個人事業主として事業が軌道に乗ってくると、「新しい分野にも挑戦したい」「複数のサービスを展開したい」と考えるのは自然な流れですよね。
しかし、そこでふと疑問に思うのが「屋号」の扱いです。
「事業ごとに屋号を分けたいけど、そもそも複数の屋号って持てるの?」
「新しい事業を始めるとき、また開業届を提出する必要がある?」
「銀行口座はどう管理すればいいんだろう?」
事業の多角化は、収益の柱を増やしビジネスを安定させる絶好の機会ですが、手続き面での不安が足かせになってしまうことも少なくありません。
ご安心ください。
この記事では、個人事業主が複数の屋号を持つ際の具体的な手続きや注意点、賢い口座の管理方法まで、あなたの疑問を一つひとつ丁寧に解説していきます。
この記事を読み終える頃には、事業多角化に向けた具体的な道筋が見え、安心して次の一歩を踏み出せるようになっているはずです。
1つの開業届で複数の屋号は持てる?その基本を解説
結論から申し上げると、個人事業主が複数の屋号を持つことは法的に全く問題ありません。1枚の開業届で、事実上、いくつでも屋号を名乗って事業を行うことが可能です。
なぜなら、個人事業主の納税義務は「屋号」ではなく、事業主である「個人」に紐づいているからです。税務署から見ると、あなたがどれだけ多くの屋号を使っていようと、それらはすべて「〇〇さん(あなたの本名)の事業」として一括りで扱われます。確定申告も、すべての事業の所得を合算して、一個人のものとして一回行えば良いのです。
複数の屋号を持つメリット
では、なぜ多くの人が複数の屋号を使いたいと考えるのでしょうか。それには明確なメリットがあるからです。
- 事業内容の明確化: 例えば、「鈴木デザイン事務所」という屋号の人が、新たにWebライティングの仕事を始めたとします。この時、「鈴木ライティングサービス」のような別の屋号を使えば、顧客はサービス内容を直感的に理解しやすくなります。
- 専門性とブランディングの向上: 事業ごとに屋号を分けることで、それぞれの分野における専門性をアピールできます。これは、特定のターゲット層に向けたブランディング戦略において非常に有効です。
- 顧客からの信頼獲得: しっかりと名付けられた屋号は、顧客に安心感と信頼感を与えます。特にオンラインでの取引では、屋号の有無が信頼性を左右することもあります。
複数の屋号を持つ際の注意点
一方で、いくつか注意すべき点もあります。
- 経理の煩雑化: 屋号ごとに売上や経費を管理しようとすると、経理作業が複雑になる可能性があります。どの屋号の売上か、どの事業の経費かを明確に区別しておく仕組みが必要です。
- 確定申告は一本化: 前述の通り、屋号がいくつあっても確定申告は事業主個人として1つにまとめて行います。屋号ごとに申告書を分けることはできません。
- 商標登録の確認: 使いたい屋号が、すでに他者によって商標登録されていないか事前に確認することをおすすめします。特に、事業を大きく展開していく予定がある場合は重要です。
これらの基本を理解しておけば、複数の屋号を戦略的に活用し、事業の成長を加速させることができるでしょう。
【具体例で解説】事業追加・多角化時の開業届の書き方
「複数の屋号が持てることはわかったけど、開業届にはどう書けばいいの?」という疑問にお答えします。事業を始めるタイミングによって、いくつかのパターンが考えられます。
ケース1:これから新規で開業し、当初から複数の事業を計画している場合
これから個人事業主になる方で、すでに複数の事業展開を視野に入れている場合は、開業届の書き方に少し工夫をすると良いでしょう。
開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書)の「屋号」の欄には、メインとなる事業の屋号を1つだけ記載します。ここに複数の屋号を列記することはできません。
では、他の事業はどうするのかというと、「事業の概要」の欄に、展開する予定のすべての事業内容を具体的に記載します。
【記載例】
- 屋号: Komatsu Creative Studio
- 事業の概要: Webサイト制作、Webマーケティングコンサルティング、オンラインショップでのハンドメイドアクセサリー販売
このように記載しておくことで、税務署に対して「これらの事業を行いますよ」という意思表示になります。そして、それぞれの事業で異なる屋号を名乗って活動することが可能です。
ケース2:すでに開業済みで、新たに事業や屋号を追加したい場合
すでにある屋号で事業を行っている方が、新しい事業を始める場合、原則として、新たにもう一枚開業届を提出する必要はありません。
最も簡単で一般的な方法は、次回の確定申告の際に、確定申告書の「事業種目」や「事業の概要」の欄に、新しく始めた事業内容を追記することです。これで、事業内容が追加されたとみなされます。
ただし、以下のような場合には、改めて届出を検討しても良いでしょう。
- 新しい屋号で銀行口座を開設したい: 金融機関によっては、開業届に記載のある屋号でないと口座開設が難しい場合があります。その場合、新しい屋号をメインとして記載した開業届を「追加」として提出する方法があります。
- 事業の主体が大きく変わる: 例えば、ITコンサルティングから飲食店経営に事業の軸が完全に移るようなケースです。
とはいえ、手続きはなるべくシンプルにしたいもの。これらの手続きが面倒に感じる方も多いのではないでしょうか。特に初めての開業や事業追加では、何から手をつけて良いか迷ってしまいますよね。
実は、こうした手続きの全体像を把握し、スムーズに進めるための方法は存在します。個人事業主としてのスタートアップに関する包括的な情報については、【開業準備ガイド】個人事業主になるには?無料の「マネーフォワード クラウド開業届」で書類作成から提出まで完全サポート!で詳しく解説していますので、ぜひ一度ご覧ください。開業準備の不安が解消されるはずです。
複数の屋号、銀行口座はどう管理する?賢い運用術
事業が複数になると、お金の管理、特に銀行口座をどう分けるかという問題が出てきます。経理をシンプルにし、事業の状況を正確に把握するためにも、口座管理は非常に重要です。
屋号付き口座のメリットと基本
まず、個人事業主はプライベートの口座とは別に、事業用の口座を持つことが強く推奨されます。さらに「屋号+個人名」で作れる「屋号付き口座」を開設すると、以下のようなメリットがあります。
- 社会的信用の向上: 取引先からの振込時に個人名だけでなく屋号が表示されるため、しっかりとした事業者であるという印象を与え、信頼性が格段にアップします。
- 経理の明確化: プライベートの入出金と事業の経費が混在するのを防ぎ、会計処理が非常に楽になります。
複数屋号の口座管理、3つのパターン
複数の屋号を持つ場合、口座管理には主に3つのパターンが考えられます。
- 1つの屋号付き口座で全事業を管理する
最もシンプルな方法です。メインの屋号で口座を1つ作り、すべての事業の入出金をそこで一元管理します。- メリット:管理する口座が1つで済む。
- デメリット:どの事業の売上・経費なのかが分かりにくくなり、事業ごとの収支分析が難しい。
- 事業(屋号)ごとに別の屋号付き口座を開設する
理想的な形ですが、ハードルが少し上がります。事業ごとに口座を分ければ、それぞれの収支が明確になります。- メリット:事業ごとの損益が明確になり、経営判断がしやすくなる。
- デメリット:金融機関によっては、同一の個人事業主が複数の屋号付き口座を開設することに難色を示す場合があります。また、口座の数だけ管理の手間が増えます。
- 1つの口座+会計ソフトで部門管理する
現実的で最もおすすめなのがこの方法です。屋号付き口座は1つだけ開設し、入出金の管理はすべてその口座で行います。そして、会計ソフト側で「Webデザイン事業」「雑貨販売事業」のように「部門」や「タグ」を設定し、取引ごとにどの事業のものかを仕訳します。- メリット:口座管理の手間を増やさずに、事業ごとの正確な損益計算が可能になる。
- デメリット:会計ソフトの導入と、仕訳時のひと手間が必要になる。
特に3つ目の方法は、現代の個人事業主にとって最適な選択肢と言えるでしょう。「マネーフォワード クラウド」などのクラウド会計ソフトには、こうした部門管理機能が備わっていることが多く、事業の多角化を力強くサポートしてくれます。
まとめ:屋号を賢く活用し、事業の多角化を成功させよう
今回は、個人事業主が複数の屋号を持つ際の様々な疑問について解説しました。最後に、この記事の要点をまとめておきましょう。
- 複数の屋号を持つことは可能: 1人の個人事業主が、法的にいくつでも屋号を名乗ってOK。
- 開業届の屋号は1つ: 開業届の屋号欄にはメインのものを1つ記載し、他の事業は「事業の概要」欄に書く。事業追加の場合は、確定申告書への追記が最も手軽。
- 口座管理は「1口座+会計ソフト」が賢い: 1つの屋号付き口座と会計ソフトの部門管理機能を組み合わせるのが、管理の手間と経営の透明性を両立させる最適解。
事業の多角化は、あなたのビジネスの可能性を大きく広げる重要なステップです。しかし、その第一歩となる手続き面でつまずいてしまっては、本当にもったいないことです。
特に開業届の作成は、初めての方にとっては少し難しく感じるかもしれません。どこに何を書けばいいのか、迷うことも多いでしょう。
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