金確認と消込: n8nが毎日定時にfreee/MFクラウドの入金明細をチェック。請求書の金額と一致する入金があれば、自動で消込処理を実行します。
- ステータス更新: 消込が完了したら、n8nがGoogleスプレッドシートの該当行のステータスを「入金済」に自動で更新します。
このワークフローを一度設定するだけで、請求情報の入力から入金確認まで、人の手が一切介在しない完璧なサイクルが完成します。入金遅延の際には、自動でリマインドメールを送信する、といった処理を加えることも容易です。
自動化シナリオ2:経費精算の申請・承認・支払通知をシームレスに
経費精算もまた、多くの従業員と部署を巻き込む非効率が生まれやすい業務です。n8nを使えば、このプロセスも劇的に改善できます。
- トリガー: 従業員がGoogleフォームやMicrosoft Formsで経費精算を申請する。
- 承認依頼: n8nが申請内容を取得し、Slackで直属の上長に「承認」「差戻」ボタン付きのメッセージを送信します。
- 承認処理: 上長がSlackのボタンをクリックすると、n8nがその結果を判定します。「承認」であれば次のステップへ、「差戻」であれば申請者に理由を添えて通知します。
- 会計データ作成: 承認された申請内容は、n8nによってMFクラウド経費やfreee会計に経費データとして自動で登録されます。
- 支払依頼: 経理担当者へ、Slackで「【支払依頼】〇〇さんの経費精算(5,500円)が承認されました。支払処理をお願いします」と通知します。
- 完了通知: 経理担当者が支払処理を完了し、チェックボックスをオンにすると、それをトリガーにn8nが申請者本人へ「経費精算の支払が完了しました」と通知します。
申請者、承認者、経理担当者間のコミュニケーションロスや確認の手間がなくなり、スピーディで透明性の高い経費精算フローが実現します。
【独自の視点】予実管理レポートの自動生成
n8nの真価は、単なるデータ連携に留まりません。データ加工や計算機能を活用すれば、より高度な業務も自動化できます。その一例が「予実管理レポートの自動生成」です。
- データ収集: n8nが毎月1回、freee/MFクラウドからAPI経由で勘定科目ごとの実績データを取得します。
- 予算データ連携: 同時に、Googleスプレッドシートで管理している予算データを読み込みます。
- 予実差異の計算: n8nの内部で、科目ごとに「実績 – 予算」の差異を計算し、達成率を算出します。
- レポート生成: 計算結果を基に、n8nがGoogleスライドのテンプレートに数値を埋め込み、グラフを自動で更新。美しいデザインの予実管理レポート(PDF形式)を自動生成します。
- 配布: 完成したレポートをGoogleドライブの指定フォルダに保存し、経営陣のメーリングリストに「【自動生成】2025年11月度 予実管理レポート」という件名でメールを自動送信します。
これまで担当者が数時間かけて行っていたデータ集計・レポート作成業務が完全に不要となり、経営陣はいつでも迅速かつ正確な経営判断を下せるようになります。これは、経理部門が守りの業務から、経営に貢献する攻めの部門へと進化する大きな一歩と言えるでしょう。
n8nとfreee/MFクラウド連携を始めるための3ステップ
「自分にもできるだろうか?」と不安に思う必要はありません。n8nを使った自動化は、驚くほど簡単に始められます。ここでは、連携を開始するための具体的な3つのステップをご紹介します。
ステップ1:準備するものリスト
まずは以下のものを準備しましょう。
- freeeまたはMFクラウドのアカウント: API連携が可能なプランである必要があります。多くの場合、法人向けの基本的なプラン以上で対応しています。
- n8nのアカウント: すぐに始められるクラウド版がおすすめです。基本的な機能は無料で試すことができます。
- 連携したい他のツールのアカウント: Google Workspace (スプレッドシート, フォーム等)やSlackなど、あなたの業務で使っているツールの準備をしましょう。
ステップ2:n8nのアカウント作成とAPIキーの取得
準備ができたら、早速n8nのアカウントを作成します。公式サイトにアクセスし、メールアドレスを登録するだけで簡単にサインアップが完了します。
>>まずはn8nの無料クラウドプランを試してみる
次に、freeeまたはMFクラウド側でAPIを利用するための準備をします。これは「APIキー」や「認証情報」を取得する作業で、n8nがあなたの代わりに会計ソフトを操作するための「合鍵」を発行するイメージです。各サービスの開発者向けページ(freee for Developers, Money Forward Biz-APIなど)に手順が詳しく記載されていますので、ガイドに従って設定を進めてください。
ステップ3:n8nで最初のワークフローを作成する
アカウント作成とAPIキーの準備が整えば、いよいよ自動化の第一歩です。n8nの画面は非常に直感的です。
- 認証情報(Credential)の登録: まず、n8nにfreee/MFクラウドの「合鍵」を登録します。Credentialメニューから、先ほど取得したAPIキーなどを入力・保存します。一度登録すれば、何度も入力する必要はありません。
- ノードの配置と接続: ワークフローのキャンバスに、トリガーとなるノード(例:Schedule, Google Sheets)と、アクションとなるノード(例:freee, Slack)を配置します。そして、ノード同士を線で繋ぎ、データの流れを定義します。
- テスト実行: ワークフローが完成したら、「Execute Workflow」ボタンでテスト実行します。データが意図通りに流れていれば成功です!
最初は戸惑うかもしれませんが、簡単なワークフローから試していくうちに、すぐに操作に慣れるはずです。より詳しいn8nの基本的な使い方や、ノードごとの詳細な設定方法については、初心者の方でも分かりやすいように図解付きで解説したn8n完全ガイド記事で網羅的に解説していますので、ぜひそちらも参考にしてください。
まとめ:経理業務の未来を今日から創る
本記事では、n8nを活用してfreeeやMFクラウドの経理業務を「完全に」自動化する方法を、具体的なシナリオと手順を交えて解説しました。会計ソフトの導入だけでは解消しきれなかった「隙間業務」は、n8nという強力なiPaaSツールによって、ついに過去のものとなり得ます。
請求書発行、経費精算、さらには予実管理レポートの作成まで、これまで多くの時間と労力を費やしてきた定型業務から解放されるインパクトは計り知れません。それは単なる時間的コストの削減だけでなく、ヒューマンエラーの撲滅、そして何より、経理担当者や経営者がより付加価値の高いコア業務に集中できる環境の実現を意味します。
小さな業務一つを自動化するだけでも、その効果はすぐに実感できるはずです。n8nの可能性についてさらに深く知りたい方は、機能や料金プランを詳細に解説したn8n完全ガイド記事もぜひご覧ください。
さあ、あなたのビジネスの成長を加速させる準備は整いました。まずはn8nの無料プランから、未来の経理業務をあなたの手で創り始めてみませんか?