自宅に設置したNAS(ネットワークHDD)は、ファイル共有やデータバックアップ、さらにはWebサーバーとしても機能する非常に便利な存在です。
しかし、その利便性のために外部からアクセスできるように設定すると、常にセキュリティリスクに晒されることになります。
「大切なデータを守りたいけど、どこから手をつければいいかわからない…」そんな悩みを抱えていませんか。
この記事では、人気のVPNサービス「MillenVPN」を使って、SynologyやQNAPといった主要メーカーのNASにVPNクライアントを設定し、自宅サーバーのセキュリティを劇的に向上させるための具体的な手順を、初心者にも分かりやすく解説します。
VPNを導入することで、インターネット経由でのアクセスを暗号化し、第三者によるデータの盗聴や不正アクセスを効果的に防ぐことができます。
安全なリモートアクセス環境を構築し、安心してNASを活用するための一歩を、この記事と共に踏み出しましょう。
なぜNASにVPNが必要なのか?自宅サーバーのセキュリティリスクを理解する
NASを自宅サーバーとして活用する上で、外部からのリモートアクセスは欠かせない機能です。しかし、安易にポートフォワーディング(ポート開放)でNASをインターネットに公開することは、玄関の鍵を開けっ放しにするようなもので、非常に危険です。ここでは、NASを外部公開する際のリスクと、VPNがなぜその最適な解決策となるのかを解説します。
ポートフォワーディングに潜む深刻なリスク
ルーターのポートフォワーディング機能を使ってNASの管理画面や特定のサービスを外部に公開すると、以下のようなリスクに直面します。
- 総当たり攻撃(Brute-force Attack): IDとパスワードの組み合わせを機械的に試行され、不正ログインされるリスク。単純なパスワードを設定している場合、短時間で突破される可能性があります。
- 脆弱性を狙った攻撃: NASのOS(DSMやQTS)や、インストールされているアプリケーションに脆弱性(セキュリティ上の欠陥)が見つかった場合、そこを標的に攻撃され、システムを乗っ取られたり、データを破壊されたりする危険があります。
- ランサムウェアの標的: 近年、インターネットに公開されているNASを狙ったランサムウェア攻撃が多発しています。感染するとNAS内のデータがすべて暗号化され、解除のために高額な身代金を要求されます。
- DDoS攻撃: 悪意のある第三者から大量のアクセスを送りつけられ、サービスを停止に追い込まれる可能性もあります。
これらのリスクは、決して他人事ではありません。一度攻撃の被害に遭うと、大切な写真や仕事のファイルなど、かけがえのないデータを失うだけでなく、個人情報が流出する二次被害につながる恐れもあります。
VPNが実現する鉄壁のセキュリティ
VPN(Virtual Private Network)は、インターネット上に仮想的なプライベートトンネルを構築し、通信をすべて暗号化する技術です。NASにVPNクライアントを設定するということは、「NASからインターネットへの出口」をVPNサーバー経由に限定することを意味します。
これにより、以下のようなメリットが生まれます。
- 通信の暗号化: NASとインターネット間のすべての通信が強力に暗号化されるため、第三者が通信内容を盗み見ることはほぼ不可能です。公衆Wi-Fiなど、セキュリティが不確かなネットワークからNASにアクセスする場合でも安心です。
- IPアドレスの秘匿: NASが直接インターネットに接続するのではなく、一度MillenVPNのサーバーを経由します。そのため、外部に公開されるIPアドレスはMillenVPNのものとなり、NAS本来のIPアドレスを隠すことができます。これにより、自宅のネットワークを直接的な攻撃のターゲットから外すことができます。
- 安全なリモートアクセス: 自分のPCやスマートフォンにもVPNクライアントを導入し、NASと同じVPNサーバーに接続することで、あたかも自宅のLAN内にいるかのように安全にNASへアクセスできます。不要なポートを一切公開する必要がなくなり、セキュリティリスクを最小限に抑えられます。
このように、VPNは自宅サーバーの利便性を損なうことなく、セキュリティレベルを飛躍的に向上させることができる、現代のNAS運用における必須のツールと言えるでしょう。
MillenVPNをNASで利用するための準備
NASにMillenVPNを設定する前に、いくつかの準備が必要です。ここでは、MillenVPNの契約から設定ファイルのダウンロード、そしてNAS側で確認すべき項目について解説します。2026年1月時点の情報として、スムーズに設定を進めるためのポイントを押さえておきましょう。
1. MillenVPNの契約とアカウント情報
当然ながら、まずMillenVPNのサービス契約が必要です。まだ契約がお済みでない方は、公式サイトから手続きを行いましょう。料金プランやサービス内容の詳細は、以下のガイド記事が非常に参考になります。
参考記事: 【2026年最新】MillenVPN完全ガイド!始め方から料金、評判、使い方まで徹底解説
契約後、NASの設定で必要になるのは以下の2つの情報です。
- MillenVPNのユーザー名
- MillenVPNのパスワード
これらはMillenVPNのマイページにログインするためのものではなく、VPN接続専用の認証情報です。マイページから確認できるので、あらかじめメモしておきましょう。
2. OpenVPN設定ファイル(.ovpn)のダウンロード
SynologyやQNAPのNASにVPNクライアントを設定するには、OpenVPNというプロトコルを使用するのが一般的です。その際、「どのVPNサーバーに、どのように接続するか」という情報が記述された設定ファイル(拡張子が.ovpn)が必要になります。
この設定ファイルは、MillenVPNのマイページからダウンロードできます。
- MillenVPNのマイページにログインします。
- メニューから「OpenVPN設定ファイル」や「サーバー情報」といった項目を探します。
- 接続したい国やサーバーを選択し、設定ファイルをダウンロードします。通常、多数のサーバーがリストになっていますが、物理的に日本に近いサーバー(日本、韓国、台湾など)を選択すると、通信速度が安定しやすい傾向にあります。
- ダウンロードしたファイルはZIP形式で圧縮されていることが多いので、解凍して中にある「.ovpn」ファイルを取り出しておきます。
この.ovpnファイルが、NASとMillenVPNサーバーを繋ぐ「鍵」の役割を果たします。
3.(推奨)DDNS(ダイナミックDNS)の設定
これは必須ではありませんが、設定しておくと後々非常に便利になるのがDDNS(ダイナミックDNS)です。多くの家庭用インターネット回線は、IPアドレスが定期的に変わる「動的IPアドレス」です。IPアドレスが変わるたびにNASへの接続設定を変更するのは非常に手間がかかります。
DDNSは、この変動するIPアドレスに対して、常に同じドメイン名(例: mynas.synology.me)でアクセスできるようにしてくれるサービスです。
独自の視点: SynologyもQNAPも、ユーザー向けに無料のDDNSサービスを提供しています。例えば、Synologyなら「xxx.synology.me」、QNAPなら「xxx.myqnapcloud.com」といったドメインを無料で取得・利用できます。これらはNASのOSに統合されており、数クリックで簡単に設定が完了するため、利用しない手はありません。コントロールパネルの「外部アクセス」や「myQNAPcloud」といったメニューから設定できるので、VPN設定の前に済ませておくことを強く推奨します。
【実践】Synology NASにMillenVPNを設定する手順
準備が整ったら、いよいよSynology NASにMillenVPNクライアントを設定していきます。ここでは、SynologyのOSであるDSM(DiskStation Manager)の画面を想定して、手順を詳しく解説します。
ステップ1: VPNプロファイルの作成
- DSMにログインし、「コントロールパネル」を開きます。
- 「ネットワーク」をクリックし、「ネットワークインターフェース」タブを選択します。
- 上部にある「作成」ボタンをクリックし、ドロップダウンメニューから「VPNプロファイルを作成」を選択します。
ステップ2: OpenVPNプロファイルの設定
VPN接続方法の選択画面が表示されます。ここでOpenVPNを選択します。
- 「OpenVPN(.ovpnファイルをインポート経由)」を選択し、「次へ」をクリックします。
- 全般設定の画面が表示されます。ここで、先ほど準備した情報を入力していきます。
- プロファイル名: 任意の名(例: MillenVPN_Tokyo)を入力します。分かりやすい名前を付けておくと、複数のVPN設定を管理する際に便利です。
- ユーザー名: MillenVPNのVPN接続用ユーザー名を入力します。
- パスワード: MillenVPNのVPN接続用パスワードを入力します。
- .ovpnファイルをインポート: 「参照」ボタンを押し、事前にダウンロード・解凍しておいた.ovpn設定ファイルを選択します。
- 入力が完了したら、「次へ」をクリックします。
ステップ3: 詳細設定と接続
詳細設定の画面では、VPN接続時の挙動を細かく設定できます。
- リモートネットワークのデフォルトゲートウェイを使用する: この項目に必ずチェックを入れてください。 これにチェックを入れることで、NASからのすべてのインターネット通信がMillenVPNサーバーを経由するようになり、IPアドレスの秘匿化が実現します。
- サーバーがダウンした場合に再接続する: こちらもチェックを入れておくことを推奨します。何らかの理由でVPN接続が切断された際に、自動で再接続を試みてくれます。
設定内容を確認し、「適用」をクリックすると、ネットワークインターフェースの一覧に新しいVPNプロファイルが作成されます。
作成されたプロファイルを選択し、「接続」ボタンをクリックします。ステータスが「接続済み」に変われば、設定は成功です。これで、お使いのSynology NASはMillenVPNによって保護された状態でインターネットに接続されるようになりました。
接続確認のヒント: NASのパッケージセンターに「Download Station」などのアプリをインストールし、そのアプリ経由でIPアドレス確認サイトにアクセスしてみると、自宅のIPアドレスではなくMillenVPNのサーバーのIPアドレスが表示されるはずです。これにより、通信が正しくVPNを経由していることを確認できます。
【実践】QNAP NASにMillenVPNを設定する手順
次に、QNAP NASにMillenVPNクライアントを設定する手順です。QNAPでは、「QVPN Service」という専用アプリを使って設定を行います。基本的な流れはSynologyと似ていますが、QNAP特有の項目もあるので注意深く進めましょう。
ステップ1: QVPN Serviceのインストール
- QTS(QNAPのOS)にログインし、「App Center」を開きます。
- 検索バーに「QVPN」と入力し、「QVPN Service」アプリを探します。
- 「QTSに追加」ボタンを押し、アプリをインストールします。インストールが完了したら、アプリを開きます。
ステップ2: VPNクライアントプロファイルの作成
QVPN Serviceの管理画面が開きます。左側のメニューから設定を進めます。
- 左メニューの「VPNクライアント」をクリックし、中央画面の「追加」ボタンを押します。ドロップダウンから「OpenVPN」を選択します。
- ファイルダイアログが表示されるので、事前に準備しておいたMillenVPNの.ovpn設定ファイルを選択し、「開く」をクリックします。
- プロファイルの作成画面が表示されます。
- プロファイル名: .ovpnファイル名が自動で入りますが、分かりやすい名前(例: MillenVPN_Osaka)に変更しても構いません。
- ユーザー名: MillenVPNのVPN接続用ユーザー名を入力します。
- パスワード: MillenVPNのVPN接続用パスワードを入力します。
- 独自の視点: QNAPでは「この接続が確立したときに、リモートVPNサーバーをデフォルトゲートウェイとして使用します。」という重要なオプションがあります。これに必ずチェックを入れてください。この設定により、NASからのすべての通信がMillenVPNを経由するようになります。チェックを入れないと、VPNは接続されていてもNASのIPアドレスが外部から見えてしまい、VPNを使う意味が半減してしまいます。
- 設定後、「作成」ボタンをクリックします。
ステップ3: 接続と確認
VPNクライアントの管理画面に、作成したプロファイルが一覧表示されます。
- 作成したプロファイルの右側にある「接続」スライドスイッチをクリックしてオンにします。
- 認証と接続が開始され、数秒から数十秒待つと接続が完了します。
- 接続に成功すると、スライドスイッチの横にあるアイコンが青くなり、「接続ステータス」で使用中のIPアドレスや接続時間などが表示されます。
これで、お使いのQNAP NASもMillenVPNの保護下に入りました。Synologyと同様に、QNAP上のアプリケーション(Download Stationやブラウザ機能を持つContainer Stationなど)を使って外部のIPアドレス確認サイトにアクセスし、IPアドレスが変わっていることを確認しておくとより確実です。
まとめ: VPNで実現する安心のNASライフ
この記事では、SynologyおよびQNAPのNASにMillenVPNを設定し、自宅サーバーのセキュリティを大幅に向上させるための具体的な手順を解説しました。
要点をまとめると以下の通りです。
- NASを単純に外部公開(ポートフォワーディング)すると、不正アクセスやランサムウェアなどの深刻なリスクに晒される。
- VPNを導入することで通信が暗号化され、IPアドレスも秘匿化できるため、安全なリモートアクセス環境が実現する。
- Synologyでは「ネットワークインターフェース」、QNAPでは「QVPN Service」から、OpenVPN設定ファイルを使って簡単に設定できる。
- 設定の際は「デフォルトゲートウェイとして使用する」オプションを有効にすることが、セキュリティを確保する上で非常に重要。
NASは非常にパワフルで多機能なデバイスですが、その能力を最大限に引き出すには、堅牢なセキュリティ対策が不可欠です。VPNの導入は、専門知識がなくても実践できる、最も効果的なセキュリティ対策の一つと言えるでしょう。
今回ご紹介したMillenVPNは、日本国産のサービスでサポートも充実しており、コストパフォーマンスにも優れているため、初めてVPNを導入する方にも最適です。安全な環境で、心置きなくNASの便利な機能を活用するために、ぜひこの機会にVPNの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
