出典: Google Workspace Updates Blog
元記事の投稿日: 2025年7月8日
共同で編集している、会社の命運を左右するような重要な企画書。
あるいは、取引先との間で何度も修正を重ねている、契約書のドラフト。
編集権限を渡した相手だからと安心していたら、内容を勝手にコピーされて、別の場所にペーストされてしまった。
まだ未完成の資料が印刷され、意図しない形で広まってしまった。
そんな「編集権限を持つ人からの情報漏洩」という、最も防ぎにくく、そして最も深刻なセキュリティリスク。
本日ご紹介するのは、この課題に対する、Google Driveの非常に強力な回答です。
何が変わった?IRM機能が「編集者」にも適用可能に
まず「IRM(Information Rights Management:情報権限管理)」とは、Google Driveのファイルに対して、ダウンロード、コピー、印刷といった操作を禁止する、情報漏洩対策の切り札となる機能です。
これまで、このIRM機能は主に「閲覧者」や「コメント投稿者」を対象としていました。しかし、本当に防ぎたいのは、ファイルの中身を自由に触れる「編集者」による情報の持ち出しではないでしょうか。
今回のアップデートで、ついに個々のファイルのオーナーや共有ドライブの管理者が、自分たちの判断で、「編集者」に対してもこのIRM制限をかけられるようになりました。
これにより、以下のような状態を作り出すことができます。
編集はできるが、持ち出しはできない:
「編集者」は、これまで通りファイルの内容を自由に編集したり、追記したりできます。しかし、ダウンロード、印刷、コピーのためのメニューはすべて非表示になり、操作ができなくなります。コピー&ペーストもドキュメント内に限定:
さらに強力なのが、コピー&ペーストの制限です。「編集者」は、ドキュメント内のある部分をコピーして、同じドキュメントの別の部分にペーストすることはできます。しかし、その内容を別のドキュメントや、メール、チャットといった他のアプリケーションにペーストすることはできません。
まさに、ファイルという「部屋」の中で自由に作業はできるが、部屋の外に情報を一切持ち出すことは許されない、というデジタルな金庫室を実現する機能です。
日本のビジネスシーンでの具体的な活用メリット
この機能は、機密性の高い情報を扱う、あらゆる共同作業のシーンで絶大な効果を発揮します。
1. 契約書や提案書ドラフトの共同編集
法務部、営業部、開発部など、複数の部署でドラフトを共同編集する場面。関係者はドキュメント内で自由に編集できる一方、未完成の内容がメールにコピーされたり、ローカルにダウンロードされたりするリスクを防ぎます。特に、社外の弁護士やコンサルタントと共同編集する際に、情報のコントロールを維持する上で非常に有効です。
2. 人事評価や機密プロジェクトの管理
人事評価シートや、M&Aプロジェクトの財務データなど、限られた編集者だけが触るファイル。万が一のヒューマンエラーや、退職者による情報の持ち出し、あるいはアカウント侵害による情報流出リスクを最小限に抑えることができます。「編集権限」と「持ち出し権限」を分離することで、より多層的なセキュリティが実現します。
3. 共有ドライブでの厳格なルール運用
共有ドライブの管理者が、ドライブ内のすべてのファイルに対して「編集者によるコピー&印刷禁止」というポリシーを一括で適用できます。「このプロジェクトの成果物は、すべてこの共有ドライブ内で完結させ、外部への持ち出しは一切禁止する」といった、厳格な情報管理ルールをシステム的に徹底することが可能です。
管理者とユーザーが知っておくべきこと
この強力な機能を利用する上で、いくつか重要なポイントがあります。
【最重要】管理者設定が常に優先!
組織の管理者が、DLP(データ損失防止)ルールを使って、全社的に「特定の種類のファイルはコピー禁止」といった設定をしている場合、たとえファイルのオーナーが個別に許可しようとしても、**管理者側の設定が常に優先されます。**これは、組織全体のガバナンスを維持するための重要なルールです。誰でも使える基本機能
IRMの基本機能(ファイルオーナーが閲覧者や編集者に制限をかける)は、すべてのGoogle Workspaceプランで利用可能です。これにより、あらゆるユーザーが、自分の大切なファイルのセキュリティを高めることができます。操作はとても簡単
ファイルオーナーは、使い慣れた「共有」設定画面から、「編集者によるダウンロード、印刷、コピーを無効にする」といった趣旨のチェックボックスを入れるだけで、簡単にこの設定を適用できます。
まとめ
今回のGoogle Drive IRM機能のアップデートは、コラボレーションのセキュリティを「性善説」から一歩進め、より現実的なリスクに対応するための、大きな進化です。
「編集権限を渡す=すべてを信頼する」ではなく、「共同作業は許可するが、情報の持ち出しは許可しない」という、よりきめ細やかでインテリジェントな権限管理が可能になります。
便利さと安全性を両立させ、組織の最も重要な知的財産を守るために、ぜひこの新しい情報管理の形をご活用ください。