「顧問料を払っているのに、この業務は別料金と言われた」。
税理士と契約している経営者や個人事業主から、こうした声を耳にすることは少なくありません。
毎月の顧問料に何が含まれていて、どこからがオプション扱いになるのか。
実はこの境界線は税理士事務所ごとに大きく異なり、明確な業界統一基準が存在しないのが現状です。
「今の税理士費用は適正なのか」「追加料金を請求されたけど妥当なのか」という疑問を持つ方は、ぜひ最後まで読んでみてください。
税理士の業務範囲が分かりにくい理由
報酬基準の自由化が生んだ「事務所ごとの差」
かつて税理士の報酬は「税理士報酬規程」によって一律に定められていました。しかし2002年の税理士法改正でこの規程が廃止され、各事務所が自由に報酬を設定できるようになりました。この自由化により、同じ業務内容でも事務所によって顧問料に含まれるサービス範囲がまったく異なるという状況が生まれています。
たとえば、ある事務所では月額顧問料3万円に記帳代行と月次訪問が含まれていても、別の事務所では月額2万円で記帳代行は別途月1万円、訪問は四半期に1回のみというケースがあります。価格だけを見て「安い」と判断して契約した結果、オプション料金を加算すると以前より高くなっていたという失敗は珍しくありません。
契約書に明記されていないグレーゾーンの存在
税理士との顧問契約書には、業務範囲が記載されているのが一般的です。しかし「税務に関する相談業務」「経営助言」といった抽象的な表現にとどまっていることが多く、具体的にどこまで対応してもらえるのかが不明確なケースが目立ちます。
筆者自身も過去に、顧問税理士に「補助金申請のサポートをお願いしたい」と相談したところ、「それは顧問業務の範囲外なのでスポット料金になります」と言われた経験があります。契約書を改めて確認したところ、確かに補助金関連の記載はありませんでした。このように、経営者側が「当然やってもらえる」と思っていた業務が実は顧問料に含まれていないケースは想像以上に多いのです。
業務範囲の認識ズレがトラブルに発展するリスク
業務範囲の認識にズレがあると、請求時にトラブルになるだけでなく、税理士との信頼関係そのものが損なわれます。日本最大級の税理士紹介サービスである税理士ドットコムに寄せられる相談でも、「顧問料が高い」「提案やアドバイスが少ない」という不満は上位を占めています。こうした不満の背景には、サービス内容と料金の不透明さが根本原因として存在しているのです。
顧問料に「含まれる業務」と「含まれない業務」の一般的な基準
一般的に顧問料に含まれる業務
多くの税理士事務所で、月額顧問料の範囲内として提供されている業務は以下のとおりです。
- 月次の会計データチェックと試算表の作成
- 日常的な税務相談(電話・メールでの質問対応)
- 決算書の作成と法人税・消費税の確定申告(ただし決算料として別途請求する事務所も多い)
- 税務署への届出書類の作成・提出(設立届、異動届など基本的なもの)
- 定期的な訪問または面談(頻度は契約内容による)
ただし注意すべきは、上記のうち「決算申告」を顧問料とは別に請求する事務所が半数以上を占めるという点です。月額顧問料が安く見えても、決算料として月額顧問料の4〜6か月分を別途請求されるケースは一般的です。年間の総額で比較しなければ、本当のコストは見えてきません。
オプション料金(別途費用)になりやすい業務一覧
以下は、多くの事務所で顧問料とは別にオプション扱いとなる業務です。それぞれの相場感も併せて記載します。
記帳代行
仕訳入力を税理士側で行うサービスです。自社で会計ソフトに入力している場合は不要ですが、経理担当者がいない小規模事業者には必要な業務です。月額5,000円〜3万円程度が相場で、仕訳数によって変動します。月100仕訳以内であれば1万円前後が目安です。
年末調整・法定調書の作成
従業員を雇用している事業者にとって毎年発生する業務ですが、顧問料には含まれていないケースが大半です。従業員数に応じて1人あたり3,000円〜5,000円、基本料金として1万円〜3万円が加算されるのが一般的です。従業員10名の会社であれば、年末調整だけで4万円〜8万円の追加費用が発生する計算になります。
償却資産税の申告
事業用の固定資産を保有している場合に必要な申告です。1自治体あたり1万円〜3万円が相場です。複数の自治体にまたがって資産を保有している場合は、その分費用がかさみます。
税務調査の立ち会い
税務調査が入った際に税理士が立ち会う業務です。日当として1日あたり3万円〜5万円を設定している事務所が多く、調査が2〜3日に及ぶと10万円以上の費用になることもあります。顧問契約をしていれば無償で対応してくれる事務所もありますが、事前に確認しておくべきポイントです。
修正申告・更正の請求
過去の申告内容に誤りがあった場合の対応です。修正の複雑さによりますが、5万円〜20万円程度が一般的な相場です。
社会保険・労務関連の手続き
本来は社会保険労務士の業務領域ですが、小規模事業者の場合、税理士に依頼しているケースもあります。ただしこれは税理士の独占業務ではないため、対応可否自体が事務所によって異なります。対応する場合は月額5,000円〜1万円程度の追加費用が目安です。
経営計画書・事業計画書の作成
融資申請用の事業計画書作成を依頼する場合、5万円〜20万円程度のスポット料金が発生するのが通常です。
相続税・贈与税の申告
法人の顧問税理士に個人の相続税申告を依頼する場合、これは完全に別業務です。遺産総額の0.5%〜1%程度を報酬とする事務所が多く、遺産総額が1億円であれば50万円〜100万円の報酬が目安となります。
見落としがちな「隠れオプション」に注意
上記の一般的なオプション業務以外にも、見落とされがちな追加費用があります。
- 会計ソフトの導入支援・データ移行:3万円〜10万円
- 電子申告(e-Tax)の初期設定:1万円〜3万円
- インボイス制度への対応相談・届出:1万円〜5万円
- 消費税の課税方式の検討・届出:1万円〜3万円
- 特定の届出書作成(青色申告承認申請、簡易課税選択届出など):5,000円〜1万円/件
これらは個別には少額でも、年間で積み重ねると無視できない金額になります。契約前に「顧問料に含まれない業務の一覧」を税理士に書面で提示してもらうことを強くおすすめします。
オプション料金で失敗しないための3つのチェックポイント
チェック1:契約前に「業務範囲一覧表」を求める
税理士と契約する際には、顧問料に含まれる業務と含まれない業務を一覧表にして提示してもらいましょう。口頭での説明だけでは、後から「言った・言わない」のトラブルになりかねません。信頼できる税理士であれば、この依頼を嫌がることはありません。むしろ、業務範囲を明文化することに消極的な事務所は、後から追加請求をされるリスクが高いと考えてよいでしょう。
チェック2:月額料金ではなく「年間総額」で比較する
税理士費用を比較する際には、必ず年間の総額で計算してください。具体的な計算式は以下のとおりです。
年間総額 =(月額顧問料 × 12か月)+ 決算料 + 年末調整費用 + その他オプション費用
たとえば、A事務所が月額2万円+決算料12万円+年末調整5万円で年間41万円、B事務所が月額3万円(決算料込み)+年末調整3万円で年間39万円というケースでは、月額料金が高いB事務所のほうが実は割安です。
税理士費用の相場観をもっと詳しく知りたい方は、税理士ドットコム完全ガイド記事で費用相場からおすすめの紹介サービスまで網羅的にまとめていますので、あわせて参考にしてみてください。
チェック3:業務追加時の料金を事前に確認しておく
事業の成長に伴って、必要な税務サービスは変化します。従業員を採用すれば年末調整が必要になりますし、売上が伸びれば消費税の課税事業者になるかもしれません。こうした変化に対応するための追加料金がいくらになるのか、契約時点で確認しておくことが重要です。「将来こういう業務が発生した場合の費用は?」と具体的に質問してみましょう。
税理士の業務範囲に不満を感じたときの選択肢
今の税理士に交渉する場合
まずは現在の税理士に、業務範囲と料金について率直に話し合うのが最初のステップです。「他の事務所ではこの業務が顧問料に含まれている」と伝えることで、料金の見直しやサービス内容の改善に応じてくれるケースもあります。ただし、長年の関係性がある場合ほど言い出しにくいという声も多く、結局は不満を抱えたまま契約を続けてしまう方が少なくありません。
税理士の変更を検討する場合
業務範囲や料金に根本的な不満がある場合は、税理士の変更も有力な選択肢です。「税理士を変えるのは大変そう」と感じるかもしれませんが、実際には決算期の切り替えタイミングで引き継ぎを行えば、スムーズに移行できるケースがほとんどです。
税理士の変更を検討する際に便利なのが、税理士ドットコムのような紹介サービスです。税理士ドットコムは累計実績43万件以上、登録税理士7,300名以上を誇る日本最大級のプラットフォームで、東証プライム上場企業が運営しています。専門のコーディネーターが希望条件をヒアリングした上で、業務範囲や料金体系が明確な税理士を無料で紹介してくれます。紹介された税理士と面談した上で断ることも自由なので、「まずは今の料金が適正かどうかだけでも確認したい」という使い方もできます。
自社でできる業務は内製化する
クラウド会計ソフト(freee、マネーフォワードなど)の普及により、記帳業務を自社で行うハードルは大幅に下がっています。記帳代行を税理士に依頼している場合、これを内製化するだけで月額5,000円〜3万円のコスト削減につながります。ただし、入力ミスや勘定科目の誤りが増えるリスクもあるため、月次でのチェック体制は税理士に残しておくのが現実的です。
業務範囲の比較表:顧問料に含まれるかどうかの目安
以下は、一般的な税理士事務所における業務範囲の分類目安です。事務所によって異なるため、あくまで参考としてご活用ください。
- 月次会計チェック・試算表作成 → 顧問料に含まれることが多い
- 日常的な税務相談 → 顧問料に含まれることが多い
- 決算書作成・確定申告 → 事務所による(別途決算料のケースが半数以上)
- 記帳代行 → オプションが多い(月額5,000円〜3万円)
- 年末調整・法定調書 → オプションが多い(基本料1万円〜+従業員数×3,000円〜)
- 償却資産税申告 → オプションが多い(1自治体あたり1万円〜3万円)
- 税務調査立ち会い → 事務所による(日当3万円〜5万円、または顧問料に含む)
- 修正申告 → オプション(5万円〜20万円)
- 経営計画書作成 → オプション(5万円〜20万円)
- 相続税申告 → 完全に別業務(遺産総額の0.5%〜1%)
- 社会保険手続き → 対応不可の事務所も多い(対応時は月額5,000円〜1万円)
この一覧を見てわかるとおり、顧問料だけでカバーされる範囲は意外と限定的です。特に従業員を抱える法人の場合、年末調整だけでも年間数万円の追加費用が発生するため、契約前の確認は欠かせません。
まとめ:業務範囲の確認が税理士選びの最重要ポイント
税理士の業務範囲とオプション料金のボーダーラインは、事務所ごとに異なるのが実情です。だからこそ、契約前に以下の3点を必ず確認してください。
- 顧問料に含まれる業務と含まれない業務を書面で一覧化してもらう
- 月額料金ではなく年間総額で費用を比較する
- 事業の成長に伴い発生しうる業務の追加料金を事前に把握する
税理士の選び方全般について知りたい方は、費用相場からサービス比較まで網羅した税理士ドットコム完全ガイド記事もあわせてご覧ください。
