個人事業主として事業を始めると、請求書の発行や経費の入力、確定申告の準備など、やるべきことが山積みです。
事業が軌道に乗ってくると、これらの業務を一人で抱えるのは大変になり、「家族に経理を手伝ってもらいたい」「従業員に一部の作業を任せたい」と考える方も多いのではないでしょうか。
そんな時に非常に役立つのが、会計ソフトのデータをチームで共有する機能です。
特に「マネーフォワード クラウド」シリーズは、簡単な操作でメンバーを招待し、役割に応じた権限を設定できるため、チームでの業務効率を格段に向上させることができます。
この記事では、マネーフォワード クラウドのデータを家族や従業員と安全かつ効率的に共有するための具体的な設定方法や、知っておくべき注意点について、2025年11月時点の最新情報をもとに詳しく解説します。
この記事を読めば、あなたもチームでのスムーズな事業運営を実現できるはずです。
なぜマネーフォワード クラウドのデータを共有する必要があるのか?
そもそも、なぜ会計ソフトのデータを共有する必要があるのでしょうか。その主な目的は、「業務の効率化」「経営状況の可視化」「専門家との連携強化」の3つに集約されます。これらを活用することで、個人事業主が抱えがちな多くの課題を解決に導くことができます。
経理業務の効率化と時間短縮
事業運営において、経理業務は必要不可欠ですが、非常に時間のかかる作業でもあります。毎日の売上入力、領収書の整理と経費入力、請求書の発行と入金確認など、細かなタスクが積み重なります。これらの作業をすべて一人でこなしていると、本来注力すべき本業の時間が圧迫されてしまいます。
ここでマネーフォワード クラウドの共有機能が真価を発揮します。例えば、以下のような役割分担が可能です。
- 配偶者や家族に任せる場合:日々のレシートや領収書をスマホアプリで撮影してもらい、経費として入力してもらう。
- 従業員やアルバイトに任せる場合:請求書の下書き作成や、取引先情報の登録などを担当してもらう。
このように作業を分担することで、あなたは最終確認や承認作業に集中できます。結果として、経理業務全体にかかる時間が大幅に短縮され、より付加価値の高い活動に時間を使えるようになるのです。特に、繁忙期や事業拡大のフェーズにおいて、この効率化の効果は絶大です。
リアルタイムでの経営状況の把握
マネーフォワード クラウドのようなクラウド会計ソフトの最大のメリットの一つは、データがリアルタイムで更新され、いつでもどこでも最新の経営状況を把握できる点にあります。このメリットは、チームで共有することでさらに大きくなります。
例えば、あなたが営業活動で外出している間に、経理担当の家族が事務所で売上や経費を入力したとします。そのデータは即座にクラウド上で同期されるため、あなたは移動中のスマートフォンから最新の利益状況や資金繰りを確認できます。これにより、「今月はもう少し広告費を投入できそうだ」「このプロジェクトは利益率が高いな」といった、迅速かつ的確な経営判断が可能になります。どんぶり勘定から脱却し、データに基づいた経営を実現するためには、チーム全体で常に最新の情報を共有できる環境が不可欠です。
税理士とのスムーズな連携
確定申告の時期になると、多くの個人事業主が頭を悩ませます。特に青色申告を行う場合、複雑な書類作成が必要となり、税理士に依頼するケースも少なくありません。
従来の方法では、会計データをExcelファイルで出力してメールで送ったり、紙の帳簿を郵送したりと、非常に手間がかかりました。しかし、マネーフォワード クラウドのアカウントを税理士に共有すれば、そうした手間は一切不要になります。税理士は直接あなたの会計データにアクセスし、内容の確認や修正、そして申告作業までをオンラインで完結させることができます。質問がある場合も、具体的な仕訳データを見ながら話ができるため、コミュニケーションが非常にスムーズになります。これにより、確定申告にかかる時間とストレスが大幅に軽減されるだけでなく、税理士による的確なアドバイスも受けやすくなるでしょう。
【実践】マネーフォワード クラウドで家族や従業員を招待する具体的な手順
それでは、実際にマネーフォワード クラウドで家族や従業員を招待し、データを共有するための手順を解説します。操作は非常にシンプルで、数分もあれば完了します。ここでは、権限の種類や役割分担の考え方についても触れていきます。
そもそも、まだ開業手続き自体がお済みでない方は、まず無料で利用できる「マネーフォワード クラウド開業届」を使って、開業に必要な書類一式を準備することから始めるのがおすすめです。詳しい手順は「【開業準備ガイド】個人事業主になるには?無料の「マネーフォワード クラウド開業届」で書類作成から提出まで完全サポート!」の記事で分かりやすく解説していますので、ぜひ参考にしてください。
メンバー招待機能の基本操作
メンバーの招待は、マネーフォワード クラウドの管理画面から行います。基本的な流れは以下の通りです。
- マネーフォワード クラウドにログインし、画面右上にある事業者名をクリックします。
- メニューの中から「事業者・年度の設定」を選択します。
- 左側のメニューから「メンバー招待」をクリックします。
- 「メンバーを招待する」ボタンを押し、招待したい人のメールアドレスを入力します。
- 付与したい「権限」を選択し、「招待メールを送信」ボタンをクリックします。
これで、入力したメールアドレス宛に招待メールが送信されます。非常に直感的な操作で、誰でも簡単に追加設定が可能です。
権限の種類と役割分担の考え方
メンバーを招待する際に最も重要なのが「権限設定」です。誰に、どこまでの操作を許可するのかを正しく設定することで、セキュリティを確保しつつ、スムーズな業務分担が実現できます。マネーフォワード クラウドでは、主に以下のような権限が用意されています。(サービスにより名称や種類が若干異なる場合があります)
- 管理者(オーナー): すべての機能の閲覧・編集が可能。メンバーの招待や削除、料金プランの変更など、最上位の権限を持ちます。事業主本人や、事業の根幹に関わる家族(配偶者など)に設定するのが一般的です。
- 業務管理者(例:経理部長など): メンバー管理やプラン変更などを除く、ほぼすべての会計機能の閲覧・編集が可能です。経理全般を任せる責任者に適しています。
- 一般利用者(例:従業員・アルバイト): 自身の勤怠打刻や経費精算など、許可された範囲の機能のみ利用できます。仕訳の登録や請求書の作成など、より詳細な権限を個別に設定することも可能です。
- 閲覧のみ: データの編集は一切できず、閲覧のみが可能です。経営状況を把握したいだけの役員や、監査目的での利用に適しています。
- 税理士: 税理士や会計事務所向けの権限で、申告業務に必要な機能にアクセスできます。
【役割分担の具体例】
- ケース1:妻に経理全般を手伝ってもらう
→「業務管理者」権限を付与し、日々の記帳から月次の締めまでを任せる。 - ケース2:従業員に請求書作成を任せる
→「一般利用者」権限をベースに、「請求書作成」に関する操作のみを許可する設定にする。 - ケース3:アルバイトにレシート入力だけお願いする
→「一般利用者」権限で、経費精算の申請機能のみを許可する。
このように、任せたい業務内容に応じて権限を細かく設定することが、安全な運用への第一歩です。
招待メールの送信から承認までの流れ
あなたが招待メールを送信すると、招待されたメンバーには「【マネーフォワード クラウド】○○さんから事業者への招待が届いています」といった件名のメールが届きます。
招待された側の手順は以下の通りです。
- 受信したメール本文にある「招待を承認する」ボタンをクリックします。
- マネーフォワードのログイン画面が表示されます。
- すでにアカウントを持っている場合:ログインします。
- アカウントを持っていない場合:新規会員登録を行います。
- ログイン後、招待内容の確認画面が表示されるので、「承認する」をクリックします。
以上で承認作業は完了し、招待されたメンバーはあなたの事業データにアクセスできるようになります。承認が完了すると、あなたの管理画面のメンバー一覧にも追加したメンバーが表示されるようになります。
安全にデータを共有するための重要な注意点とセキュリティ対策
チームで会計データを共有する機能は非常に便利ですが、それは同時に、複数の人が重要な経営情報にアクセスできることを意味します。情報漏洩などのリスクを防ぎ、安全に運用するためには、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。ここでは、必ず実践してほしいセキュリティ対策について解説します。
権限設定は「最小限の原則」で
セキュリティの基本は「必要最小限の権限しか与えない」という原則です。これは「ミニマム・プリビレッジの原則」とも呼ばれ、万が一アカウント情報が漏洩した際の被害を最小限に食い止めるための重要な考え方です。
例えば、従業員に請求書の作成だけを任せたいのに、誤って「管理者」権限を与えてしまうと、その従業員は会社のすべての財務データを見たり、変更したりできてしまいます。これは非常に危険な状態です。
メンバーを招待する際は、「この人には、どの業務をどこまでやってもらう必要があるか」を明確にし、その業務の遂行に最低限必要な権限だけを付与するように徹底してください。「とりあえず管理者でいいか」という安易な設定は絶対に避けましょう。
2段階認証の設定を徹底する
2段階認証は、IDとパスワードに加えて、スマートフォンアプリなどで生成される確認コードの入力を求めることで、不正ログインを強力に防ぐ仕組みです。たとえパスワードが第三者に知られてしまったとしても、2段階認証を設定していれば、あなたのスマートフォンがなければログインされることはありません。
これは、事業主であるあなた自身が設定するのはもちろんのこと、招待するすべてのメンバーにも必ず設定してもらうように依頼してください。マネーフォワード クラウドでは、2段階認証の設定が簡単にできます。少しの手間でセキュリティレベルが格段に向上するため、これは必須の対策と考えてください。メンバーを招待する際の運用ルールとして、2段階認証の設定を義務付けることを強く推奨します。
定期的な権限の見直しと棚卸し
事業を運営していると、従業員の役割が変わったり、退職したりすることがあります。その際に、不要になったアカウントの権限を速やかに変更または削除することが非常に重要です。
特に退職した従業員のアカウントを放置しておくのは、情報漏洩の重大なリスクとなります。退職日には必ずアクセス権を削除する、というルールを徹底しましょう。
また、役割変更があった場合も、その都度権限を見直す必要があります。例えば、一般の担当者から経理責任者に昇格した場合は権限を昇格させ、逆に他の部署へ異動した場合は権限を縮小または削除します。
できれば、半年に一度、あるいは年に一度は、現在登録されているメンバーとその権限の一覧を確認し、「この権限は本当に必要か?」という視点で見直し(棚卸し)を行うことを習慣づけるのが理想です。
共有するデバイスのセキュリティ
クラウドサービス自体のセキュリティが強固でも、アクセスする側のデバイス(PCやスマートフォン)のセキュリティが甘ければ意味がありません。特に、個人所有のデバイスを業務に利用するBYOD(Bring Your Own Device)を許可している場合は注意が必要です。
以下の基本的な対策を、チーム全員で徹底するようにしましょう。
- OSやソフトウェアを常に最新の状態に保つ:セキュリティの脆弱性をなくすための基本です。
- ウイルス対策ソフトを導入する:マルウェア感染による情報漏洩を防ぎます。
- 推測されにくい複雑なパスワードを設定する:デバイスのログインパスワードも重要です。
- 公共のフリーWi-Fiは極力利用しない:通信が暗号化されていない場合、情報を盗み見られる危険性があります。やむを得ず利用する場合は、VPNなどを活用しましょう。
これらのルールをチーム内で共有し、全員のセキュリティ意識を高めることが、結果的にあなたの事業の重要な情報を守ることにつながります。
まとめ
今回は、マネーフォワード クラウドのデータを家族や従業員と共有するための具体的な設定方法から、安全に運用するための注意点までを詳しく解説しました。
この記事の要点をまとめます。
- 共有のメリット:経理業務の効率化、リアルタイムな経営状況の把握、税理士とのスムーズな連携が実現できる。
- 設定方法:管理画面から簡単な操作でメンバーを招待でき、業務内容に応じた柔軟な権限設定が可能。
- セキュリティ対策:「権限は最小限」「2段階認証の徹底」「定期的な権限の見直し」が不可欠。
個人事業主として一人ですべてを抱え込む時代は終わりつつあります。便利なツールを賢く活用し、チームで協力することで、あなたはより創造的で本質的な業務に集中できるようになります。これにより、事業の成長スピードは格段に加速するでしょう。
もし、あなたがまだマネーフォワード クラウドを導入していないのであれば、この機会にぜひ無料プランからその便利さを体験してみてはいかがでしょうか。開業手続きから日々の経理、そしてチームでの共有まで、あなたの事業を力強くサポートしてくれるはずです。
また、開業準備全体の流れをもう一度確認したい方は、こちらの「【開業準備ガイド】個人事業主になるには?」の記事もぜひ合わせてご覧ください。