TrelloやJiraのようなカンバン式タスク管理アプリは、今やプロジェクト進行に欠かせないツールですよね。
直感的な操作性、特にカードをドラッグ&ドロップで動かすあの感覚は、タスクの進捗を視覚的に把握するのに非常に役立ちます。
しかし、いざ「自分だけのオリジナルなタスク管理アプリを作ってみたい!」と思っても、この「ドラッグ&ドロップ機能」の実装が大きな壁として立ちはだかります。
状態管理の複雑さや、ライブラリの選定・学習コストを考えると、個人開発者にとってはなかなかの難関です。
もし、そんな複雑な機能も「こんな感じのアプリが欲しい」とチャットで話すだけでAIがすべて作ってくれるとしたら、どうでしょうか。
この記事では、まさにそれを実現するAIソフトウェアエンジニア「Lovable」を使って、Trello風のタスク管理アプリをゼロから構築する全手順を、具体的なプロンプト例とともに徹底解説します。
この記事を読み終える頃には、あなたもAIを相棒に、アイデアを即座に形にする力を手に入れているはずです。
Lovableとは?なぜタスク管理アプリ開発に最適なのか
「Lovable(ラバブル)」とは、一言で言えば「チャットで対話しながらWebアプリケーションをフルスタックで構築できるAIソフトウェアエンジニア」です。
もともとはGitHubで絶大な人気を誇ったオープンソースプロジェクト「GPT Engineer」の商用版として進化を遂げたサービスで、単なるコード生成ツールとは一線を画します。
Lovableがタスク管理アプリのような、少し複雑なアプリケーション開発に最適な理由は、主に以下の3つの特徴にあります。
1. モダンな技術スタックによるフルスタック自動構築
Lovableに「Trello風のアプリを作って」と指示すると、AIはモダンな技術を選定し、アプリケーションの土台を自動で組み上げます。
2026年2月時点では、主に以下のような技術スタックが採用されます。
- フロントエンド: React + TypeScript + Vite
- UI/スタイリング: shadcn/ui + Tailwind CSS
- バックエンド: Lovable Cloud (Supabaseベース)
重要なのは、見た目(フロントエンド)だけでなく、タスクデータを保存するためのデータベースや認証機能といったバックエンドまで含めて一気通貫で生成してくれる点です。これにより、開発者は「とりあえず動く」状態のものを数分〜数時間で手に入れることができます。
2. 複雑な要件を理解し、実装するAIエージェント
従来の開発では実装が面倒な機能、例えば「ユーザー認証」や「データベースとの連携」、そして今回のテーマである「ドラッグ&ドロップ」なども、Lovableは自然言語の指示からその意図を汲み取り、適切なライブラリ(例えばdnd-kitなど)を選定してコードに落とし込んでくれます。これにより、開発者は本来時間をかけて実装すべき複雑なロジックをAIに任せ、より創造的な作業に集中できます。
3. 独自の視点:単なるプロトタイプツールではない「開発の出発点」
私が考えるLovableの最大の強みは、それが「使い捨てのプロトタイピングツール」で終わらない点です。生成されるコードは標準的なReact/TypeScriptであり、GitHub連携機能も備わっています。つまり、「最初の8割をAIに作らせ、残りの2割の独自機能や細かいチューニングを人間のエンジニアが引き継ぐ」という、ハイブリッドな開発スタイルが可能です。これにより、MVP(Minimum Viable Product)の段階ではLovableで高速に開発を進め、事業がスケールしてきたら本格的な自社開発にスムーズに移行できるのです。これは、アイデアの検証速度が成功を左右する現代において、計り知れないアドバンテージとなります。
【実践】Lovableでタスク管理アプリの基本構造を作る
それでは、実際にLovableを使ってTrello風タスク管理アプリの土台を作っていきましょう。具体的な手順をステップ・バイ・ステップで解説します。
Step 1: プロジェクトの作成と最初のプロンプト
まずはLovable公式サイトにアクセスし、アカウントを登録します。登録は無料で、クレジットカードも不要です。
ダッシュボードに入ったら、「New Project」をクリックし、新しいプロジェクトを作成します。すると、チャット画面が表示されるので、ここにアプリの要件を書き込みます。これがAIへの最初の指示(プロンプト)になります。
プロンプト例:
Trelloのようなカンバンボード形式のタスク管理アプリを作成してください。
主な機能として、以下の3つの要素が必要です。
1. **ボード (Board):** プロジェクト全体を管理するコンテナ。
2. **リスト (List):** 「ToDo」「進行中」「完了」のようなタスクのステータスを表すカラム。
3. **カード (Card):** 個別のタスク。各カードはリスト間を移動できる。
基本的なCRUD(作成、読み取り、更新、削除)機能も実装してください。このプロンプトを送信すると、AIエージェントが数分かけてアプリケーションの骨格を生成し始めます。
Step 2: AIが生成したコンポーネントの確認
AIの作業が完了すると、画面左側にはファイルツリー、中央にはプレビュー、右側にはチャット画面という構成のエディタが表示されます。ファイルツリーを見ると、AIが生成したコンポーネントが確認できます。
src/components/Board.tsx: ボード全体のレイアウトを管理するコンポーネント。src/components/List.tsx: 各ステータスカラム(ToDoなど)を表示するコンポーネント。src/components/Card.tsx: 個別のタスクカードを表示するコンポーネント。
この時点で、プレビューにはshadcn/uiとTailwind CSSでスタイリングされた、それなりに「プロっぽい」見た目のカンバンボードが表示されているはずです。まだドラッグ&ドロップはできませんが、基本的なUIの土台は完成しています。
Step 3: Lovable Cloudとの連携を理解する
Lovableの凄さは、UIだけでなくバックエンドも同時に生成する点にあります。画面上部の「Cloud」タブをクリックしてみてください。ここには、AIが自動的に定義したデータベースのテーブル(例: boards, lists, cards)が表示されています。
これはLovable Cloudという、オープンソースのBaaSであるSupabaseをベースにしたクラウド環境です。ユーザーが新しいタスクカードを作成すると、そのデータはこのデータベースに保存され、アプリケーションに反映される仕組みがすでに構築されています。開発者はデータベースのスキーマ設計やAPI開発に頭を悩ませることなく、すぐにアプリケーションの本質的な機能開発に取り掛かることができるのです。
核心機能!ドラッグ&ドロップを実装するプロンプト術
基本構造ができたところで、いよいよこの記事の核心である「ドラッグ&ドロップ機能」を実装します。従来の開発では数日かかることもあるこの機能を、Lovableでは対話形式で実装していきます。
なぜドラッグ&ドロップは難しいのか?
少し技術的な話をすると、Reactでドラッグ&ドロップを実装するには、react-beautiful-dndや、よりモダンなdnd-kitといったライブラリを使うのが一般的です。しかし、これらのライブラリを使いこなすには、ドラッグ開始、移動中、ドロップ完了といった各イベントに応じた状態管理や、ドロップ先の位置を正確に計算するロジックを組む必要があり、学習コストが低くありません。さらに、並び替えの結果をデータベースに保存する処理まで加わると、その複雑さは一気に増します。
Lovableへの「魔法のプロンプト」
この複雑な実装を、Lovableに任せてみましょう。チャット画面に、以下のような具体的な指示を送ります。
プロンプト例:
dnd-kitライブラリを使って、タスクカードのドラッグ&ドロップ機能を追加してください。
以下の要件を満たすように実装してください。
1. **リスト内での並び替え:** 同じリストの中でカードをドラッグ&ドロップして、順序を自由に入れ替えられるようにする。
2. **リスト間の移動:** あるリスト(例: 「ToDo」)から別のリスト(例: 「進行中」)へカードを移動できるようにする。
3. **データベースへの反映:** カードの順序や所属リストが変更されたら、その結果をデータベースに即座に保存し、画面をリロードしても変更が維持されるようにする。このプロンプトのポイントは、「どのライブラリを使うか」「どのような振る舞いを期待するか」「最終的にどうなってほしいか(DBへの保存)」を具体的に記述することです。このように明確なゴールを提示することで、AIエージェントはより精度の高いコードを生成してくれます。
AIの応答とコードの微調整
プロンプトを送信すると、Lovableはdnd-kitをインストールし、必要なコード(DndContext, SortableContext, useDraggable, useDroppableなど)を既存のコンポーネントに組み込んでいきます。数分後、プレビュー画面でカードをドラッグできるようになっているはずです。
もし、AIの生成した実装が完璧でなかったとしても問題ありません。Lovableの真骨頂はここからの「vibe coding(雰囲気コーディング)」にあります。例えば、以下のように追加で指示を出してみましょう。
- 「カードをドラッグしている間、カードを半透明にしてください。」
- 「ドロップできないエリアにカードを持っていったら、元の位置に戻るようにしてください。」
- 「リストが空の時でも、他のリストからカードをドロップできるようにエリアを確保してください。」
このように、人間と対話しながら少しずつ修正を加えていくことで、理想の挙動に近づけていくことができます。
Visual EditsとGitHub連携でアプリを仕上げる
コア機能が実装できたら、最後の仕上げです。Lovableには、AIとの対話だけでなく、開発をさらに加速させるための強力な機能が備わっています。
Visual Editsで見た目をブラッシュアップ
エディタの上部にある「Visual Edits」モードを有効にすると、プレビュー画面を直接クリックして見た目を編集できるようになります。まるでFigmaやCanvaを操作するような感覚です。
- カードの角をもう少し丸くしたい
- リストのヘッダーの文字を大きくしたい
- ボタンの色をブランドカラーに合わせたい
こうしたプロンプトを投げるまでもない細かいデザイン調整は、Visual Editsを使うことで直感的に、そして素早く完了できます。多くの編集操作はクレジットを消費しないのも嬉しいポイントです。
GitHub連携で本格開発へ移行する
Lovableで作成したプロジェクトは、GitHubのリポジトリと連携させることができます。左側のメニューから「GitHub」を選び、リポジトリを接続するだけです。
一度連携すれば、Lovable上での変更は自動でGitHubにコミットされ、逆にローカル環境(VSCodeやCursorなど)で編集したコードもLovableに同期されます。
これは非常に重要な特徴です。つまり、「Lovableは単なるおもちゃではなく、プロのエンジニアが使う本格的な開発フローに組み込めるツールである」ことを意味します。AIに面倒な土台作りを任せ、人間はより高度なビジネスロジックの実装や、AIには難しいパフォーマンスチューニングに専念する、といった協業が可能になるのです。
まとめ:AIを相棒に、アイデアを今すぐ形にしよう
この記事では、AIソフトウェアエンジニア「Lovable」を使って、Trello風のタスク管理アプリを構築し、核心機能であるドラッグ&ドロップを実装する全手順を解説しました。
従来の開発では大きなハードルだった複雑な機能も、Lovableを使えば自然言語のチャットで対話しながら実装できることがお分かりいただけたかと思います。主なポイントを振り返ってみましょう。
- Lovableはチャットで指示するだけで、UIからデータベースまでフルスタックでWebアプリを自動構築してくれる。
- ドラッグ&ドロップのような複雑な機能も、具体的な要件をプロンプトで伝えることで実装可能。
- Visual EditsやGitHub連携により、AIが作ったものを人間が引き継ぎ、本格的な開発へと繋げられる。
もう「実装が難しいから」という理由で、あなたの素晴らしいアイデアを諦める必要はありません。Lovableは、すべての人がソフトウェア開発の力を手に入れる未来を提示してくれています。
まずは、あなた自身の課題を解決する小さなツールから作ってみてはいかがでしょうか。その第一歩として、ぜひこの記事を参考に、自分だけのタスク管理アプリ開発に挑戦してみてください。Lovableは公式サイトから無料で始めることができます。
Lovableの料金プランやクレジットの仕組み、さらに高度な使い方について詳しく知りたい方は、こちらの完全ガイド記事が参考になります。あわせてご覧ください。
