フリーランスや個人事業主として自宅での開業を考えたとき、多くの方が疑問に思うこと。
それは、「この家の家賃、経費にできるの?」ということではないでしょうか。
結論から言うと、答えは「YES」です。
しかし、そのためには正しい手続きとルールを知っておく必要があります。
特に重要なのが、開業届の「納税地」の設定と、経費を算出するための「家事按分(かじあんぶん)」という考え方です。
この記事では、2026年1月時点の情報に基づき、これから個人事業主になる方や、すでに事業を始めているけれど経費の計上に不安がある方に向けて、自宅兼事務所の家賃を経費にするための具体的な方法を、専門用語を避けつつ分かりやすく解説します。
この記事を読めば、節税への第一歩を自信を持って踏み出せるようになります。
個人事業主なら知っておきたい「経費」と「家事按分」の基本
まず、なぜ自宅の家賃を経費にできるのか、その基本的な考え方から理解しましょう。節税の鍵となる「経費」と「家事按分」について解説します。
そもそも「経費」とは?
経費とは、事業を行うために直接必要となった支出のことです。例えば、仕事で使うパソコンの購入費、クライアントとの打ち合わせで使ったカフェ代、移動のための交通費などがこれにあたります。
個人事業主の所得(儲け)は、以下の計算式で算出されます。
収入 − 経費 = 所得
この「所得」に対して所得税や住民税が課税されるため、経費を漏れなく計上することが、手元に残るお金を増やす(=節税する)ための最も重要なポイントになるのです。
自宅の家賃が経費になる理由:「家事按分」という考え方
では、自宅の家賃は「事業を行うために直接必要となった支出」と言えるのでしょうか。生活の場でもある自宅の家賃を全額経費にすることは、残念ながらできません。しかし、自宅の一部を仕事場(事務所)として使っているのであれば、その部分に対応する家賃は立派な経費です。
このように、一つの支出の中に事業用とプライベート用が混在している場合に、事業で使った分だけを合理的な基準で計算して経費として計上することを「家事按分」と呼びます。
家事按分ができる費用の代表例は以下の通りです。
- 家賃
- 水道光熱費(電気代、水道代、ガス代)
- 通信費(インターネット回線、スマートフォンの利用料金)
- 固定資産税(持ち家の場合)
これらの費用を適切に家事按分することで、大きな節税効果が期待できます。その第一歩として、まずは開業時に「この場所で事業を行っています」と公的に示す手続きが必要になります。
家賃を経費にするための重要ステップ!開業届の「納税地」設定
自宅の家賃を経費として計上するための、最初の重要な手続きが「開業届」の提出です。特に、その中の「納税地」の書き方がポイントになります。
開業届とは?なぜ納税地の設定が重要なのか
開業届(正式名称:個人事業の開業・廃業等届出書)は、新たに事業を開始したことを税務署に知らせるための書類です。「事業を始めました」という公式な宣言であり、これを提出することで、青色申告などの節税メリットが大きい確定申告の方法を選べるようになります。
この開業届に「納税地」を記載する欄があります。納税地は、確定申告書を提出する税務署を決める重要な項目で、以下の3つから選ぶのが基本です。
- 住所地:生活の本拠地。住民票のある住所。
- 居所地:海外在住など、住所地がない場合に生活の拠点としている場所。
- 事業所等:住所地とは別に、店舗や事務所がある場所。
自宅兼事務所の場合、多くの方は「住所地」に納税地を設定します。そして、開業届の中ほどにある「納税地以外の住所地・事業所等」の欄に、納税地と同じ住所をもう一度記載します。これにより、「住民票のある住所地が納税地であり、かつ、そこが事業所でもあります」と税務署に明確に伝えられるのです。これが、家賃を家事按分するための公的な根拠作りとなります。
開業届の作成は難しくない!
「開業届って、なんだか難しそう…」と感じるかもしれませんが、心配は無用です。今は便利なツールがたくさんあります。
例えば、無料で使える「マネーフォワード クラウド開業届」のようなサービスを利用すれば、Webサイト上の質問に答えていくだけで、必要な情報が入力された開業届が自動で作成されます。印刷して提出するだけで済むので、初めての方でも迷うことはありません。
開業準備の手続き全体に不安がある方は、まず「何から始めればいいのか」の全体像を掴むことが大切です。詳しい手順や必要なものについては、【開業準備ガイド】個人事業主になるには?無料の「マネーフォワード クラウド開業届」で書類作成から提出まで完全サポート!で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。
【具体例で解説】家事按分の計算方法と比率の決め方
開業届を提出し、事業を開始したら、いよいよ経費の計算です。家事按分は、税務署に「これは事業に必要な経費です」と客観的に説明できる、合理的な基準で行う必要があります。ここでは、家賃やその他の費用について、具体的な計算方法を見ていきましょう。
家賃の按分:最も一般的な「面積基準」
家賃の家事按分で最も一般的で、税務署にも説明しやすいのが「面積」を基準にする方法です。計算式は非常にシンプルです。
家賃 × (事業用スペースの面積 ÷ 自宅の総面積) = 経費計上額
【計算例】
- 家賃:120,000円
- 自宅の総面積:60㎡
- 事業で使っている仕事部屋の面積:15㎡
この場合、事業利用割合は 15㎡ ÷ 60㎡ = 25% となります。したがって、経費として計上できる家賃は、
120,000円 × 25% = 30,000円 (月額)
となり、年間で 30,000円 × 12ヶ月 = 360,000円 もの金額を経費にできます。所得税率が10%の方でも、住民税と合わせて約72,000円の節税につながる計算です。非常に大きな効果があることが分かりますね。
【ポイント】
仕事部屋が明確に分かれていない場合でも、「リビングの一角のこの2畳分を仕事スペースにしている」というように定義すれば按分は可能です。その際は、自宅の間取り図に事業用スペースを色付けして面積を計算し、いつでも説明できるようにしておきましょう。
水道光熱費・通信費の按分:「時間基準」
電気代やインターネット代などは、面積よりも「時間」を基準に按分する方が合理的な場合があります。
費用 × (1日の事業利用時間 ÷ 24時間) × (月の稼働日数 ÷ その月の日数) = 経費計上額
例えば、1ヶ月の電気代が15,000円で、平日(20日間)に1日8時間仕事をしているとします。この場合、1ヶ月の総時間は24時間×30日=720時間、事業利用時間は8時間×20日=160時間なので、事業利用割合は約22%です。
15,000円 × 22% = 3,300円
これが電気代の経費額となります。ただし、計算が複雑になるため、実務上は「事業利用時間は1日の約3分の1、稼働日は週5日」といった仮定から、ざっくり30%〜40%程度の割合で計上することも多いです。重要なのは、なぜその割合にしたのか、自分の働き方を元に説明できる根拠を持っておくことです。
家事按分の注意点と税務調査で慌てないための準備
家事按分は節税の強力な味方ですが、いくつか注意点があります。万が一の税務調査で指摘を受けないために、しっかり準備しておきましょう。
按分比率の根拠資料を必ず保管する
税務調査で最も見られるポイントは、「その按分比率に合理的な根拠があるか?」という点です。口頭で説明するだけでなく、客観的な証拠として以下のものを保管しておきましょう。
- 間取り図:事業用スペースとプライベートスペースを明確に色分けし、それぞれの面積を記載したもの。
- 業務日報やタイムカード:事業に費やした時間を記録したもの。スマートフォンのアプリなどを使っても良いでしょう。
- 写真:仕事場の様子が分かる写真。
「なんとなく30%」ではなく、「総面積〇〇㎡のうち、〇〇㎡を事業で使っているので〇〇%です」と明確に答えられるようにしておくことが、何よりの対策になります。
持ち家や住宅ローンの場合はどうなる?
賃貸ではなく持ち家の場合、家賃は発生しませんが、代わりに関連する費用を家事按分できます。
- 建物の減価償却費:建物の購入代金を、耐用年数にわたって分割して経費にするもの。
- 固定資産税:毎年支払う固定資産税のうち、事業利用割合に応じた金額。
- 住宅ローンの金利:元本返済分は経費になりませんが、金利部分は経費として計上可能です。
- 火災保険料や地震保険料
持ち家の場合は計算が複雑になるため、会計ソフトを利用したり、税理士に相談したりすることをおすすめします。
よくある質問(Q&A)
Q. 按分比率は毎年変えてもいいですか?
A. はい、問題ありません。事業の状況が変われば、仕事部屋の広さや作業時間も変わるはずです。ただし、変更した場合は、その年の実態に合わせて再度、合理的な根拠を準備しておきましょう。
Q. 家族と住んでいますが、家事按分できますか?
A. 賃貸契約の名義人がご自身であれば可能です。ただし、生計を同一にする家族(配偶者など)に家賃を支払う形では経費として認められないため注意が必要です。
Q. 按分比率が50%を超えても大丈夫ですか?
A. 事業の実態として、生活スペースよりも事業用スペースの方が明らかに広い、または利用時間が長いという事実があり、それを客観的に証明できれば問題ありません。例えば、自宅の1階を店舗、2階を居住スペースにしている場合などは、按分比率が50%を超えることも十分に考えられます。
まとめ:正しい知識で賢く節税し、事業を加速させよう
今回は、個人事業主が自宅兼事務所の家賃を経費にするための方法を解説しました。最後に、重要なポイントを振り返りましょう。
- 開業届の提出:納税地を「住所地」、事業所欄にも同住所を記載し、自宅が事業所であることを公的に示す。
- 合理的な家事按分:「面積」や「時間」など、客観的な基準で事業利用分を計算する。
- 証拠の保管:間取り図や業務記録など、按分比率の根拠となる資料を必ず保管する。
自宅の家賃や光熱費を経費にすることは、個人事業主にとって最も身近で効果の大きい節税策の一つです。しかし、手続きや計算が面倒に感じるかもしれません。
そのような不安は、便利なツールを活用することで解消できます。特に、これから開業する方は、マネーフォワード クラウド開業届を使えば、無料で簡単に開業手続きを済ませることができます。その後の確定申告も、同社の会計ソフトを使えば、家事按分の計算なども含めてスムーズに行えます。
ツールの具体的な使い方や、開業準備全体の流れについてさらに詳しく知りたい方は、こちらのガイド記事もぜひご活用ください。
正しい知識を身につけて賢く節税し、あなたの事業の成長を加速させていきましょう。
