一度は個人事業主として独立しようと開業届を出したものの、事業が軌道に乗るまでの収入面を考えて、会社員として再就職を検討することがありますよね。
あるいは、会社員として働きながら、副業として自分のビジネスを始めるために個人事業主になるケースも増えています。
そんな時、「開業届を出したままで就職活動をしてもいいのだろうか?」、「会社員と個人事業主の兼業は、手続きが複雑で大変そう…」といった不安や疑問が浮かんでくるのではないでしょうか。
ご安心ください。
結論から言うと、開業届を提出したままで再就職し、個人事業主と会社員を兼業することは可能です。
この記事では、個人事業主と会社員の兼業をスムーズに進めるために知っておくべき手続きや注意点を、2026年1月時点の最新情報に基づいて網羅的に解説します。
税金や社会保険のことから、会社に兼業を知られないための対策まで、あなたの不安を解消し、新しい働き方をサポートします。
開業届を提出したまま再就職は可能?基本的なルールと注意点
「開業届を出してしまったから、もう会社員にはなれないのでは?」と心配される方もいますが、法的には全く問題ありません。開業届はあくまで「個人で事業を開始した」ことを税務署に申告する書類であり、職業選択の自由を制限するものではないからです。ただし、いくつか事前に確認しておくべき重要なポイントがあります。
一番に確認すべきは「会社の就業規則」
兼業を始める前に、必ず確認しなければならないのが、就職する(または在籍している)会社の就業規則です。多くの企業では、服務規律の中で従業員の副業・兼業に関するルールを定めています。
- 副業・兼業が許可されているか: 近年は副業を解禁する企業が増えていますが、依然として全面的に禁止している会社も少なくありません。
- 許可制か届出制か: 副業がOKでも、事前に会社の許可が必要な「許可制」か、届け出るだけでよい「届出制」かによって手続きが異なります。
- 禁止されている業種・職種: 本業と競合する事業や、会社の信頼を損なう可能性のある事業(例えば、夜間の接客業など)は禁止されている場合があります。
就業規則を無視して兼業を行うと、最悪の場合、懲戒処分の対象となる可能性もあります。再就職の場合は内定時や入社時に、すでに会社員の場合は人事部や上司に確認するなど、ルールを遵守することがトラブルを避けるための第一歩です。
就職活動で個人事業主であることは伝えるべき?
これは多くの方が悩むポイントですが、基本的には正直に伝えることを推奨します。特に、個人事業の経験が応募する職種に関連している場合は、強力なアピールポイントになります。
【伝えるメリット】
- 誠実さ・透明性を示せる: 後から発覚するよりも、正直に伝えることで信頼関係を築きやすくなります。
- スキルや経験をアピールできる: 事業運営を通じて培った自己管理能力、問題解決能力、専門スキルなどを具体的にアピールできます。
- 入社後のミスマッチを防げる: 兼業に理解のある会社かどうかを事前に判断できます。
【伝えないデメリット】
- 発覚した際のリスク: 住民税の通知などをきっかけに会社に知られた場合、「なぜ隠していたのか」と信頼を失う可能性があります。
- 常に不安を抱えることになる: いつバレるかと不安を抱えながら働くのは精神的な負担が大きくなります。
面接で伝える際は、「事業で培った〇〇の経験を、貴社の△△という業務で活かせると考えております。なお、個人事業については、業務時間外で本業に支障が出ない範囲で継続したいと考えておりますが、もちろん貴社の規定に従います」といったように、前向きかつ会社のルールを尊重する姿勢を示すと良いでしょう。
個人事業主と会社員の兼業で必須の手続き【税金・社会保険編】
兼業で最も複雑に感じるのが、税金と社会保険の手続きです。ここをしっかり理解しておくことが、安心して兼業を続けるための鍵となります。特に税金の手続きは、会社に兼業を知られるきっかけにもなり得るため、慎重に進める必要があります。
税金:確定申告と住民税のポイント
会社員の場合、年末調整で税金の計算が完了しますが、個人事業主として収入(所得)を得た場合は、原則として自分で確定申告を行う必要があります。
確定申告は必要?
会社員が副業で所得を得た場合、個人事業主としての所得(売上から経費を差し引いた金額)が年間20万円を超える場合に確定申告が義務付けられています。所得が20万円以下であれば確定申告は不要ですが、住民税の申告は別途必要になるため注意が必要です。また、青色申告で赤字を繰り越したい場合や、源泉徴収された税金の還付を受けたい場合などは、20万円以下でも確定申告をした方が有利になります。
会社に兼業を知られないための「住民税」対策
会社に兼業が知られる最も一般的な原因は「住民税」です。通常、会社員の住民税は給与から天引き(特別徴収)されますが、確定申告をすると、個人事業の所得分も合算された住民税額が会社に通知されてしまいます。他の同僚よりも住民税額が明らかに高いと、経理担当者から兼業を疑われる可能性があるのです。
このリスクを避けるためには、確定申告の際に住民税の徴収方法を「自分で納付(普通徴収)」にするという対策が有効です。
- 確定申告書の第二表「住民税に関する事項」という欄を見つけます。
- 「給与、公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」の項目で、「自分で納付」にチェックを入れます。
こうすることで、会社からの給与所得分の住民税は従来通り給与から天引き(特別徴収)され、個人事業の所得分の住民税は自宅に送られてくる納付書で自分で納める(普通徴収)ことになり、会社に通知がいくのを防ぐことができます。
社会保険:手続きはどう変わる?
社会保険(健康保険・厚生年金)については、基本的には再就職先の会社で加入することになります。個人事業主としての活動は、会社の社会保険加入には影響しません。
例えば、日中は会社員として社会保険に加入し、夜間や休日に個人事業を行うという形です。保険料は会社と折半で、給与から天引きされます。
注意点として、もしあなたが配偶者の扶養に入っているパートタイマーなどで、個人事業の所得が増える場合は、扶養から外れる可能性があります。扶養の認定基準(年収130万円の壁など)は健康保険組合によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
【失業保険】開業届を提出していると受け取れない?受給の条件と手続き
退職後に再就職活動をする際、大きな支えとなるのが「失業保険(雇用保険の基本手当)」です。しかし、「開業届を出していると、失業者とは見なされず、失業保険はもらえない」と聞いたことがあるかもしれません。これは半分正解で、半分誤解です。
原則は「事業を行っている」と受給不可
失業保険は、「失業の状態にあり、積極的に就職しようとする意思と能力があるにもかかわらず、職業に就くことができない」人が受け取れるものです。そのため、開業届を提出しており、すでに事業活動を行っている(収入の有無は問わない)と判断されると、「失業者」とは見なされず、原則として受給資格はありません。
ハローワークは、開業届が提出されているという事実だけで「事業主」と判断する可能性があります。
受給できる可能性があるケースとは?
ただし、開業届を出していても、実際には事業活動を行っておらず、求職活動に専念している状態であれば、失業保険を受給できる可能性があります。ポイントは「事業の実態」と「求職活動への専念」を客観的に示せるかどうかです。
具体的なケースとしては、以下のようなものが考えられます。
- 事業準備中だったが断念した: 開業届は出したものの、売上が全くなく、実質的に活動していない状態。
- 事業を休止している: 就職活動に専念するため、事業を完全にストップしている状態。
このような場合は、正直にハローワークの担当者に状況を説明し、指示を仰ぎましょう。「開業はしたが活動実態がないこと」や「現在は求職活動に専念していること」を申告すれば、受給が認められることがあります。
「廃業届」を出すべきタイミング
もし、ハローワークから「廃業しないと受給は難しい」と指導された場合は、「廃業届」を税務署に提出する必要があります。廃業届を提出すれば、あなたは「事業主ではない」と公的に証明されるため、失業保険の受給資格を満たすことができます。
ただし、一度廃業届を出すと、青色申告の承認などが取り消されてしまいます。もし、再就職後に兼業で事業を再開するつもりなら、その点も考慮が必要です。
【独自の視点】
失業保険の判断は、最終的に管轄のハローワークが行います。インターネット上の情報を鵜呑みにせず、必ずご自身の状況を証明できる資料(売上がないことを示す帳簿など)を持参の上、ハローワークの窓口で直接相談してください。誠実な対応が、最善の結果につながります。
兼業成功の鍵は「スムーズな開業手続き」にあり
会社員と個人事業主の兼業を成功させるには、本業とのバランスや時間管理はもちろんですが、意外と見落としがちなのが「事業運営に関わる事務作業の効率化」です。特に、事業を始める際の開業手続きは、初めての方にとっては複雑で時間がかかる作業です。
「どの書類を、どこに、いつまでに出せばいいのか…」と調べるだけで、貴重な時間を浪費してしまうことも少なくありません。本業で忙しい中、こうした煩雑な手続きに追われると、事業を始める前から疲弊してしまいます。
実は、こうした開業に関する面倒な書類作成は、専門的な知識がなくてもオンラインで完結できるサービスが存在します。特に初めて個人事業主になる方には、必要な情報を画面の案内に沿って入力するだけで、ミスなく簡単かつ無料で開業届が作成できるツールの利用が圧倒的におすすめです。
個人事業主になるための具体的な手順や必要なものについては、こちらの「【開業準備ガイド】個人事業主になるには?無料の「マネーフォワード クラウド開業届」で書類作成から提出まで完全サポート!」で網羅的に解説しています。これから準備を始める方は、ぜひ一度目を通してみてください。
まとめ:手続きを理解して、賢く兼業を始めよう
今回は、開業届を出した後の再就職や、個人事業主と会社員の兼業について解説しました。最後に、重要なポイントをまとめます。
- 兼業は可能: 開業届を出したままでも再就職し、会社員と兼業することは法的に問題ありません。
- 就業規則の確認: トラブルを避けるため、まず会社の副業ルールを確認しましょう。
- 税金の手続き: 年間所得が20万円を超えたら確定申告が必要です。住民税を「普通徴収」にすれば、会社に兼業が知られるリスクを軽減できます。
- 失業保険: 原則は受給不可ですが、事業の実態がない場合は受給できる可能性も。必ずハローワークに相談しましょう。
手続きと聞くと難しく感じるかもしれませんが、一つひとつポイントを押さえれば、決して乗り越えられない壁ではありません。しっかり準備を行うことで、会社員としての安定収入を得ながら、個人事業主として自分の可能性に挑戦するという、理想的な働き方を実現できます。
これから本格的に個人事業主としての活動も考えているなら、会計処理の手間をいかに減らすかが成功の鍵です。『マネーフォワード クラウド開業届』は、面倒な開業届の作成だけでなく、その後の確定申告までトータルでサポートしてくれる非常に心強い味方です。無料で利用開始できるので、まずはどんなサービスか公式サイトで詳細を確認してみてはいかがでしょうか。
