企業のセキュリティを守る情報システム部門(情シス)の皆様、日々巧妙化するサイバー攻撃対策に頭を悩ませていませんか。
特に、従来の対策では検知が難しい「未知のマルウェア」や「ゼロデイ攻撃」は、一度侵入を許せば甚大な被害につながりかねない、深刻な脅威です。
従業員一人ひとりのセキュリティ意識を高める教育も重要ですが、それでも人間である以上、ミスは起こり得ます。
そんな時、最後の砦として機能するのが、Google Workspaceに搭載されている「セキュリティサンドボックス」機能です。
この記事では、2025年9月時点の情報に基づき、情シス担当者の視点からGoogle Workspaceのセキュリティサンドボックスの全貌を徹底解説します。
本記事を読めば、サンドボックスの仕組みから具体的な設定方法、そして導入効果を最大化する運用ノウハウまで、すべてを理解できます。
Google Workspaceのセキュリティサンドボックスとは?未知の脅威を防ぐ「仮想の実験室」
まず、「セキュリティサンドボックス」とは一体どのような機能なのでしょうか。言葉は聞いたことがあっても、その具体的な仕組みまでは知らないという方も多いかもしれません。サンドボックスは、直訳すると「砂場」。その名の通り、システムから隔離された安全な仮想環境(砂場)で不審なプログラムを実際に動かしてみて、その挙動を観察することで脅威を判定する仕組みです。
セキュリティサンドボックスの基本的な仕組み
従来のアンチウイルスソフトの多くは、過去に見つかったウイルスの特徴を記録した「パターンファイル」と照合して脅威を検出する「パターンマッチング」という方式を採用しています。しかし、この方法では、まだ世に出ていない新作のウイルスや、巧妙に姿を変えた亜種のウイルス(未知の脅威)を検知することは困難です。
そこで登場するのが、セキュリティサンドボックスです。具体的な流れは以下の通りです。
- 受信と隔離: 従業員宛に届いたメールに添付ファイルがあった場合、ユーザーの受信トレイに届ける前に、そのファイルをセキュリティサンドボックスという隔離された仮想環境に送ります。
- 実行と監視: サンドボックス内で、その添付ファイルを実際に開いたり、実行したりします。この環境は完全に独立しているため、たとえファイルがマルウェアであったとしても、社内のネットワークやPCに影響が及ぶことはありません。
- 挙動分析: ファイル実行後、そのプログラムがどのような動きをするかを詳細に監視します。「PC内のファイルを勝手に暗号化しようとする」「外部の不審なサーバーと通信しようとする」「他のファイルに自身をコピーしようとする」といった、マルウェア特有の悪意ある挙動がないかをAIが分析します。
- 判定と対処: 分析の結果、悪意のある挙動が確認された場合、その添付ファイルを「脅威」と判定します。脅威と判定されたメールは、ユーザーに届く前にブロックされ、管理者に通知が行われます。安全だと判断されたものだけが、ユーザーの元に届けられます。
このように、実際に動かして「振る舞い」をみることで、パターンファイルに存在しない未知の脅威やゼロデイ攻撃からも企業を保護できるのが、セキュリティサンドボックスの最大の強みです。
なぜ今、サンドボックスが情シス担当者にとって重要なのか?
情シス担当者にとって、セキュリティサンドボックスの重要性は年々高まっています。その背景には、以下のようなサイバー攻撃の深刻化があります。
- ランサムウェアの巧妙化: 企業のデータを暗号化し、復旧のために高額な身代金を要求するランサムウェアの被害は後を絶ちません。攻撃者は次々と新しい手法を生み出すため、サンドボックスによる振る舞い検知が極めて有効です。
- 標的型攻撃の増加: 特定の企業や組織を狙い、取引先や関係者を装って信頼させ、マルウェア付きの添付ファイルを開かせようとする標的型攻撃メールが増えています。一見しただけでは見分けがつきにくいため、システムによる自動的な検知が不可欠です。
- クラウド利用の拡大: Google Workspaceをはじめとするクラウドサービスの利用が当たり前になったことで、ファイルのやり取りはメール添付だけでなく、クラウドストレージ経由でも頻繁に行われます。Google Workspaceのサンドボックスは、GmailだけでなくGoogleドライブにアップロードされたファイルもスキャン対象にできるため、現代の働き方に即したセキュリティ対策が可能です。
Google Workspaceのサンドボックスは、特別なソフトウェアを別途インストールする必要がなく、管理コンソールから設定を有効にするだけで利用を開始できます。Googleの持つ膨大な脅威インテリジェンスとAI技術を活用した高度な保護機能を、手軽に導入できる点は大きなメリットと言えるでしょう。
【プラン別】セキュリティサンドボックスの機能と設定方法
非常に強力なセキュリティサンドボックス機能ですが、残念ながらGoogle Workspaceのすべてのプランで利用できるわけではありません。ここでは、対象プランと具体的な設定方法について解説します。
対象プランはBusiness PlusとEnterprise
2025年9月現在、セキュリティサンドボックス機能が標準で搭載されているのは、以下のプランです。
- Business Plus (月額 ¥2,500/ユーザー)
- Enterprise (要問い合わせ)
最も広く利用されているBusiness Standard(月額 ¥1,600/ユーザー)や、小規模チーム向けのBusiness Starter(月額 ¥800/ユーザー)には、この機能は含まれていません。もし現在これらのプランを利用していて、未知の脅威への対策を強化したいと考えているのであれば、プランのアップグレードが現実的な選択肢となります。
Business Plusにアップグレードすると、サンドボックス機能に加えて、電子情報開示とデータ保持のための「Google Vault」や、より高度な端末管理機能も利用できるようになり、セキュリティとコンプライアンスを大幅に強化できます。
管理コンソールでの基本的な有効化手順
Business PlusまたはEnterpriseプランをご利用の場合、セキュリティサンドボックスの有効化は非常に簡単です。数クリックで設定が完了します。
- Google管理コンソール(admin.google.com)に特権管理者アカウントでログインします。
- 左側のメニューから [アプリ] > [Google Workspace] > [Gmail] を選択します。
- [スパム、フィッシング、マルウェア] をクリックします。
- 設定項目の中から「セキュリティ サンドボックス」というセクションを見つけ、鉛筆アイコンをクリックして編集モードに入ります。
- 「セキュリティ サンドボックスを有効にする」のチェックボックスをオンにします。
- (オプション) サンドボックスが脅威を検出した場合に、その脅威をどのルーティングルールに転送するかを指定できます。特定の管理者に通知を送るなどの設定が可能です。
- 右下の「保存」ボタンをクリックします。
これだけで、組織部門全体に対してセキュリティサンドボックスが有効になります。特定の組織部門だけに適用することも可能です。まずは全社で有効にし、その効果を確かめることをお勧めします。
より高度なカスタムルールの設定(Enterpriseプラン向け)
最上位のEnterpriseプランでは、さらに詳細なカスタムルールを設定できます。例えば、「役員が受信するパスワード付きzipファイルは、必ずサンドボックスでスキャンする」といった、より特定の条件に基づいたきめ細やかな制御が可能です。
また、サンドボックスと他のセキュリティ設定を組み合わせることで、防御をさらに固めることができます。例えば、以下のような設定が考えられます。
- 動的フィッシング検出との連携: AIがフィッシングの可能性が高いと判断したメールの添付ファイルを、優先的にサンドボックスで分析する。
- 添付ファイルのコンプライアンス設定との連携: 「社外秘」というキーワードが含まれるドキュメントが添付されたメールは、サンドボックスのスキャン対象とする。
【独自の視点】
いきなり複雑なルールを設定する必要はありません。情シス担当者としての現実的な運用ステップは、まず全社でサンドボックスの基本設定を有効にすることです。その上で、セキュリティセンターのレポートを分析し、どのような攻撃が多いのか、どの部門が狙われやすいのかを把握します。そして、特にリスクが高いと判断される部門(例:経営層、経理部門、人事部門など)から、必要に応じてカスタムルールを追加していくのが、最も効率的で管理しやすいアプローチと言えるでしょう。
セキュリティサンドボックス導入効果を最大化する運用術
セキュリティサンドボックスは「設定して終わり」の機能ではありません。その効果を最大限に引き出し、継続的に社内のセキュリティレベルを向上させていくためには、情シス担当者による適切な「運用」が鍵となります。
サンドボックスの検知レポートを活用する
Google Workspaceのセキュリティセンターには、サンドボックスがどのような脅威を検知し、ブロックしたかを確認できるダッシュボードが用意されています。情シス担当者は、このレポートを定期的に(例えば週に一度)確認することが重要です。
レポートからは、以下のような貴重な情報を得ることができます。
- 攻撃のトレンド: どのような種類のマルウェア(ランサムウェア、スパイウェア等)が多いのか。
- 攻撃の手口: どのような件名や添付ファイル名で偽装されているのか(例:「請求書」「注文書」など)。
- 標的となっている従業員: どの部署や役職の従業員が特に狙われているのか。
これらの情報を分析することで、単に脅威をブロックするだけでなく、より能動的な対策を講じることが可能になります。例えば、「経理部を狙った請求書偽装メールが増加している」という傾向が掴めたら、経理部に対して具体的な注意喚起を行うことができます。このように、レポート活用は、防御から一歩進んだ「セキュリティ戦略の立案」につながるのです。
従業員への周知とフィードバック
【独自の視点】
最新のセキュリティ機能を導入する際、意外と見落としがちなのが従業員への丁寧な説明です。セキュリティサンドボックスは非常に優秀ですが、万能ではありません。また、ファイルをスキャンする都合上、メールの受信が数十秒から数分程度遅れる可能性があります。この点を事前に周知しておかないと、「最近メールが届くのが遅い」といった問い合わせがヘルプデスクに殺到し、無用な混乱を招きかねません。
「セキュリティ強化のため、添付ファイル付きメールの受信が少し遅れる場合がありますが、これは未知の脅威から皆さんを守るための重要な仕組みです」と、その目的とメリットをセットで伝えることが、従業員の理解と協力を得るためのポイントです。
さらに、サンドボックスが実際に脅威をブロックした際は、その事実を(個人が特定されない形で)社内に共有するのも効果的です。「先日、巧妙に偽装されたランサムウェア付きメールが複数名に送られましたが、サンドボックス機能によって未然にブロックされました」といった情報を共有することで、従業員は脅威が身近に迫っていることを実感し、日々の業務におけるセキュリティ意識の向上につながります。
他のセキュリティ機能との組み合わせで防御を固める
企業のセキュリティは、一つの機能だけで守れるほど単純ではありません。複数の防御壁を設ける「多層防御」の考え方が基本です。セキュリティサンドボックスは強力な防御壁の一つですが、他のGoogle Workspaceのセキュリティ機能と組み合わせることで、その効果は飛躍的に高まります。
- データ損失防止(DLP): 機密情報(マイナンバー、クレジットカード番号など)が意図せず社外に送信されるのを防ぎます。
- コンテキストアウェアアクセス: ユーザーの場所、デバイスのセキュリティ状態などに応じて、Google Workspaceへのアクセスを動的に制御します。
- S/MIME暗号化(Enterpriseプラン): メールの内容を暗号化し、盗聴や改ざんを防ぎます。
サンドボックスが「外部からの脅威の侵入」を防ぐ盾だとすれば、DLPは「内部からの情報漏洩」を防ぐ盾です。これらの機能を組み合わせることで、内外両方のリスクに対応した、堅牢なセキュリティ体制を構築することができるのです。
まとめ:未知の脅威への「最後の砦」を有効にしよう
本記事では、Google Workspaceのセキュリティサンドボックスについて、その仕組みから設定、そして効果を最大化するための運用術までを詳しく解説しました。
日々進化するサイバー攻撃、特にパターンマッチングでは検知できない未知の脅威やゼロデイ攻撃に対して、サンドボックスは極めて有効な「最後の砦」となります。その要点を改めてまとめます。
- 振る舞いで検知: 安全な仮想環境でファイルを実際に動かし、悪意のある「振る舞い」を検知するため、未知の脅威に強い。
- 対象プラン: Business PlusおよびEnterpriseプランで利用可能。セキュリティ強化にはプランの見直しも視野に。
- 設定は簡単: 管理コンソールから数クリックで有効化できる。
- 運用が重要: レポートを活用して攻撃傾向を分析し、従業員への周知と他の機能との連携で効果を最大化する。
情シス担当者の皆様、まずは自社で契約しているGoogle Workspaceのプランをご確認ください。もしBusiness Plus以上のプランであれば、今すぐにでもセキュリティサンドボックスを有効にすることをお勧めします。
もし現在Business Standard以下のプランをご利用で、今回の記事を読んでセキュリティ強化のためにアップグレードを検討したいと感じたならば、やはりコストは気になるところでしょう。実は、Google Workspaceには新規契約やアップグレード時に利用できる割引プロモーションコードが存在します。「Google Workspace プロモーションコード【最新2025年版】15%割引クーポン無料配布中」のページで、最新のプロモーションコード情報を詳しく解説していますので、コストを抑えつつセキュリティを強化するために、ぜひ一度ご確認ください。
この記事が、貴社のセキュリティレベル向上の一助となれば幸いです。