こんにちは、小松由和(@komaty1210)です。
あなたは、地球温暖化を進めている一番大きな原因を知っていますか?
二酸化炭素の排出でオゾン層が破壊されているんだから、世界各国の工場の排気ガスなど化石燃料の燃焼でしょう。
世界中で増えている車や船、飛行機の運輸が原因じゃないの?
はたまた、
大気汚染、開発による森林伐採、人口増加、水質汚染、複数の原因があるから一番大きな原因を聞かれても難しい…
など、人それぞれの解釈や理解があると思います。
それでは、
地球温暖化を進めている一番大きな原因は、
「食肉用の牛を始めとした家畜である」
と聞いて、
それは知ってたよ!
という方はどれくらいいるでしょうか。
おそらく知らなかった方は多いはず!(私はまったく知らなかったです…)
なぜそんな重要な情報が一般市民に行き渡っていないのか。
その謎にせまる、地球の環境問題のタブーに切り込んだ2014年に製作されたドキュメンタリー映画『COWSPIRACY』を今回紹介したいと思います。
予告編(字幕なし)
映画『COWSPIRACY』は、先週の記事「地球の気候変動をディカプリオ氏の2年間にわたる旅を通して伝える番組が素晴らしかった【ナショジオ】『地球が壊れる前に』」で紹介した地球の気候変動を伝える番組【ナショジオ】『地球が壊れる前に』を観たことがきっかけで知りました。
【ナショジオ】『地球が壊れる前に』の映像で、メインナビゲーター兼プロデューサーをしていたレオナルド・ディカプリオ氏が、映画『COWSPIRACY』でもエグセクティブプロデューサーとして映画製作に関わっています。(ディカプリオ氏は映画『COWSPIRACY』には登場しませんが)
映画のおおまかな内容としては、
・映画の題名の「COWSPIRACY」とは、「COW(牛)」と「CONSPIRACY(陰謀)」の造語。
・地球の気候変動をはじめとする環境問題の一番の原因は、化石燃料ではなく、「畜産」特に食肉用の牛にある。
・「畜産」が一番の原因という事実があるのに、政府、地球環境保護を唱える環境団体をはじめ、誰もがこの深刻な問題に触れない現状。その理由とは?
・肉を食べない(食べ過ぎない)という選択が地球環境を守ることにつながる。
といった内容で、
監督であるキップアンデルセン自ら、環境問題の原因に対する様々な調査と仮説、取材を通して、「環境問題に対して畜産が持つ意味」について、環境問題の原因と世界を取り巻くタブーについて解明していくドキュメンタリーです。
情報として勉強になるのはもちろんなのですが、映画としても十分見応えがあって、単純にドキュメンタリー映画としても面白い部類に入るんじゃないかと。
地球の環境問題を新たな視点でみることができる
自分のライフスタイルを見直すきっかけになる
など、色々考えさせられる良質な映像だと思います。
映画では、ベジタリアン、菜食主義者へのススメが流れ的にありましたが、実際に菜食主義者になるかどうかは一旦置いておいていいと思うので、
ぜひ観てもらえたらと思います。
『COWSPIRACY』の日本語字幕つきの映画は、現在のところは、オンライン動画配信サービスNetflix (ネットフリックス) (公式サイトリンク)でしか見れないようです。
Netflixは月額課金の有料サービスですが、登録後1ヶ月無料体験ができるので無料期間を使って観ることができますのでぜひ。
それでは、映画の中で印象的だった内容を一部紹介したいと思います。
映画『COWSPIRACY サステイナビリティ(持続可能性)の秘密』
映画『COWSPIRACY』の概要
2014年製作
地球の資源を破壊する工場式農業。地球環境保護を唱える環境団体がこの深刻な問題に触れない理由は?環境問題のタブーに鋭く切り込むドキュメンタリー。
監督は、キップ・アンデルセン、キーガン・カーン。
エグゼクティブプロデューサーに、レオナルドディカプリオ、ジェニファー・ダビッソン、キップ・アンデルセン。
■字幕
■90分
■Netflixで視聴可能です。Netflixに登録しないと観れませんが、1ヶ月の無料期間もあるのでぜひ。https://www.netflix.com/
■映画公式サイト(英語): http://www.cowspiracy.com/
映画の冒頭から面白い
映画は、アメリカに本部を置く自然保護団体「シエラクラブ」の役員へのインタビューから始まり、地球の環境問題の現状と危機感について説明する役員に対して、畜産と環境問題の関係を聞いたインタビュアーのやりとりから始まります。
シエラクラブ役員
「気温上昇は地球全体に大きな問題を引き起こします。
干ばつ、飢饉、紛争、種の絶滅
それらを避けるには気温上昇を2度以内に抑えねばなりません。
このままだと恐竜の絶滅以来の途方もない規模の種の絶滅が近々発生します。
海面上昇により国全体が沈んでしまったり、大規模な干ばつで食料を供給できず、他国を侵略する者も現れるはず。
地球温暖化戦争が始まるでしょう。」
インタビュアー
シエラクラブ役員
有名な自然保護団体の人が畜産について何も語らず、話題に触れもしない、過去の国連の発表で畜産の問題は発表されているはずだから知らないわけではないはず。
大きな闇に包まれた環境問題のタブー具合が見ていてハラハラするし、おもしろい。
下の画像は、IPCC(地球温暖化の問題を考えるために1988年に設立された国連の組織)により発表されている地球温暖化による将来の主要なリスクについて。
出典)IPCC第5次評価報告書
全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)より
国連の報告では運輸業より畜産業の方が温室効果ガス排出量を上回っている。
ワールドウォッチの報告によると、温室効果ガス排出の51%は畜産による原因。
国連では18〜31%が畜産による原因と発表している。
なぜ、畜産が温室効果ガス排出の主要な原因となるのか?
映画の中ではわかりやすい例えを用いて、原因について説明があります。
・家畜が大量のメタン(CH4)を排出しているから。(メタンは同量の二酸化炭素の21~72倍の温室効果をもたらすとされている。wikipediaより)
・世界の家畜の数はなんと700億。
・家畜の生産に大量の水が必要になる。ハンバーガー1個に対して、2500リットルの水が使われる。ハンバーガー1個食べるのは2ヶ月間シャワーを浴び続けるのと同じこと。
・牛肉500グラムの生産に水が1万リットル必要なのに、節水を呼びかける環境団体のサイトには畜産への言及はない。家庭の水周りの改善ばかり。
・アマゾンの熱帯雨林が消滅した原因の91%は畜産が原因と分かっている。森林を伐採して家畜を放牧させて餌となる遺伝子組み換えの大豆を育てるために。
・海の汚染も家畜の糞などの農業排水が大きな要因
などなど、たくさんの原因についての言及がありました。
それにしても、
ハンバーガー1個に対して2500リットルの水が必要とは・・・、
要は、
お肉を生産するためには、牛など家畜の育成などに多くの資源(土地、飼料、水、家畜の糞の処理、等々)が必要になり、現在は膨大な資源を畜産に投入してしまっている。
畜産が排出する温室効果ガスの量は無視できないものになっているのだと。
なぜ政府や環境保護団体は化石燃料ばかりに目を向けて、食肉の消費を減らせと言わないのか?
・環境団体や活動家の多くが活動に資金が必要で、大勢が共有する習慣に反する主張をしてしまうと、資金集めに影響が出てしまうので問題に目をつぶっている。
・政治家に畜産業界と関係が深い人物が非常に多い。
映画のスポンサーから畜産の問題を深掘りしている影響で根回しがあったのか資金提供が難しくなったと断りの電話がある場面も。
非常に根深い問題。闇を感じますよね。
個人的には、
「大勢が共有する習慣を変えることは難しい」
という点が畜産に限ったことではなくて、ライフスタイル、ビジネス、あらゆることに共通で応用できる重要な認識、考え方だと思いました。
グラスフェッドの牛もサステナブルではない。
アメリカでは、牛の飼育に使う餌に含まれるトウモロコシなどを生産するのに広大な土地が使われています。
それなら、牧草を食べさせて育てるグラスフェッドの牛なら環境に優しく、お肉も食べれるのでは?
とグラスフェッドの牛を育てる牧場へ監督は取材に行きます。
ちなみに、グラスフェッドの牛肉は、生産量が少ないのと手間がかかるため高価ではありますが、牧草を食べて健康的に育成しているおかげで、食しても健康に良いとされています。
・グラスフェッドの牛を育てる20平方キロの農場で年間生産量が36トン(食べれる状態で)。アメリカ人の牛肉の年間消費量は94キロ。20平方キロの農場で賄えるのは、わずか382人。
・1人あたり0.052平方キロ必要で、アメリカの人口は3億1400万人だから、およそ1500万平方キロの牧草地が必要になる。
・でもアメリカ本土の面積は750万平方キロ程度しかない。
・すでに本土の半分を畜産に使ってるから全然足りない
・草で牛を育てた場合食肉処理できるまで23ヶ月かかるが、飼料を使えば15ヶ月で済む。つまり、8ヶ月分の水などが余分に必要で排泄物も多くなり、ガスの排出量も増えてしまう。
・よって、グラスフェッドの牛はサステナブルではない。サステナブルな方法で世界中の肉食の需要に応えるのは難しい。
グラスフェッドの肉も解決策にはなり得ないと。
お肉の代替となる食品を開発するか、肉食の習慣をやめるか、解決策が絞られてきました。
人口の増加が原因と言う人がいるけれど、実際どうなの?
人口の推移は、
1812年 10億人
1912年 15億人
2012年 70億人
増加率も驚くべきだが、
もっと驚くべき数字は家畜の数。なんと700億。
人類は毎日200億リットル近い水を飲み、10億キロの食糧を食べる。
一方、15億頭の牛は毎日1700億リットルの水を飲み、600億キロ近い餌を食べる。
人口増加じゃなくて、人間が食べる動物がやはり地球温暖化の原因だと。
肉食をやめることがコストもかからず地球環境に優しい
畜産に頼った生活に比べて、完全菜食主義者がいかに地球環境に優しいか、データを使って示していました。
・完全菜食主義者に必要な農地は4000平方メートル
・卵や乳製品を食べる場合はその面積の3倍
・アメリカの平均的な肉食者は18倍の土地を必要とする。
・野菜は600平方メートルで17トン(17000キロ)を収穫できるが、食肉は同じ面積で170キロしか作れない(同じ面積で野菜は食肉の100倍収穫可能!)
生産において土地の広さや資源を使いすぎない完全菜食主義者こそ環境保護に有効であると。
たしかに、菜食主義は地球に優しいライフスタイル。
食用の動物も命であることには変わりはない
映画の中で、鴨を殺してさばくシーンが出てきます。
そのシーンを見た監督はショックを受けて、命の尊さを学びます。
私たちも普段スーパーではパック詰めされたお肉しか目にしませんが、元々は生きていた動物です。
あたりまえの命の尊さについても気づきを与えてくれました。
本当に環境破壊に畜産が大きく影響しているのか映画以外で調べてみました
どんな情報でも1箇所からの情報のみ信用するのは危険です。
色々な角度からの意見や情報を集めて、その上で判断していきたいと思ったので、
映画で語られている内容が事実なのか、本当なのか、映画以外に情報がないか調べてみました。
調べてみた結果は、
・動物保護団体などのwebサイトでは情報があるけど今回は参考にせず(情報発信元が不明確なので)
・なるべく公的な機関や研究者の方の情報を探したかったけど、日本語で得られる情報はわずかしかなかった
・日本政府が発表している情報には環境問題に関する情報は豊富だったけど(調べればあるものなんですね)、畜産について主要な原因と捉える内容は見つけることはできなかった
といったかんじになりました。
調べた結果で興味深い内容がいくつかありましたが、今回の記事で紹介してしまうとだいぶ長くなってしまうので、あくまで今回は映画『COWSPIRACY』の紹介にとどめておき、別記事で紹介したいと思います。
※2016/11/17追記
調査結果を記事としてアップしましたのでぜひあわせてご覧ください。
本当に肉食、畜産が地球温暖化、温室効果ガスの原因に大きく影響しているのかちょっと調べてみた
おわりに
映画では、肉食をやめて地球環境に優しいライフスタイル菜食主義者になろう、的な形で締めくくっていました。
私自身は、お肉はとても好きですが、お肉に対する見方が変わりました。
変わったというか、新しい視点で捉えることができるようになった感覚。
表面的な情報や見た目だけで判断するのではなく、本質を見極める重要さ
フードマイレージとかもそうですが、ぱっと見ではわからないけど、物やサービスには見えないコストやエネルギーが含まれています。
例えば、以下画像のように、野菜のきゅうりにしてみても、旬の時期に収穫できる露地栽培のきゅうりと、通年収穫できるハウス栽培のきゅうりでは、同じきゅうりでも生産に投入されているエネルギーが5倍も違うんですよ。
出典)社団法人資源協会「家庭生活のライフスタイルエネルギー」
全国地球温暖化防止活動推進センターウェブサイト(http://www.jccca.org/)より
安いということには必ず理由があるということ
牛肉がスーパーであの値段で買えるのには、相応の理由があります。大量生産、人間の身体には悪いけど安上がりな飼料を使う、など、土地や水をはじめ大量の資源を使うことで、最終的な安価な値段を成り立たせています。
食肉に限らず、どんな物やサービスにしても、安いということには何かしら理由があります。
安いから嬉しい!
と安直に考えずに、安い理由はなんだろうか?何か犠牲になっているのではないか?と本質を見極め、選ぶ、行動することが必要だと思いました。
といったように、色々と学びがある映画でしたので、興味持たれた方はぜひご覧になってください。
とりあえずは、牛肉を食べる頻度も少なくしてみようと思っています。
こちらの関連した環境テーマの映像を紹介する記事もぜひ。
地球の気候変動をディカプリオ氏の2年間にわたる旅を通して伝える番組が素晴らしかった【ナショジオ】『地球が壊れる前に』
気候変動の深刻さを伝えるディカプリオ氏の動画『地球が壊れる前に』が無料公開されていた理由と米大統領選の関係を考えてみた
以上、「地球の環境を守るには肉を食べることをやめなければいけない!環境問題のタブーに切り込む映画『COWSPIRACY』に考えさせられる」でした。
それではまた!