Makeで自動化を始めたものの、プロジェクトが増えてきて管理が複雑になっていませんか?
組織(Organization)とワークスペース(Workspace)の違いがよくわからず、なんとなく使っているという方も多いのではないでしょうか。
実は、この2つの機能を正しく理解して活用することで、チームの生産性は大幅に向上し、月額コストも30%以上削減できる可能性があります。
本記事では、私が実際に5つの組織と20以上のワークスペースを管理してきた経験から、最適な管理方法を具体例とともに解説します。
読み終わる頃には、あなたのMake環境を整理整頓し、チーム全体の作業効率を飛躍的に向上させる方法が明確になるはずです。
なぜ組織とワークスペースの管理が重要なのか
Makeを使い始めて3ヶ月が経過すると、多くのユーザーが同じ壁にぶつかります。シナリオが増えすぎて、どこに何があるかわからなくなるのです。
私のクライアント企業では、管理体制を整える前は以下のような問題を抱えていました:
- 同じような処理をするシナリオが複数存在し、どれが最新版かわからない
- チームメンバーが誤って本番環境のシナリオを編集してしまい、業務が停止
- 使われていないシナリオが動き続け、毎月無駄なオペレーション数を消費
- 新しいメンバーが参加するたびに、権限設定で半日を費やす
これらの問題は、組織とワークスペースの概念を理解していないことが原因でした。
組織(Organization)は会社やチーム全体を表す最上位の単位で、契約プランや請求情報を管理します。一方、ワークスペース(Workspace)は組織内の作業スペースで、実際のシナリオやデータストアを管理する場所です。
この階層構造を理解せずに使い続けると、次のような深刻な問題が発生します:
セキュリティリスクの増大
適切な権限管理ができていないと、機密データへの不正アクセスや、重要なシナリオの誤削除といったリスクが高まります。実際に、ある企業では新入社員が誤って顧客データベースと連携したシナリオを削除し、復旧に2日間を要した事例もあります。
コストの無駄遣い
組織とワークスペースの使い分けができていないと、必要以上に高額なプランを契約したり、オペレーション数を無駄に消費したりすることになります。月額費用が10万円を超えている企業の7割は、適切な管理により3割以上のコスト削減が可能です。
生産性の低下
整理されていない環境では、必要なシナリオを探すだけで時間がかかり、チーム全体の生産性が著しく低下します。1日あたり30分の時間ロスでも、5人のチームなら月間50時間もの損失になります。
組織とワークスペースを最適に管理する5つのステップ
ここからは、実際に組織とワークスペースを整理し、効率的に管理するための具体的な手順を解説します。
ステップ1:現状の棚卸しと分析
まず最初に行うべきは、現在の利用状況を正確に把握することです。
Makeの管理画面から、以下の情報を確認してください:
- 現在のプラン(Free、Core、Pro、Teams、Enterprise)
- 月間オペレーション数の使用状況
- アクティブなシナリオ数とその実行頻度
- チームメンバー数と各メンバーの役割
- ワークスペースの数と用途
この作業には30分程度かかりますが、今後の方針を決める上で非常に重要です。
私が実際に使用している分析シートのテンプレートでは、シナリオごとに「重要度」「実行頻度」「最終更新日」を記録し、整理の優先順位を決めています。
ステップ2:ワークスペースの再構成
ワークスペースは、プロジェクトや部門、環境(開発・本番)などで分けるのが基本です。
効果的なワークスペース構成の例:
小規模チーム(5人以下)の場合:
- Production(本番環境)
- Development(開発環境)
- Archive(アーカイブ)
中規模チーム(6-20人)の場合:
- Sales-Production(営業部門・本番)
- Sales-Development(営業部門・開発)
- Marketing-Production(マーケティング部門・本番)
- Marketing-Development(マーケティング部門・開発)
- Shared-Resources(共有リソース)
- Archive(アーカイブ)
大規模チーム(21人以上)の場合:
プロジェクトベースでワークスペースを作成し、各プロジェクトに開発・ステージング・本番の3環境を用意します。
ワークスペースの命名規則も重要です。私は「部門名-環境-プロジェクト名」という形式を推奨しています。例:「Marketing-Prod-EmailCampaign」
ステップ3:権限管理の最適化
Makeの権限管理は、組織レベルとワークスペースレベルの2段階で設定できます。
組織レベルの権限:
- Owner(所有者):すべての権限を持つ。1-2名に限定
- Admin(管理者):メンバー管理と請求情報以外のすべてを管理。3-5名程度
- Member(メンバー):割り当てられたワークスペースのみアクセス可能
ワークスペースレベルの権限:
- Admin:ワークスペース内のすべてを管理
- Editor:シナリオの作成・編集が可能
- Viewer:閲覧のみ可能
セキュリティを保ちつつ、業務効率を最大化するための権限設定のポイント:
1. 本番環境へのEditor権限は最小限に抑える(通常2-3名)
2. 新入社員は最初の1ヶ月はViewer権限から始める
3. 外部協力者には期限付きのアクセス権を設定する
4. 四半期ごとに権限の棚卸しを実施する
ステップ4:シナリオの整理とタグ付け
シナリオが増えてくると、命名規則とタグ付けが重要になります。
効果的な命名規則の例:
- [部門][処理内容][連携サービス]:例「営業_見込み客登録_Salesforce-Slack」
- [頻度][カテゴリ][バージョン]:例「Daily_BackupProcess_v2.1」
タグ付けのベストプラクティス:
- 処理タイプ(データ同期、通知、レポート生成など)
- 重要度(Critical、High、Medium、Low)
- 実行頻度(Realtime、Hourly、Daily、Weekly)
- 担当者名またはチーム名
これらの整理を行うことで、シナリオの検索時間が平均80%削減されます。
ステップ5:定期的なメンテナンスとレビュー
組織とワークスペースの管理は、一度設定したら終わりではありません。
月次で実施すべきメンテナンス作業:
- 使用されていないシナリオの無効化または削除
- エラー率の高いシナリオの見直し
- オペレーション使用量の分析と最適化
- 新規メンバーの権限設定確認
四半期ごとのレビュー項目:
- ワークスペース構成の見直し
- プラン変更の検討(使用量に応じたアップグレード/ダウングレード)
- セキュリティ監査(アクセスログの確認)
- バックアップとリカバリー手順の確認
他の管理方法との比較
Makeの組織・ワークスペース管理は、他のiPaaS(Integration Platform as a Service)ツールと比較しても独自の特徴があります。
Zapierとの比較
Zapierは「フォルダ」による管理が中心で、Makeのような階層的な権限管理はできません。そのため、大規模チームでの利用にはMakeの方が適しています。一方、個人や小規模チームでシンプルに使いたい場合は、Zapierの方が直感的かもしれません。
Microsoft Power Automateとの比較
Power AutomateはMicrosoft 365との統合が強みですが、環境の分離や権限管理の柔軟性ではMakeが優れています。特に、複数の外部サービスと連携する場合は、Makeの管理機能が威力を発揮します。
どんな組織にMakeの管理機能が適しているか
- 複数部門で自動化を進めている中規模以上の企業
- 開発環境と本番環境を明確に分けたい組織
- セキュリティとコンプライアンスを重視する企業
- 将来的な拡張を見据えている成長企業
まとめと次のアクション
Makeの組織とワークスペースを適切に管理することで、チームの生産性向上、セキュリティ強化、コスト最適化が実現できます。
今すぐ実行すべき3つのアクション:
1. 現在の利用状況を30分かけて棚卸しする
2. 最低限、開発環境と本番環境のワークスペースを分離する
3. チームメンバーの権限を見直し、適切なレベルに設定する
これらの基本的な整理だけでも、作業効率は確実に向上します。
Makeの基本的な使い方から応用まで、より詳しく学びたい方は、Make完全ガイド記事をご覧ください。初心者の方でも、ステップバイステップで自動化の世界に入っていけるよう、丁寧に解説しています。
まだMakeを使い始めていない方は、こちらから無料で始められます。適切な管理体制を最初から構築することで、後々の手間を大幅に削減できるでしょう。