本記事はGoogle Workspace Updatesブログ( https://workspace.googleblog.com/ )の情報を基に、2025年9月23日に作成されました。
Googleスプレッドシートで、日々、膨大なデータを扱っている皆さん、こんにちは。
顧客アンケートの自由回答、SNSのコメント、製品レビュー、従業員からのフィードバック。
私たちのスプレッドシートには、数字だけでなく、こうした「言葉」のデータも、大量に蓄積されています。これらの定性的なデータには、ビジネスを成長させるための、非常に貴重なインサイト(洞察)が、眠っています。
しかし、その宝の山を前に、私たちは、これまで、大きな壁にぶつかってきました。
「この何百件もの日本語レビュー、一つひとつ読んで、ポジティブかネガティブか、手作業で分類していくのは、あまりにも時間がかかりすぎる…」
「従業員からの意見を、テーマごとにタグ付けして整理したいけど、人によって判断基準がブレてしまい、正確な分析ができない…」
「このキーワードから、新しいブログ記事のタイトル案を100個考えたい。でも、アイデアがすぐに枯渇してしまう…」
このように、大量のテキストデータを、人間が手作業で、一貫性を保ちながら処理することは、極めて困難で、非効率な作業でした。
今年、Googleは、この長年の課題を解決するため、スプレッドシートに関数を一つ入力するだけで、AI「Gemini」に、こうした知的作業を代行させることができる、革命的な「AI関数」を発表しました。しかし、そこには、日本のユーザーにとって、一つの大きな壁がありました。それは、「英語でしか使えない」という、言語の壁です。
この度、その最後の壁が、ついに取り払われます。日本のすべてのGoogle Workspaceユーザーにとって、まさに待望のアップデートが発表されました。今回は、あなたのスプレッドシートを、単なる「計算ソフト」から、日本語の「言語処理と思考のプラットフォーム」へと進化させる、AI関数の日本語対応について、その全貌と、無限の活用可能性を詳しく解説していきます。
前提知識:未来の関数、「=AI()」とは?
今回のアップデートの凄さを理解するために、まずは、この「AI関数」が、私たちがこれまで使ってきた =SUM() や =VLOOKUP() といった、従来の関数と、何が決定的に違うのかを、おさらいしましょう。
AI関数は、その名の通り、関数を通じて、AI「Gemini」と直接「対話」するための、魔法のような関数です。
その基本的な構文は、非常にシンプルです。
=AI(“プロンプト”, 対象セル)
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“プロンプト”:
これは、あなたがAIに「やってほしいこと」を、自然な言葉で伝える、指示書の部分です。「この文章を要約して」や「このレビューの感情を分析して」といったように、あなたが普段、AIチャットに話しかけるのと同じように、指示を与えることができます。 -
対象セル:
これは、AIに処理してほしい、テキストデータが入っているセルのことです。
この関数をセルに入力すると、Geminiは、あなたの指示書を読み、対象セルのデータを処理し、その結果を、関数が入力されたセルに、直接、書き出してくれるのです。
今回のアップデートの核心:待望の「日本語」への完全対応!
これまで、この強力なAI関数を利用するには、プロンプトを「英語」で記述する必要がありました。これは、多くの日本のユーザーにとって、その潜在能力を最大限に引き出す上での、大きな障壁となっていました。
今回のアップデートで、このAI関数が、ついに、日本語を含む、7つの新しい言語に、正式に対応しました。(対応言語:スペイン語、ポルトガル語、日本語、韓国語、フランス語、イタリア語、ドイツ語)
これにより、日本のユーザーは、
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プロンプトを、自然な日本語で記述できる。
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分析対象のデータも、もちろん日本語でOK。
という、完全に日本語ネイティブな環境で、このAI関数の真価を、余すところなく、引き出すことができるようになったのです。言語の壁は、もはや存在しません。
なぜこれが革命的なのか?日本語での具体的な活用シーン
このAI関数の真価は、スプレッドシートの「オートフィル」機能と組み合わせることで、爆発的に発揮されます。一つのセルで成功したAI処理を、何百、何千行ものデータに対して、一瞬で「スケール(拡張)」させることができるのです。
日本のビジネスシーンに合わせた、具体的な活用例を見ていきましょう。
1. マーケティング / カスタマーサポート:顧客の声の「感情」を、瞬時に可視化
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課題:
自社製品のレビューサイトや、SNSから集めた、何百件もの、日本語の顧客からのフィードバック。これを、ポジティブ、ネガティブ、中立に分類したい。 -
AI関数で解決:
フィードバックがA列に入っているとします。B2セルに、こう入力します。
=AI(“このレビューの感情を『ポジティブ』『ネガティブ』『中立』のいずれかで分類して”, A2)
あとは、B2セルのフィルハンドルを、データがある行の最後まで、ダブルクリックするだけ。 -
インパクト:
これまで、担当者が、何時間もかけて、一つひとつ読んで判断していた作業が、わずか数秒で完了します。顧客満足度の傾向を、リアルタイムで、データに基づいて把握し、迅速な製品改善や、サポート対応に繋げることができます。
2. 人事 / 総務:従業員アンケートの「テーマ」を、自動でタグ付け
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課題:
従業員エンゲージメントサーベイで集まった、大量の自由回答。これを、「福利厚生」「人間関係」「キャリアパス」「業務負荷」といったテーマごとに、手作業で分類している。 -
AI関数で解決:
自由回答がB列に入っているとします。C2セルに、こう入力します。
=AI(“この意見を、最も関連性の高いテーマでタグ付けして。選択肢は『福利厚生』『人間関係』『キャリアパス』『業務負荷』です”, B2) -
インパクト:
組織が抱える課題の構造を、客観的なデータで、瞬時に明らかにすることができます。どのテーマに関する意見が多いのかを分析し、より効果的な人事施策の立案に繋げます。
3. 営業 / 企画:長文情報の「要約」を、大規模に実行
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課題:
競合他社のニュースリリースや、業界の調査レポートを、大量に収集した。それぞれの要点を、手早く把握したい。 -
AI関数で解決:
レポートの各段落がC列に入っているとします。D2セルに、こう入力します。
=AI(“この文章を、最も重要なポイントを1文で要約して”, C2) -
インパクト:
情報収集の初期段階にかかる時間を、劇的に短縮します。AIが作成した要約リストにざっと目を通すだけで、どの情報を、より深く読み込むべきか、効率的に判断できます。
4. コンテンツ制作:アイデア出しを、AIで「量産」
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課題:
新しいブログ記事や、SNS投稿のアイデアが、すぐに枯渇してしまう。 -
AI関数で解決:
A列に、投稿のテーマとなるキーワードを、複数入力します。B2セルに、こう入力します。
=AI(A2 & “をテーマにした、読者の興味を引くキャッチーなブログタイトル案を、3つ提案して”) -
インパクト:
人間一人では、決して生み出せない量の、多様な切り口のアイデアを、一瞬で得ることができます。創造的な作業の、最初の「とっかかり」を、AIが強力にサポートしてくれます。
まとめ
今回ご紹介した、Googleスプレッドシートの「AI関数」の、待望の日本語対応。
これは、日本のGoogle Workspaceユーザーにとって、AI活用を、一部の専門家のものから、すべてのビジネスパーソンの、日常的な業務ツールへと、進化させる、極めて重要な一歩です。
スプレッドシートは、もはや、単に数字を「計算」する場所ではありません。
AIとの対話を通じて、大量の「言葉」を、分類し、要約し、そして、新しい「アイデア」を創造する、真の「知的生産プラットフォーム」へと、その姿を変えたのです。
ぜひ、この新しい、そして強力な「魔法の関数」を、あなたのスプレッドシートで、試してみてください。これまで不可能だと思っていた、データ処理の未来が、そこに広がっているはずです。