「地域のおすすめ店舗をまとめたポータルサイトを作りたい」。
「でも、プログラミングは難しそうだし、検索機能なんてどうやって実装すれば…」。
そんな悩みを抱えていませんか。
Webサイト制作のハードルは年々下がっていますが、データベースと連携する動的なサイト、特に検索や絞り込みといった機能を持つサイトの構築は、依然として専門知識が必要でした。
しかし、AI技術の進化がその常識を覆そうとしています。
本記事で紹介する「Lovable」は、自然言語でのチャット(プロンプト)だけで、本格的なWebアプリケーションをフルスタックで構築できる「AIソフトウェアエンジニア」です。
今回はこのLovableを使い、非エンジニアの私が「検索・絞り込み機能付きの店舗一覧サイト」の構築に挑戦してみました。
この記事を読めば、Lovableが持つ可能性と、具体的なWebアプリ開発のプロセスをリアルに理解できるはずです。
Lovableとは?なぜ店舗一覧サイト作成に適しているのか
Lovableは、単なるコード生成ツールではありません。UI(フロントエンド)からデータベース、サーバーロジック(バックエンド)、さらには公開(デプロイ)まで、Webアプリケーション開発の全工程をAIエージェントが一貫して手掛けるプラットフォームです。もともとはGitHubで絶大な支持を得たオープンソースプロジェクト「GPT Engineer」の商用版であり、その実力は折り紙付きです。
では、なぜLovableが「検索機能付き店舗一覧サイト」のような、少し複雑なアプリケーション作成に向いているのでしょうか。理由は、その技術スタックとアーキテクチャにあります。
モダンな技術スタックをAIが自動構築
Lovableが生成するコードは、React、TypeScript、Tailwind CSSといった、現代のWeb開発で広く採用されているモダンな技術に基づいています。そして、バックエンドにはPostgresデータベースや認証、ストレージ機能を統合した「Lovable Cloud」(Supabaseベース)が自動でセットアップされます。
これはつまり、「店舗情報を格納するデータベース」「店舗オーナー用のログイン機能」「店舗の写真を保存するストレージ」といった、ポータルサイトに不可欠な要素が、最初からすべて揃った状態で開発をスタートできることを意味します。
一般的なノーコードツールが用意されたパーツを組み合わせるのが得意なのに対し、Lovableは本格的なデータベースを裏側に持つことで、「〇〇県にあるイタリアンを検索」といった動的なデータ操作を柔軟に実現できるのです。これこそが、単なる静的な一覧ページではない、”使える”ポータルサイトを作る上での大きな強みとなります。
【実践】Lovableで店舗一覧サイトの土台を構築する手順
それでは、実際にLovableを使って店舗一覧サイトを構築していくプロセスを見ていきましょう。「百聞は一見に如かず」です。AIとの対話を通じて、どのようにアプリケーションが形作られていくのかを具体的に解説します。
ステップ1: プロジェクト作成と最初のプロンプト
まずはLovableにログインし、新しいプロジェクトを作成します。そして、AIに対して最初の指示(プロンプト)を与えます。ここでのポイントは、できるだけ具体的に作りたいものの全体像を伝えることです。
プロンプト例:
東京都内のカフェやレストランを検索できるポータルサイトを作ってください。主な機能として、店舗の一覧表示、店舗の詳細表示が必要です。ユーザーは都道府県とお店のジャンルで店舗を絞り込み検索できるようにしてください。
このプロンプトを投げると、LovableのAIエージェントが動き出します。技術選定、データベース設計、画面構成の考案などを自動で行い、数分後にはアプリケーションの土台を生成してくれます。
ステップ2: AIが提案するデータベース構造の確認
AIはまず、店舗情報を管理するためのデータベース(テーブル)を設計します。例えば、以下のような「stores」テーブルが提案されるでしょう。
id(ID)name(店舗名)description(説明文)address(住所)prefecture(都道府県)genre(ジャンル)image_url(画像URL)created_at(作成日時)
この時点で、必要な項目が足りなければ「電話番号(phone_number)と公式サイトのURL(website_url)のカラムも追加して」のようにチャットで指示すれば、すぐにテーブル構造を修正してくれます。
ステップ3: 検索・絞り込み機能の実装
土台ができたところで、メイン機能である検索・絞り込みを実装します。これもチャットで指示するだけです。
プロンプト例:
店舗一覧ページに、都道府県を選択するドロップダウンメニューを追加してください。ジャンルは複数選択可能なチェックボックス形式で絞り込めるようにしてください。フリーワード検索用の検索ボックスも設置してください。
一発で完璧なものが出来上がるわけではありません。しかし、Lovableの「vibe coding」スタイルの真骨頂はここからです。「やっぱりドロップダウンじゃなくて、ボタン形式にして」といった具合に、AIと対話しながら細かな修正を加え、理想の形に近づけていくことができます。
見た目と使いやすさを向上させるカスタマイズ術
AIが生成した土台は非常に優秀ですが、よりオリジナリティあふれるサイトにするためには、デザインの調整や機能の拡張が欠かせません。Lovableは、非エンジニアでも直感的に操作できる機能から、プロ向けの高度な編集機能まで、幅広いカスタマイズ手段を提供しています。
Visual Editsでデザインを直感的に調整
Lovableの強力な機能の一つが「Visual Edits(ビジュアル編集)」モードです。これは、表示されているプレビュー画面上の要素を直接クリックし、テキストや色、余白などを Figma のような感覚で編集できる機能です。
「このボタンの色をブランドカラーに変えたい」「ここの見出しの文字をもう少し大きくしたい」といった細かなデザイン調整のたびにプロンプトを考える必要はありません。この機能を使えば、AIクレジットを消費することなく、サイトの見た目を素早く整えることができます。AIに大枠を作ってもらい、細部の仕上げは人間が直感的に行う、という効率的な分業が可能です。
詳細ページの作成とデータ連携
店舗一覧ページが完成したら、次はその先の詳細ページを作成します。これもプロンプトで簡単に指示できます。
プロンプト例:
店舗一覧で店舗名をクリックしたら、その店舗の詳細情報(住所、説明文、画像など)を表示する詳細ページに遷移するようにしてください。
Lovableはルーティング(ページ遷移)の設定から、一覧ページでクリックされた店舗のIDを詳細ページに渡し、データベースから該当の店舗情報を取得して表示する、という一連のロジックを自動で組んでくれます。
応用編:コード編集で独自の機能を追加
LovableはGitHubリポジトリとの連携が可能です。これにより、Lovable上でAIが生成したコードを、VS Codeなどの使い慣れたエディタで直接編集することができます。例えば、「特定の店舗を『PR』として一覧の上部に固定表示する」といった独自のロジックを、エンジニアが手書きのコードで追加することも可能です。
このように、最初はAIに9割の作業を任せて高速に立ち上げ、残りの1割の「こだわり」の部分をVisual Editsや手書きコードで実現する、というハイブリッドな開発スタイルこそがLovableの真価と言えるでしょう。
公開と運用のポイント:コストと将来性
アプリケーションが完成したら、いよいよ公開です。運用していく上でのコストや、将来的な事業拡大にも目を向けてみましょう。
ワンクリックでの公開と気になる料金
Lovableでは、管理画面からワンクリックで作成したアプリケーションをインターネット上に公開(Publish)できます。FreeプランやProプランでは `xxx.lovable.app` というドメインが提供され、Proプラン以上であれば独自のドメイン(例: `your-portal.com`)を接続することも可能です。
料金体系は、2025年12月時点の情報では、クレジットカード不要で始められるFreeプランから、チーム向けのBusinessプランまで用意されています。Freeプランは月間のAIクレジットに上限がありますが、「まずはどんなものか試してみたい」という用途には十分です。
さらに特筆すべきは、2025年末までの期間限定で、データベースやストレージの利用料に使えるLovable Cloudクレジットが毎月$25分、無料で付与されるキャンペーンです。これにより、画像や店舗データを扱う今回のサイトのようなアプリケーションも、かなり低コストで試すことができます。
スケールしても安心な「脱ロックイン」設計
Lovableの最も重要な特徴の一つは、ベンダーロックインのリスクが極めて低いことです。生成されたコードは標準的な技術(React, TypeScript)で構成されており、GitHubを通じていつでもコード全体を手元にエクスポートできます。
これは、「最初はLovable上で高速にMVP(最小実用製品)を開発・公開し、事業が軌道に乗って独自の機能開発が必要になったら、コードをエンジニアチームに引き継いで自社開発に移行する」という戦略を可能にします。
Lovableは、単なる「使い捨て」のプロトタイピングツールではありません。事業の成長に合わせてスケールしていける「資産」となるコードを生成してくれる、将来性のある開発プラットフォームなのです。
まとめ:AIと共に創る、新しいWebアプリ開発の形
この記事では、AIソフトウェアエンジニア「Lovable」を使って、検索・絞り込み機能付きの店舗一覧サイトを構築するプロセスを解説しました。
重要なポイントをまとめます。
- Lovableは、チャットでの指示だけでデータベースを含む本格的なWebアプリを自動構築できる。
- AIとの対話、Visual Editsでの直感的な編集、手書きコードでの拡張など、柔軟な開発スタイルが可能。
- 無料プランと期間限定の無料クレジット枠で、低リスクに試すことができる。
- コードはエクスポート可能なため、将来的に本格的な自社開発へスムーズに移行できる。
プログラミングの知識がなくても、アイデアさえあれば誰でも高機能なWebアプリケーションを形にできる時代が、もうそこまで来ています。Lovableは、その未来を最も体現しているサービスの一つと言えるでしょう。
Lovableの機能や料金プランについて、さらに詳しく知りたい方は、【2025年完全版】Lovable(ラバブル)とは?AIでWebアプリを自動生成する使い方・料金・特徴を徹底解説の記事もぜひご覧ください。より網羅的な情報をまとめています。
まずは無料プランで、あなた自身のアイデアを形にしてみてはいかがでしょうか。AIによる次世代のアプリ開発体験が、あなたを待っています。
